タタールのくにびき -蝦夷前鉄道趣味日誌-

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2022-07-10 (Sun) 17:23

国鉄一般色キハ40系の団臨「ふらの号」を布部駅で撮る

団体臨時列車ふらの号in布部駅a01

2016年8月31日、北海道に上陸した台風10号はJR線各所に甚大なダメージを与えました。
特に根室本線は路盤崩壊・橋梁流出などの被災箇所が20ヶ所に上り、全区間の約47%を占める富良野~音別間210.5kmが運休に追い込まれました。
同年9月2日、比較的ダメージの小さい池田~音別間が運行を再開。
安全点検により9月4日には芽室~池田間も復旧しましたが、富良野・新得方面の復旧工事は一筋縄ではいきません。
周辺道路も寸断されてしまい、十勝管内は未曾有の交通麻痺となりました。

2016年10月17日、富良野~東鹿越間が運行を再開。
年の瀬の12月22日には上落合~芽室間が復旧し、石勝線経由の都市間輸送網が復活。
特急・貨物列車の運行も元通りになりました。

残るは東鹿越~上落合間の復旧を待つのみですが、ここは何と17.4kmの区間に11ヶ所もの被災箇所が集中。
特にダメージが大きいのは、トンネルが4連続する落合~上落合間です。
トンネル内に流れ込んだ土砂や流木が堆積し、トンネル外においても斜面・のり面の崩壊や道床流出などが見られます。

JR北海道は全線復旧を模索したものの2018年6月、自社単独での復旧が困難だと判断し富良野~新得間の廃止方針を示しました。
存続を求める沿線自治体との議論は暫く平行線を辿りましたが、2022年1月28日にとうとう自治体側がバス転換に合意。
現在は代替交通手段の在り方について議論を重ねているようで、具体的な廃止時期は決まっていません。


JR北海道 国鉄 キハ40形1700番台 キハ40系1700番台 旭川運転所 釧路運輸車両所
団体臨時列車ふらの号

沿線自治体のバス転換合意から半年後、2022年7月2日には「キハ40系国鉄色で行く根室本線乗車体験」と題したツアーが開催されました。
主催者は富良野の公共交通のあり方を考える市民団体「富良野鉄道未来の会」です。
同会は「フラノ自然体験村コロポックル」の代表・松原良成さんが事務局長を務めています。

ツアー当日は富良野~東鹿越間で団体臨時列車「ふらの号」を2往復運転。
使用車両はキハ40系の2両編成で、2両とも「国鉄一般気動車標準色」の復刻塗装を纏っています。
この復刻塗装は2021年4月、JR北海道釧路支社が「釧路駅開業120周年」「釧路~白糠開通120周年」「花咲線全通100周年」「釧網線全通90周年」「石勝線開通40周年」を記念し施した物です。
朱色4号・クリーム4号のツートンカラーは国鉄が1959年、一般気動車の標準塗装として採用したデザイン。
なお、1977年デビューのキハ40系は経済性を重視し、朱色5号のワントーン(いわゆる首都圏色)に塗られたため、本当は国鉄一般気動車標準色と無縁な車両でした。
なので厳密に言うと2021年の塗装変更は“復刻”と言えず、前世代の塗装を再現したというのが実態なんですね。

臨時列車ふらの号のダイヤは以下の通りです。
一応は団臨ですが面白い事に各駅停車となっており、ツアー参加者は途中駅での乗降が可能でした。

【ふらの1号 東鹿越行き】
富良野9:10発→布部9:17着/9:31発→山部9:38着/9:44発→下金山9:53着/9:57発→金山10:06着/10:17発→東鹿越10:35着

【ふらの2号 山部行き】
東鹿越12:00発→金山12:13着/12:23発→下金山12:32着/12:35発→山部12:44着

【回送 富良野行き】
山部12:57発→富良野13:08着

【回送 山部行き】
富良野13:15発→山部13:28着

【ふらの3号 東鹿越行き】
山部13:35発→下金山13:44着/13:48発→金山13:57着/14:08発→東鹿越14:21着

【ふらの4号 富良野行き】
東鹿越14:30発→金山14:43着/15:00発→下金山15:07着発→山部15:16着発→布部15:22着/15:23発→富良野15:30着





