今回は撮影当日に留置されていた保守用車を見ていきましょう。
留置線には3両の保守用車が停まっていました。
まずは手前の車両から。
KSP2002E-LP
こちらはオーストリアの保線機械メーカー、プラッサー&トイラー(Plasser & Theurer)が製造したバラストレギュレーターです。
バラストレギュレーターは英語で書くと「Ballast Regulator」となるため、「BR」と略して呼ばれる事が多いですね。
軌道補修工事においてマルチプルタイタンパーとペアで線路を走行しながら、道床のバラスト整正及び強制的な沈下による軌道の安定化、マクラギ上のバラストの除去を行ないます。
目時方の前面は2枚窓で「くの字」に傾斜したフォルムです。
JR東日本 国鉄 青い森鉄道 東北本線 保線機械 保守用車 車両基地
車体側面には「KSP2002E-LP」と形式名を表記しています。
最高速度は80km/hです。
世間一般では未だに「保線作業は鉄道会社の保線区員がやっている」と思われがちですが、実際は1980年代以降に大半の鉄道会社で作業の外注化が進みました。
青い森鉄道の場合は工務系統の現業機関として「設備管理所」(本所:青森/派出:八戸)を設けています。
設備管理所は線路・土木構造物・建築物・機械設備・電気設備の状態検査と工事計画、外注工事の監督を担当。
このうち線路・土木構造物・建築物については修繕工事をJR東日本グループの建設会社・仙建工業㈱に発注しています。
仙建工業は1942年8月18日、戦時下の鉄道輸送力増強を使命とした「国策会社」として設立された会社です。
仙台に本社を置き、現在は仙台鉄道支店、仙台支店、盛岡支店、福島支店の4支店を配置。
青い森鉄道の保線に携わっているのは、盛岡支店所属の現業部門である青森土木出張所・青森出張所・野辺地出張所・八戸機械出張所の4ヶ所です。
中でも保守用車を使用した機械保線は八戸機械出張所の受け持ち。
機械出張所は国鉄の「機械軌道区」みたいな組織で、保守用車を運転する重機オペレーターが配置されています。
BRの車体側面には仙建工業のロゴマークに加え「S1107B」との管理番号を表記しています。
S1107Bの「S」は「Senken」、「B」は「Ballast Regulator」を意味します。
KSP2002E-LP S1107B
青森方の前面は斜め下に傾いた一枚窓。
KSP2002E-LP S1107B
バラストをかき集めるフロントプラウを装備しています。
S1106M 09-16
S1106M 09-16
続いて2両編成のマルチプルタイタンパーです。
英語で書くと「Multiple Tie Tamper」なので「MTT」と略して呼ばれる事が多いですね。
日本では「マルタイ」と呼ぶ事もしばしば。
S1106M 09-16
目時方の前面は2枚窓。
作業中の注意喚起用でしょうか、緑色のパトランプが付いています。
S1106M 09-16
連結部分はオープンデッキ。
2両の床の高さが違うため、渡り板も傾斜しています。
車体側面には「S1106M」と管理番号を表記しており、末尾の「M」は「Multiple Tie Tamper」を意味します。
S1106M 09-16
このマルタイも製造銘板によるとプラッサー&トイラー製で、形式名は「09-16」との事。
検修は仙台に本社を置く東洋機械㈱が担当しています。
東洋機械は東北地方で使われている保守用車約300両の検修・更新工事を専門とする会社で、仙建工業の協力会社が集う「みちのく軌道会」にも加盟しています。
S1106M 09-16
S1106M 09-16
S1106Mの青森方。
前面右下にも窓を設けて3枚窓としています。
S1106M 09-16
床下に装備した検測輪とタイピングユニット。
検測輪で軌道狂いをチェックし、タイピングユニットで道床のつき固めを行ないます。
床下機器には「青い森鉄道免税登録機器 東県局県税第9855号」と書かれた紙を貼っています。
東県局県税は「青森県東青地域県民局県税部」の略でしょうね。
保守用車の脇を通過する青い森701系。
S1107Bとキハ100系のツーショット。
青い森鉄道線は大湊線の直通列車も走ります。
こちらは八戸駅の北側、八戸市尻内町鴨ケ池にある仙建工業㈱盛岡支店の八戸機械出張所。
3階建てのプレハブですね。
ここに青い森鉄道の機械保線を担う重機オペレーター達が所属しているのです。
南面にマンションのような開放廊下を設けています。
玄関にはご覧の通り「八戸機械出張所」の表札を掲げています。
事務室は2階にあるとの事で、1階や3階は倉庫や点呼場などに使っているのでしょう。
ちなみに点呼場とは保線作業員が出勤直後にチームで「A点呼」を行なう部屋の事です。
A点呼が終わると現場に向かい、現場に着いたら「B点呼」、作業を終えて自所に戻ったら終礼点呼である「C点呼」を行ないます。
八戸機械出張所は青い森鉄道に加え、JR東日本八戸線の機械保線にも携わっています。
八戸駅西地区駐車場 東北新幹線 北海道新幹線
出張所の西側にはLiViT(JR東日本東北総合サービス㈱)八戸営業所が管理する月極駐車場があります。
仙建工業八戸機械出張所も社用車を駐車するため、LiViTの月極駐車場を利用しています。
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※写真は全て2022年5月1日撮影
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最終更新日 : 2022-05-18