タタールのくにびき -蝦夷前鉄道趣味日誌-

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2022-01-16 (Sun) 18:09

旭川駅で展示された旭川保線所・旭川電気所の仕事道具

旭川駅新駅舎10周年記念イベントa701

引き続き2021年11月23日に開催された「旭川駅新駅舎グランドオープン10周年記念イベント」の模様を取り上げましょう。
1階南コンコースの西側は鉄道用品の展示場となっており、多種多様な鉄道用品が集まっていました。
まずは旭川地区駅輸送業務センターが展示した、信号取扱訓練用の継電連動装置シミュレーターを観察。
続いて真向かいに置かれた保線・電気関係の展示コーナーに移りました。
旭川駅から北西へ約340m、旭川市宮下通5丁目に「旭川現業事務所」という3階建てのビルがあり、ここに旭川保線所・旭川設備所・旭川電気所・旭川構造物検査センターといった工務関係の現業機関が集結しています。
このうち旭川保線所と旭川電気所が、それぞれの業務に関連した展示品を出品しました。


JR北海道 国鉄 JR貨物 博物館 旭川駅
旭川駅新駅舎10周年記念イベントa702

こちらは旭川電気所が作成した架線(電車線)の解説板。
旭川電気所は旭川電力所、旭川信号通信所、北見工務所の電力・信通各テーブル、宗谷北線運輸営業所電気部門の各組織を統合した現業機関です。
旭川現業事務所内の本所事務室と、北見派出所、名寄派出所の1本所2派出所体制を構築しています。
函館本線江部乙~旭川間、留萌本線全区間、富良野線旭川~学田間、宗谷本線旭川~稚内間、石北本線新旭川~網走間、釧網本線網走~桂台間を担当区域とし、電力設備・信号設備・通信設備の保全を担当しています。



旭川駅新駅舎10周年記念イベントa703

電車線は「トロリ線」と「ちょう架線」2本により構成。
トロリ線には円形に溝を付けた銅線で、変電所から高圧電気が流されます。
電車は屋根上のパンタグラフでトロリ線から集電し、モーターに電気を供給する事によって走行できます。

ちょう架線は全て漢字で書くと「吊架線」で、亜鉛めっき鋼より線を使用しています。
トロリ線は吊架線からハンガーで吊り下げられており、これによってトロリ線がたわまないようになっています。
ちなみに旭川電気所の担当区域内では、函館本線江部乙~旭川間、宗谷本線旭川~旭川運転所間が交流20,000Vの電化区間です。



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旭川保線所が出品した測定器は、仮設した線路の上に置かれていました。



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こちらは㈱カネコが製造した簡易型軌道検測装置。
カネコは東京都日野市に研究所・工場を構える保線計測機器メーカーで、分岐器測定器、軌道変位測定器、クラック計、落石検知装置などを開発・製造しています。
展示の簡易型軌道検測装置は「トラックマスターPC+」という機種で、通り変位(左・右)・高低変位(左・右)・軌間変位・水準変位・平面性変位の7項目を1台で自動的に測定できる優れもの。
保線管理室の係員は測定結果に基づいて工事計画を策定し、線路の歪みを1mm単位で修正。
工事完了後の仕上がり検査にもトラックマスターPC+を使用しています。

このトラックマスターPC+は、旭川保線所の下部機構である旭川保線管理室が使用する機器ですね。
旭川保線管理室は国鉄時代の旭川保線区旭川保線支区を前身とする組織です。
旭川保線所の配下には深川保線管理室、旭川保線管理室、上川保線管理室の計3ヶ所が所在。
各保線管理室では日常的な軌道検査(線路巡視・列車巡視など)、徒歩巡視時に目視点検と並行して行なう比較的簡易な修繕作業、検査データに基づく工事計画の策定、外注工事の立会い・監督を担当しています。
なお、外注先は北海道軌道施設工業㈱旭川第一出張所・旭川機械センター、㈱サヤマ建設などで、これらパートナー会社が重機・保守用車などを使った大掛かりな軌道補修工事を行なっています。



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トラックマスターPC+の心臓部。
ミニプリンターを使えば、現場で測定データを印刷する事も可能です。



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トラックマスターPC+の車輪。
この車輪で軌間の歪みを測定します。



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これは保線係員が一時的に手を離す時、ひとりでに滑走しないようにするための装備でしょうか、「支持脚」なる物が付いています。



