タタールのくにびき -蝦夷前鉄道趣味日誌-

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2023-02-12 (Sun) 16:22

飯坂線医王寺前駅 飯坂領主・佐藤一族の菩提寺

医王寺前駅a01

福島県は福島市飯坂町平野字道添にある、福島交通の医王寺前(いおうじまえ)駅。
その名の通り、真言宗豊山派に属する寺院「瑠璃光山医王寺」の最寄り駅です。
医王寺は826年に開基された由緒ある寺院で、薬師如来の別名である「医王」を寺号としています。
奥州藤原氏の一門にして飯坂の領主であった佐藤一族の菩提寺でもありました。
境内には源平合戦において源義経の身代わりとなり、壮絶な死を遂げた佐藤継信・忠信兄弟の墓があります。
この墓を1689年に訪れた松尾芭蕉は佐藤兄弟を偲び、『奥の細道』の中で「笈も太刀も五月に飾れ紙幟」という句を詠んでいます。

実は駅の東側にも佐藤一族にまつわる史跡があります。
人呼んで「五郎兵衛館跡」、大鳥城主・佐藤基治の重臣であった大越五郎兵衛義持の館跡です。
五郎兵衛は1189年夏、石那坂で源頼朝の大軍を迎え撃つも敗北。
程なくして大鳥城も落城し佐藤一族が滅ぶ事となりました。
五郎兵衛館の周辺は現在、細い道路が複雑に入り組む住宅街となり、県道3号線沿いにある「酒のやまや飯坂店」にはひっきりなしに買い物客が出入りします。


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医王寺前駅a02

医王寺前駅は1925年6月20日、飯坂線の前身に当たる飯坂電車㈱の「仏坂上駅」として開設されました。
既に開業していた笹谷~仏坂下(廃止済み)間に増設した新駅です。
旧駅名は仏坂と呼ばれる坂の上にある事に由来し、現地には「福島市飯坂町佛坂」という住所も残っています。
この仏坂は北側を東西に流れる小川(※正式な河川名)に向けて下っており、坂の下に仏坂下駅が置かれていました。

1926年11月20日には観光利用を意識してか、仏坂上駅が現駅名の「医王寺前駅」に改称しています。
特に観光客が殺到したのは2005年。
NHK大河ドラマ『義経』が放送されると、聖地巡礼をしようと多くの視聴者が乗降したそうです。



医王寺前駅a03

1927年10月1日、福島電気鉄道が飯坂電車を吸収合併しました。
これに伴い従来の福島電気鉄道線は「飯坂東線」、飯坂電車線は「飯坂線」に改称しています。
ただし飯坂線は飯坂東線の西方に所在する事から、便宜的に「飯坂西線」と呼ばれる事もありました。

福島電気鉄道は1962年7月12日、社名を「福島交通」に改称。
この頃は鉄軌道事業よりバス事業のウェイトが増し、県内随一のバス会社へと成長を遂げていました。
一方、路面電車の飯坂東線はモータリゼーションの台頭により苦境に立たされました。
年を追う毎に旅客・貨物利用は減少し、1971年4月12日に惜しくも全線廃止。
これで福島交通の鉄軌道事業は飯坂線の一路線だけとなったのです。

1975年8月20日に桜水駅が開設されると、同時に飯坂線の全区間を自動閉塞化。
医王寺前駅におけるタブレット閉塞の取扱いも終了しました。
現在は平日の朝に限り、桜水駅から出改札に当たる駅員が派遣されています。



医王寺前駅a04

医王寺前駅a06

駅構内南側には歩行者専用の踏切があります。
その名も「北原踏切」で、駅の出入口を兼ねています。



医王寺前駅a05

北原踏切の東側には自販機が置かれています。
こんな踏切脇のセブンティーンアイスなんて、他所で見た事ないですね。



医王寺前駅a29

北原踏切の警報音が鳴る中、乗務員室扉を開けて到着監視に臨む車掌。



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駅舎は木造モルタル造りの小屋で、窓口だけの簡素な造り。
こじんまりと2本の線路に挟まれています。



医王寺前駅a12

駅事務室の玄関は上り線の脇にあります。
配電盤には太陽光電池が付いており、ソーラー発電で室内灯などの電力を賄っているようです。



医王寺前駅a09

出札窓口の様子。
頭上に時刻表と運賃表を掲げています。
窓口営業時間は平日7:30~9:00で、一昔前は夕方も駅員が派遣されていたそうな。
土日祝は終日休業です。



医王寺前駅a10

駅舎の屋根はなだらかな片流れ。



医王寺前駅a11

駅舎の裏面には格子窓があります。



医王寺前駅a13

医王寺前駅a14

ホーム側から駅舎を眺めた様子。
階段前にICカードリーダーを設けています。



医王寺前駅a15

ホーム上には自動券売機が1台あります。



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医王寺前駅a17

医王寺前駅a25

医王寺前駅a18

1面2線の島式ホーム。
大部分が旅客上屋に覆われています。
ホーム全長は18m車3両分ほどで、幅員はかなり細め。
近くには福島北高校がありますが、登下校時間の混雑たるやいかばかりか。



医王寺前駅a21

旅客上屋の柱に設置された行先案内。
その下にはサイクルトレインに関する注意書きがあり「当駅より自転車の持ち込みはできません。ご利用は最寄駅の平野駅をご利用ください」と喚起しています。
それだけ医王寺前駅のホーム容量はカツカツという訳ですね。



医王寺前駅a19

飯坂温泉方は少し増床工事を施したらしく、ここだけ古いマクラギをホームの床材に転用しています。



医王寺前駅a20

島式ホームの福島方には・・・


運転取扱業務 乗務員 車掌 運転士
医王寺前駅a22

・・・「五郎兵衛踏切押しボタン」「東原・道間踏切押しボタン」「下り出発押しボタン」が一列に並んでいます。
これらは列車の出発時に車掌または運転士が取り扱うボタンです。
「踏切押しボタン」は踏切を作動させるボタンで、五郎兵衛踏切は駅の北(医王寺前~花水坂間)、東原踏切・道間踏切は駅の南(平野~医王寺前間)にあります。
「下り出発押しボタン」は車掌が下り出発信号機を青信号(出発現示)にするボタンですね。



医王寺前駅a23

医王寺前駅a24

「上り出発押しボタン」だけ飯坂温泉方に離しています。
しかしこれらのボタンを実際に使用する様子は見られませんでした。
何らかのトラブルで自動閉塞が使えなくなった時に扱う非常用設備なのでしょう。



医王寺前駅a28

ホームの福島方には行灯タイプの列車接近表示器があります。
表示パターンは「いいざかおんせん」と「さくらみず」の2パターンで、該当する列車が接近するとご覧の通り文字が点灯します。
飯坂温泉行きが接近すると「今度の電車は桜水を出ました」、福島行きが接近すると「今度の電車は飯坂温泉を出ました」という文章が出来上がります。


東急1000系 福島交通1000系 飯坂電車
医王寺前駅a30

上り線に停車した1000系1104F。



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ホーム上に設置された医王寺の案内板。



医王寺前駅a27

ホーム上の駅名標。




※写真は全て2022年7月16日撮影
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最終更新日 : 2023-02-19

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