2017年4月1日、遂に国鉄の分割民営化から30年が経過しました。
JR東日本、JR東海、JR西日本の本州3社に続き、三島会社の一つであるJR九州も去年秋に株式上場を実現しています。
これら4社の完全民営化が為された一方で、JR北海道とJR四国は赤字経営に悩まされ続けています。
特にJR北海道は自社線の約半分を「当社単独では維持することが困難な線区」と位置づけ、上下分離方式や運賃値上げ、バス転換などの対案を沿線自治体に示しています。
道内の鉄路が存廃の危機に瀕する中、麻生太郎副総理・財務相はJR東日本との合併の可能性を含め、JR北海道の支援について提言。
JR北海道の島田修社長も廃止前提で協議に持ち込む今までの姿勢を改め、「いっそう謙虚に地域の声を聞いていかなければならない」と述べています。
日高本線もDMV導入に向けて本格的に協議が始まり、線路の存続をめぐり各所が知恵を絞っている状況です。
そんな渦中の2017年3月17日、JR北海道は石北本線旭川~北見間で下り1本の臨時快速を運行すると発表しました。
既に当ブログに記した内容の繰り返しになりますが、臨時快速の運行日は2017年4月~9月の毎週金・土・日曜。
遠軽・北見の住民が札幌へビジネス(出張)・観光に行く際の便宜を図ったもので、特急ライラック35号と接続する事によって、特急オホーツク3号に比べて札幌の滞在時間を1時間延長できるという訳です。
しかも夜遅くの運行で列車交換が少ないものですから、特別快速きたみよりも所要時間が短く、特急にも匹敵する速さを誇ります。
2017年4月版の全国時刻表によると、臨時快速の列車番号は8585D。
運行ダイヤは下記の通りとなります。
【下り8585D 旭川始発・北見行き快速列車】
旭川20:00始発→当麻20:16発→上川20:50発→丸瀬布21:44発→遠軽22:06発→留辺蘂22:41発→東相内22:55発→西北見22:58発→北見23:04終着
JR北海道 臨時列車 国鉄 JR東海 JR東日本 JR西日本 JR九州 JR四国 JR貨物
JR北海道 臨時列車 国鉄 JR東海 JR東日本 JR西日本 JR九州 JR四国 JR貨物
臨時快速の運行スケジュールについては公式サイトにプレスリリースが掲載されたほか、運行区間の停車駅にもポスターが貼り出されています。
運転時刻欄の下を見てください。
プレスリリースには書かれていませんでしたが、ポスターには「1両編成全車自由席」と明記されていますね。
私は当初、車両不足・災害時に特急の代走として運行された臨時快速の事例から鑑みて、今回も一般気動車の2両編成で運行されるのではないかと予想していました。
ところが、実際に手配されたのはその半分の輸送力。
特急との接続利用に重きを置いているにしては、妙に心許ない気もしますが・・・。
しかし、乗り換え客がどれだけいるかは未知数。
JR北海道としてもまずは様子見という事なのでしょう。
一体どのような列車になるのか、気になって運行初日(4月1日)に旭川から北見まで通して乗ってきました。
この日は宗谷本線の智恵文駅・北星駅・日進駅を訪問した後、普通列車で旭川駅へ。
8585Dの発車時刻まで余裕があったので、平和通買物公園を北上した所にあるレトロな商店街「5・7小路ふらりーと」で晩飯をとる事に。
飲み屋と肩を並べる旭川ラーメンの老舗「蜂屋 五条創業店」に入ります。
注文したのは醤油ラーメンの脂濃い目。
普通の醤油ラーメンは薄茶色のスープですが、こちらは黒々とした焦がしラードがたっぷりと浮いています。
豚骨・アジ節でとったスープに、ラードの渋味が絶妙にマッチ。
ラーメンでスタミナを付けた後は旭川駅に引き返しました。
改札口の電光掲示板には「臨時快速 20:00 北見 1」との表示が。
こちらが今回乗車する石北本線8585Dですね。
輸送係駅員の案内放送によると、充当車両が1番線に入線するのは19:46頃との事。
5分前になったところで改札口の営業係駅員に「青春18きっぷ」を提示し、1番線へと上がりました。
案内どおり19:46、旭川運転所から回送されてきたキハ54系500番台が1番線に入線。
ホーム上では北海道クリーンシステムの清掃員が、サボを持って待機していました。
停車後、すぐさま側面サボが掲出されました。
サボのデザインは特別快速きたみに準じており、真ん中の表記を「臨時快速」に置き換えています。
根室本線芽室~幕別間の臨時普通列車みたいな行先表示なしのサボになるかも・・・と想像していただけに、オリジナルのサボが見られたのは嬉しいですね。
しかし、前面種別幕は何故か「普通」。
「快速」の幕を装備しているんだから使えば良いのに、と思ってしまいますね。
この日は最後まで「普通」表示のまま運転されました。
停車後2分でドアが開き、客扱いを開始。
充当車両は釧路運輸車両所に所属するキハ54-526でした。
旭川駅に釧路の車両が乗り入れるのは、留萌本線留萌~増毛間の営業最終日(2016年12月4日)以来でしょうか?
