タタールのくにびき -蝦夷前鉄道趣味日誌-

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2022-10-19 (Wed) 23:41

北陸鉄道の保線を担う建設会社「コントラック」の軌陸バックホー

コマツスーパーライナー@北陸鉄道野々市工大前駅a01

2022年10月8日~10日の3連休は石川県・福井県へ旅行に行ってきました。
2日目の10月9日は朝一で北陸鉄道石川線に乗車。
目星を付けた5駅をじっくり撮影し、更に廃止区間(鶴来~加賀一の宮間)を徒歩で辿ってきました。

その途上、駅構内を撮影するべく野々市工大前駅に降り立つと、駅前広場のショベルカーに目を奪われました。
地面養生のために敷かれた鉄板に乗っかり、その四方にはバリケードが施されていました。



コマツスーパーライナー@北陸鉄道野々市工大前駅a03

コマツスーパーライナー@北陸鉄道野々市工大前駅a04

コマツスーパーライナー@北陸鉄道野々市工大前駅a05

足回りを見るとクローラーの前後に車輪が付いています。
このショベルカーは軌陸両用車で、線路上を走行できるようになっているのです。



コマツスーパーライナー@北陸鉄道野々市工大前駅a08

形式は「PC78UUT」。
日本を代表する建機メーカー・コマツ(小松製作所)が製造した軌陸バックホーです。
狭軌(1,067mm)と広軌(1,435mm)、2種類のゲージに対応しており、全国各地の保線の現場で活躍しています。
なお、コマツは軌陸バックホーに「スーパーライナー」という愛称を付けています。
スーパーライナーは他にもPC58UUTという形式がありますが、PC78UUTの方がやや大きめの機体です。



コマツスーパーライナー@北陸鉄道野々市工大前駅a07

アームの先端に付くアタッチメントを見てみましょう。
この時、装備していたのは「マクラギグリッパー」。
マクラギ交換工事に使うハサミで、マクラギを掴んでレール下から抜き出したり、逆にレール下へ挿入する事が出来ます。
ちなみに保線の世界では交換を「更換」と書く事が多いですね。

アタッチメントはマクラギグリッパー以外にも、4頭タイタンパー、8頭タイタンパー、旋回式スイッチタイタンパー、グラップリングバケット、ハンマーナイフモアーといった物があります。
各種タイタンパーは道床搗き固め、すなわち線路のバラストを搗いて固める作業に使用します。
グラップリングバケットは「掘る」「掴む」の両方の動作が可能で、地面を掘り起こしてマクラギを取り出したり、逆にマクラギを埋め込む際に使用します。
ハンマーナイフモアーは草刈り機で、のり面での草刈りを安全かつスムーズに実施できます。



コマツスーパーライナー@北陸鉄道野々市工大前駅a02

コマツスーパーライナー@北陸鉄道野々市工大前駅a06

以上の通り、PC78UUTは保線の現場で使用される軌陸バックホーです。
そして重機を投入した軌道補修工事は殆どの場合、一日の運行を終えた深夜帯から、早朝の始発前にかけて実施されます。
駅前広場には次の軌道補修工事まで留置していたのであって、広場の工事をするために駆り出された訳ではありません。



コマツスーパーライナー@北陸鉄道野々市工大前駅a09

コマツスーパーライナー@北陸鉄道野々市工大前駅a10

リアにはコマツのロゴステッカーに加え、「Contrack」との表記が為されています。
このContrackとは石川県河北郡津幡町に本社を構える㈱コントラックの事で、同社のロゴを車体に貼り付けているのです。
コントラックは1996年6月3日に設立された建設会社で、北陸鉄道から線路・土木構造物の補修工事を受注しています。
もちろん北陸鉄道にも保線区はありますが、同区の係員達が担当しているのは工事の計画と監督で、施工自体は外注能力に頼っています。
これは北陸鉄道に限った話ではなく、鉄道会社が大掛かりな保線作業を外部の建設会社に発注するのは最早当たり前の事です。
中にはJR東日本のように外注化がエスカレートし、保線区の組織体制を大幅に刷新したケースもあります。


北陸鉄道石川線 東急7000系 JR西日本 国鉄
北陸鉄道7000系@野々市工大前a01

北陸鉄道においても外注範囲は施工に留まらず、軌道検査や除雪作業もコントラックに委託しているそうです。
以下は2022年10月現在、ハローワークで取り扱っているコントラックの求人です。
募集職種は「線路検査業務」で、勤務地は白山市鶴来大国町の北陸鉄道㈱鉄道部内にあるコントラック鶴来詰所となっています。


【職種】
正社員(線路検査業務)


【業務内容】
地方鉄道の線路を検査します。簡単な補修作業も行います。

鉄道の線路の状態を日々検査しています。
具体的には、線路の温度等を測り、集計します。
検査の結果、修繕が必要と判断される箇所があれば報告し、工事等の依頼をかけます。軽微な物であれば、自分たちで修繕します。
作業員とは異なりますので、力仕事はありません。

但し、冬季間は降雪状況により、除雪作業が発生します。
また、年に数回夜勤があります。
転勤もありませんので、安心して長く働いて頂けます。
(トライアル雇用併用求人)


【試用期間】
あり(3か月)
試用期間中の労働条件:同条件


【応募資格】
普通自動車免許必須(AT限定可)
キャリア形成のため18歳~30歳の年齢制限有
その他資格・経験不問


【基本給】
180,000円~200,000円


【諸手当】
通勤手当20,000円(定額)


【昇給金額】
1月当たり5,000円~10,000円


【賞与】
年2回、計3ヶ月分


【就業時間】
8:00~17:00


【休日休暇】
年間休日日数:90日(日曜・その他)
年次有給休暇:10日(入社から6ヶ月経過後)


【待遇】
雇用保険,労災保険,健康保険,厚生年金,財形
確定拠出年金
退職金共済加入
65歳定年制、再雇用は75歳を上限


保線作業員 軌陸車 軌陸両用重機 コマツスーパーライナー
コマツスーパーライナー@北陸鉄道野々市工大前駅a11

ちなみにコントラックは北陸鉄道のみならず、JR西日本の軌道補修工事なども受注した実績があります。
2003年には福井駅の高架軌道新設工事、2006年には富山港線のLRT化工事にも携わりました。
社員数10名ほど(非正規の軌道工などは含めていない?)の小さな会社だと言いますが、引き受けてきた仕事は実に立派なものです。
未だ鉄道ファンの中には「保線は鉄道会社の保線区員がやるものだ」という認識の方が多いですが、こうした建設会社が日本の鉄道を支えているという事も知っていただきたいものです。


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※写真は全て2022年10月9日撮影
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最終更新日 : 2022-10-20

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