JR北海道・車掌が補助乗務を担うワンマン列車のまとめ

1 0

2017年6月6日、根室本線十勝清水駅にて
帯広方面から北海道清水高校の生徒達を乗せてきた2428Dに乗務する白服車掌

前回記事では2018年1月30日、室蘭本線青葉駅に停車した2両編成の普通列車において全てのドアを開けるべきところ、運転士が通常の無人駅停車時と同様、1番前のドアしか開けないミスを起こした事を取り上げました。
たとえワンマン列車でも時間帯によっては全てのドアを開けなければ、乗降を捌き切れないほど利用客の多い無人駅もあるのです。
本件が発生した室蘭本線423D(室蘭6:12始発・苫小牧行き普通列車)は2014年頃まで3両編成での運行で、車掌が補助乗務に当たっていた事にも触れました。
これに関連して今回は、ワンマン列車における車掌の補助乗務とは一体何なのか、ツーマン運転とは何が違うかを紹介して参りましょう。




2016年9月8日、石北本線愛し野駅にて
4653Dの車掌はホーム後方に立ち、北見商業高校の生徒達が持つ定期券を確認する

JR北海道は日高本線の一部列車を皮切りに、一般気動車の充当列車に限る快速・普通列車のワンマン化を下記の通り推し進めてきました。

1989年7月 日高本線全区間ワンマン化(一部列車のみ)
1990年3月 函館本線上砂川支線全区間ワンマン化
1990年7月 江差線木古内~江差間ワンマン化/日高本線全列車ワンマン化
 ⇒苫小牧運転所車掌科(旧・苫小牧車掌区)廃止
1991年3月 石勝線全区間ワンマン化/留萌本線全区間ワンマン化
1991年7月 花咲線(根室本線釧路~根室間)ワンマン化
1991年11月 釧網本線全区間ワンマン化
1992年3月 石北本線全区間ワンマン化
 ⇒北見運転所車掌科(旧・北見車掌区)廃止
1992年10月 富良野線全区間ワンマン化/宗谷本線旭川~名寄間ワンマン化
1993年3月 根室本線滝川~釧路間ワンマン化/宗谷本線名寄~稚内間ワンマン化
 ⇒帯広車掌所(旧・帯広車掌区)廃止、特急行路・人員は釧路車掌所が継承
1993年10月 江差線木古内~函館間ワンマン化
1994年3月 室蘭本線全区間ワンマン化
1995年3月 函館本線函館~小樽間・滝川~旭川間ワンマン化
1996年3月 札沼線石狩当別~新十津川間ワンマン化
2012年10月 室蘭本線東室蘭~苫小牧間全普通列車ワンマン化(711系の撤退による)
 ⇒室蘭運輸所車掌科(旧・室蘭車掌区)廃止、残された運転科・検修科は室蘭運転所に改組

ワンマン運転が開始された当初は道内各地でトラブルが多発したといいます。
何しろ国鉄時代は営業・運輸系統(駅・車掌区)と運転系統(機関区・電車区・運転所)の昇級経路が分断されており、現在のJR各社や私鉄のような駅員→車掌→運転士というキャリアパスではなかったため、接客経験の無い運転士ばかりだったのです。
故に不慣れな接客に戸惑う運転士は多く、運賃精算に手こずるわ暖房調整にも気を使わなければならないわ、不良高校生のイタズラ・喫煙に悩まされるわで、運転に専念できず大変な思いをしたそうです。
現場社員からは会社側のみならず、入念な検証も無いままワンマン化の提案を受け入れた北鉄労(北海道旅客鉄道労働組合)に対しても非難が集まり、1992年11月には北鉄労中央本部の役員が全道10線区のワンマン運転を視察する事態にもなりました。
ただし、通勤通学時間帯の混雑に運転士1人で対応するのは流石に酷と考えられ、当初より混雑の著しい列車に限り補助要員として車掌を乗せ、運転士に代わって接客対応をさせる処置を取り続けてきました。

JR北海道 国鉄
JR北海道 国鉄 キハ40系2連 キハ40系3連 キハ40系4連

2016年2月16日、函館本線函館駅にて
平日夕ラッシュ時のキハ40系3連ワンマン列車にて補助乗務に当たる車掌
北海道新幹線開業後にデビューした735系1000番台「はこだてライナー」はツーマン運転である

JR北海道では車掌の役割を本務車掌補助車掌の2つに大別しており、本務車掌が車内放送とドア操作・発車合図を担当し、補助車掌は本務車掌の補佐役として閉扉補助や車内改札等を担当します。
実際に道内で車掌が2人も乗っている列車は少ないですが、繁忙期の特急列車や快速エアポートでは車掌2名での乗り組みがよく見られます。
しかし、JR他社のような特別改札行路もあり、この場合もう1人の車掌は改札業務に専念するのみで閉扉補助や列車監視は実施しません。

