青森県は東津軽郡今別町大字大川平字清川にある、JR北海道の奥津軽いまべつ駅。
海峡線津軽今別駅を前身とし、北海道新幹線の駅として新たに駅舎・ホームを建設しました。
駅長を筆頭に助役、営業職駅員(営業主任・営業指導係・営業係)が配置され、JR北海道としては最南端の職場でもあります。
構内南側には保守用車の留置線群を併設しており、昇降棟と駅本屋を繋ぐ連絡通路から眺める事ができます。
この留置線群は正式名称を「奥津軽保守基地」といい、海峡線・北海道新幹線で使用する保守用車の一大拠点です。
JR北海道海峡線とJR東日本津軽線に挟まれていますが、構内は広々としています。
車両基地 JR北海道 国鉄 JR貨物 JR東日本 津軽海峡線 津軽線 東北新幹線
保守用車 保線機械 電気作業車 車両基地
こちらは本線と奥津軽保守基地を繋ぐ引込線。
海峡線の下り着発線を潜るように敷いています。
在来線・新幹線の各保守用車を収容するべく、引込線は狭軌(1,067mm)、広軌(1,435mm)の両方に対応した三線軌条です。
青函共用走行区間
三線軌条は保守基地の手前で狭軌・広軌を分割しています。
保守基地構内には合計8本の留置線を敷設。
このうち東側の2本は狭軌で、残る6本は広軌です。
こちらは狭軌仕様のTTB作業車。
トンネル内で架線張力を一定に保つTTB(トンネルテンションバランサ)の取付作業を行なう電気作業車です。
構内にはレールの積卸設備を備えており、レール運搬に使用するトロや軌道モーターカーも集まっています。
ちなみに奥津軽いまべつ駅の連絡通路では「はたらくくるま展」を開催中。
北海道新幹線の安全を守る保守用車を紹介しており、眼前に広がる保守基地を眺めながら解説板を読むと勉強になります。
こちらは「確認車」といい、夜間の保線作業(軌道補修工事・軌道改良工事など)を終えた後に運転されます。
作業後に線路を走り、線路上・線路脇に落とし物や危険物、施工不備が無いかチェックします。
要するに仕上がり状態検査を行なう車両という訳ですね。
検査中は時速90km/hで走行し、検知棒を使って落とし物等の有無を確認します。
なお、運転についてはJR北海道の直轄作業ではなく、北海道軌道施設工業㈱函館新幹線出張所機械グループに委託しています。
こちらは「ロングレール運搬車」。
1本当たり200m以上のロングレールを大量に運ぶ事ができます。
新幹線特例法により日中の工事が出来ないため、レール交換作業は夜間の保守間合時間(原則として午前1時~3時半頃)に実施します。
中にはスーパーロングレールという延長52.57kmのレールもありますが、流石に長すぎてロングレール運搬車を以ってしても運べません。
この場合は通常のロングレールを作業現場まで輸送し、交換の際に溶接を施しスーパーロングレールに仕立て上げます。
ちなみに北海道新幹線のレール溶接工事は、JFEテクノス㈱、㈱アクティス 函館営業所、国際技建㈱といった溶接業者が受注しています。
こちらはオーストリアの保線機械メーカー、プラッサー&トイラーが製造した「マルチプルタイタンパー」。
鉄道ファンには「マルタイ」の略称でお馴染みですが、保線関係者の間では「MTT」と略される事もあります。
JR北海道の会社線内で使用するマルタイは全て北海道軌道施設工業の所属。
同社は国鉄時代からの慣習で「軌道会社」と呼ばれる事が多く、1998年4月1日には道内全域の保線機械業務を受託しています。
日本国内では1960年代、国鉄施設局が主導した「軌道保守近代化」によって全国に配備されたマルタイ。
バラスト区間における道床つき固めを自動で行ない、歪んだ線路を元通りの状態に整えます。
こちらはスイスの保線機械メーカー、スペノが製造した「レール削正車」。
列車がレール上を走行すると、レールに細かい傷が付きます。
その傷を削って取り除くのがレール削正車で、乗り心地の良さ、騒音防止に貢献しています。
ただし現代の保線業務は「予防保全」が大原則なので、目立った傷が付く前に削正して傷を予防する事が多いですね。
このレール削正車も軌道会社が所有し、道内各地に勤務する機械技術員が運転します。
こちらはお馴染みの「軌道モーターカー」。
