引き続き宮城県は石巻市鋳銭場にある、JR東日本の石巻(いしのまき)駅を取り上げましょう。
駅の大まかな歴史は既に書いたとおりです。
今回からは駅舎の内外を見ていきましょう。
現在の駅舎は仙北軽便鉄道をルーツとする「汽車駅」に増築を施したものです。
正面玄関は南面に2ヶ所あり、このうち西側の玄関がコンコースの出入口となっています。
玄関アーチには「002」ことジェット・リンクの姿が!
石ノ森章太郎先生の超大作『サイボーグ009』に登場する「00ナンバーサイボーグ」の1人ですね。
両脚にジェットブースターを内蔵し、マッハ5で空中を自在に飛び回れます。
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玄関の右脇には紅一点の「003」、フランソワーズ・アルヌールも。
・・・厳密には敵対した0012も含めると、00ナンバーサイボーグに女性は2人いた訳ですが。
003の背後には「東北の駅百選選定駅」の札が掲出されていますね。
でもって見てください、このステンドグラス!
00ナンバーサイボーグは勢揃いだし、他にもゴレンジャー、ロボコン、さるとびエッちゃん、果ては石ノ森先生の自画像までも描かれています。
駅前広場のカラクリ時計も石ノ森作品のキャラクターが大集合。
てっぺんにいるのは石森プロダクション監修のご当地ヒーロー、シージェッター海斗ですね。
キャラデザの元ネタは石ノ森先生がラフを描き、結局はボツにした「鉄魔神シャドル」だそうな。
さて、一体どうして石巻駅が石ノ森作品に溢れているのかというと、石ノ森章太郎の原点が石巻にあったからです。
石ノ森先生は本名を「小野寺章太郎」といい、出身地である登米郡石森町(現:登米市中田町石森)に因んで「石ノ森」というペンネームを使いました。
少年時代は映画に熱中し、石巻市内の「岡田劇場」という映画館にしょっちゅう通いました。
石森町の実家から岡田劇場へは自転車で3時間を要したといいます。
それでも手間を惜しまず通い続け、数々の映画を観る中で培った知識や感性が漫画の執筆に活きたんですね。
その作風はSF、時代劇、学習漫画、ギャグ漫画、野球漫画など多岐に渡り「漫画の帝王」と評されるほどです。
やがて「漫画はあらゆるものを表現できる」として「萬画宣言」に踏み切り、自らを「萬画家」と称しました。
石ノ森先生も生前、石巻を「第二の故郷」だと話していたそうです。
1995年7月には石巻市長と対談し、そこで中心市街地に賑わいをもたらそうと、馴染み深い岡田劇場の所在地である中瀬にマンガミュージアムを建設する話が持ち上がりました。
そして石ノ森先生自らミュージアムの模型を作り、建設構想がより具体化していきます。
石ノ森先生は北上川に浮かぶ中瀬の形状が「ニューヨークのマンハッタンにそっくりだ」と言い、「マンガッタン」という愛称を付けました。
老若男女を問わず集まれる場を目指しましたが1998年1月28日、志半ばで石ノ森先生は亡くなってしまいました。
その遺志を地元の関係者達が受け継ぎ、2001年7月23日に「石ノ森萬画館」がオープン。
マンガ文化の情報発信地として様々なイベントが展開されています。
仙石線では2003年3月22日に「マンガッタンライナー」がデビュー。
205系3100番台の4両編成1本に石ノ森作品のキャラクターをラッピングし、運行開始に合わせて石巻駅の駅舎も“萬画チック”に改装しました。
石ノ森萬画館も石巻駅構内で毎週日曜日、マンガッタンライナーの乗客に対し乗車記念証明書を配布しています。
一方、石ノ森先生の原点である岡田劇場は残念ながら、東日本大震災で発生した北上川の激流に巻き込まれ、跡形も無くなってしまいました。
私も子供の頃は石巻に住んでいましたが、当時の中瀬は岡田劇場をはじめ年季の入った木造建築が集まっていたものです。
それが震災でほとんど崩壊し、昭和の残り香漂う風景が失われたのですから何とも悲しいですね・・・。
しかし岡田劇場の運営者だった㈲オカダプランニングは現存しており、各地で駐車場を使ったドライブインシアター、河川敷やキャンプ場等での野外上映会、学校体育館等でのホール上映会を開催し頑張っています。
駅舎西側にはテナントとして「マンガッタンカフェえき」という喫茶店が入居していました。
この喫茶店は市内の「珈琲工房いしかわ」が2003年1月、マンガッタンライナーの運行開始に合わせて駅と協力しオープンした支店です。
ラッチ内外の両方に出入口があり、発着する列車を眺めながらコーヒーを味わえる店として愛されてきました。
しかし東日本大震災で市街地の人口が減少し、石巻駅の利用客数も右肩下がりに。
更に2020年からは新型コロナウィルスの流行で観光客・帰省客が激減した事から、2022年8月31日を以って閉店しました。
「マンガッタンカフェえき」の看板には『サイボーグ009』の主人公・島村ジョーが描かれています。
撮影当時は閉店から1ヶ月が経とうとしていました。
あれから更に半年が経ちましたが、この看板は果たして残っているでしょうか?
