空知管内は岩見沢市栗沢町北幸穂(旧:空知郡栗沢町北幸穂)にある「醤油屋本店・別館おとん食堂」。
国道234号線に面し、ひっきりなしに自動車が出入りする人気ラーメン店です。
室蘭本線栗沢駅から徒歩16分で辿り着きます。
敷地内の建物は「醤油屋本店」と「別館おとん食堂」の2棟に分かれています。
前者は暖簾こそ出しているものの、実際は閉鎖状態。
玄関引き戸には「お食事のお客様へ 隣りのおとん食堂へお願いします」との但し書きを提げています。
こちらが現在営業中の「別館おとん食堂」。
「醤油屋本店」に比べると、かなり大きめの建物です。
玄関前には古いポストを置き、店舗の外装に波トタン板や下見張りを施すなど、昭和レトロな雰囲気が漂っています。
手前に出っ張っているのが厨房ですね。
JR北海道 国鉄 JR貨物 室蘭本線 札幌市営地下鉄東西線 千歳線
厨房の窓には「創業昭和30年 初代小鳩らーめん」と書かれた暖簾を掲げています。
「小鳩らーめん」とは現店主(3代目)の祖父が、万字炭鉱で創業したラーメン屋の通称です。
万字炭鉱は北海道炭礦汽船㈱が経営した炭鉱の一つで、言わずもがな国鉄万字線の終点に存在し「万字炭山」とも呼ばれました。
当時、約5,000人が暮らしたという万字の炭鉱町。
小鳩食堂には多くの住民が通いつめ、連日大賑わいだったそうです。
しかし万字炭鉱はエネルギー革命によって経営難に陥り、1960年6月20日には北炭が美流渡炭鉱・赤間炭鉱(赤平)と共に経営分離する事を発表しました。
この合理化案に対し労働組合は反対闘争を起こしましたが、最終的には「存続のため止む無し」と栗沢町内2ヶ所の分社化を受け入れています。
そして1960年12月1日、承継法人として万字炭鉱㈱と美流渡炭鉱㈱の2社が発足。
独立採算を目指すも減炭の流れに逆らえず、炭鉱町は次第に寂れていきました。
そんな中、小鳩食堂も1961年に廃業し、僅か6年の営業に幕を下ろしました。
創業者の息子・安彦孝法さんは、小鳩食堂を切り盛りする父の姿を見て育ちました。
やがて大人になると札幌や岩見沢のラーメン屋で修行に明け暮れます。
そして2000年に独立し、栗沢で「醤油屋本店」を開業しました。
最初は醤油タレを作り飲食店に販売していたという孝法さんですが、周囲からは「ラーメンを作ってほしい」という要望が多く、父の助言を得て「小鳩らーめん」の味を復活させました。
孝法さんは「父の味を受け継ぐ」という思いから、自身が創業した店であっても「2代目店主」を自称しています。
昔懐かしい味わいを求めて遠方からも客が集まるようになり、早くも13席の平屋では手狭になってきました。
そこで2004年に広々とした「別館おとん食堂」を新築し、事実上の総本店として営業しています。
その後、新札幌駅直結の商業施設「サンピアザ」に支店をオープン。
現在は孝法さんの次女・安彦早希さんが3代目店主となり、栗沢総本店、サンピアザ店の2店舗を経営しています。
万字炭鉱 萬字炭鉱 萬字炭山 万字炭山 万字線 炭車 坑内軌道 石炭トロッコ
そんな「おとん食堂」の駐車場には、板と鉄骨で組んだ炭鉱トロッコが展示されています。
4両仲良く一列に並んでおり、万字炭鉱にルーツを持つお店のムードを演出しています。
静態保存車両
どうやら実際に使われていたトロッコらしく、台枠は大きく歪んで赤錆に塗れています。
積荷の石炭もタップリ。
トロッコの連結器は3連の鎖で繋ぐ「連環連結器」です。
展示用の線路は道床を作らず、地面に木マクラギを直接埋め込んでいます。
その上に敷かれたレールはかなり細く、採寸した訳ではありませんが9kgレールか12kgレールではないかと思います。
小樽運転所 車両基地 C62形蒸気機関車 梅小路機関区 JR西日本 梅小路運転区
「おとん食堂」の玄関にはシロクニのSL模型が鎮座。
かつて万字線や室蘭本線を走った運炭列車をイメージしており、石炭を積んだ貨車(石炭車)が連結されています。
前面のナンバープレートは「C62-2」と表示。
これは1957年2月~1972年2月の15年間、小樽築港機関区に所属したカマの車号ですね。
実車は道央で活躍した後、梅小路機関区に転属し京都~姫路間で「SL白鷺号」を牽引。
その後は梅小路蒸気機関車館を経て、JR西日本の京都鉄道博物館で動態保存されています。
木製シロクニの傍には国鉄の機関士用制帽(略帽)も飾ってあります。
この略帽はナッパ服と一緒に着用した物ですね。
帽章に動輪は付かず、日本政府のシンボルである五七桐紋をリースで囲んでいます。
これまで来店した有名人のサインも沢山。
瀬川瑛子さんは開業2年目の2001年10月25日にいらしていました。
我らが母校・札幌学院大学の星、上杉周大さん(通称:ウエスギ専務)も「素晴しき醤油屋」と讃えております。
2003年12月26日には舞の海さんも来店。
当時の写真が残っています。
更には布施明さんも!
そういえば20年くらい前に『ダウンタウンDX』の「視聴者は視た!」で、伊丹空港を歩いていたら「あの人見て!布施博がいる!」と勘違いされた話が出て笑った記憶がありますw
「おとん食堂」の看板メニューは醤油ラーメンと名代五目焼きそばです。
撮影当時は名代五目焼きそばを注文。
醤油ダレはラーメンと同じ物で、隠し味に水あめを加えています。
グツグツと煮えたぎるあんかけは始終アツアツの状態。
具沢山な一皿を甘辛く仕上げており、とても美味しくいただけました。
皆さんも駅めぐりの途中、「おとん食堂」で一息入れては如何でしょうか?
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※写真は全て2021年11月13日撮影
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最終更新日 : 2023-03-08