引き続き愛媛県は伊予郡松前町大字浜にある、伊予鉄道の松前(まさき)駅を取り上げましょう。
駅の大まかな歴史、駅舎の内外については既に書いたとおりです。
今回は駅構内の諸施設を見ていきましょう。
構内北部には県道214号線の踏切があります。
正式名称を「松前駅北踏切道」といい、キロ程は「7k907」です。
そんな踏切と接する1番ホームの北端には、上り線用の代用閉そく器があります。
メーカーは大同信号㈱で、CTCの故障などの事由により「指導通信式」を施行する際に使用します。
対象区間は松前~岡田間です。
一方、こちらは2番ホームの南端。
運転取扱業務 代用閉塞器 駅員
ここには下り線用の代用閉そく器を設置しています。
対象区間は松前~地蔵町間です。
伊予鉄道 JR四国 京王 JR北海道 松前線
構内踏切の南側では、本線から1本の留置線が分岐しています。
留置線は2番ホームの裏側に続いています。
この線路は元々、貨物側線として使われていたそうです。
伊予鉄は1956年8月15日に車扱貨物の営業を全面的に廃止しており、この時に松前駅でも貨物取扱いを終了しています。
残された貨物側線は保守用車の留置に使われているそうです。
構内南部には2棟の古びた小屋が建っています。
瓦屋根に下見張りの小屋は保線作業員の詰所です。
書籍『伊予鉄道百年史』の「業務組織の編成」を読む限り、伊予鉄道は発足当初から保線区を設けておらず、時期により「鉄道部保線課」「工務課保線係」といった部署が線路・土木構造物の管理をしていた事が窺えます。
2023年現在は施設部保線課が保線業務を担当しており、松前駅の詰所は近隣で軌道検査や軌道補修工事などを実施する際に使用しているようです。
詰所と隣り合うのは波トタン板を張った窓なしの小屋。
こちらは保線資材用の倉庫ですね。
保線詰所の裏手から相対式ホームを眺めた様子。
保線詰所の傍にある「松前駅南踏切道」から駅構内を眺めた様子。
2番ホームに停車した700系。
京王5000系の中古車です。
2番ホームを出発する700系。
駅舎の南側にはコンクリート造りの建屋があります。
ここは前回記事で少し触れた「松前変電所」です。
松前変電所は1976年3月25日、郡中線の架線に電力を供給する施設として開設されました。
なお、施設自体の建設工事は同年1月に完成していたそうです。
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51年1月、松前変電所の新設と古町変電所の整流器取り替えが完了した。
当時、郡中線の郡中港付近では、電圧がラッシュ時になると規定値を大幅に下回り、夜間は前照灯や室内灯が暗くなっていた。このため、松前駅構内に新しく変電所を設置、余戸変電所にあった予備の整流器をシリコンに改造して移設し、受電設備と所内設備を完備した。費用は2750万円。
また、この機会に郡中線の電車線電圧を600ボルトから750ボルトに昇圧したため、電圧降下はより少なくなるとともに、いつでも横河原線と並列運転が可能となり、変電所の故障があっても相互に助け合うことが出来、電源強化となった。
一方、古町変電所は、水銀整流器600キロワット2台をシリコン整流器750キロワット2台に取り替えするとともに、手動式だった機器制御を自動式に変更した。費用は4270万円。
《出典》
伊予鉄道株式会社(1987)『伊予鉄道百年史』p.641
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伊予鉄は1979年1月24日、変電所集中制御化工事を竣工。
これまで松前変電所の制御盤は駅員が操作していましたが、集中制御化によって伊予鉄ターミナルビル地下監視室で一括制御する体制に変わりました。
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当社全変電所の監視・制御をターミナルビル地下監視室の中央制御所で一括して行う集中制御工事が53年末に完了した。
それまで変電所は古町変電所に保安要員を配置して常時監視するとともに各変電所の保安管理をしていたが、集中制御方式によって、ビルの常時監視者が各変電所の常時監視を兼務することになり、保守要員の省力化となった。また、松前駅、牛渕団地前駅には松前変電所、牛渕変電所の遠方監視制御盤があり、駅務員に操作依頼をしていたが、これも中央制御所からの操作に切替えしたため駅業務の簡素化も併せて図られることになった。
《出典》
伊予鉄道株式会社(1987)『伊予鉄道百年史』p.p.645,646
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2番ホームから松前変電所を眺めた様子。
保線詰所の裏手から松前変電所を眺めた様子。
なお、変電設備の保守管理は「施設部電気課」が担当しています。
乗降の完了を確認し、閉扉操作を行なう車掌。
1番ホームを出発する3000系。
京王3000系の中古車で、譲渡に当たり制御装置を界磁チョッパからVVVFインバータに換装しています。
※写真は全て2023年7月16日撮影
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最終更新日 : 2023-09-15