タタールのくにびき -蝦夷前鉄道趣味日誌-

現在、札学鉄研OB会ブログから筆者投稿の記事を移転中です

Top Page › 北海道 › 苗穂工場の一部施設を借用 JR貨物「苗穂車両所」について
2023-12-31 (Sun) 16:10

苗穂工場の一部施設を借用 JR貨物「苗穂車両所」について

苗穂車両所a01

石狩管内は札幌市東区北6条東13丁目にある、JR北海道の苗穂工場。
ここは車両の解体を伴う全般検査・重要部検査など大掛かりな製修工事を行なう車両工場です。
「製修」とは国鉄時代から使われている言葉で、「車両や同部品の解体・製作・艤装などの作業と、これらに付随する検査設備の運転操作及び器具・工具の整備」を意味します。

苗穂工場ではJR北海道のプロパー社員約300名(事務・技術管理・検修)、パートナーである札幌交通機械㈱の社員約300名(旋盤・鋳造・弱電部品・操車・荷役・動力など)が働いており、更に北海道クリーン・システム㈱札幌鉄道支店の警備員・清掃員が派遣されています。
これら請負業者はJR北海道の子会社という訳ですが、実は工場内にJR他社の職場が同居しているのです。
それはJR貨物北海道支社の現業機関である「苗穂車両所」です。


HD300形500番台 HD300-503 表札
苗穂車両所a04

苗穂車両所は1987年4月1日の分割民営化に伴い、苗穂工場から貨物関連の製修業務を切り離して発足しました。
実を言うと自前の施設は無く、JR北海道との賃貸契約により苗穂工場の一部施設を借りています。
苗穂車両所に限らず、JR貨物の車両所は国鉄からの承継債務を最小限に抑える都合から、旅客会社の施設を借りる箇所が多かったといいます。

以下は書籍『JR貨物5年の歩み』に収録された座談会「JR貨物はどのようにして生まれたか」の議事録です。
この中で「旅客会社からの借用」という形態の車両所に加え、旅客会社との受委託契約にも言及しています。
実は苗穂車両所も苗穂工場と受委託契約を結んでおり、JR北海道が所有する機関車の解体・艤装・塗装などは苗穂車両所が受託し、JR貨物の機関車から取り外したエンジン・電装品・空制弁などの製修工事は苗穂工場に委託しています。

*****************************************************************
金田 私は本社の車両局で客貨車の担当だったものですから、貨物プロジェクトに参加することになりました。貨物会社の輪郭がだんだんとハッキリしてきて、車両も持っていくことになり、貨物会社は工場を持たなくてはならなくなりました。ここで難しかったのが、ベルトコンベアのようにつながっている職場から、果して貨物部門だけをうまく抜いてくることができるのか、ということでした。新小岩、輪西など貨物の仕事が大部分というところなら問題はなかったんですが、そうでないところは『まだら』といいますか、承継債務を極力少なくする必要から、財産の承継を減らして、土地、建物、機械すべてが旅客会社からの借用という形態の車両所ができることになりました。将来、貨物会社にカネができたら直轄工場を自前でつくるんだという風に、最後は割り切って、貨物充当人員相当の業務と要員を貨物会社に持っていきました。
青井 しばらくはこれでやってみよう、という・・・。
金田 完全に委託に踏み切るところは踏み切る、そして自前でやるところはやる、という決断を何時かはつけないといけないと思います。
伊藤 駅の帰属も難しい作業でした。貨物だけの駅というのは少ないし、充当人員に見合うだけの帰属駅を持つということで、旅客の色が濃いところも持っていかなければなりませんでしたし、客貨分離駅を作ったところもあります。
岡田 しかし、受委託という考え方ができたからこそ、人員が1万2500人で収まったんじゃないかな。
田村 施設局は受委託をする前提で整理してくれたんですが、電気局には「受委託なしで、キャラバン隊を組み、自分たちだけで設備の面倒を見なさい」といわれまして・・・。施設・電気の保守エリアが異なることにより、アンバランスが生じてしまいました。
畠中 電気関係の仕事は資格がいりますから、業務の受委託は難しいんです。

《出典》
日本貨物鉄道株式会社(1992)『JR貨物5年の歩み』p.p.92~94
話者:代表取締役副社長 岡田晶久、取締役鉄道事業本部長 伊藤直彦、取締役運輸車両部長 畠中寛、取締役運輸車両部担当部長 金田典男、企画部担当部長 青井重幸、企画部次長 田村修二
*****************************************************************


