タタールのくにびき -蝦夷前鉄道趣味日誌-

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2022-05-05 (Thu) 17:36

仙台駅の駅員達が開業した直営店「パスタハウストライアングル」

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宮城県は仙台市青葉区中央1丁目にある、JR東日本の仙台駅。
東北本線を所属線とし、東北新幹線、仙山線、仙石線が乗り入れています。
仙台は言わずもがな「独眼龍」の異名をとった大名、伊達政宗が自らの居城である「青葉城」を築いた街です。
青葉城に入居した政宗公は家臣達に対し、飢餓に備えるべく各々の屋敷に栗・梅・柿など実のなる木を植えたり、隣家との境に杉を植えるように奨めました。
こうして城下町には「屋敷林」と呼ばれる林が広がるようになり、仙台が「杜の都」と称される由来となりました。
残念ながら屋敷林は1945年の空襲で焼け野原と化しましたが、戦後の復興によって街路樹や公園の人工林が整備され、かたちを変えて「杜の都」の風格は継承されています。


JR東日本 国鉄 東北本線 仙石線 仙山線 JR北海道 JR貨物 飲食店
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仙台駅の現駅舎は1977年12月15日に落成した6代目で、地上4階・地下1階の鉄筋コンクリート建築です。
写真右奥に見えるのは「S-PAL仙台」という駅ビルですね。



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6代目駅舎の西口1階は2021年4月29日に「tekuteせんだい」としてリニューアルオープン。
「tekuteせんだい」はLivit(JR東日本東北総合サービス㈱)が運営する商業施設で、新規出店・既存店(郵便局含む)を合わせて19店舗が営業しています。
この中にお目当てのレストランがあります。
その名も「パスタハウストライアングル」。
「tekuteせんだい」のオープン前から仙台駅構内で営業しているイタリアンレストランです。



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「パスタハウストライアングル」で働く駅員達の記念写真
高橋敏男(1989)「おれたち小集団・QCサークル JR東日本仙台駅「海賊」」、
『運輸界』1989年4月号(中央書院)p.79より引用

実を言うとこのお店は国鉄末期、仙台駅の駅員達が新事業として立ち上げた「直営店」だったのです!
国鉄における直営店の営業が始まったのは1984年8月。
東京駅をはじめとする首都圏12駅で駅員がワゴンを引き、ジュースやコーラなどの飲料を販売した事に端を発します。
合理化によって生じた余剰人員の有効活用策でした。
それから全国各地の駅が“事業開発”を為そうと直営店を開業しており、その業態は売店、土産屋、食堂、喫茶店、蕎麦屋、居酒屋、書店、鉄道模型店、簡易宿泊所など様々でした。
駅によってはマイカー利用者をターゲットにした有料駐車場、コイン洗車場も営業していました。
直営店の開業は分割民営化後の1990年代初頭まで続きました。

比較的大規模な駅では複数の直営店を営業する事もあり、その場合は統括部門である「営業サービスセンター」を開設し、助役1名に「営業サービスセンター所長」の担務指定を行ないマネジメントをさせました。
営業サービスセンターは「営セ」と略して呼ばれる事もありました。
例えば1985年10月1日当時の根室本線帯広駅ですと、営業サービスセンターには助役(営セ所長)1名、助役(営セ副所長)3名、営業管理係2名、営業係8名の計14名が所属。
帯広駅構内で直営売店「しらかば帯広店」と有料駐車場、広尾線愛国駅で「しらかば愛国店」を営業していました。



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仙台駅の営業係が鉄道業界情報誌『運輸界』に寄稿した「パスタハウストライアングル」の記事
高橋敏男(1989)「おれたち小集団・QCサークル JR東日本仙台駅「海賊」」、
『運輸界』1989年4月号(中央書院)p.76より引用

全国各地に直営店の取り組みが広がる中、仙台駅の「パスタハウストライアングル」も1985年12月14日に開業しました。
店舗を立ち上げたのは仙台駅の駅員達が結成したサークル「海賊」です。
このサークルとは国鉄末期~JR初期に多く生まれた「小集団活動」の事ですね。
小集団活動ではCS推進や作業の効率化、安全推進運動、事業開発などに取り組みました。

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 グループ名の「海賊」の由来ですが、私たちの店トライアングルはスパゲッティ専門店です。スパゲッティといえば皆さんが知っているイタリアの代表的な料理です。イタリアは地中海に面しており、「世の中にある料理の知識を地中海の海賊のように盗みとってやろう」という意味を込めて命名しました。

