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2021-08-22 (Sun) 07:16

法人旅行札幌支店の閉店決まる JR北海道の旅行センター全滅へ

話せる券売機8割に・法人旅行閉店へ(道新より)
『北海道新聞』2021年8月20日付朝刊第13面より引用

中国・武漢から全世界に広まった新型コロナウィルスの感染拡大により、2020年2月より鉄道利用の大幅な減少が続くJR北海道。
社員の一時帰休や列車の減便に取り組むも回復の兆しは一向に見えず、遂にフロント業務のあり方にまでメスを入れる事になりました。
以下に道新の記事を引用しましょう。

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話せる券売機8割に
JR北海道 みどりの窓口代替

 JR北海道の島田修社長は19日の記者会見で、オペレーターがモニター画面越しに切符の買い方などを案内する「話せる券売機」を道内の有人駅98駅の約8割に設置すると発表した。新型コロナウィルス禍で窓口を介さない非接触型の需要が高まっていることを受けた措置。設置完了時期は未定だが、将来的に「みどりの窓口」と置き換え、コスト削減を図る狙いがある。
 話せる券売機は2018年度から札幌圏を中心に導入し、24駅に設置済み。本年度は新たに釧路、帯広、旭川、函館など14駅に設置する。同券売機の普及で、将来的には道内の有人窓口を半分程度に減らす方針。
 このほか、コスト削減の一環で、企業や学校向けの旅行商品を扱ってきた法人旅行札幌支店を22年2月末で閉店する。札幌駅内にある「お客様コールセンター」は22年4月から業務を外注化する。
 これらの業務見直しで、22年度以降、年間約2億円のコスト削減につなげる。島田社長は会見で「コロナ収束後も鉄道利用は回復しないことを前提に考えねばならず、コスト削減には積極的に取り組んでいく」と述べた。
(三坂郁夫)

《出典》
『北海道新聞』2021年8月20日付 朝刊第13面 経済・商況
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以下リンクの公式プレスリリースも併せてご覧ください。



島松駅a18
駅構内に設置された「話せる券売機」の操作説明ポスター
2020年12月12日、千歳線島松駅にて撮影

JR北海道はコロナ禍で離れた利用客が戻ってこない可能性を前提に、駅フロント業務等の抜本的なコスト削減を計画。
「えきねっと」等による乗車券類のオンライン販売が普及し、インターネットでの情報提供の拡充が為されてきた事を踏まえ、以下の3点を実施する方針を固めました。
①「話せる券売機」の導入拡大
②「法人旅行札幌支店」の閉店
③「お客様コールセンター」の外注化

「話せる券売機」はJR北海道が2018年度より設置を進めている受話器付きの券売機で、コールセンターとの通話により指定席券の予約購入、学生証の提示による通学定期券の購入、ジパング倶楽部・学割などの割引切符の購入、切符の変更・払い戻し等が可能です。
なお、このコールセンターは正式名称を「話せる券売機オペレーションセンター」と言い、JR北海道の子会社である㈱北海道ジェイ・アール・サービスネットが運営しています。

2021年8月現在、設置済みとなっているのは札幌駅、小樽駅、手稲駅、桑園駅、苗穂駅、白石駅、新札幌駅、北広島駅、島松駅、千歳、南千歳、新千歳空港、苫小牧、岩見沢、八軒、新川、新琴似、篠路、拓北、あいの里教育大、登別、東室蘭、伊達紋別、洞爺の計24駅です。
そして今年度、これから設置予定の駅は銭函駅、厚別駅、江別駅、石狩当別駅、美唄駅、砂川駅、滝川駅、釧路駅、帯広駅、旭川駅、函館駅、新函館北斗駅、木古内駅、奥津軽いまべつ駅の計14駅です。
今後は有人駅(直営駅・業務委託駅)98ヶ所のうち約8割の駅に「話せる券売機」を設置すると共に、各駅の利用状況を踏まえて窓口営業時間の短縮、駅員の休憩時間中の窓口休止(既に幌延駅や札内駅など一部で実施中)といった駅業務執行体制の見直しを進めていく予定です。


JR北海道 法人旅行札幌支店 国鉄 旅行センター支店 現業機関 札幌駅
ほーじん2
札幌市中央区北6条西7丁目の高架下にある法人旅行札幌支店
2019年9月1日撮影

