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2017-10-01 (Sun) 21:51

2年半の休館へ!札幌市交通資料館リニューアル前見納め会【1】



札幌市営地下鉄南北線の自衛隊前駅に隣接し、高架線の真下に約280mの敷地が広がる札幌市交通資料館。
1975年2月に開館して以来、42年間に渡って市電、市営バス、地下鉄と札幌市交通局の歴史を伝えてきました。
開館日は毎年5~9月の土曜・日曜・祝日で、札幌市内の小学校の夏休み期間には毎日開館。
昔は「さっぽろ雪まつり」の開催に合わせて公開された事もありました。
館内には静態保存車両、車両部品、乗車券、制服など貴重な資料が集まり、老若男女を問わず多くの市民や鉄道ファンが見学に訪れています。
しかし、老朽化が進む南北線の高架橋に対し補修工事を施すため、2017年10月から2020年春までの約2年半、全面休館する事になりました。

札幌市交通局からの業務委託で資料館を運営している札幌市交通事業振興公社によると、屋内展示室については補修工事の過程で取り壊す必要があるとの事。
工事に伴い資料館をリニューアルする予定であるとしていますが、各種車両を保存している屋外展示場の処遇は明らかにしていません
個人的には「市営バス展示室」の新設と引き換えに、市営交通の歴史を語る上で外せない貴重な車両達が消滅した「2007年の悲劇」が再来するのではないか、と危惧しています。
この頃に解体されたのは、日本国内のバスでは極めて珍しいステンレス車体の観光バス「すずかけ」、1958~1971年に使用された藻岩山ロープウェイの初代ゴンドラ、南北線地上区間の全線シェルター完備が決まる前に開発された2両の高速電車用試験除雪車・・・。
何れも「札幌地下鉄の生みの親」と称され、1956~1975年の19年間に渡り交通局長を務めた市役所職員・大刀豊さんのアイディア、俗に言う「大刀イズム」が炸裂した逸材でした。

特にステンレス製観光バス「すずかけ」が製造された1959年頃は、大刀さんが視察したアメリカの長距離バス(グレイハウンド等)に触発された車両が続々と生み出されています。
ステンレス製観光バスは「デラックス観光バス」と称され、他にも「しらかんば」、「だけかんば」、「はるにれ」、「こぶし」、「はまなす」の5台が製造されたほか、都市間バスが台頭する時代の到来を予想し試験開発され、日本で唯一の存在となった寝台バス「ゆーから」(もちろんステンレス車体)といったクリエイティビリティ溢れる車両も登場しました。
惜しくも2004年4月を以って74年の歴史に幕を下ろした札幌市営バスに、そんなアグレッシブな時代があった事を伝える貴重な存在が「すずかけ」だった訳です。
確かに2006年に見た頃には傷みが目立ちましたが、資料的価値の高さを真に理解しているなら解体ではなく修繕に動くはず。
札幌市交通事業振興公社の保存活動に対する意識の低さが感じられ、あれから10年が経った現在でも残念に思えてなりません。

JR北海道 札幌市交通局 札幌市営地下鉄 札幌市電 札幌市営バス
博物館 川崎重工路面電車 JR北海道 函館本線 国鉄 はまなす


故に此度のリニューアルも期待より不安が勝っています。
もしかしたらまた見捨てられてしまう車両があるかも知れない、という事でリニューアル前公開最終日の昨日、札学鉄研関係者5名で札幌市交通資料館の見納め見学に行ってきました。
OB会の参加者は私とLewisさんの2名、現役の参加者はめでたい事に就職先が決まった4年生の横コツE231君、3年生の鉄研会長・トワイライトエクスプレス君、1年生のキハ281君の3名です。
市営交通の運行範囲外に暮らすキハ281君は初訪問だそうで、最初で最後となるリニューアル前の見学にわくわくしている様子。
私も2015年の「交通資料館まつり」以来、2年ぶりの訪問です。
自衛隊前駅コンコースにて集合した後、10時の開館に合わせて資料館の入口へ。
看板は相変わらず南北線5000形、東西線8000形、東豊線新7000形(7000形3次車)と一昔前の最新鋭を描いたものを置いています。
この看板も2020年春のリニューアルオープンにより、新7000形を9000形に置き換えた看板に変更されるでしょうね。

JR九州 JR西日本 京都鉄道博物館 九州鉄道記念館 鹿児島本線 山陰本線
名古屋市交通局 トロリーバス 名鉄 名古屋鉄道 長崎電気軌道 広島電鉄


敷地内に入って早々、高架下にはがらんどうの空間が4つ。
2006年頃までは交通局の事業用自動車が置かれていましたね。
先述の「2007年の悲劇」ではこれら自動車も解体され、残された空間は展示室として活用される事なく放置されています。