周囲には撮影に訪れた鉄道ファンが15人ほど。
キハ54-526はキハ183系からの撤去品である簡易リクライニングシートを装備しており、客室中間にはテーブルを置いた見合い式シートがあります。
クロスシートは何れも転換式ではありません。
キハ183系で使われていた頃は転換できた筈ですけどね。
特急ライラック35号の入線前、19:50時点での車内。
乗客は私を含め6名です。
奥のデッキに見えるのは運転士ですね。
せっかくなので特急ライラック35号が入線する6番線にも行きました。
789系基本番台は定刻通り19:55に入線。
やはりグリーン車・指定席車はガラガラのようで、ドアが開くと4両の自由席車から降りる客ばかりです。
ライラック35号から臨時快速への乗り換え時間はたったの5分間。
しかも6番線と1番線は大きく離れています。
私もシミュレーションのつもりで6番線から1番線への移動に臨んだ訳ですが、如何せん階下の踊り場で改札口に向かう客の人波にぶち当たるものですから結構大変。
早く移動しなきゃ乗り遅れる・・・と焦りを覚えました。
6番線向かいの5番線は20:06発の特急サロベツ3号が停車中なので、ライラック3号と臨時快速は対面乗り換えが不可能なんですよね。
せめて移動距離が短い4番線に8585Dが入線するなら、大分マシになるんでしょうけど。
慌しい乗り換え時間を経て、8585Dは定刻通り20:00に旭川駅を出発。
乗車人数を数えてみて唖然としました。
私を含めて何と僅か8人しか乗っていません・・・。
キハ54系500番台の座席定員は70人ですから、これはあまりにも少なすぎます。
しかもライラック35号からの乗り換え客は2人だけ。
メインターゲットにしていたはずの客層が全体の半数にも満たないなんて。
ちなみに大雑把な内訳は下記の通りです。
【乗り換え客 計2人】
ビジネス客の男性 2人
【非乗り換え客 計6人】
ビジネス客の男性 1人
若い女性 1人
部活帰りの男子高校生 1人
鉄道ファンの男性 私を含め2人
旅行者風だが鉄道ファンではなさそうな男性 1人
いざ運転してみたら、旭川駅からの乗客が多かったという事ですね。
客が思いのほか少ないのは、運行開始の半月前に告知したばかりで広く認知されるには至っていないという事でしょうか。
一応は道新などマスメディアでも運行スケジュールが報じられていますが、ある程度は早期に告知されていなければ観光の予定も立てにくいだろうな・・・と思いますよね。
そんな中、部活を終えた高校生が利用しているのは納得できますね。
夜20時台の下り定期列車は4533D(旭川20:46始発・上川行き普通列車)ただ1本で、その後は最終列車の4535D(旭川21:52始発・上川行き普通列車)を残すのみです。
学業との兼ね合いを考えると、少しでも早く帰宅できる臨時快速の運転は有難いでしょうね。
臨時快速は定期列車と同様のワンマン運転。
通学時間帯の石北本線遠軽~網走間で実施されているような車掌の補助乗務はありませんでした。
最後尾の乗務員室もご覧の通りの無人状態。
無人駅でも通常どおり前ドアしか開閉されません(窓口営業時間外の直営駅を含む)。
その一方、先頭の乗務員室には旭川支社の非現業社員(総合職)が添乗。
背広を着て白い腕章を付けた非現業社員は、停車駅ごとに乗降人数を数えてノリホに記入していました。
20:16、当麻駅に停車。
ライラック35号からの乗り換え客が1人下車したのみで、乗車する客は無し。
車内に7人の乗客を残した状態で当麻駅を後にしました。
20:41、安足間駅に運転停車。
当駅で特急オホーツク4号と交換する手筈ですが、前方から走ってくる気配がありません。
しかし、8585Dはオホーツク4号を待たず、定刻通り20:42に安足間駅を出発。
この時点でオホーツク4号が上川駅より遠くにいるらしい事を察しました。
そんなこんなで20:50、上川駅に到着。
上川駅は直営駅(社員配置駅)ですが、この時間帯は窓口営業時間外なので無人駅扱いとなります。
部活帰りの高校生が下車したのみで、乗車はありませんでした。
オホーツク4号が来るまでの間、当駅で待機する事に。
「一体いつまで待たされるんだろう」と思っていると20:55に運行情報が入ってきまして、何とオホーツク4号が鹿と衝突し車両点検中との事!