JR北海道 国鉄 JR貨物 車両工場 車両基地 鉄道工場 鉄道博物館
苗穂車両所a02
日本貨物鉄道株式会社北海道支社苗穂車両所(2023)『苗穂車両所MAP』より引用

こちらは2023年9月9日開催の苗穂工場一般公開で配布された、JR貨物苗穂車両所のビラからの抜粋です。
苗穂車両所は道内で活躍するディーゼル機関車や蒸気機関車の検修を実施しています。
担当する検査の種類は以下の通りです。

【全般検査】
8年または100万km以内の周期で実施する定期検査です。
車両を全て解体し、車体および各種部品の総合的な製修工事を行ないます。

【重要部検査】
4年または50万km以内の周期で実施する定期検査です。
車両の一部を解体し、動力発生装置・走行装置・ブレーキ装置などの製修工事を行ないます。

【交番検査】
3ヶ月以内の周期で実施する定期検査です。
全般検査・重要部検査とは異なり距離による制約はなく、車両の解体も一切しません。
車体・台車・エンジン・連結器などの検修を行ないます。

【臨時検査】
車両の故障が発生した時に実施。
故障箇所に応じて必要な検修を行ないます。

苗穂工場との違いは交番検査を受け持っている点でしょう。
JR北海道は基本的に仕業検査・交番検査・機動検査を運転所・運輸所に振り分け、全般検査・重要部検査・臨時検査を工場・車両所に振り分けています。
JR貨物北海道支社も運転関係の現業機関として「札幌機関区」と「五稜郭機関区」を置いていますが、このうち札幌機関区の検修業務は仕業検査(3~10日ごとに実施)と機動検査(折り返し検修など)に限定。
五稜郭機関区は仕業検査・交番検査・機動検査を一通りこなしています。

なお、貨車の検修については室蘭市内の「輪西車両所」が受け持っています。


指揮命令系統図 職制 職名 管理科長 検修科長 総務助役 設備助役 検修助役
苗穂車両所組織図イメージa01

こちらは資料を基に作成した苗穂車両所の職制・組織イメージ図。
JR貨物の車両所は「管理科」と「検修科」の2部門による組織体制が基本だといいます。
このうち管理科は総務(庶務・経理)と設備管理・資材管理を担当。
検修科は各種検修業務を担当しています。


車両技術主任 車両技術係 車両係 検修員 事務員 事務主任 事務係
苗穂車両所a03
苗穂工場百年史編集委員会(2010)『百年のあゆみ 鉄輪を護り続けて一世紀』p.2より引用

こちらは苗穂工場平面図に着色し、JR貨物苗穂車両所が使用している建屋を示したものです。
水色の建屋は苗穂車両所が単独で借用しており、機関車検修場、第1検修整備室、第2検修整備室、第3検修整備室の合計4棟があります。

一方、ピンクに着色した1棟は苗穂工場の中枢に当たる「計画科事務所」。
JR北海道苗穂工場の計画5部門が執務する建屋で、この中に苗穂車両所の事務室が同居しています。


函館本線 千歳線 苗穂駅
苗穂車両所a05

苗穂車両所a06

ここからは苗穂車両所の風景を見ていきましょう。
正門の門柱には「苗穂工場」の表札と共に、一回り小さい「苗穂車両所」の表札が付いています。



苗穂車両所a07

正門の西側には緑とベージュのツートンカラーに塗られた建物があります。
こちらが先述した苗穂工場の中枢「計画科事務所」です。
館内には総務科・工程管理科・品質管理科・技術開発科・設備保全科の計画5部門と、JR貨物苗穂車両所の事務室が入っています。




苗穂車両所a08

計画科事務所の玄関でも「苗穂工場」と「苗穂車両所」の表札が仲良く並んでいます。



苗穂車両所a09

苗穂車両所の諸施設は鉄道技術館への通り道に集まっているため、開館日であれは気軽に観察できます。



苗穂車両所a10

苗穂車両所が借用する「機関車検修場」は苗穂工場のランドマーク。
1913年に竣工した巨大な赤レンガ建築です。
2023年で築110年を数えるほどになりました。



苗穂車両所a11

機関車検修場には3本の線路が伸びており、正面右から19番線、20番線、21番線の順に並んでいます。



苗穂車両所a12

外壁には「機関車検修場 JR貨物」との表札を掲げています。



苗穂車両所a14

苗穂車両所a15

毎年秋の一般公開では機関車検修場の中に入る事ができます。
ここでは機関車の解体・艤装を行なうため、機関車の持ち上げが可能な天井クレーンを備えています。
現在使用中の天井クレーンは北広島の中山機械㈱が1977年3月に製造した物で、最大40トンの重量を持ち上げられます。


