JR東日本の第一組合、東労組が初のストライキに突入か?
既に各マスコミが報じていますが、JR東日本の第一組合であるJR東労組(東日本旅客鉄道労働組合)が来たる2018年3月2日以降にスト権を行使する可能性がある事を示しました。
国鉄の分割民営化から31年が経とうとしている中、春闘の交渉が決裂すればJR最大労組としては初のストライキが決行される事になります。
JR東日本の社内には8つの労働組合があり、中でもJR総連を上部組織に持つ東労組は全社員の約8割が所属する最大勢力として君臨しています。
2017年3月期の「有価証券報告書」p.14によると、東労組の組合員数は43,641名です。
JR総連は国鉄末期に分割民営化賛成派に回った動労(国鉄動力車労働組合)、鉄労(鉄道労働組合)、全施労(全国鉄道施設労働組合)、社員労(社員労働組合)、鉄輪会、真国労(真国鉄労働組合)などの労働組合が結託し設立した鉄道労連をルーツとしており、このうち動労・真国労は革マル派が浸透した組織とされ、全施労は創価学会との繋がりが指摘されています。
国労、鉄産総連とは対立関係にあった鉄道労連ですが、共に手を取り合ったはずの動労と鉄労は元から水と油の関係で、共闘が上手くいく訳がありませんでした。
1991年2月には旧鉄労派が大多数を占める西労組(西日本旅客鉄道労働組合)にて大松益生執行委員長がJR総連との断絶を表明。
すると東海労組からも旧動労派の脱退が相次ぎ、四国労組・九州労組もJR総連から脱退しました。
そしてこれら組合が鉄産総連と手を組み、組織統合をしてJR連合が誕生した訳です。
2018年現在、JR総連はJR北海道、JR東日本、JR貨物の3社、JR連合はJR東海、JR西日本、JR九州の3社において最大勢力となっており、JR四国に至ってはJR連合への統一が実現しています。
さて、JR東日本の労組は残り7つ。
JR連合系のJREユニオン(ジェイアール・イーストユニオン)のほか、東日本ユニオン(JR東日本労働組合)、国労東日本(国鉄労働組合東日本本部)、建交労鉄道東日本本部(全日本建設交運一般労働組合全国鉄道東日本本部)、鉄産労(鉄道産業労働組合/※鉄産総連とは無関係)、動労総連合(国鉄動力車労働組合総連合)、動労(動力車労働組合/※国鉄時代の動労との関連性は不明)が挙げられます。
このうち動労総連合(組合員数:175名)は動労千葉を核として動労水戸、動労連帯高崎の3労組によって構成されており、無茶苦茶な要求を掲げ度々ストライキを起こしているのは周知の事実。
特に動労千葉の活動拠点であるJR東日本千葉支社管内では、ストライキによる間引き運転や運休が毎年発生した事もあり、地元住民からは「花見スト」と揶揄されています。
「安全運転闘争」と称して不要な徐行運転を行い、回復運転を一切しない作戦も展開。
それでも弱小組合である事に変わりなく、ここ数年は会社側が代務の運転士を手配するなど対策を取るため、花見ストが失敗に終わるようになってきました。
仙台に拠点を置く鉄産労(繰り返しますが鉄産総連とは無関係)も攻撃的な労組として知られたそうですが、2017年3月時点の組合員数は僅か15名で音沙汰もありません。
しかし、最大労組の東労組がストライキに踏み切るとなれば、動労千葉とは比べ物にならない多大な影響が出る事は必至。
此度の春闘で東労組が会社側に要求するのは下記2点で、交渉が決裂した暁にはスト権を行使する姿勢を見せています。
《2018年春闘での要求内容》
■ベア要求 全組合員一律6,000円(定期昇給を含まない)
■グリーンスタッフ組合員、エルダー組合員の基本賃金の4,000円引き上げ
ストライキを決行するに当たり、東労組は職場や組合員を限定する「指名スト」を採る予定としています。
指名ストの対象となる職場は下記の通りで、実施する地域もJR東日本東京支社管内に絞っています。
■我孫子運輸区