損傷の程度がよく分からず、「まさかウヤにならないだろうか・・・」と不安が頭をよぎりました。
上川駅での立ち往生は更に続き、オホーツク4号が上川駅に入線したのは定刻より31分遅れの21:08。
臨時快速は19分遅れの21:09に発車となりました。
とりあえずウヤにはならず、大きな遅れにもならなかったのでホッと一息。
上川の市街地を過ぎた8585Dは真っ暗な峠に挑む事になります。
ところが、出発から5分後の21:14に信号場も無い場所で一旦停車しました。
どうやらオホーツク4号が鹿と衝突した現場だったようです。
添乗の非現業社員も少し屈んだりして前方を確認。
現場を過ぎたら何事もなかったかのように暗闇の中を疾走します。
21:55、下白滝信号場にて上り8074レ(北見19:00始発・札幌貨物ターミナル行き貨物列車)と交換。
この時、定刻より26分遅れ。
運転停車していた8074レを横目に、8585Dは減速する事なく信号場を通過します。
丸瀬布駅には21分遅れの22:05に到着。
乗降ともに無くすぐさま発車となりました。
22:23、遠軽駅に入線。
こちらも直営駅(社員配置駅)ではありますが、窓口営業時間外で運転取扱いの輸送係駅員しかいないため無人駅扱いに。
前ドアが開くも乗降は一切なし。
一旦ドアが閉じられ、間髪入れずスイッチバックの作業が始まりました。
前後切替と共に交代の運転士が乗り込みました。
引き継ぎが終わると前任の運転士は下車。
非現業社員は引き続き添乗します。
定刻より21分遅れの22:27、遠軽駅を出発しました。
23:02、留辺蘂駅に停車。
ここで旭川駅からのビジネス客が1人下車。
乗車は無く23:03に発車しました。
8585Dは北見市内のベッドタウンに足を踏み入れていきます。
23:16、東相内駅に停車。
平日朝ラッシュ時なら北見工業高校の生徒で賑わう当駅ですが、深夜の臨時快速は乗る客も降りる客もなし。
22分遅れの23:20に発車しました。
23:20、西北見駅に停車。
この駅もベッドタウンのど真ん中で通勤通学利用が多いですが、今回は乗降ともにゼロ。
すぐの発車となりました。
いよいよ次は終着・北見。
5人の客を乗せ、臨時快速は地下トンネルをひた走ります。
定刻より21分遅れの23:25、北見駅に到着。
北見発の最終列車は上り4676D(網走19:41始発・北見21:03発・留辺蘂行き普通列車)と下り4677D(北見21:28始発・網走行き普通列車)です。
普段の23時台ならとっくに駅舎が閉鎖されている訳で、こんな夜更けに北見駅で下車するのは貴重な体験ですね。
コンコースは見事に静まり返っていました。
駅前ロータリーに停まるタクシーもありません。
この時間帯の北見市内は路線バスが1日の営業を終えており、臨時快速からの乗り換えは不可能です。
タクシーは電話で呼べば来るでしょうけど、運賃が割高になってしまいますよね。
そう考えると、臨時快速の利用は駅の徒歩圏内に住む人でなければ厳しい訳で、実際の利用客がやたらと少なかったのも仕方の無い事なのかも知れません。
二次交通との連携が効かない点こそが8585Dの弱点であるといえるでしょうね。
今年9月まで運行される予定の8585D。
はたして乗客は増えるのか、大変気掛かりですね。
ちなみに北見市内のネカフェで一泊し、特別快速きたみと普通列車の乗り継ぎで札幌に帰ってきたのですが、8585Dとして走ったキハ54-526が特別快速きたみに充当されていました。
特別快速きたみは2連での運行。
キハ54-526の相方は旭川運転所のキハ54-503でした。
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最終更新日 : 2019-07-02