ジェイ・アール北海道バス




見学者を最初に出迎えるのは三菱ローザ(1963年式)
車体全長6.3mのマイクロバスで、福井、盤渓、円山といった山間地域の輸送需要に対応するべく琴似営業所(現・JHB琴似営業所)に導入された車両です。
4台の購入を皮切りに在籍車両は23台まで増加しましたが、郊外道路の拡幅整備により大型バスの使用が可能になったため、1974年3月を以って全廃されました。
路線を限定しての運転ではありましたが、塗装は当時の市営バスにおいて標準的なクリームと赤の金太郎塗りです。







三菱ローザの車内。
混雑緩和に配慮してか座席はオールロングシートです。
ワンマンカーではありますが運転席の隣に助手席が設けられています。





運転台の様子。
緑色の塗装にも時代を感じますね。







続いてボンネットバスのいすゞBX95(1955年式)
BX91の長尺モデルですね。
ボディはいすゞの謹製ではなく、日野車体工業の前身に当たる金澤産業が製造しました。
解説板では製造元を「川崎航空機工業株式会社 いすゞ」と記していますが、このボディはどう見ても川崎製ではないでしょう。
仮にも私設博物館であるのに、解説が間違っているのは如何なものかと。
ちなみに函館バスで「函館浪漫號」として活躍中の函館200か・354いすゞBX352/1959年式)も金澤産業製のボディで、こちらのBX95とよく似た姿をしています。

一般市内路線用バスとして1955年5月にデビューし、後にサービスカーに改造したとの事ですが、このサービスカーが一体どのような存在だったのかは不明。
JAFのサービスカーと同じような物だとすると、故障車の救援を行う車両だったのでしょうか?
塗装は戦後まもない頃の、群青色と橙色をベースに白帯を引いたデザインです。
老朽化により1969年1月を以って廃車されました。







いすゞBX95の車内。
三菱ローザとは一転、2人掛けを左右に並べた座席配置です。
乗降口付近の床は板張りですが、車内後方には鉄板を敷いています。





運転席の傍にはベンチシートも。





運転台の様子。







昭和レトロ溢れる2台のバスを見た後は、2007年7月にオープンした市営バス展示室へ。
ここは先述したステンレス製観光バス「すずかけ」と2両の高速電車用試験除雪車が展示されていた場所です。
高速電車用試験除雪車はブルーム式(1966年製)と真空式(1969年製)の2種類があって、どちらも東区東苗穂7条2両目に存在した案内軌条式地下鉄の試験開発施設・札苗実験場を自走した車両です。
もしも南北線平岸~真駒内間の地上区間にシェルターが建造されなければ、市電の如くブラシで雪を跳ね飛ばすササラ電車や、雪を吸い込む真空式除雪車が活躍したかも知れません。
そんな貴重な車両達を撤去し、代わりに置いたのはいすゞキュービック(1994年式)日野ブルーリボン(1987年式)の2台。
2台とも2007年当時は道内各地のバス会社でバリバリの現役、しかもキュービックに至っては1994年式ですからそもそも老朽廃車が無かったという・・・。
新しい保存車両を受け入れさえすれば何でも良いというのも、博物館にあるまじき姿勢ですよね。







いすゞキュービック(1994年式)の車内。
優先席の向かいに設けられた座席の無い立ちスペースは、札幌市営バスの自社発注車に多く見られた特徴ですね。
降車ボタンはオージ製WS-230に統一されています。





運転台の様子。
ワンマン運転の機器も一通り残されています。







日野ブルーリボン(1987年式)の車内。
こちらも優先席の向かいに立ちスペースが設けられています。
降車ボタンは昔懐かしいオージ製WS-210Fで、黄色基調と白基調の2色があります。
個人的には黄色の点灯が好き。





運転台の様子。
この頃の車両はまだまだロッドシフトが主流でした。





市営バス展示室には2台のバスの他にも、写真や部品、看板、時刻表など市営バスを偲ぶ品々が展示されています。





こちらは乗務指導員腕章
営業所に配属されたばかりの見習い運転手を指導する先輩運転手が装備したものですね。
昔は教習生を乗務教習員と呼んでいたそうです。
腕章の傍には教習車が掲出した表示札も。





STマークの制定に伴い茶色い制服が導入された1994年より以前に使用されていた、雪の結晶を象った札幌市の市章を付けた紺色の制帽も展示されています。
茶色い制服になる前は夏服・冬服で制帽が作り分けられており、夏用はオールメッシュでしたが、こちらの冬用は全て布地です。
制帽にはバス運転手が使用したヘッドギアタイプのマイクが装着されています。
なお、紺色の制服は1986年に採用されたもので、更に前のモデルは黒を基調としたスーツタイプでした。
茶色い制服も2009年4月にモデルチェンジされ、明るい色調の6つボタンダブルスーツから焦げ茶色の3つボタンシングルスーツになり現在に至っています。





