タタールのくにびき -蝦夷前鉄道趣味日誌-

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2017-02-20 (Mon) 00:06

自治体が日高本線の復旧断念、しかしDMV導入を検討



高波により線路が土砂流出に遭った2015年1月以降、鵡川~様似間の不通が続く日高本線。
復旧費用は26億円に上るとされ、JR北海道は早くから「当社単独での復旧は不可能」と表明していました。
当該区間において代替バスが運行される中、沿線自治体はJR北海道に対して鉄路の復旧を訴え続けてきました。
日高本線の不通による地域への影響は大きく、襟裳岬のあるえりも町や様似町では観光客の減少やそれに伴う民宿の廃業など、更なる衰退に陥っているようです。
沿線住民も通学や通院などに不便を強いられていると話しています。
そんな中、2016年8月に相次いで北海道に上陸した台風は道内各地の鉄路に大打撃を与え、日高本線も被害が拡大し復旧費用が86億円に急増。
JR北海道は2016年12月、遂に日高本線の全線復旧を断念しました。
沿線自治体からは反発があり、道の高橋はるみ知事も「JRの方針は極めて残念」とコメントしています。
しかし、自治体の中には諦めムードも漂っており、昨夜にTVニュースを見ていたら「沿線自治体が復旧を断念した」と報じられていました。
政府がJR北海道の支援に向けて議論を進める中、第2の名松線になるかも・・・と淡い期待を寄せていただけに、残念な気持ちになったものです。
ところが、今朝の道新を見ると沿線自治体は全線復旧こそ断念するものの、まだ泣き寝入りするつもりはない事が分かりました。
下記に記事を抜粋しましょう。
JR北海道 JR東海 名松線 阿佐海岸鉄道 JR四国 JR九州 高千穂線
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日高線DMV導入検討 沿線7町長 被災区間の復旧断念

 【浦河】高波被害で2015年1月から不通が続くJR日高線鵡川-様似間(116㌔)について、日高管内の7町長は18日、被害が大きかった一部区間の復旧を断念した上で、鉄路と道路を走れるデュアル・モード・ビークル(DMV)の導入によって、残る区間を存続させることを視野に検討を始めることで合意した。

 JR北海道の西野史尚副社長が18日、日高管内浦河町で開かれた日高線沿線自治体協議会の会合で、鵡川-様似間を廃止しバス転換する方針を伝達。これを受け、7町長が開いた会議で、同管内新ひだか町の酒井芳秀町長がDMV導入構想を提案した。7町はDMVなど代替交通機関のあり方を調査、研究する新しい組織を近く設置する。
 町長の中には「昨夏の台風で波にさらわれた鉄橋を直すのは難しい」などの意見があり、全面復旧は難しいとの結論に至った。一方、DMVを導入した場合、複数箇所で線路下の土砂が流出した豊郷(同管内日高町)-大狩部(同管内新冠町)間を含む一部区間以外は存続させる方針で一致した。DMV構想では、復旧を断念した区間は並行する国道などを走ることになる。
 酒井町長は会議終了後、記者団に対し「(一部区間の復旧断念で)災害復旧費を飛躍的に軽減できる。ディーゼル車両より軽いDMVなら線路の維持管理費も抑えられる」と述べ、導入のメリットを強調した。
 鵡川-様似間を巡っては、JRが昨年9月、年間13億4千万円の維持費負担か、鉄道施設を自治体が保有する「上下分離方式」への移行を提案したが、7町側は拒否。西野副社長は18日の沿線自治体協議会で「列車以上の便数を確保し、地域の交通を守る」としてバス転換に理解を求めた。
 7町長がDMV導入を検討することについて、JR広報部は「当社としては話を聞いていないので、コメントできない」と話している。

出典:北海道新聞 2017年2月19日(日)朝刊第1面
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ここにきてJR北海道が開発を断念したDMVを導入しようとの案が浮上してきました。
DMVはJR北海道が軌陸両用の旅客車両として、2000年より研究・開発を進めていた代物。
マイクロバス(日産シビリアン)をベースとした試作車両が完成したのは2004年の事でした。
その後は道内各地で実用化を前提とした走行試験・試験的営業運行が実施され、日高本線でも2004年12月~2005年3月に浦河~様似間で試運転が行われています
岳南鉄道・南阿蘇鉄道・天竜浜名湖鉄道といったローカル私鉄に貸し出されての試運転も展開されました。
しかし、石勝線のトンネル内特急脱線炎上事故が発生した2011年5月以降、事故や不祥事が多発した事を受け、JR北海道は2013年9月に「安全対策を優先する」として開発中止を表明。
この2年間に夕張市内への導入計画も持ち上がっていたのですが、それも白紙になってしまいました。
翌2014年9月には北海道新幹線への経営資源の集中も引き合いに出し、DMVの導入を断念するに至っています。

