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2016-07-07 (Thu) 23:11

2016/5東海旅行【4】 美濃町線の遺構、旧・名鉄美濃駅



15:02、定刻より13分遅れで美濃バス停に到着した岐阜バス中濃庁舎行き。
岐阜バスターミナルから1時間ほどバスに揺られ、ようやく目的地である旧・名鉄美濃駅に到着しました。
2005年4月を以って全廃となった岐阜県内の名鉄600V線(岐阜市内線・揖斐線・美濃町線)ですが、その頃は既に関市から美濃市内までの区間が残っていませんでした。
美濃町線新関~美濃間が廃止されたのは1999年4月の事で、その直後に美濃市が文化的観光資源とするべく美濃駅の駅舎・ホームを整備。
2005年2月には登録有形文化財となり、美濃市役所からの委託により旧名鉄美濃駅保存会の有志が施設の管理をしています。
なお、この保存会は2013年2月の「Q企画 のりものや」閉店に伴い一旦は活動休止となったようですが、ツイッターアカウントの開設時期からして少なくとも2015年3月には復活した模様です。

名鉄 名古屋鉄道 路面電車 札幌市電 札幌市交通局 JR北海道
名鉄 名古屋鉄道 路面電車 札幌市電 札幌市交通局 JR北海道


1911年2月、美濃電気軌道の上有知駅として開業した美濃駅。
美濃電気軌道は1930年8月に名古屋鉄道へ吸収合併され、上有知駅は1923年10月に新美濃町駅、1954年10月に美濃駅へと改称されております。
開業当初より建つ木造駅舎の真ん前には、岐阜バス岐阜美濃線の美濃バス停が置かれています。

名鉄 名古屋鉄道 路面電車 札幌市電 札幌市交通局 JR北海道
名鉄 名古屋鉄道 路面電車 札幌市電 札幌市交通局 JR北海道


駅構内の公開時間は4月~9月が9:00~17:00、10月~3月が9:00~16:30。
見学は無料で、閉館日は火曜・年末年始です。
待合室は天井が非常に高く、開業当時の華やかさを想起させます。

名鉄 名古屋鉄道 路面電車 札幌市電 札幌市交通局 JR北海道
名鉄 名古屋鉄道 路面電車 札幌市電 札幌市交通局 JR北海道


待合室内に置かれたダンボール電車が目を惹きます。
モ510形を象っており、紅白のツートンカラーや戸袋の丸窓も再現されています。





廃止前さながらに出札窓口や改札口も残されています。
有人改札の柵を通り過ぎると、頭端式ホームはすぐそこです。





改札口の真上に掲げられた、廃線当時の物と思しき時刻表。
美濃駅は美濃町線の末端だったため、発車時刻が掲載されている電車は岐阜方面のみ。
初電は5:47の徹明町行き、終電は21:53の徹明町行きで、1時間に1~4本が運行されていたようです。
ローカル線と言えども、列車本数はそこそこあったんですね。





改札口の正面に鎮座する、静態保存車のモ510形モ512とモ600形モ601。
徳田耕一さんの著書『名鉄の廃線を歩く 愛執の30路線徹底調査』(2001年/JTB刊)によると、これら2両は2000年11月より展示が開始されたそうです。





現役時代は2面2線だったという頭端式ホームですが、保存車両の兼ね合いにより現在は道路側に1本の線路が増設されています。
構内では岐阜の軌道線で使用された4両の車両が静態保存されています。





1両だけホームの床面に乗っかっているのはモ870形モ875
この車両は元々、札幌市電が1965年に2連6本を導入した連接車のA830形です。
D1040形、A820形の流れを汲んだヨーロピアンスタイルの電車で、斬新かつ機能的なデザインが評価され鉄道友の会より1966年に第6回ローレル賞を受賞しました。
その華々しさとは裏腹に、1970年前後の市電縮小に伴い活躍の場を狭めていき、1976年には連接車の運行自体が中止となってしまいます。
6本のうち3本は名鉄に譲渡され、モ870形として美濃町線に転用。
1本は1988年に廃車され、残る2本は更新工事やワンマン化改造等を受けつつ2005年4月の美濃町線廃止まで運行されました。
美濃駅に安置されている車両は残念ながらカットボディとなっており、まるまる2両の状態で現存していない事が悔やまれます。
札幌に凱旋してくれたらどんなに喜ばしかったものか・・・。
引退後1年間は解体されなかったそうですし、そこは札幌市交通事業振興公社が引き取って交通資料館に保存するべきだったと思いますね。





ちなみに、美濃駅舎の真向かいにあるタバコ屋の店名は、何の因果か「北海道屋」。
まるでA830形がこの地で余生を過ごす事が宿命付けられていたかのようです。





札幌市電A830形は物置として使われているようで、車内は関係者以外立ち入り禁止です。
ほか3両は何れも岐阜育ちであり、車内も公開されています。





1番線にはモ600形モ601
モ600形は1970年に6両が導入された美濃町線用車両で、こちらも1971年に第11回ローレル賞を受賞しています。
直流600V・直流1500Vの両方に対応した複電圧車両で、デビュー当初は赤い車体に白帯を入れていました。
また、当時は各地の路面電車でワンマン化が進められていましたが、モ600形は6両とも未対応のツーマン車。
美濃町線のワンマン運転開始に伴い1999年にモ606がワンマン化されましたが、残る5両は2000年に廃車されるまで車掌が乗務していました。





建築限界に配慮するべく、極限まで絞り込まれた車体前方。
細面の前面ゆえ、花巻電鉄のデ1~デ5や福島交通飯坂東線の各形式と並び、「馬面電車」と呼ばれています。
連結器を備えており、増結運転の便宜を考慮し前後に貫通扉を設けています。
オデコには方向幕窓がありますが現役時代に使用される事は一切無く、運行時は貫通扉に行先表示板を掲出していました。