春~秋はトロ(保線用の運搬車)を連結し、レール等の重量物を運びます。
冬はラッセルやロータリー等の除雪装置を装着し、線路上の除雪に当たります。
軌道モーターカーは軌道会社の保線作業員が運転する事もあれば、JR北海道の保線社員が運転する事もあります。
こちらは「マルチメンテナンスワゴン」。
略して「MMW」といい、電車に電力を供給する架線の点検・修理に使用します。
架線はパンタグラフと直接触れる「トロリ線」、トロリ線がたわまないように吊り下げる「吊架線」、トロリ線と吊架線を繋ぐ「ハンガー」、柱と架線を接続する「碍子」などの部品で構成されています。
それらに異常が無いか点検するには地上5mの高さが必要なので、MMWは高所作業用のバケットを装備しています。
こちらは「レール探傷車」。
レールに傷や亀裂が無いか、超音波を使って検査する車両です。
発見した傷や亀裂は先述のレール削正車が取り除きます。
以上、7種類の保守用車を「はたらくくるま展」で紹介しています。
なお、同展の実施期間は「2020年10月14日から当面の間」との事。
訪問当時は2023年4月23日で、開催から2年半もの歳月が経ちましたが未だに開催中です。
場所は変わって津軽線の営林署踏切。
この踏切は奥津軽いまべつ駅の北にあり、津軽線と並行して海峡線や北海道新幹線の高架が伸びています。
当然ながら営林署踏切はJR東日本の管轄です。
青森駅起点のキロ程は「46K846M」を示しています。
踏切には国鉄時代の注意書きが残っています。
「盛岡鉄道管理局」の記名に時代を感じますね。
踏切そばの高架下には、一目で鉄道関係の職場と分かる施設が収まっています。
海峡線下り線の高架下には車庫があります。
北海道新幹線の高架下には2階建てコンクリート建築がすっぽり入ります。
玄関の表札には「函館新幹線工務所奥津軽管理室」「函館新幹線電気所奥津軽派出所」とあります。
これらは青函トンネル工務所今別管理室を前身とし、2015年11月2日に開設された現業機関です。
函館新幹線工務所奥津軽管理室は「所長代理」の担務指定を受けた助役1名を筆頭に、施設職(施設技術主任・施設技術係・施設係)、機械職(機械技術主任・機械技術係・機械係)が従事。
施設職は平たく言うと保線社員で、日中の軌道検査に加え、集めた検査データに基づく補修工事計画の策定、夜間に実施する外注工事の立会い・監督を担当しています。
機械職は青函トンネル内の各種機械設備(消火設備・避難誘導設備・列車火災検知装置・換気排煙設備など)に加え、奥津軽いまべつ駅に設置している自動券売機、自動改札機、冷暖房装置、昇降設備(エレベーター・エスカレーター)などの保守管理を担当しています。
函館新幹線電気所奥津軽派出所は「所長代理」の担務指定を受けた助役1名を筆頭に、電気職(電気技術主任・電気技術係・電気係)が従事。
電気設備の保守管理に当たり、部内では強電系(架線・変電所・電灯など)を受け持つ「電力グループ」、弱電系(信号設備・通信設備)を受け持つ「信通グループ」に分かれています。
何れも基本的には外注検査のデータを分析して不良設備を抽出し、その修理・取替工事を施工業者に発注して工事監督にも当たっています。
自分達で直轄作業を行なう事もあり、設備故障や災害が発生した時は現地へ向かい、応急措置を施す事もあります。
JR北海道のYouTube公式チャンネルでは、函館新幹線工務所奥津軽管理室による津軽トンネル内のロングレール交換を取り上げています。
工事監督の保線社員3名、請負業者の保線作業員60名によるレール交換を見る事ができます。
従前の青函トンネル工務所今別管理室からは約3.5kmも離れている奥津軽の各職場。
海峡線・北海道新幹線新青森~竜飛定点付近における施設・設備の保全に当たり、北海道と本州を結ぶ列車の安全を守り続けています。
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※写真は全て2023年4月23日撮影
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最終更新日 : 2023-05-02