お店の玄関前に立てた看板も石ノ森色全開でした。
205系3100番台 宮城野運輸区 仙台車両センター宮城野派出所
駅舎の西隣にはトヨタレンタリース宮城の石巻駅前店があります。
同店はJR駅レンタカー「トレン太くん」の業務を受託しています。
こちらは駅舎東側の様子。
ここにはかつて旅行センターの「びゅうプラザ石巻駅」が入居していました。
2018年5月11日の閉店後は東口玄関も閉鎖され、新たな店舗が入る気配は一向にありません。
ちなみに東口の隣には意味深な三角屋根がありますが、実はこの軒下が「汽車駅」時代の正面玄関でした。
びゅうプラザ跡にも石ノ森萬画のステンドグラスがあります。
仮面ライダーがカッコいいですね!
汽車駅時代の玄関跡の頭上には6つの窓があり、キャラクター達が顔を覗かせています。
旧玄関跡から駅舎東面にかけて展開されるマンガッタンライナーのPRコーナー。
軒下に編成イラストを掲出しています。
旧びゅうプラザ前はバスターミナルとなっており、宮城交通の子会社・ミヤコーバス石巻営業所が管理しています。
市内・女川・鮎川方面の路線バスに加え、新宿行きの高速バスが発着します。
こちらは駅前バスターミナルに置かれたミヤコーバス石巻駅前案内所。
駅舎から独立した平屋のコンクリート建築で、係員が常駐しバスの定期券・各種乗車券類を販売しています。
窓口営業時間は平日6:30~17:30、土曜8:00~17:00(うち昼休み12:00~13:00)、日祝8:30~15:30(うち昼休み12:00~12:45)です。
隣の小屋に描かれた「さるとびエッちゃん」は、石巻西高校美術部が2022年8月11日の「高校生街なかキャンバスプロジェクト」で描きました。
ミヤコーバス石巻駅前案内所の手前には地球儀を模した記念碑が1つ。
その頂点には慶長遣欧使節を乗せた帆船、サン・ファン・バウティスタ号の勇壮な姿もあります。
これは1993年の市政施行60周年を記念し、石巻市役所が翌1994年3月に建立したものです。
1993年8月には川開き祭りが70回目を数え、同年10月にはサン・ファン・バウティスタ号が復元されました。
そんな祝賀ムードに反し東北地方が記録的な冷害に襲われた年でもあります。
この記念碑には地球の永遠と人類の繁栄、そして限りない石巻発展の夢を託しました。
市政施行100周年を迎える未来の市民に向けたメッセージでもあるのです。
記念碑の傍には赤いトタン板の木造平屋もあります。
駅構内との境界を区切る金網フェンスの内側にあり、JR東日本の関連施設である事が窺えます。
とはいえ活用されている様子は感じられません。
国鉄時代は窓口や倉庫を設けた手小荷物扱所か、或いは駅構内で清掃や炊事など諸雑務に当たった労務職(駅務掛・駅務指導掛)の詰所だったのかなあ・・・と想像。
人道橋から各建築物の並びを捉えた様子。
長くなったので今回はここまで。
《ブログ内関連記事リンク》
石巻線石巻駅[2] 石ノ森章太郎の聖地「マンガッタン」の最寄り駅
※写真は全て2022年9月23日撮影
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最終更新日 : 2023-04-13