コロナ禍で3連連続中止となった一般公開ですが、その再開を待ちわびた人はさぞかし多かった事でしょう。
正門前には工場長をはじめ科長、担当助役ら管理職9名が整列し、次々と入場する見学者を出迎えました。
私は25番線に出現したキハ281-901を撮影した後、急ぎ足で部品科台車検修場前の「工場ツアー受付」に向かいました。
この工場ツアーは一般公開の定番イベントで、社員の誘導に従って入場規制区域を見て回る事が出来ます。
午前6回、午後2回の枠を設けており、所要時間は30分ほど。
何れの回も先着25名の定員制で、小学4年生未満の児童は参加できません。
たとえ保護者同伴であってもNGです!
JR北海道 国鉄 JR貨物 苗穂工場 苗穂車両所 苗穂運転所 苗穂駅 函館本線 千歳線
午前中の各回開始時間は①9:50~、②10:20~、③10:50~、④11:20~、⑤11:50~、⑥12:20~となっており、9:30の開場から参加を受け付けていました。
開場前の行列に並んだ時点で見学者は150名を数え、「これは参加できないかも・・・」と不安になりましたが、何とか無事に整理券を受け取れました。
参加するのは④11:20~の枠です。
この整理券を紛失すると、たちまち参加資格を失う事になるので要注意!!
参加申込を終えた時点で時計は9:40を指していました。
2時間近く待ち時間があるので、その間に組立科旅客車解艤装場の台車組込作業、岩見沢レールセンターの出張によるレール溶接作業などを観覧。
開いたシャッターから輪軸検修場の「車輪置場」を覗いたり、台車検修場内の通路に貼り出された資料を読んだりもしましたね。
そして11時を回る頃、工場ツアー受付前へと戻りました。
すると看板には「午前の回の受付けは終了しました」とのポップが付いていました。
これから参加しようという人達は、12:00から開始する午後の受付に望みを託すしかありません。
開始5分前までにチェックイン。
まずは受付担当の検修員に促されるまま、萌黄色のJRマークが付いたヘルメットを着用します。
検修員のヘルメットには識別線として黒帯が付きますが、見学者用のヘルメットは何も帯が付いていません。
ヘルメットと一緒に「工場ツアー参加票」も受け取りました。
ツアー中は参加票を首から下げる事になります。
書かれた番号は当然ながら受付時の整理券に紐付いています。
11:20、いよいよ4回目の見学ツアーが始まります。
ツアーガイドを務めるのは苗穂工場工程管理科の助役さん。
工程管理科は一般的な工場の「生産管理」に当たる部門で、入場する車両の検査計画および改造計画を所管しています。
責任者である科長を筆頭に約15名が所属しており、科内では以下の3グループに業務を分担しています。
【企画グループ】
各種工事量や工事の進捗状況を逐一把握し、全体の舵を取るグループです。
他に技術・技能不足による品質低下を防ぐため、若手社員を対象としたOJT・各種勉強会を定期的に行ない、技術継承の推進を図っています。
【工程グループ】
各運転所や本社運行管理部と連絡を取り合い、全般検査・重要部検査・改造など各種製修工事の工程調整を行なうグループです。
年間約400両の入出場車両を捌く事で、安定した運用の確保に努めています。
【修車グループ】
車両性能の維持および故障防止計画を担当するグループです。
本社および各運転所などと情報の共有化を図り、的確な分析を行なう事で各車両の特性を把握し、効果的な特別修繕工事、施策工事等の計画に当たっています。
また、万が一の車両故障にも柔軟に対応できるよう、日頃から準備に努めています。
今回ガイドを務めた助役さんの担務指定は不明ですが、工程管理科の所属という事はグループリーダーである「企画助役」「工程助役」「修車助役」の何れかだと思います。
助役用のヘルメットには2本の黒帯が付きます。
《ブログ内関連記事リンク》
まず助役さんが案内したのは受付の北隣にある、イビツな三角屋根の建物。
3本の線路が屋内へと延びていますが、出入口にはシャッターが下りています。
ここは品質管理科が所管する「旅客車検修整備室」です。
各種部品の修理を終えて組み立てた車両は、この中に入って機器が正しく付いているか、電気回路に不具合が無いか等をチェックする「落成検査」を受けます。
落成検査をパスした車両は構内南端の試運転線(1番線)で試運転を実施。
それから「本線試運転」を行ない、無事にクリアできれば晴れて出場となります。
旅客車検修整備室は3本の線路に合わせて、部屋を「第1旅客車整備室」「第2旅客車整備室」「第3旅客車整備室」に分けています。
線路自体も駅や操車場などのようにナンバリングがあり、第1旅客車整備室は「12番線」、第2旅客車整備室は「14番線」、第3旅客車整備室は「15番線」を敷いています。
なお、「13番線」については旅客車検修整備室の西側手前で途切れているため、屋内まで伸びてはいません。