その一方、徳島県では阿佐海岸鉄道が2020年度までのDMV導入を目指しており、同社の阿佐東線全区間をDMV専用に転換する方針です。
徳島県も「実用化の目途が立った」とし、沿線自治体(徳島県・高知県など)・四国運輸局・JR四国による「阿佐東線DMV導入協議会」を立ち上げ、今月3日の会合を以ってDMV導入計画が正式に承認されました。
北海道から遠く離れた四国で、DMVが初の本格的な営業運転に就く事となりそうです。

日高管内の沿線7町は被災区間(豊郷~大狩部間)を含む日高門別~節婦・新冠間を道路走行区間とし、鵡川~日高門別間および節婦・新冠~様似間を鉄路走行区間とする方向で検討をしています。
線路が生きている区間を活用しつつ、116kmの長距離に渡ってDMVを運行しようという訳です。
これなら全面復旧は出来ずとも廃線を防ぐ事が出来ます
既に阿佐海岸鉄道でDMVの導入計画が始動していますし、技術的な面では十分に可能でしょう。
しかし道新はJRが実用化を断念している以上、希望が見出せる一方で課題もあるとしています。
沿線住民の間でも期待と不安が渦巻いているようです。

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日高線存続へ大工事回避 7町長DMV導入検討
JRは開発断念 先行き不透明

 JR日高線沿線の日高管内7町長が18日に被災区間の全面復旧を断念し、鉄路と道路の両方を走れるデュアル・モード・ビークル(DMV)に活路を求めることになった。廃線も、全面復旧のための大規模工事も回避しつつ、一部区間を道路走行にすることで鉄路をおおむね残す狙いだ。しかし、DMVの開発を進めていたJR北海道はすでに実用化を断念しており、急転直下の導入構想には課題が山積する。実現に向けた協議が進むのか、先行きは不透明だ。

 「DMVなら、それ自体が観光資源だし、夢がある。地方創生という面からもプラスだ」。18日、浦河町役場で開かれた7町長の会議後、新ひだか町の酒井芳秀町長は、力を込めた。
 沿線自治体は、昨年12月に開かれたJR北海道主催の説明会で島田修社長から廃線とバス転換の方針を伝えられた際に受け入れの可否に言及せず、この日も西野史尚副社長の説明には回答を保留。だが、その後の7町長の会議で一部廃線を受け入れる代わりに、代替交通の対策を初めて示した。
 日高線は一昨年の高波被害と昨夏の台風被害で運休期間が2年を超え、復旧費だけで計86億円に上る。復旧したとしてもJRが求める各町2億円弱の維持運行費負担は到底受け入れられず、「全線の災害復旧は難しい」(小竹国昭新冠町長)と断念に傾いた。
 一方で、7町はJRが説明資料に明記した「バス等への転換」という文言に着目。バス以外の代替交通機関を導入する余地もあるとし、DMV構想による日高線存続構想を打ち出した。
 被害が特に大きい日高門別駅から節婦駅か新冠駅までの二十数㌔は道路を走り、その他の区間は鉄路をそのまま走行することを想定。DMVはディーゼル車に比べ、車両代や燃料消費量を20~30%程度に抑えられ、道路を走ることで観光各所を臨機応変に結ぶこともできる。鉄路を存続させつつ復旧費などを削減し、地域活性化につながる“一石三鳥”の妙案にも映る。
 実際、日高線では2004年に様似-浦河間(16㌔)にDMVを走らせた経緯がある。酒井町長などによると、徳島県で実用化を目指す動きがあることに加え、道の鉄道ネットワーキングチーム(WT)が7日にまとめた報告書でもJRの増収策の一つに例示されたことから、DMV導入構想が急浮上した。
 しかし、実現は容易ではない。沿線自治体はDMVの導入をJRに求める考えだが、JRは安全投資を優先するため、14年を最後に試験走行を含む準備作業を中止。DMVは車両が軽く冬の走行に難があるほか、運転には鉄道とバスの二つの免許が必要なため1台に2人の運転手を確保しなければならないなど課題も多い。JR内には「開発は諦めて終わった話。バスの方が合理的」との空気が強い。
 平行線の議論を脱し、沿線住民が納得する公共交通を回復できるのか。沿線自治体とJR、道の3者の協議は新たな段階を迎える。

