青森県は中南地域、弘前市表町にあるJR東日本の弘前(ひろさき)駅。
奥羽本線を所属線とし、五能線が乗り入れています。
津軽家を藩主とする弘前藩の城下町として栄えた弘前の代表駅です。
前回記事で書いたとおり、駅舎は北側の駅ビル「アプリーズ」と繋がっています。
アプリーズの更に北隣には2階建てのコンクリート建築が1棟。
正面玄関の表札には「弘前総合事務所」と書かれています。
緑色のJRマークも掲げており、JR東日本の関連施設である事が分かりますね。
JR各社では複数の現業機関や地方機関が集まる建物を「総合事務所」と称しており、国鉄時代にも「総合庁舎」という呼称が使われていました。
例えば1棟のビルに車掌区・信号通信区・CTCセンターが入居したり、或いは保線区・建築区・機械区・電気区が1棟に収まっているような建物を総合事務所と呼ぶ訳ですね。
ただし総合事務所はJR西日本の「地域鉄道部」、JR貨物の「総合鉄道部」のような複数の現業機関を統合した組織という訳ではないので、「総合事務所長」という役職は存在しません。
JR東日本 国鉄 JR貨物 奥羽本線 五能線
大抵の総合事務所は玄関に入居する各部門の名称を表記していますが、弘前総合事務所は一切の掲示が無いため全容を窺い知る事は出来ません。
手前にはパトランプ付きの社用車が駐車されているので、入居する部門は沿線を巡回する事があるようです。
しかし車体に部署の記名は見られませんでした。
「でも緊急車両が停まっているんだから、保線・土木関係か電気関係の現業機関でも入っているんじゃないの?」と思われるでしょうね。
ところが保線・土木・電気の各職場は違うビルに収まっているのです。
上の画像はGoogleマップを基にJR東日本の各現業機関、JR関連会社の事業所の位置を示した地図です。
弘前に所在する施設・電気関係の職場は、弘前保線技術センター、秋田土木技術センター弘前派出所、秋田電力技術センター弘前メンテナンスセンター、秋田信号通信技術センター弘前メンテナンスセンターの4部門です。
これらは駅本屋を挟んで南側の線路沿いに集結しています。
近傍にはJR東日本から線路・土木構造物の補修工事を受注する第一建設工業㈱弘前工事所、JR東日本の子会社で駅舎・事務所など各種建築物の施設管理を受託するJR東日本ビルテック㈱弘前事業所もあります。
こちらが保線・土木・電気の各職場が一堂に会する事務所。
国鉄時代から存在する、古びた3階建てのビルです。
元々は弘前保線技術センターの前身である弘前保線区の本区事務室(設計・積算・スケジュール調整・安全教育などを担当)と、今は無き弘前保線支区(軌道検査・工事計画・施工を担当)が入居したそうな。
非常階段には弘前保線技術センターが横断幕を掲げており、「良く来たねし 桜とリンゴの津軽路へ」と津軽弁を交えたメッセージを書いています。
茶色いビルの玄関には弘前保線技術センター、秋田土木技術センター弘前派出所、秋田電力技術センター弘前メンテナンスセンター、秋田信号通信技術センター弘前メンテナンスセンターの表札を掲げています。
では駅北の弘前総合事務所は一体何なのか?
おそらくはJR東日本秋田支社の「津軽地区連携室」が入居しているのだろうと考えます。
秋田支社は2020年10月1日に機構改革を実施し、地区センターに代わる新組織として「地区連携室」を管内主要駅に設置しました。
開設した地区連携室は4ヶ所で、大曲駅を主管とする「県南地区連携室」、秋田駅を主管とする「中央地区連携室」、東能代駅を主管とする「県北地区連携室」、弘前駅を主管とする「津軽地区連携室」があります。
この機構改革はベテラン社員の大量退職、新型コロナウィルスの感染拡大による社会環境の急速な変化に対応するべく提案されました。
在来の地区センターは国鉄時代の「運輸長室」に似た組織で、各系統(駅・乗務・車両・保線・土木・建築・機械・電気)の現業機関を統率する立場として各種訓練や安全推進会議、サービス会議などを主催するほか、異常時には現場の応援に駆けつけます。
異なる業務に従事する社員達が情報共有を密にする架け橋の役割を持っており、中には「地区指導センター」と称する箇所もあります。
秋田支社の地区連携室はその機能を維持しつつ、異常時の即時対応を整備し、運転取扱業務の技術力維持・向上を図る事が主な目的だと言います。
それに加えてより利用客に近い目線で創意を発揮できる環境を構築し、企画業務の充実、安全・安定輸送の更なる向上に繋げていこうとしているのです。
具体的には各系統の現業社員が1ヶ月に数回、通常業務を外れて地区連携室の業務に入るそうです。
以前、当ブログにJR東日本が新たな現業機関として「統括センター」及び「営業統括センター」を順次開設していく方針だと書きましたが、秋田支社の地区連携室はそれらを先取りした取り組みと言えるかも知れません。
弘前総合事務所に入居するのは本当に津軽地区連携室なのか?
信じるか信じないかはあなた次第です。
※写真は全て2021年12月4日撮影
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最終更新日 : 2021-12-19