当日はマイカーで「ふらの号」を追いかける事にしました。
朝6時に札幌の自宅を出発し、幾春別経由で国道452号線の曲がりくねった峠道に挑みます。
カーステレオで流すのはメキシコのシンガーソングライター、ホセ・アルフレド・ヒメネス(Jose Alfredo Jimenez)。
三段滝を過ぎたら右折して道道135号線に入り、引き続き峠のカーブを進んでいきます。



団体臨時列車ふらの号in布部駅a02

島ノ下から国道38号線・国道237号線を南下。
富良野市街でトイレ休憩を挟み、8:30に最初の目的地である布部駅に到着しました。
既に駐車場には「ふらの号」目当てに集まった鉄道ファンのクルマが並んでいます。


JR北海道 JR貨物 駅員 助役 根室本線
団体臨時列車ふらの号in布部駅a03

駅構内では富良野警察署の警察官が、管理駅である富良野駅から派遣されてきた駅員達と撮り鉄対策の事前打ち合わせをしていました。
駅員達は一目で輸送職と分かる作業服を着ており、ヘルメットには識別線として輸送職を意味する赤帯が付いています。
左の眼鏡をかけた駅員は赤帯2本なので輸送助役だと分かりますね。
右の若い輸送係は赤帯が1本だけです。
2人ともダイヤグラムとフライ旗、業務用スマホを携帯。
ズボンの裾に枝などが引っかからないよう、足首にゲートルを巻いています。

3人の会話に聞き耳を立てていると「auの電話が繋がらなくて困りましたね」「ネットやメールも全然ダメですね」「連絡どうします?」と話し合っていました。
そう、この日は早朝からKDDIの大規模通信障害が発生していたのです。
私もUQモバイルなので通信障害に悩まされるはめに。



団体臨時列車ふらの号in布部駅a04

打ち合わせが終わると警察官はプラットホームや駅前駐車場を巡回。
輸送助役は構内踏切に立ち止まり、業務用スマホの通信が復活しているかチェックしていました。



団体臨時列車ふらの号in布部駅a05

その後、輸送助役は線路づたいに駅構内を北へ移動。



団体臨時列車ふらの号in布部駅a06

ルール違反の撮り鉄がいないか巡回した後、線路脇に立ち止まって「ふらの号」の入線を待ち構えます。



団体臨時列車ふらの号in布部駅a07

9:17、群生する蕗の葉の向こうに「ふらの号」が姿を現しました。


キハ40-1759 キハ40-1766 国鉄一般気動車標準色 キハ40系
団体臨時列車ふらの号in布部駅a08
キハ40-1759 キハ40-1766 国鉄一般気動車標準色 キハ40系
団体臨時列車ふらの号in布部駅a09

駅構内北側のカーブを進み、プラットホームへと向かってきます。
線路沿いには鉄道ファンが集まり、三脚や脚立を駆使しつつヨンマル2連めがけてシャッターを切ります。
意外にも私のようにホーム上で待機する人はごく僅か、片手で数えるほどしかいませんでした。



団体臨時列車ふらの号in布部駅a10

貨物側線の転轍機標識を横切ります。
最後尾では車掌が落とし窓から顔を出して到着監視。


キハ40系 ツーマン運転 車掌 旭川車掌所
団体臨時列車ふらの号in布部駅a12

特にトラブルも起こらず、無事に「ふらの号」は布部駅に停車しました。



団体臨時列車ふらの号in布部駅a11

布部駅のホーム北端は下り坂になっており、輸送助役の立っている場所までなら下りて撮影する事が出来ました。



団体臨時列車ふらの号in布部駅a13

到着後、早々にツアーの予定表を取り出して確認する車掌達。
「ふらの号」は旭川車掌所の受け持ちで、普段はワンマン列車しか走らない区間に車掌2人で乗り組みました。
右の電子ホイッスルを持った車掌が、ドア操作や出発合図を担当する本務車掌。
左の潰した制帽を被った車掌が補助車掌で、業務用タブレット端末を携えていました。



団体臨時列車ふらの号in布部駅a16

ツアー客が列車を降りると、布部駅構内はすっかりお祭り騒ぎに。



団体臨時列車ふらの号in布部駅a14

今回のツアーは車内で演奏会を開いていたのですが、布部駅での停車中はピアニストとヴァイオリニストもホームに移動。
布部駅がTVドラマ『北の国から』第1話の舞台だった事に因み、さだまさしさん作曲の「北の国から 遥かなる大地より~螢のテーマ」を演奏しました。



