札幌市電の沿線では、しばしば「市電維持作業車」と書かれた黄色い軽トラを見かけます。
車種はダイハツのハイゼットで、荷台にバン(箱型の覆い)を装備しています。
市電維持作業車は保線作業員が線路、電停プラットホームを点検して回る時に運転する車両です。
基本的には路面電車と同じく線路上を走行し、点検箇所で一旦停車すると職員が降りて施設の状態を検査します。
フロントガラスの上には「交通安全運動実施中」とのステッカーを貼っています。
そして屋根には猛吹雪などの視界不良でも目立つよう、注意喚起の点滅ランプが載ります。
保守用車 JR北海道 国鉄 札幌市交通局 札幌市電 路面電車 保線車両 JR貨物 車両基地
荷台のバンは左右と後にドアを設け、3方向から資材の出し入れが出来るようになっています。
リアにも「交通安全運動実施中」のステッカー。
屋根にはLED式表示器を装備しており、線路上を走行する際に「市電巡回中」の文言を表示します。
表示パターンは3種類あり、「市電」の2文字点滅、「巡回中」の3文字点滅、「市電巡回中」の横スクロール・・・という順番で出します。
これは「市電維持作業のために線路を走っている」と周囲のドライバーに強くアピールする狙いがあるのでしょう。
一応、車体にも「市電維持作業車」と書いてはいますが軽トラが線路を走っているとなれば、後続の自動車もつられて線路に進入するかも知れませんからね。
交差点の右折や横断といった例外を除き、併用軌道への一般車の進入は厳禁です。
札幌市交通事業振興公社の組織図
このうち市電に関する部門を赤枠で示した
さて、施設保全にも関連する話なので、ここで札幌市電の組織について話しましょう。
札幌市電では2020年4月1日の上下分離化に伴い、交通局の外郭団体である札幌市交通事業振興公社(略称:STSP)が市電の運行管理・施設保全・営業を受託しています。
ここで要注意なのが「電車事業所」はあくまで施設名に過ぎず、部署としての正式名称は「路面電車部」だという事。
JRの運転所は現業機関なので現場長の肩書きも「運転所長」となりますが、電車事業所の場合は「路面電車部長」が現場のトップとなります。
似た事例としてはJR西日本の広島運転所矢賀検修分所が挙げられますね。
STSP路面電車部は部長の配下に運行管理課・維持管理課の2部門を設けており、このうち維持管理課が保全に携わっています。
維持管理課の組織は車両係、電路施設係、線路施設係の3系統に分かれ、施設保全については電路施設係と線路施設係に分担。
電路施設係は電気設備の保守、線路施設係は線路とプラットホームの保守を担当しています。
Googleマップより引用
ただし要注意なのが、STSPに保線作業員は1人も所属していないという点。
路面電車部維持管理課線路施設係の仕事は即ち、線路やプラットホームを点検して得たデータを基に工事計画を立てる事です。
係員自ら保線作業をする事はありません。
何故なら札幌市電は交通局時代から軌道補修工事を全面的に外注しているからなんですね。
そして長年に渡り市電の保線に携わっているのが、札幌市白石区川北3条1丁目に本社を構える㈱ヒラケン工業です。
ヒラケン工業は1982年9月の設立で、国鉄が保線作業の外注化を推進した時代に生まれた軌道工事業者です。
拠点は札幌本社と旭川営業所の2ヶ所があります。
そのため業務範囲は札幌市電の保線に留まらず、JR北海道グループに属する北海道軌道施設工業㈱の下請け業者としてJR線の保線作業も受注。
札幌保線所札幌保線管理室、札幌保線所江別保線管理室、札幌保線所石狩当別保線管理室、旭川保線所旭川保線管理室、旭川保線所深川保線管理室、JR貨物北海道保全技術センターの各管内を担当しています。
Googleマップより引用
ヒラケン工業の本社事務所は2階建ての古いプレハブです。
本社敷地内には他にも2階建てプレハブ1棟、平屋プレハブ2棟が建ち、物置として国鉄・JR貨物の中古コンテナを使用しています。
Googleマップより引用
ストリートビューでは何と、本社事務所の玄関前に市電維持作業車が停まっています!
ごくたまに平岸や白石など、市電沿線から離れた町で市電維持作業車を目撃する事がありますが、それはヒラケン工業の従業員が自社と電車事業所を行き来するからなんですね。
Googleマップより引用
そんなヒラケン工業ですが2022年4月現在、本社・旭川営業所の2ヶ所で軌道工の求人を出しています。
軌道工とは日給月給制の保線作業員の事。
全国各地、ありとあらゆる保線の現場で軌道工が活躍しています。
ヒラケン工業においては本社勤務の場合、札幌市電の保線に携わる事ができます。
以下に本社勤務の募集要項を抜粋しましょう。
【職種】
軌道工
【業務内容】
古くなったレールやマクラギ、砕石の交換や踏切補修を行っています。
冬季は、駅ホームや踏切の除雪、札幌市電の停留所除雪を行います。
現場は札幌市内、および近郊(江別市、当別町)です。
今後は新幹線札幌延伸工事も。
【応募資格】
18歳以上/例外事由2号
40歳以下/例外事由3号
学歴不問(中卒。高校中退OK)
現在、40代を中心に26名が在籍(2,30代は10名在籍し活躍しています)
★特殊な仕事の為、今いる従業員の約9割が未経験スタート
★新人研修もあるので安心して応募下さい
★新卒者も大歓迎!!
★ゆっくりじっくり育てていく予定なので、未経験でも安心して応募下さい
【初任給】
夜勤→日給1万2000円~ 日勤→8,500円~(7時間以上:10,000円)
※月収例:32万円(20代、勤続2年、24日勤務)
【諸手当】
運転・精勤・残業・夜勤手当有
賞与・餅代(特別手当)・決算手当(業績による)
【就業時間】
夜勤/22:00~翌6:00
日勤/7:00~16:00
*現場により変動有
【休日休暇】
4週6休シフト制、GW・盆・年末年始の長期休み有
【福利厚生】
車通勤可
作業服・防寒着貸与有
社会保険完備
社員登用制度推進中
全国に数多ある軌道工事業者ですが、北海道ではごく少数。
コマツの軌陸両用重機「スーパーライナー」を運転できるのも魅力的です。
鉄道が大好きで鉄道の仕事がしたいという方は応募するのも良いかも知れません。
※写真は特記を除き2022年3月20日撮影
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最終更新日 : 2022-04-16