常磐快速線、成田線、上野東京ラインの乗務を担当する運転士・車掌が所属
■松戸車両センター
常磐快速線、常磐緩行線、上野東京ラインなどの車両を管理
■綾瀬運輸区
常磐緩行線の乗務を担当する運転士・車掌が所属
■東京新幹線車両センター
東北新幹線、山形新幹線、秋田新幹線、上越新幹線、北陸新幹線の検修を担当
■上野新幹線第二運転所
東北新幹線、上越新幹線、北陸新幹線の乗務を担当する運転士が所属
■上野運転区
宇都宮線、高崎線、常磐線、湘南新宿ラインなどの乗務を担当する運転士が所属
■上野車掌区
宇都宮線、高崎線、新宿線、湘南新宿ライン、上野東京ラインなどの乗務を担当する車掌が所属
■田端運転所
宇都宮線、高崎線、湘南新宿ラインなどの乗務を担当する運転士が所属
■尾久車両センター
E655系、皇室用客車、E001形(TRAIN SUITE 四季島)などの車両を管理
■池袋運輸区
山手線の乗務を担当する運転士・車掌が所属
■新宿運輸区
湘南新宿ライン、中央本線、東海道線などの乗務を担当する運転士・車掌が所属
■中野電車区
中央・総武緩行線の乗務を担当する運転士が所属
■中野車掌区
中央・総武緩行線の乗務を担当する車掌が所属
■東京電車区
東海道線、横須賀線、上野東京ラインなどの乗務を担当する運転士が所属
■東京車掌区
東海道線、伊東線、横須賀線、総武快速線などの乗務を担当する車掌が所属
■丸の内車掌区
東北新幹線、上越新幹線、北陸新幹線、京葉線などの乗務を担当する車掌が所属
■田町運転区
東海道線、伊東線、横須賀線、総武快速線などの乗務を担当する運転士が所属
■大崎運輸区
山手線の乗務を担当する運転士・車掌が所属
■大田運輸区
京浜東北線・根岸線の乗務を担当する運転士・車掌が所属
分かる範囲で各区所に関連する線区も併記しましたが、こうしてみると結構な広範囲に及びますね。
指名ストは乗務員基地と車両基地が対象になっており、駅や保線技術センター、信号技術センター、建築技術センターなどの工務部門は含まれていません。
そうなるとストで列車が止まった場合、乗客の怒りの矛先はストに加われない駅員に集中する事に・・・。
入社1年目の営業係の心境を想像するに、交渉中の今もかなりのストレスに晒されているのではないでしょうか。
OB会関東支部の諸兄を含め、東京周辺にお住まいの方々は東労組の動静にご注意下さい!
個人的には東労組が賃金要求とは別に取り組んでいる、駅業務委託化の中止申し入れも気になります。
とどのつまり、駅の業務委託化は体の良いリストラ。
JR東日本は大規模な駅の業務委託化を推し進めようとしており、重要な乗り換え駅である秋葉原駅さえも全面外注化しようとしていました。
いたずらに業務委託駅が増えるとその分、運転取扱駅が減少する事になりますから、安心安全な輸送の維持にも困難が生じます。
万が一事故が起きた場合、業務委託駅の駅員には単独で事故処理を行う権限が無く、最寄の直営駅(運転取扱駅)から輸送担当の助役や輸送係駅員(輸送係・輸送指導係・輸送主任)などが派遣されてくるまで何も出来ません。
私自身、三鷹電車区事件や浦和電車区事件といった不祥事を知っているものですから東労組に対する心象は悪いですが、これに関しては別の話。
京急も去る2017年10月、長らく京急ステーションサービスに分社化していた駅業務部門を直営に戻した訳で、JR東日本の外注化問題も注視し続けていきたいですね。
【※2018年2月22日追記※】
記事を書いた後の報道で知ったのですが、東労組は何と「列車運行に支障の無いスト」を検討しているそうです。
つまり、通常業務を遂行しながらストライキを展開するというのですが、それって全く意味ないんじゃ・・・。
【※2018年2月25日追記※】
JR東日本が東労組の要求に合意したため、2018年春闘が終結しました。
詳しくはこちら→「JR東日本がストライキ回避 東労組の18春闘勝利につき」