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2022-11-26 (Sat) 08:13

花輪線荒屋新町駅[2] ラッチ内待合室を兼ねた風除室

荒屋新町駅a101

引き続き岩手県は八幡平市荒屋新町(旧:二戸郡安代町字荒屋新町)にある、JR東日本の荒屋新町(あらやしんまち)駅を取り上げましょう。
駅の大まかな歴史は既に取り上げたとおりで、花輪線の中核だった荒屋新町は多くの国鉄職員が暮らし「鉄道の町」と呼ばれていました。
今回は待合室から改札口を進み、ラッチ内に足を踏み入れましょう。



荒屋新町駅a102

改札口とプラットホームの間には、防寒のため風除室を設けています。
頭上は梁が剥き出しです。
荒屋は奥羽山脈系の山々に囲まれた立地で、冬の最低気温は-11℃にまで下がる事もあります。


JR東日本 国鉄 JR貨物 木造駅舎 待合室 風除室 改札口 JR北海道
荒屋新町駅a103

風除室はラッチ内の待合室を兼ねており、改札口を通過した客が待ち時間を過ごせるようにベンチを置いています。



荒屋新町駅a104

改札口のすぐ脇には国鉄時代の駅名標を掲げています。


JR東日本 国鉄 JR貨物 木造駅舎 待合室 風除室 駅事務室
荒屋新町駅a106

風除室の北側には駅事務室の出入口があります。
引き戸の窓には「業務中につき入室をご遠慮下さい」とのステッカーを貼っています。


JR東日本 国鉄 JR貨物 木造駅舎 待合室 風除室 駅事務室
荒屋新町駅a105
JR東日本 国鉄 JR貨物 木造駅舎 待合室 風除室 駅事務室
荒屋新町駅a107

そして運転事務室の出っ張った窓もあります。
この手の出窓は当務駅長(助役・予備助役・運転掛を含む)が駅構内を見渡せるように工夫した物で、国鉄時代はこの内側にタブレット閉塞器を設置するのが当たり前でした。
しかし荒屋新町駅の場合は運転事務室の手前に風除室を設けているため、出窓からでは壁が邪魔で見晴らしが悪くなってしまいます。
おそらく風除室は増築により生まれた空間で、元は他の駅と同様に運転事務室から駅構内を見渡せたのだろうと思います。
すると前回記事で触れた信号扱所と思しき2階部分も、1階運転事務室が無用の長物と化したために増築したという事なのでしょうか?



荒屋新町駅a127

運転事務室の傍には「作業完了釦(下)」と書かれた箱があります。
これは秋田県大館市の鉄道信号設備メーカー、㈱大館製作所が製造したボタンです。
詳細は不明ですが現在の荒屋新町駅に運転取扱要員がいない事から、おそらくは乗務員が取り扱う鎖錠スイッチの類ではないかと思われます。



荒屋新町駅a110

風除室から改札口方向を眺めた様子。



荒屋新町駅a108

風除室の北端にはダイヤル式のロッカーがあります。



荒屋新町駅a109

ロッカーには「盛岡運輸区 男性」「盛岡運輸区 女性」と書かれたステッカーを貼っています。
もしかして列車の夜間滞泊に伴い乗務員が宿泊する際に使うロッカーなのか・・・と思いましたが、よくよく考えると業務委託駅となった1999年12月4日から夜間滞泊はしていない筈なんですよね。

ならば日中はどうだろうと時刻表に目を通すと、1日2本だけ当駅折り返しの列車が存在するのです。
それは上り1924D(荒屋新町6:59始発・盛岡行き)と上り1930D(荒屋新町11:19始発・盛岡行き)。
1924Dは4両編成の下り1923D(盛岡5:00始発・大館行き)から切り離される2両を充当する列車で、6:14の到着から6:59の折り返し出発まで45分間も停車します。
一方、1930Dは下り1927D(盛岡9:31始発・荒屋新町行き)の折り返し列車で、11:19の出発まで34分も停車します。
風除室のロッカーは折り返し待ちの乗務間合いに使用するのかも知れません。



荒屋新町駅a111

荒屋新町駅a112

ホーム側から駅舎を眺めた様子。
風除室は5ヵ所の出入口を設けており、北端の1ヵ所はシャッター付きの業務用出入口となっています。



荒屋新町駅a113

駅舎2階は広々とした出窓を設けています。
如何にも信号扱所の風格。
国鉄時代はこの室内で輸送助役が運転調整と操車担当への作業指示を行ない、信号掛が構内監視とテコ扱いをしていたのだろうと想像します。



荒屋新町駅a114

その下には「滝不動桜松神社」との看板を掲げています。
桜松神社は荒屋新町駅から約3.7km南方にあります。
この神社は元々「滝不動」と呼ばれており、境内を滝が流れている事から水の神様・瀬織津姫(せおりつひめ)を祀っていました。
境内の滝は「不動の滝」と言い、古くは修験道の霊場として知られたのだそうです。



荒屋新町駅a130

「滝不動桜松神社」の看板の左隣には「安全第一」の標識。
かつて駅員達が操車・連結作業などの運転取扱業務に当たっていた名残ですね。



荒屋新町駅a115

更に左には特産の「安代りんどう」を描いた駅名板。



荒屋新町駅a116

改札口側には国鉄時代の駅名板が残っています。



荒屋新町駅a117

トイレは駅舎南側に設けています。
ラッチ内に入らないとトイレを利用できません。


キハ110系
荒屋新町駅a119
キハ110系
荒屋新町駅a118

単式ホーム1面1線と島式ホーム1面2線を組み合わせた、いわゆる「国鉄型配線」の駅構内。
駅舎側の単式ホームが1番線で、基本的には下り列車(鹿角花輪・大館方面)が発着します。
上り列車(大更・好摩・盛岡方面)も先述した折り返し2本のみ使用します。
ホーム全長は20m車5両分ほどです。



荒屋新町駅a121

荒屋新町駅a122

駅構内南側(好摩方)には両ホームを繋ぐ構内踏切があります。
遮断機はありませんがLEDランプ付きの警報機を設置しており、敷板も綺麗に敷き詰めています。


キハ110系
荒屋新町駅a123

構内踏切と島式ホームを結ぶ細い通路。
2番線と3番線に挟まれていますが、3番線側に柵は無いのでご注意下さい。



荒屋新町駅a124

バリアフリー化により車椅子対応のスロープを設けています。



荒屋新町駅a125

荒屋新町駅a120

島式ホームは3番線の大館方のみ切り欠いています。
有効長は2番線で5両分ほどですが、3番線は4両にも満たなさそうです。
両線とも上り列車(大更・好摩・盛岡方面)が発着しますが、使用頻度は2番線の方が高め。



荒屋新町駅a128

島式ホームの好摩寄りには・・・



荒屋新町駅a129

・・・風除室にあったボタンの片割れ、「作業完了釦(上)」を設置しています。



荒屋新町駅a126

島式ホーム南端から連絡通路を眺めた様子。


長くなったので今回はここまで。




※写真は全て2022年9月24日撮影
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最終更新日 : 2022-12-04

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