タタールのくにびき -蝦夷前鉄道趣味日誌-

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2022-04-29 (Fri) 00:10

知られざるJR北海道関連施設「さっけんビル」

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札幌駅から徒歩5分、札幌市中央区北3条西2丁目にある「さっけんビル」。
ここはJR北海道グループの建設会社、札建工業㈱が所有するビルです。
地上7階・地下3階の計10フロアから成り、基準階面積は162.49坪、延床面積は1,796.3坪です。
館内南東には機械式駐車場を備えており、最大で60台を収容できます。
1980年5月27日に札建工業の本社ビルとして落成しましたが、同社は1991年9月落成のSKビル(北区北7条西6丁目)に本社機能を移転。
現在、さっけんビルは複数の賃貸オフィス・貸会議室で構成された雑居ビルとなっています。


JR北海道 国鉄 JR貨物 札建工業 保線区 建築区 札幌市営地下鉄 JR東日本 JR西日本 JR九州 JR東海
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屋上の塔屋には「さっけんビル」の切り文字看板を掲げています。


函館本線 札沼線 学園都市線 千歳線
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所有者の札建工業㈱は元々、鉄道省の指示によって1942年9月22日に発足した国策会社です。
その前後には全国各地に同様の国策会社が誕生しており、JR東日本グループの仙建工業㈱・東鉄工業㈱、JR西日本グループの大鉄工業㈱・広成建設㈱、JR九州グループの九鉄工業㈱などは兄弟分と言えます。
当時の日本は太平洋戦争の真っ只中で、戦況が悪化するにつれて人員と物資は軍隊に注力され、直接戦争と結びつかない分野は容赦なく切り捨てられました。
鉄道も例外ではなく大規模な建設・改良工事は悉く中止。
鉄道会社から仕事を受注してきた建設会社も鉄道工事の落札を避けるようになり、資材や労働力の手当を得られる軍関係の仕事に転じていきました。

しかしこれが裏目に出て、いざという時に兵士・軍需物資を大量に運ぶ鉄道の輸送力が低下し、戦争遂行に重大な支障をきたす恐れが出てきました。
輸送力を高めるには鉄道施設の保守・改良を綿密に実施し続けなければなりません。
そこで輸送力増強の至上命令を果たすため、地方ごとに複数の国鉄指定請負工事業者が合併して国策会社を設立したという訳です。
1941年6月発足の名鉄工業㈱(※名古屋鉄道とは無関係)を皮切りに、各鉄道局管内にそれぞれの地名の頭文字を冠した鉄道工事専門会社が続々と生まれました。
広成建設なら広島鉄道局の「広」、仙建工業なら仙台鉄道局の「仙」といった具合ですね。
札建工業の場合は札幌鉄道局(後の北海道総局)から「札」の1文字を取っています。
なお、設立当初の社名は札鐵工業㈱で、本社に加え札幌・函館・室蘭・旭川・釧路・名寄・北見の7都市に支店を設けていました。



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発足以来、道内各地で鉄道に係る建築物(駅舎・車庫・事務所など)、土木構造物(橋梁・トンネル・踏切架線防護工など)の新築工事・修繕工事を受注してきた札建工業。
国鉄線や札幌市電などの軌道補修・新設工事、鉄道林の植樹、青函トンネルの建設工事にも携わりました。
1957年5月22日には現社名の札建工業㈱に改称。
1987年4月1日、分割民営化に伴いJR北海道の持分法適用会社となりました。
2018年4月1日にはJR線の軌道補修に関する業務を全て北海道軌道施設工業㈱に移管し、岩見沢・室蘭・苫小牧・北見・帯広の各営業所を廃止。
保線関係は札幌市電のみ受注するようになりました。
2021年3月1日に組織改正を実施し、経営管理本部・土木本部・建築本部の3本部制に移行し現在に至ります。
主にJR北海道の設備所から建築物の補修工事、保線所土木テーブルから土木構造物の補修工事、工務技術センターから新築・改良工事を受注しています。



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1階ファミリーマートの付近には「耐震診断/耐震化集済建築物」の認定証を掲げています。
交付年月日は2011年11月24日です。



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東側から見るとどっしりとしていますが、北側から見ると意外にほっそりしています。
各階の階段ホールは窓を大きくとっています。



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玄関にも「さっけんビル」の切り文字看板を掲げています。



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さっけんビルの管理会社は札建工業㈱の関連会社であるエス・ケー興産㈱。
同ビル内に本社オフィスを構えています。



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1階エレベーターホールには入居テナントの表札がズラリと並びます。
3階には鉄道業界御用達、㈱交通新聞社の北海道支社が入居。
5階には国鉄北海道総局・JR北海道のOBが加入する北海道鉄道OB会の事務局があります。
7階はまるまる1フロアをJR北海道お客様コールセンターが占めています。



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JR線からやや離れているのであまり注目されませんが、さっけんビルも立派な鉄道関連施設です。
我が家には同じ国策会社の大鉄工業㈱が発行した『大鉄工業50年史』(1993)があるので、何れ札建工業の記念誌も読んでみたいですね。


※写真は全て2021年9月25日撮影
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最終更新日 : 2022-04-30

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