《出典》
高橋敏男(1989)「おれたち小集団・QCサークル JR東日本仙台駅「海賊」」,『運輸界』1989年4月号(中央書院)p.76
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JR東日本仙台駅(1987)『仙台駅百年史』p.109より引用

上の写真は仙台駅の開業100周年を記念し、1987年4月にペデストリアンデッキで撮影された駅員達の集合写真です。
まだ分割民営化して間もない頃で大半の駅員が国鉄時代の制服を着用していますが、それに混じってコック服や赤いブレザー、茶色いエプロン、フォーマルベストと飲食系の服装の人達も参加していますね。
この人達は直営店のスタッフで、各々が所属する店舗のユニフォームを着ています。
ただし直営店勤務であっても身分上は仙台駅長の指揮管理下で働く「駅員」なので、こうして駅員を対象とした記念撮影に参加している訳です。

当時の職制に当てはめると、直営店で働く駅員達の職名は営業主任・営業指導係・営業係の3種類が該当するでしょう。
分割民営化当初にJR各社が共通で定めた職制では、営業係の職務内容を「旅客・貨物の取扱い及びこれらに附帯する業務」「構内営業に関する業務」「指定された者は輸送係の業務」「その他上長の指示する業務」と定めています。
直営店勤務の場合は「構内営業に関する業務」に該当し、厨房で料理を作ったり、ホールスタッフとして接客する場合も職制の規程範囲内で仕事をしていると言えます。
書籍『仙台駅百年史』によると当時の総員は500名で、その内訳は駅長1名、助役50名、事務主任1名、事務係8名、営業主任5名、営業指導係15名、営業係196名、輸送主任6名、輸送指導係30名、輸送係58名、他系統の現業機関の兼務者130名。
営業職の合計は216名という訳ですが、一体このうち何人が直営店を任されていたのやら。



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JR東日本仙台駅(1987)『仙台駅百年史』p.108より引用

当初は仙台駅3階「みどりの窓口」の隣にあったトライアングル。
パスタの味付けに使うベースソースはトマト・醤油・クリームの3種類を基本としました。



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JR東日本仙台駅(1987)『仙台駅百年史』p.108より引用

トライアングルが最初に入ったフロアは「プチグルメ」という飲食店街。
他に喫茶店「オールディーズカフェ」、軽中華店「車站(チョウチャン)」、郷土料理店「みちのく」が入居しており、このうち「みちのく」を除く3店舗は仙台駅の駅員達が切り盛りする直営店でした。
なお、トライアングルの開業日は1985年12月14日と先述しましたが、これは「プチグルメ」の開業日でもあります。
そして「オールディーズカフェ」と「車站」も同日付の開業で、トライアングルとは言わば兄弟店のような存在でした。



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サシ581を店舗に改造した「ポイント」と「ウインズ」
「ウェンズ」と書かれているのは誤植なので注意
JR東日本仙台駅(1987)『仙台駅百年史』p.108より引用

仙台駅の直営店は前掲の3店舗だけでなく、東口には特急「はつかり」に使っていた食堂車サシ581を改造し、2両も直営店に使っていました。
食堂車に入居したのは軽食喫茶「ウインズ」、電車らーめん「ポイント」の2店舗です。
これら店舗も「プチグルメ」の3店舗と同じ1985年12月14日に開業しました。

物販では1984年12月25日、直営売店として2階コンコースに「Rあおば101号店」、3階コンコースに「Rあおば102号店」の2店舗を開業。
これら店舗は主に土産物を取り扱っており、構内で現在営業中の「おみやげ処せんだい」の前身に当たるようです。
「Rあおば」は1985年4月1日に追加出店しており、103号店・104号店が加わりました。
更に1985年12月15日、パン類だけを販売する「Rあおば105号店」を在来線中央改札口ラッチ内にオープン。
仙台駅構内の直営店は飲食5店舗・物販5店舗を合わせ10店舗となりました。
これら店舗は周辺の仙台運転所、長町機関区、仙台保線区、仙台電力区、仙台信号通信区などからも配転者を受け入れています。



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国鉄末期~JR初期に誕生した直営店の多くは増収に至らず、全国で廃業が相次ぎました。
残念ながら仙台駅でも「オールディーズカフェ」「車站」「ウインズ」「ポイント」の4店舗が消滅に至っています。
しかし「パスタハウストライアングル」は厨房スタッフ個々人の味のバラつきを無くし、なおかつ厨房内での作業効率を向上するなど、綿密に改善を重ねてきた事が功を奏し人気店に成長しました。
仙台市民からは「いつ来ても安定して美味しい」と好評だそうです。
現在はLivit(JR東日本東北総合サービス㈱)が店舗運営を継承しているため、仙台駅長の指揮管理下を離れています。
3年後の2025年12月14日には創業40周年を迎えます。



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私はゴールデンウィーク中、東北地方の太平洋側を旅してきました。
4泊4日(函館行き夜行バスの利用を含む)の行程でしたが、何と言ってもハイライトは「パスタハウストライアングル」。
国鉄末期の直営店が人気を集め、すっかり老舗となった訳ですから入店が大変楽しみだった訳です。
旅行3日目の2022年5月3日15時、遅い昼食となりますがトライアングルにGO!



