JR北海道の室蘭本線栗山~栗丘間。
夕張郡栗山町と岩見沢市栗沢町の境界には丘陵が聳え、そこに2本の鉄道トンネルが引かれています。
その名も「栗山トンネル」と「新栗山トンネル」。
栗山トンネルは北海道炭礦鉄道が建設したもので、1892年8月1日の鉄道開業に伴い供用を開始しました。
対して新栗山トンネルは1969年9月22日、輸送力増強を期した栗山~栗丘間の複線化に伴い貫通。
在来の栗山トンネルを下り線、新栗山トンネルを上り線に振り分けました。
JR北海道 国鉄 JR貨物 栗丘駅 栗山駅
開通から98年を数えようとした1990年4月23日、栗山トンネルで土砂崩れが発生しました。
この日、北海道上空を発達した低気圧が通過。
全道的に風雨が強まり、南西部や太平洋側は豪雨に見舞われました。
札幌管区気象台も胆振東・中部、日高中部、釧路、十勝、石狩南部、空知南部に大雨洪水警報を出し、注意を呼びかけています。
降水量は多い所で1時間に30mmを超え、降り始めから正午までの合計雨量は白老町で173mm、恵庭市島松で167mm、千歳市支笏湖畔で158mm、長沼町で144mmを記録。
各地で道路冠水、崖崩れなどが起こり、札幌市内でも白石区川下の4戸が床下浸水に遭うなどの被害が報告されました。
栗山トンネルの崩落も豪雨が招いたアクシデントだったのです。
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JR室蘭本線 下り線不通に 栗山
【栗山】23日午前10時頃ごろ、空知管内栗山町桜丘のJR室蘭本線で線路わきのがけが長さ15―20㍍にわたって土砂崩れを起こし、同日午後1時現在、下り線が不通となった。復旧の見通しはたっていない。JRは上り線を使って下り客の代行輸送をしている。23日の大雨の影響で、JR北海道は札沼線の石狩月形―新十津川間、室蘭本線の追分―岩見沢間、千歳線の島松―北広島間で安全のため時速を25㌔以下に落とす運転規制を行っている。
《出典》
『北海道新聞』1990年4月23日付 夕刊第9面
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その後、JR北海道は栗山トンネルの復旧を諦め、そのまま廃止の判断を下しました。
何しろ貨物列車が数多く行き交った国鉄時代に比べ、当該区間の列車本数は大幅に減っていたのです。
むしろ複線区間として運用し続けるには過剰と言わざるを得ず、復旧に掛かる費用を「余計な出費」だと考えたのでしょう。
以降は新栗山トンネルを上下線共用とし、室蘭本線栗山~栗沢間を単線化しています。
栗山トンネルは丘陵の崖に沿って築かれた覆道です。
崖側にはコンクリートの構造物が露出し、カマボコ型の明り取り窓をズラリと並べています。
国道234号の「テレホンパーキング」からだと、クルマの往来を避けて安全に眺める事ができます。
なお、他所のブログやSNSでトンネル内を撮影している人をよく見かけますが、現場には岩見沢保線所が「立入禁止」の看板を立てています。
崩落から30年以上が経った栗山トンネルですが、今なおJR北海道の管理物件となっていますので絶対に入り込まないように!
・・・それを抜きにしても長年、保全をしていないから状態が悪く危険でしょう。
外壁を見ただけでも亀裂が痛々しいですし。
栗山トンネルの沿線には黒塗りの祠が一つ。
中には小さなお地蔵様が鎮座しています。
どうやら昔、この辺りで交通事故があったようです。
祠は綺麗に手入れされ、誰かがお供えに来たばかりのようでした。
単線区間となって久しい栗山~栗沢間ですが、旧下り線の大部分は撤去を免れています。
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※写真は全て2021年11月13日撮影
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最終更新日 : 2023-03-15