昭和20~30年代の市営バスを記録した貴重な写真の数々。
左上は1940年代後半に登場したトレーラーバスですね。
トレーラーの名のとおり運転台と客車を分けた牽引自動車で、車両不足・乗務員不足が深刻だった戦後の輸送力増強に貢献しました。
名古屋市交通局に至っては1950年6月~9月の3ヶ月間という短い期間ながら、東大曽根~桜山町間のトロリーバス(無軌条電車)路線に日野東芝製のトレーラー型車両(しかも和製PCCカー)という変わり種を運行した事がありました。
中央上は光沢からして明らかにステンレス車体で、フロントに「Fuso」のエンブレムを装着している様子からして、おそらくはデラックス観光バス「はまなす」だと思われます。
三菱ふそう製のステンレス製観光バスは「こぶし」もありますが、そちらは書籍『札幌市電が走った街 今昔』(札幌LRTの会/2003年/JTB)のp.97に写真が掲載されており、見比べると姿が全然違いますね。





市営バス展示室をひとしきり眺めた後は、隣の木製2軸電動客車(22)展示室へ。





ここでは札幌市電の前身に当たる札幌電気軌道が、札幌石材馬車鉄道を電化・改軌し1918年8月に開業した頃に投入した10形22号車が静態保存されていました。
10形は名鉄および名古屋市電の前身に当たる名古屋電気鉄道から購入した中古の単車(名電1号形)で、22号車を含め24両が在籍しました。
100系列への置き換えにより10形は1936年までに全廃され、廃車後も残されていた29号車を1960年に動態復元し、改番したのが22号車となっています。
以降は各種イベントで本線上を走行しており、長崎電気軌道168号車や広島電鉄100形110号車といった動態復元電車の走りと言える存在です。
2014年6月からは博物館明治村の開村50周年と名鉄創業120周年を記念し、博物館明治村に貸し出され名電時代の姿に復元し特別展示されています。
博物館明治村での特別展示が終わるのは2020年3月なので、交通資料館のリニューアルオープン時には帰郷する事になります。
札幌に戻ってからも名電1号形の姿で展示されるのか、それとも札幌市電時代の蜜柑色に塗り直されるのか気になりますね。





そんな訳で展示室はもぬけの殻。
レールと枕木が22号車の帰りを待ち続けています。
この部屋もリニューアル後は様変わりしそうですね。





ご隠居が不在の展示室には九州鉄道記念館のポスターや・・・





京都鉄道博物館のポスターが貼られていました。


木製2軸電動客車(22)展示室を見た後は、大幅に建て替えられるだろう屋内展示場に向かいました。
次回に続きます。


※写真は全て2017年9月30日撮影


(文・写真:叡電デナ22@札幌市在住)


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最終更新日 : 2019-07-02

No title * by らんちゃん
デナさん、おはようございます😄

交通資料館、行きたいと思いつつ、行けずにいるうちに、10月を迎えてしまいました😢

続編も、楽しみにしています😄

No title * by 札学鉄研OB会
>らんちゃんさん

どうも、こんばんは。

休館前の訪問が叶わなかったというらんちゃんさんに朗報がありまして、札幌市交通局HPに「VR交通資料館」なるものがオープンしました。
これで休館中も360度の鑑賞に対応した画像により、資料館の擬似見学が可能です。
普段は公開する事が無い地下鉄1000形の車内についても見る事ができます。

リニューアル後は大幅に装いが変わるでしょうが、はたしてどのような姿になるのやら…。

(叡電デナ22@札幌市在住)

No title * by らんちゃん
デナさん、こんばんは😄

あら、朗報、もちろん全然知りませんでした👀教えて下さって、ありがとうございます😄
時間を作って、ゆっくり見たいと思います😄😄

No title * by 札学鉄研OB会
>らんちゃんさん

どうも、こんばんは。
私も見ましたが結構よく出来ているのでオススメです!

(叡電デナ22@札幌市在住)

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No title

デナさん、おはようございます😄

交通資料館、行きたいと思いつつ、行けずにいるうちに、10月を迎えてしまいました😢

続編も、楽しみにしています😄
2017-10-02-06:56 * らんちゃん [ 編集 * 投稿 ]

No title

>らんちゃんさん

どうも、こんばんは。

休館前の訪問が叶わなかったというらんちゃんさんに朗報がありまして、札幌市交通局HPに「VR交通資料館」なるものがオープンしました。
これで休館中も360度の鑑賞に対応した画像により、資料館の擬似見学が可能です。
普段は公開する事が無い地下鉄1000形の車内についても見る事ができます。

リニューアル後は大幅に装いが変わるでしょうが、はたしてどのような姿になるのやら…。

(叡電デナ22@札幌市在住)
2017-10-03-21:00 * 札学鉄研OB会 [ 編集 * 投稿 ]

No title

デナさん、こんばんは😄

あら、朗報、もちろん全然知りませんでした👀教えて下さって、ありがとうございます😄
時間を作って、ゆっくり見たいと思います😄😄
2017-10-03-23:46 * らんちゃん [ 編集 * 投稿 ]

No title

>らんちゃんさん

どうも、こんばんは。
私も見ましたが結構よく出来ているのでオススメです!

(叡電デナ22@札幌市在住)
2017-10-04-00:21 * 札学鉄研OB会 [ 編集 * 投稿 ]