軌道線の美濃町線に加え、鉄道線の各務原線にも乗り入れるため高床構造となっており、軌道線用の折りたたみ式ステップと鉄道線用の引き出しステップを装備しています。
乗降口は前後2ドアで、どちらも折戸となっています。
ちなみにツーマン運転でも、岐阜市内線では前降り後乗り方式を採っていました。





車内は非常に勿体無い事に、座席が全て撤去されております。
がらんどうの客室内には、2脚の木製ベンチが寂しく置かれているのみ。
路面電車車両ながら現役時代の座席は長距離輸送に配慮した転換式クロスシートで、1人掛けと2人掛けを組み合わせた配置でした。
網棚に往事の面影を感じる事ができます。
側面窓は一段下降式で、名鉄の軌道線車両としては初めて扇風機を採用しました。





路面電車らしさが漂う、運転台の背後に1枚だけ配置された乗務員室仕切り。
車掌側の通用口が若干広めにとられています。





全国的に珍しい、貫通扉に面して設置された運転台。
・・・と言いますか、マスコンハンドルと速度計・スイッチ類はもろに貫通扉にくっついています
速度計がマスコン・ブレーキ両方のハンドルよりも低く、運転しづらそうな構造です。
可能な限りスペースを活用しようとして、狭い中に無理矢理詰め込んでいますね。





仕切り窓から運転台を眺めるとこんな感じです。





客席の座席が全て撤去されている一方、個人的に嬉しかったのが車内放送装置が綺麗な形で残されている事。
この手の屋外保存車両ってマイクや受話器の類が撤去される傾向にあるものですから、こんな光景は案外貴重だと思います。
放送用マイクは209系やE217系などのJR型車両と同じタイプの物で、1990年代にマイクの交換をした事が窺えます。





乗務員室の左右にはドアスイッチと合図用電鈴、落とし窓、車掌弁を設置しています。
ドアスイッチは片側2箇所の乗降口を一括して開閉するタイプではなく、別々に操作するものです。





モ601の近くには美濃駅の駅名板が置かれています。
こうして眺めてみると臨場感がありますね。





こちらはモ510形モ512
大正時代の1926年に5両が製造され、美濃電気軌道のセミボ510形としてデビューしました。
5枚の窓が並んだ楕円形状の前面と、丸型の戸袋窓が特徴的な名鉄600V線きっての名車です。
乗降口は前後2ドアで、どちらも1枚引き戸となっています。





先のモ600形と同じく高床構造で連結器を有し、増結運転に対応してはいるものの非貫通構造となっており、2005年4月の軌道線廃止まで非ワンマン対応車のままでした。
美濃町線のみならず揖斐線でも運行され(どちらも岐阜市内線直通)、1967年より写真のような鮮やかな紅白塗装へ。
一旦は赤一色になったものの、再び紅白に戻されています。
類似車種のモ520形(1923年製/1988年引退)と共に岐阜の古豪として活躍を続け、最盛期には3両編成を組む事もあったモ510形。
1988年には鉄道友の会よりエバーグリーン賞を受賞し、80年近い現役生活の末に引退しました。





こちらも惜しい事にモ601同様、クロスシートが全て撤去されてしまっています。
しかし、窓周りや天井の作りに大正生まれの風格が感じられます。





乗務員室仕切り。
天井との間にはめ込まれた縁飾りも、戦前の車両らしい雰囲気です。
阪堺電気軌道のモ161形にも似たような縁飾りがありましたね。





配管が剥き出しの武骨な運転台。
メーターは圧力計だけで、速度計が無いため運転士は長年の勘を頼りにしていたそうです。





乗務員室の左右にはドアスイッチと合図用電鈴を配置しています。
こちらのドアスイッチも別々に開閉操作を行うタイプです。





運転席の背後にバッチリ残された車内放送装置。
マイクもモ601と同様の物です。





道路側に鎮座するのはモ590形モ593。
モ590形は美濃町線・岐阜市内線用として、1957年に5両が導入されました。
連結器は装備せず、先述の2両よりも路面電車らしい見た目をしています。
3ドア車体で前後ドアは折戸、中ドアは1枚引き戸です。
1983年に3両がワンマン化され、残る2両は同年に廃車となりました。





クリーム色と緑のツートンカラーは登場時の塗装で、全線廃止を目前とした2004年に復元されました。
2005年4月の廃線まで運転され、同形車のモ591・モ592は土佐電鉄へ譲渡。
モ593は地元の美濃駅で隠居生活に入り、2011年3月に隣家の火事に巻き込まれて延焼したものの、綺麗な姿に復元されて今なお健在です。





こちらの車内はロングシートが全て残されています。
座席モケットは基本的に藤色で、優先席は背もたれ部分が青色です。
壁の化粧板は濃い目のベージュ、天井は白です。





降車ボタンはランプの無い、旧式の物です。





ワンマン化改造されても車掌が乗務する場合を考えてか、中ドア横には合図用電鈴と放送用マイクの差し込み口が設置されています。
ご丁寧にマイク受けまで用意してありますね。
なお、車掌用のドアスイッチはありません。





乗務員室仕切り。
左手に古いタイプの運賃収受箱が付いています。





ワンマン機器が無ければ大変シンプルな運転台。
右側のワンマン設備はドアスイッチと車内放送装置が一まとめにされています。


美濃駅には1時間ほど滞在し、長良川鉄道を経由して名古屋市内へ向かいました。
次回に続きます。


※写真は全て2016年5月14日撮影


(文・写真:叡電デナ22@札幌市在住)

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最終更新日 : 2019-07-02

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