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こちらはスイスのアンベル・テクノロジーズ社(Amberg Technologies)が製造したトンネル断面測定器「GRP3000System」。
日本国内では㈱ネプロが総代理店となって、アンベル・テクノロジーズ社の製品を取り扱っています。



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JR北海道の各保線所は本所事務室に「土木テーブル」という部門を設けています。
土木テーブルは土木助役を筆頭とし、トンネル、橋梁、鉄道高架、プラットホーム、落石防護工など各種土木構造物の保全と鉄道林の営林を担当しています。
トンネル断面測定器はレーザーを壁に照射し、断面の測定を行なう機器です。
特に明治・大正期に建設されたトンネルはレンガを積み上げているため、断面測定は鉄道の安全輸送を守る上で欠かせません。
土木テーブルの係員は定期的に土木構造物の状態検査を行ない、その検査データに基づいて工事計画を立て、札建工業㈱や北海道軌道施設工業㈱札幌工事所などに補修工事を発注しています。



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測定機器の他にも、保線に係る工具類や軌道材料が展示されていました。



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昔ながらの犬釘も展示されていました。
これを木マクラギに打ちつける事によってレールを固定します。
なお、レールの固定に使う部材を「締結装置」と言い、犬釘以外にも様々な種類があります。



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こちらはスパイキハンマー。
一般的に保線作業員と言えば、この道具やビーター(片方をハンマー状にしたツルハシ)を使うイメージを持たれがちですよね。
スパイキハンマーは犬釘を木マクラギに打ち込む際に使用します。
重量が約4kgあり、柄の長さが約1mもあるため、新米の保線係員は犬釘の頭に当てるのも一苦労。
真っ直ぐに打ち込むには熟練した技が必要となります。
しかし昨今はボルトナットにタイプレートまたは板バネを組み合わせた締結装置が当たり前になってきたので、昔ながらの犬釘打ちを見る機会も少なくなってきました。



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こちらはレンチ(スパナ)。
締結装置や継目板などに使うナットを締め付ける道具です。
なお、線路に使うナットは3cm前後の長さがあるため、レンチも一般的な物より大きめ。



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こちらはクローバー(バール)。
マクラギから犬釘を抜き上げるために使用します。
レール更換工事、錆びた犬釘を新品に交換する時、間違った箇所に犬釘を打ってしまった時などに抜く訳ですね。



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こちらはレールの継ぎ目を固定する継目板・継目ボルト。
列車の走行中に聞こえる「ガタンゴトン」という音は、車輪がレールの継目を通過する時に鳴ります。
継目板にヒビが入るとレールの継ぎ目が離れ、脱線事故を引き起こする恐れがあります。
そのためヒビを発見したら速やかに列車を停止させ、交換作業を行ないます。



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継目板は基本的に2枚1組としてレールを抱き合わせ、継ぎ目ボルトで締結します。



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展示品の継目ボルトは50kgレールの締結に対応するタイプです。
ボルト先端を保護するナットカバーに加え、ナットの固定に使う六角ナットとワッシャーが付いていました。



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こちらはレールバイクにエンジンを積んだ「軌道自動自転車」。
「自動バイ」とも呼ばれます。
線路や電気設備などの点検や、修理に必要な材料を運ぶために使います。
車体はアルミ製で車体幅1,600mm、長さ1,300mm、重量約100kg。
2、3人の手で線路に乗せたり降ろしたりする事が出来ます。
鉄道沿線を巡っていると、たまに保線所や軌道工事業者のダブルキャブトラックが線路沿いに停車し、荷台から自動バイを降ろす光景を見かける事がありますね。
4人乗りで四輪駆動、最高時速は30km/hです。



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前列座席の中間にはアクセルレバーが付いています。
これ1本で前進・後退の操作をする事が出来ます。



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ブレーキは足元のペダルを踏むと掛かります。



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展示品の軌道自動自転車ですが、意外にも旭川保線所ではなく旭川電気所の所有です。
座席の背面には「JR旭川電気所」のステッカーが貼られています。
信号設備や鉄道電話機などを検査して回る時に使うのでしょう。


展示された鉄道用品はまだありますが、長くなったので今回はここまで。




※写真は全て2021年11月23日撮影
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最終更新日 : 2022-01-24

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