石狩管内は札幌市東区北6条東13丁目にある、JR北海道の苗穂工場。
敷地面積は204,000㎡(甲子園球場の5.2倍)、建築面積は62,899㎡、建物棟数は103棟を誇ります。
建物は同工場の象徴である赤レンガの機関車検修場をはじめ、計画科事務所、生産科事務所、旅客車解艤装場、旅客車検修整備室、制輪子作業場、鉄工作業場、立体倉庫、守衛室、社員食堂、北海道鉄道技術館など多種多様です。
2022年9月10日、鉄道技術館の開館中に苗穂工場を訪問すると、浴場と第1動力室の間に2棟のプレハブ小屋が置かれているのを発見。
JR北海道 国鉄 JR貨物 苗穂車両所 車両基地
このプレハブはJR北海道グループの建設会社、ジェイアール北海道エンジニアリング㈱が工事に供するため設置した「現場事務所」です。
外壁には社名の略称である「JRHE」をあしらったロゴを掲げています。
JRHEは2016年10月、㈱北海道ジェイアール・コンサルタンツと㈱北海道ジェイ・アール・ビルトの合併により発足しました。
1社で鉄道施設のコンサルタントと建設工事を兼業しており、土木構造物・建築物の設計、土木構造物の診断、建築工事の施工、既存建築物の維持管理などを担っています。
立入可能エリアからカメラをズームし、工事標識類に目を通します。
「労災保険関係成立票」に書かれた事業期間は2022年6月20日~2022年11月11日。
工事発注者はJR北海道の「札幌設備所長」となっています。
札幌設備所は国鉄時代の札幌建築区と札幌機械区をルーツに持つ現業機関で、本社鉄道事業本部の直轄エリア内にて建築物(駅舎・車庫・事務所・社宅等)と機械設備(自動券売機・自動改札機・昇降設備・空調・ボイラー・クレーン等)の維持管理を担当しています。
厚生労働省が制作した熱中症予防・コロナ感染防止の啓蒙ポスターも貼り出しています。
玄関ドアのステッカーには「苗穂工場職場39・32号屋根改良他 現場事務所」と明記しています。
此度の案件は既存施設の改良工事だという事が伺えます。
苗穂工場百年史編集委員会(2010)『百年のあゆみ 鉄輪を護り続けて一世紀』p.2より引用
しかし改良工事の対象である「職場39号」と「職場32号」がどの建物なのか、皆目見当がつきません。
おそらくは建物財産標に表記された番号だと思うのですが、私の手元にある資料には一切の記載が無いのです。
上に引用した図は2009年10月当時の苗穂工場平面図です。
建物ごとに「計画科事務室」「第3検修整備室」「第3旅客車検修場」などの名称こそ付していますが、何処にも「職場39号」「職場32号」などとは書かれていないですよね。
国鉄苗穂工場(1986)『工場あんない』1986年度版より引用
こちらは国鉄末期、1986年4月当時の苗穂工場平面図。
当時は新事業として旭川に「苗穂工場鉄工職場事業開発旭川派出所」という自動車整備工場を置いていたため、平面図には便宜的に「苗穂工場(本工場)」と書いてあります。
この平面図も建物に「本場事務所」「用品倉庫」「北海道鉄道学園工作科」などの名称を記す一方、「職場○○号」という体裁の表記は一切見られません。
苗穂工場構内配線略図
苗穂工場百年史編集委員会(2010)『百年のあゆみ 鉄輪を護り続けて一世紀』p.4より引用
更に遡って1959年3月当時の苗穂工場平面図。
これも「男子浴場」「診療所」「機関車職場」「工機職場」などの名称こそあれ、やはり「職場○○号」の表記は何処にも見当たりません。
キハ40系400番台 キハ40形400番台 札沼線 学園都市線
2枚とも2022年8月13日撮影
プレハブ周辺を見返すと、正門近くの給水塔が工事中ではありました。
四方を足場で取り囲んでいるのがお分かりいただけますね。
だけどJRは給水塔を「建築物」ではなく「機械設備」に分類している筈なので、こちらの工事にJRHEは関与していないのではないかと思います。
はたして「職場39号」「職場32号」は、一体どの建物を指しているのやら?
※写真は特記を除き2022年9月10日撮影
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最終更新日 : 2022-09-30