団体臨時列車ふらの号in布部駅a15

演奏家達が着るシャツの背面には、ツートンカラーのヨンマル2連と沿線の野生動物が描かれています。



団体臨時列車ふらの号in布部駅a25

ふと大声が聞こえたので視線を移すと、構内踏切に何やら人だかりが出来ています。



団体臨時列車ふらの号in布部駅a26

実は『北の国から』第1話の冒頭シーンを即興劇で再現していたのです。
列車が来る前に富良野署のお巡りさんから「即興劇をやるそうですよ」と教えてもらっていたので、私は声が聞こえた瞬間に「即興劇が始まったんだな」と理解できました。
しかしツアー客以外には即興劇の予定自体が知らされていなかったので、事情をよく知らない鉄道ファンからは「ばかでかい声を上げる人がいてビックリした」などと言われていましたけど・・・。
五部刈り少年のジャージには「じゅん」と書いたワッペンを貼っていました。



団体臨時列車ふらの号in布部駅a17

即興劇を見た後は編成前方も撮影。



団体臨時列車ふらの号in布部駅a18

「ふらの号」の専用ヘッドマーク。
沿線のかなやま湖がカヌーの名所である事から、広々とした水面でリフティングを楽しむ人が描かれています。
列車愛称と運行区間を一緒に記載したヘッドマークって何気に珍しいね。



団体臨時列車ふらの号in布部駅a19

編成中間の乗務員室には赤い蝶ネクタイ、チャコールグレーのベストを着用した給仕さんがいました。
この給仕さんが「ふらの号」の車内販売を担当しており、室内にはワゴンも置かれていました。



団体臨時列車ふらの号in布部駅a23

布部駅の駅名標と国鉄一般気動車標準色。
車体の形状は全然違いますが、キハ22系が停まっているつもりで撮影しました。



団体臨時列車ふらの号in布部駅a21

布部駅の停車時間は14分。
そろそろ出発時刻が迫ってきました。



団体臨時列車ふらの号in布部駅a22

車掌さん達も編成最後尾に戻ってきました。



団体臨時列車ふらの号in布部駅a24

すると補助車掌はおもむろに業務用タブレット端末を掲げ、ホーム上の撮影をし始めました。
どうやら社内報に使う写真を撮っていたようです。



団体臨時列車ふらの号in布部駅a27

補助車掌は撮影を終えるとデッキ経由で乗務員室に戻りました。
それと入れ替わりに本務車掌が乗務員室扉を開け、ホームに降り立ちます。



団体臨時列車ふらの号in布部駅a28

本務車掌は行路表を取り出し、腕時計と見比べて発車時刻になった事を確認し称呼します。
「布部9:31発、発車時刻よし!」



団体臨時列車ふらの号in布部駅a29

「乗降よし!」
ツアー客が一人残らず乗車した事を確認すると、すかさず出発信号機の青信号(出発現示)を見て指差称呼します。
「出発現示よし!」



団体臨時列車ふらの号in布部駅a30

ドアスイッチに手を預けて閉扉操作。
ヨンマルは何故か助士側のドアスイッチが乗務員室扉から離れているので、閉扉の際はやや無理な姿勢になってしまいます。
国鉄時代の設計担当者が「どのように配置したら車掌が操作し易いか」を考慮しなかったのでしょうね。



団体臨時列車ふらの号in布部駅a31-1

ドアが閉まり、車側灯が全て消えると「車側灯滅灯よし!」と指差称呼。
ちなみに車側灯の一般的な読みは「しゃそくとう」ですが、JR北海道では何故か「しゃがわとう」と読みます。



団体臨時列車ふらの号in布部駅a32

車掌は乗務員室に乗り込んでから「発車!」と称呼しつつ車内ブザーを1打。
ヨンマルが動き出すと瞬時に後を振り向き、立会いの輸送助役と挙手敬礼を交わしました。



団体臨時列車ふらの号in布部駅a33

そして前方を振り返り、ホームを出るまで列車監視に当たります。


キハ40系 ツーマン運転 車掌 旭川車掌所
団体臨時列車ふらの号in布部駅a34

順調な足取りで出発した「ふらの号」。
次は山部駅に停まります。


私も「ふらの号」を追うべくクルマを転がしましたが、長くなったので今回はここまで。


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国鉄一般色キハ40系の団臨「ふらの号」を布部駅で撮る


※写真は全て2022年7月2日撮影
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最終更新日 : 2022-07-28

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