出典:北海道新聞 2017年2月19日(日)朝刊第2面 総合
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DMV来る?期待と懸念 日高線沿線7町構想
観光客呼べる/JRによる運行 困難

 JR北海道がバス転換方針を提案した日高線鵡川-様似間の存続に向けて、日高管内の沿線7町はデュアル・モード・ビークル(DMV)の運行検討という「秘策」を練り出した。地域住民からは期待が高まる一方、実現性を疑問視する声も出た。

 18日夕、浦河駅で代行バスを待っていた浦河高2年の武一未奈美さん(16)=日高管内新ひだか町=は「(DMVが実現すれば)便利だし、日高の自慢になる。観光客も集まりそう」と期待する。静内駅で代行バスから降りた静内高3年の吉田佑斗さん(18)=新ひだか町=は「速くなればありがたい。苫小牧まで乗り換えなしでいければ便利になると思う」と話した。
 新ひだか町の酒井芳秀町長らによると、DMV構想は、高波で大きな被害が出た同管内日高町から新冠町にかけての二十数㌔は国道を走行し、比較的被害の少ない新冠町より東は線路を走る。酒井町長は「列車に比べ運行コストが安く、貸し切りで沙流川沿いを走ったり、桜並木で有名な二十間道路まで乗ったまま行ける」と強調する。
 路線の存続を訴えてきた市民団体「JR日高線を守る会」代表幹事の村井直美さん(47)=新ひだか町=は「諦めずに存続を模索したことは喜ばしい」と評価している。ただ、DMVの運行には、定員が少ないことや、運行経費の負担のあり方など疑問点も多いといい、「今後、検討状況を住民に示してほしい」と強調した。
 沿線7町はDMV構想について「JRに経営してもらう」との方針だ。道の地域公共交通検討会議の委員を務める吉見宏・北大副学長は「JR北海道はDMVの開発を断念しており、JRによる運行は現実的ではない」と話す。一方で「DMVは技術的には、ほぼ完成している。自治体が中心となって、運行主体を設立する方法もある」と話している。

出典:北海道新聞 2017年2月19日(日)朝刊第36面 第2社会
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そういえば先日、晩飯時にたまたま視聴したTV番組で高千穂あまてらす鉄道が取り上げられていました。
同社は台風被害により2008年12月に廃止された高千穂鉄道高千穂線の線路・施設を引き継ぎ、将来的な鉄道事業の運営を目指している会社です。
現在は高千穂駅を起点に、日本で最も高い鉄道橋として有名な高千穂橋梁までスーパーカートを運行しています。
この取り組みが口コミで広く知られるようになり、2013年度に黒字化してからも乗客の増加が続いているのだそうです。
当面の目標は第一種鉄道事業者の指定を受け、日之影温泉駅まで鉄道を運行する事。
いずれは高千穂線を全面復旧し、南阿蘇鉄道の高森駅までDMVを運行したい考えです。
日高本線の存続もJR北海道に一任するよりは、新体制を樹立した方が望みがあるかも知れません。

あと、あまり話題に上りませんが、日高線運輸営業所の社員の方々(運転士・検修員・保線作業員など)は、不通が続く中でどのように勤務されているのでしょうか?
現状では苫小牧~鵡川間で列車の運行をしていますが、30kmほどしかありませんし間違いなく業務は大幅に減少している筈です。
やはり近接する他の現業機関(苫小牧運転所など)で臨時の業務に就いているのでしょうか。
静内駅や様似駅などでは駅員が引き続き業務を行っていますが、浦河駅は窓口営業時間の大幅な短縮が為されてしまいました。
日高本線を巡っては現業社員の雇用も気掛かりなものですね。


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※写真は2016年9月24日、苗穂工場一般公開にて撮影 工場内の空き地に放置され続けるDMV


(文・写真:叡電デナ22@札幌市在住)

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最終更新日 : 2019-07-02

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