車掌がワンマン列車での補助乗務に当たる場合は、ドア操作と車内放送(自動放送装置の操作・肉声放送)は運転士が担当するため、運転士が本務車掌を兼ねる事になります。
これがツーマン運転との大きな違いで、車掌は運転士への閉扉補助と列車監視、改札業務を担当します。
前面種別幕も普段どおりの「ワンマン」表示。
下記に補助乗務時の車掌の確認動作を示しましょう。

===========================================================================================
①停車前、乗務員室扉の落とし窓を開け、顔を出して列車監視
②列車が完全に止まったら、車両前後を見つつ「前よし、後ろよし、」と指差喚呼
③続けて「停止位置よし!」と指差喚呼(運転士にて開扉)
④ホームに出て、全ドアの開扉・側灯の点灯を確認し「車側灯点灯よし!」と指差喚呼
  ※「車側灯」の一般的な読みは「しゃそくとう」だが、JR北海道では「しゃがわとう」と読む
⑤行路表を取り出し腕時計と共に見つつ「(駅名)(○分○秒)発、発車時刻よし!」と喚呼
  (例)札内56分15秒発、発車時刻よし!
⑥前後の乗客の動きを見つつ、乗降が落ち着いてきたら「乗降よし!」と指差喚呼
⑦出発反応標識(レピーター)の点灯を確認し「○○線、出発現示よし!」と指差喚呼
  (例)根室線、出発現示よし! ※ホーム上にレピーターが一路線分しか無い場合は路線名を省略
⑧列車に乗り込んで乗務員室扉を閉め、窓から顔を出して手笛を吹く
⑨運転士に対し、「車掌スイッチを閉じ位置にせよ」の車内ブザー合図2打を送る(運転士にて閉扉)
⑩全ドアの閉扉・側灯の消灯を確認し「車側灯滅灯よし!」と指差喚呼
⑪発車合図は知らせ灯式のため、車内ブザー合図1打を省略
⑫列車がホームを出るまでの間、カメノコの体勢で列車監視(必要に応じて後ろも向く)
⑬ホームを出たら後ろを振り向き「後方よし!」と指差喚呼、落とし窓を閉める
===========================================================================================

発車時機を確認したら運転士に対し閉扉を指示するブザー合図を送りますが、ツーマン列車とは違い発車合図は送らないのがミソです。
1番前のドアしか開かない無人駅でも、車掌は律儀にホーム上の安全を確認します。

《ブログ内関連記事》
JR北海道・車掌の確認動作について


キハ40系3連 根室本線 十勝管内

2016年6月8日、根室本線西帯広駅にて
ホーム前方に跨線橋があるため、車掌は3両編成の先頭で改札と安全確認を行う

それでは、現時点で車掌の補助乗務が実施されている線区・列車を取り上げていきましょう。
まずは根室本線新得~池田間
十勝平野を東西に縦断するこの区間には十勝地方の中心都市・帯広市があり、近隣の自治体を含め沿線には高校が多く点在しています。
最西端は北海道新得高校、最東端は北海道池田高校ですね。
十勝清水駅の近くには、アイスホッケーの実力校として知られる北海道清水高校があります。
大成駅は北海道芽室高校の最寄り駅で、2007年には芽室高校生徒会が停車本数の増加をJR北海道に陳情し、実現するほどには利用があります。
2016年8月の台風上陸後は新得~芽室間の線路が被害を受け、通勤通学輸送に多大な影響を与えました。
授業時間を短縮せざるを得ない事態だった訳ですが、大半のマスコミはこの事実に目を背け、特急や貨物列車といった都市間輸送にばかりスポットを当てていたものです。
十勝管内に母方の実家があり、自身の生まれ故郷でもある私としては、当時の報道には非常に苦々しい思いがしましたね・・・。
そんな中、しっかりと地元の実情に目を向けた十勝毎日新聞の報道には心が洗われました。

補助乗務が実施されている列車は下記の3本で、何れも3両編成です。
通勤通学時間帯のみならず、下校時間帯にも設定されています。
なお、下り2551Dは2016年3月ダイヤ改正で2連に減車されたのですが、2017年3月ダイヤ改正で3連に戻されています。

【下り:新得→帯広→池田】
2551D(芽室16:00始発・池田行き)・・・芽室~帯広間のみ乗務【※1】

【上り:池田→帯広→新得】
2428D(池田6:05始発・滝川行き)・・・帯広~新得間のみの乗務【※2】
2520D(厚内6:06始発・芽室行き)・・・池田~芽室間のみの乗務【※3】

 ※1)土休日は単行運転かつ芽室~帯広間運休、高校長期休暇中は単行運転
 ※2)土休日・高校長期休暇中は後ろ1両締切
 ※3)土休日・高校長期休暇中は1両単行での運転