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お店の出入口にはネオンサインを掲げています。
何処と無く90年代の匂いを感じさせるデザインです。
私が子供の頃、商業施設のレストランで似た雰囲気の店名看板をよく見かけましたね。
青山本村のジャスコとか懐かしいね(※建て替え前の店の話)。



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店内は明るめのインテリア。
新型コロナ対策のため各席に衝立を設置しています。
滞在時間についても70分までと制限されていますので、訪問の際はご注意下さい。



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初来店でのオーダーは「特製スープスパゲティ」。
創業当時から受け継がれてきた最古参のクリームスープパスタです。
しかも人気ナンバー1!
具としてベーコン、アサリ、しめじ、海苔、子ネギが入っています。
チーズを存分に溶かし込んでいるので濃厚な味わい。
クリームスープパスタと言えば優しい味付けの物が多いイメージですが、こちらは結構パンチが効いています。
私も昔、石巻に住んでいたから分かるのですが、宮城県人は濃い味を好む人が多いんですよね。
それでいて最後まで飽きが来ない、最高に美味しい一皿でした。





店内BGMは70・80年代の洋楽ばかり。
私の好きなドナ・サマー(Donna Summer)の「Bad Girls」も流れていました。



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大満足で昼食を終えた後、普通列車に乗って東北本線陸前山王駅へ。
木造駅舎と貨物側線群、仙建工業㈱仙台出張所を撮影したら仙台駅へと引き返します。
仙台駅に戻った頃、すっかり日は落ちていました。



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そしてまたしてもトライアングルに入店。
1日に2度も同じ店で食事を取る訳ですが、元から旅行中に3回訪問しようと計画していました。
今回は晩酌モードに突入。
食前にビールセットを注文します。
ハートランドビールで喉を潤すぜ。



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ビールセットに付く前菜は日替わり。
この日は「ワカメと春キャベツのあっさり和え」でした。
ビネガーの酸味が疲れた身体に染み渡ります。



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メインディッシュは「石巻産牡蠣の和風醤油」です。
醤油ソースも創業当時からのベースソースでしたね。
具は牡蠣をはじめ青ネギ、ベーコン、しめじ。
牡蠣は4つも入っていました。
やはり想像通りと言いますか、醤油ソースはスッキリしつつも濃い目。
牡蠣を存分にソースに浸して食べるのが良いですね。

食後は真っ直ぐ駅前の快活CLUBにイン。
シャワー代が無料になったのは嬉しいですよね。
旅行の度にネカフェを使い続けていると、ビジネスホテルに泊まるのでさえ億劫になってきます。
それくらい最近のネカフェは居心地が良いです。



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日が変わって旅行最終日、2022年5月4日。
東北本線の初電に乗り込み東福島駅へ。
駅構内の保守用車基地が見応え抜群です。
それから伊達駅、桑折駅と木造駅舎を堪能し、白石駅で乗り換えを挟んで仙台駅に戻りました。



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そしてまたもトライアングルで昼食なんですよねー。
今回は14時前、ランチタイム中に入店できました。
飲み物・サラダ付きのランチセットを注文。
食前に運ばれてきた日替わりサラダは「ゴボウとルッコラのサラダ」でした。
ひじきも一緒にドレッシングで和えています。



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注文したパスタは「トマトスープスパゲティ」。
トマトベースのスープに唐辛子を加え、そこにレモンとバジルでさっぱり目に仕立てています。
スープを飲んだ第一印象は「アラビアータをスープで再現した」ような感じ。
メニュー表に書かれた「ピリ辛」をイメージしていたら、思いのほか辛かったですね。
後から段々とレモンの酸味が効いてきました。
アサリやベーコンも入っています。



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店の外にはイベントの告知が貼り出されていました。
5月27日の「前菜2種盛りサービス」が特にお得感があって良いですね。


また仙台に行ったらトライアングルを訪ねようと思います。
牛タン?はて何のことやら。


※写真は特記を除き2022年5月3日・4日撮影
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最終更新日 : 2022-05-05

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