SL冬の湿原号 臨時列車
苗穂車両所a13C11形171号機 C11-171 蒸気機関車
苗穂車両所a16
DE10形 除雪車 ラッセル車 DL
苗穂車両所a17

国鉄時代の「苗穂工場機関車職場」をルーツに持つ苗穂車両所。
JR北海道が所有するSLやラッセル車の解体・艤装、車体塗装なども受託しています。



苗穂車両所a18

苗穂車両所a19

機関車検修場では機関車の解体・艤装、台車・コロ軸の製修工事、ショットブラスト、塗装作業、資材の出納といった業務を実施しています。
このうち塗装については「前頭車塗装ブース」と「減速機塗装ブース」の2ヶ所に分かれて行なっています。
前頭車塗装ブースの表札には「検修科」の3文字も。
苗穂工場の生産部門は組立科・部品科・内燃機科の3部門に分かれていますが、苗穂車両所は検修科の1部門のみとなっています。



苗穂車両所a20

屋根回りの検修には高所作業車を使用します。



苗穂車両所a21

こちらは機関車検修場の北側にある資材庫。
荷役作業に使用するフォークリフトを配備しています。



苗穂車両所a39

資材庫の出入口には白石神社の社業繁栄御守を入れた神棚があります。
白石神社は札幌市白石区本通14丁目にある神社で、JR関係者を対象とした安全祈願も行なっています。



苗穂車両所a22

苗穂車両所a23

機関車検修場の南側にはコンクリート造りの増築部分があります。
この中にはJR貨物の台車検修場やコロ軸作業場、減速機塗装場などが入居しています。



苗穂車両所a25

一方、3棟ある検修整備室は機関車検修場の西側に建っています。
南から第1検修整備室、第2検修整備室、第3検修整備室の順に並びます。


DF200形900番台 DF200-901 試作車
苗穂車両所a26

これら検修整備室は主に交番検査を実施する際に使用しています。
先述したとおり交番検査は車両の解体をせずに実施する定期検査で、3ヶ月以内の周期で車体・台車・エンジン・連結器などの検修を行なっています。
鉄道技術館の開館中は窓越しに入庫中の機関車を眺める事ができます。



苗穂車両所a24

苗穂車両所a37

苗穂車両所a27

まずは南側の第1検修整備室。
国鉄時代の「機関車分室」が前身だといい、元々は機関車職場の業務を分担した建屋だったようです。
19番線と無番の線路が敷かれており、このうち19番線は東西に貫通して機関車検修場まで伸びています。



苗穂車両所a28

第1検修整備室の表札。



苗穂車両所a29

苗穂車両所a30

苗穂車両所a36

続いて真ん中の第2検修整備室。
国鉄時代の「第2運転整備室」をルーツに持つ建屋で、元は輸送職場が使用する入換機関車の検修に使っていたようです。
第2検修整備室には22番線・23番線の2本が敷かれており、どちらも室内に線路の終点を設けています。




苗穂車両所a31

第2検修整備室の表札。



苗穂車両所a32

苗穂車両所a33

苗穂車両所a38

最後に北側の第3検修整備室。
国鉄時代の「第1運転整備室」をルーツに持つ建屋で、こちらも元は入換機関車の検修に使っていたようです。
ここには24番線がダイレクトに乗り入れるほか、25番線から分岐する無番線路が敷かれています。



苗穂車両所a34

第3検修整備室の表札。



苗穂車両所a35

以上、JR貨物の苗穂車両所について書きました。
特に意識していませんでしたが、2023年のブログ執筆は苗穂に始まり苗穂に終わりましたね。
今年1年間に書いた苗穂関連の記事は当記事を含め16本に上りました。
来年も宜しくお願い致します。


《2023年に書いた苗穂関連の記事一覧》


※写真1・2枚目、11~20枚目は2023年9月9日、苗穂工場一般公開で撮影
※写真3~10枚目、21~23枚目、25~37枚目は2023年12月9日、北海道鉄道技術館の開館中に撮影
※写真24枚目は2023年12月23日、北海道鉄道技術館の開館中に撮影
スポンサーサイト



最終更新日 : 2023-12-31

Comment







管理者にだけ表示を許可