基本的に落成検査は車両が静止した状態で実施します。
部品の動作確認をするため車両に通電すると、玄関頭上に設置した「加圧中」のランプが点灯します。
続いて助役さんが指差したのは、旅客車検修整備室の東向かいにある建屋。
シャッターの頭上に「安全第一」と大きく表記しています。
ここは組立科が所管する「旅客車解艤装場」で、入場後の第一段階である車両の解体と、一通り修理を終えた車体・部品を揃えての艤装を行なっています。
元通りに組み立てた車両が旅客車検修整備室に移り、出場前の落成検査を受けるという流れなんですね。
こちらはツアー前に撮影した台車組込作業の様子。
組立科は苗穂工場で一番の大所帯で、100名を越える検修員が所属しています。
故に苗穂工場に8つある科の中で唯一、科長を補佐しつつ各担当助役を束ねる「総括助役」を配置しています。
総括助役の配下には科内の安全衛生管理・労務管理・社員教育などを担当する「企画助役」、作業工程管理・要員管理などを担当する「工程助役」など複数名の助役がおり、各検修員のマネジメントに当たります。
車両の解体・艤装には巨大な天井クレーンを使います。
解体・艤装は必ず複数人で実施します。
作業の舵を取る「玉掛け作業責任者」は遠目でも見分けが付くよう、頭頂部に緑十字をでかでかと貼り付けた専用ヘルメットを着用。
識別線も他の検修員が黒帯なのに対し、玉掛け作業責任者は赤帯となっています。
《ブログ内関連記事リンク》
旅客車検修整備室、旅客車解艤装場について解説を受けた後は、ツアー受付の傍にある台車検修場へと足を踏み入れます。
台車検修場は部品科の所管です。
部品科は台車、輪軸、車軸軸受、駆動装置、空制弁、連結装置、主電動機などの検修に当たる部門です。
何れの部品も組立科で車両を解体した後、部品科に回されます。
なお、エンジンやコンバータの検修については専門部署の内燃機科が受け持っています。
建屋に入って左を見ると、1本の線路上に多数の車輪が並んでいます。
台車検修場は国鉄時代、客貨車職場(現:第3旅客車検修場)に増築して生まれた空間で、この線路は「8番線」に当たります。
8番線の終端には「台車検修調書・図面保管室」があり、台車の検修に関する各種資料を保管しています。
助役さんの先導に従い、我々見学者は一直線に伸びる通路を進みます。
台車検修場はJR北海道に所属する「ほぼ全形式」の台車を検修しています。
ほぼ・・・と言うのが意味深ですが、ディーゼル機関車の一部はJR貨物苗穂車両所に台車検修を委託しているからだそうです。
車両が線路を走行するために必要不可欠な部品なので、三重に渡って確認を行ない完璧な状態に整えます。
台車検修場をサッと眺めたら南側の構内踏切を横断します。
この線路が先述した試運転用の「1番線」ですね。
構内踏切の先にはバリケードがあるのですが、これを見学ツアーでは越えていきます。
いよいよツアー参加者しか立入を許されない区域に突入。
進む先には、これまた部品科が所管する「第1部品検修場」があります。
この中に入っていく訳ですが、実を言うと私は今回が初の入室という訳ではありません。
2017年11月25日に「いがいと知らないブレーキの仕組み」と題した講演会がありまして、その時に屋内の「空制弁試験室」を見学しているのです。
6年前の貴重な体験を懐かしみつつ第1部品検修場に入ります。
程なくして連結器が並んだ場所があり、そこでツアー団体は一旦停止しました。
すると助役さんが第1部品検修場について簡単に解説。
ここでは部品科において空気ブレーキの検修を担当する「空制班」、連結器や緩衝器の検修を担当する「連結装置検修班」が作業に当たっており、他にドアエンジンやスラックアジャスタ、推進軸などの修理も行なっています。
そして短時間ではありますが連結器の撮影タイムとなりました。
手前は「DECMO(デクモ)」の愛称を持つ新型気動車・H100形の連結器。
JR北海道の一般型気動車としては初の密着型連結器です。
デクモの奥にあるのはキハ201系、キハ261系7次車、721系、731系、733系、735系、785系、789系の合計7形式が共通で装備している密着連結器ですね。
その左隣にあるのはキハ281系、キハ283系の密着連結器。
振り子式2形式の手前にあるのはキハ261系1~6次車の密着連結器です。
右奥にはキハ40系、キハ54形、キハ150形、キハ183系で共通の密着自動連結器があります。
こちらはDF200形、DE10形、DE15形といったディーゼル機関車の密着自動連結器。
分割民営化以来、JR北海道とJR貨物は受委託契約を結んでいるため、貨物列車用のDF200形についても連結器やディーゼルエンジン等の部品検修を苗穂工場が引き受けています。
長くなったので今回はここまで。
※写真は全て2023年9月9日撮影
スポンサーサイト
最終更新日 : 2023-10-07