無人駅で全てのドアが開くのは、大成駅西帯広駅柏林台駅の3駅。
新得~池田間は帯広貨物駅を除く13駅中7駅が有人駅なので、朝ラッシュ時には羽帯駅、御影駅、利別駅を除く全駅で全ドア開扉が実施される事になります。
夏場ですと運が良ければ、タラコ色(首都圏色)のキハ40系と白い盛夏服姿の車掌が並ぶ様子を見る事ができます。

なお、車掌の補助乗務が実施されるのは学期中の平日のみで、土日祝日と春休み・夏休み・冬休み期間は運転士のみの乗務となります。
学校の長期休暇期間については、おおよそ下記の通りです。

【十勝管内における高校長期休暇の目安】
春休み:3月25日頃~4月7日頃
夏休み:7月25日頃~8月18日頃
冬休み:12月22日頃~1月13日頃


《ブログ内関連記事》
減少したキハ40系3連&車掌の補助乗務 根室本線十勝管内
4年ぶりのタラコ3連!?第67回勝毎花火大会閉幕後の根室本線2532D




2016年3月22日、函館本線長万部駅にて
山線の始発列車2929Dに乗務する車掌

2番目は函館本線長万部~倶知安間
長万部~小樽間の通称“山線”に属する区間ですね。
ここでは下り2929D(長万部6:00始発・小樽行き普通列車)ただ1本のみ補助乗務が実施されています。
2929Dは以前、2924D(熱郛7:13始発・長万部行き普通列車)の送り込みを兼ねていたため、1両締切回送の4両編成で運転されていました。
熱郛駅始発の列車は2016年3月のダイヤ改正で廃止されており、以降は3両編成での運行となっています。
全ドア開扉になる無人駅はニセコ駅のみ。
3連運用は倶知安高校への通学利用に配慮したもので、倶知安駅に到着すると後1両が切り離されます。
土日祝は全区間を通して2連での運転で、車掌の補助乗務もニセコ駅での全ドア開扉もありません。
ちなみに蘭越~小樽間では、朝晩に限り非ワンマン対応のキハ201系が乗り入れます。




2016年9月2日、宗谷本線旭川四条駅にて
蘭留駅から旭川駅まで320Dに乗務する車掌

3番目は宗谷本線旭川~蘭留間
ここでは3両編成の上り320D(名寄5:50始発・旭川行き普通列車)に車掌が乗るのですが、始発の名寄駅から蘭留駅まで便乗移動する訳ではありません。
担当車掌は早朝に旭川車掌所(JR北海道旭川支社ビル内)を出発し、下り321D(旭川6:03始発・稚内行き普通列車)に便乗して蘭留駅まで移動するのです。
たった1人、無人駅で待機する姿はなかなか面白いですね。
6:51に320Dが蘭留駅に到着したら、乗客と同じように前ドアから乗り込んでから最後尾まで移動し、補助乗務を開始。
無人駅では比布駅旭川四条駅の2駅が全ドア開扉となります。
土日祝も3連で運転されますが、後1両は全区間を通して締切回送扱いとなるため、車掌の補助乗務も全ドア開扉もありません。

《ブログ内関連記事》
宗谷本線で唯一、車掌が乗務する普通列車(320D)
宗谷本線蘭留駅 早朝の無人駅に送り込まれる車掌




2016年9月8日、石北本線東相内駅にて
構内踏切の手前に立ち、北見工業高校の生徒が持つ定期券を確認する車掌

最後に、石北本線遠軽~網走間
ここは今や道内で、一般気動車4両編成の普通列車が見られる希少な線区。
北見市街への通勤客も多く見られますし、北見商業高校の最寄り駅・愛し野駅での大量下車は必見です。
車掌の補助乗務が実施されているのは下記の2本となっています。

【下り:遠軽→北見→網走】
4653D(遠軽6:25始発・網走行き)

【上り:網走→北見→遠軽】
4652D(網走6:22始発・西留辺蘂行き)

この区間は全ドア開扉となる無人駅(簡易委託駅を含む)が多く、西留辺蘂駅留辺蘂駅東相内駅西北見駅柏陽駅愛し野駅と6駅もあります。
他に2連でも愛し野駅で全てのドアを開ける普通列車がいくつかあるそうで、機会があれば現地調査に赴きたいですね。

以上、2018年2月現在で補助乗務が実施されている区間をざっと挙げてみました。
こうして見ると逆境にあるとはいえ、日々の生活に北の鉄路を必要とする住民が決して少なくないのだという事が窺えます。
皆さんにも特急列車や貨物列車を追いかけたり、秘境駅ばかり巡るだけでなく、地域の生活利用も肌で実感して頂きたいですね。


(文・写真:叡電デナ22@札幌市在住)


鉄道コムのブログランキングに参加中!バナーのクリックをお願い致します。
ページトップ