個人的に驚いたのは法人旅行札幌支店の閉店です。
JR北海道は2006年2月28日~2021年2月28日の15年間に渡り、JR北海道プラザ、トラベルセンター、ツインクルプラザといった旅行センター支店を合わせて31店舗も閉店。
以降は法人旅行札幌支店がJR北海道に唯一残る旅行センターとなっています。
これまでの閉店は旅行商品のインターネット直販が急速に浸透し、客離れが続いた事によるものでした。
しかし法人旅行札幌支店の場合は事情が異なり、コロナ禍における企業の出張抑制が続いて受注が激減した事によります。
コンベンション等の延期・中止に伴う団体旅行の白紙化も相次ぎ、2020年度の店舗収支は赤字に転落。
厳しい運営状況が長期化し、なおかつコロナ前の売上水準に回復する事も期待できないため、2022年2月末を以って営業を終える事になりました。


JR北海道 職制 国鉄 JR東日本 JR西日本 JR東海 JR四国 JR九州 JR貨物
JR北海道・駅の職制・指揮命令系統イメージ図

この機会にJR北海道の「旅行センター支店」とはどのような組織なのか、その成り立ちを見ていきましょう。
国鉄初の旅行センターである「名古屋駅旅行センター」が1968年10月に誕生して以来、全国各地の駅に旅行センターが次々と発足しました。
当時の旅行センターは駅長の指揮管理下に属する販売機構で、「旅行センター所長」の担務指定を受けた助役が筆頭となって、従来の駅フロントの枠組みを越えた広域的かつ積極的な営業活動に取り組みました。

一方、名古屋に先駆けて1963年6月、札幌鉄道管理局が旅客掛14名、貨物掛16名に対し「鉄道セールス主任」の担務指定を行ない主要20駅に配置しています。
鉄道セールス主任は企業や官公庁に飛び込み営業して鉄道旅行の利点をアピールしたり、荷主のコンサルタントとして鉄道貨物輸送の効率的な利用方法を提案して受注に繋げたりと、各分野における増収活動に打ち込みました。
このうち旅行業については1964年12月に「旅客サービスセンター」へと拡大発展し、増員されたセールス主任を助役(旅セ所長)が束ねる体制となりました。
旅客サービスセンターは1967年3月、「営業センター」に改称。
更に1972年8月、全国的な駅販売機構(旅行センター・営業センター・観光センター等)の整理・統一化によって「旅行センター」に改称しています。


JR北海道プラザ 法人旅行札幌支店 国鉄 ツインクルプラザ 旅行センター支店 トラベルセンター 駅員
JR北海道・旅行センター支店の職制・指揮命令系統図

JR北海道の発足後も暫くは駅の一部門として機能した旅行センターですが、1991年3月20日の「旅行業本部」新設が転機となります。
何と鉄道事業本部から旅行業本部へと移管された事によって駅長の指揮管理下を外れ、駅から独立した現業機関、即ち「旅行センター支店」に改組されたのです。
これは駅の指揮命令系統から旅行業を分離する事で、その収支を明確化すると共に販売体制を密にする狙いがありました。

旅行センター支店は駅構内にある「ツインクルプラザ」と、駅から多少離れた場所または道外に置かれた「JR北海道プラザ」、鉄道の無い町や無人駅等に置かれた小店舗「トラベルセンター」の3種類に分かれます。
これらは現場長として「支店長」を据えると共に、助役に相当するマネージャーとして「次長」を配置。
更に下には営業主任、営業指導係、営業係と、これらの職名だけ見れば駅の営業職と何ら変わりませんが、「旅行業の取扱い」と事務職(事務主任・事務係)の担当業務を複合した職務内容に規定している点が大きく異なります。
国鉄時代の輸送係とJR各社の輸送係が全く異なるように、駅の営業係と旅行センター支店の営業係は同一職名だけど実際は異なる職種と言えるでしょう。

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1)事業展開
 平成3年3月に旅行業として、指揮命令系統を他事業と分離し、収支も明確にするため、従来、営業部内にあった旅行業課を発展的に解消し、新たに旅行業本部を設置した。
 旅行業本部には、業務課、国内旅行課、海外旅行課の3課を置き、東京営業部、仙台営業所、大阪営業所についても、営業本部から旅行本部へ移行した。
 また、旅行センターを「旅行センター支店」に改称し、支店長、次長を配置する等体制の強化を図った。

2)一般旅行業の開始
 従来、国内旅行については、北海道知事登録国内旅行第225号、海外旅行については、日本旅行の受託販売会社として、運輸大臣登録一般旅行業代理店業第4971号により取り扱っていたが、平成3年7月、新たに運輸大臣登録一般旅行業第1043号の登録番号を取得し、今後、国内も海外も同一の登録番号のもとで一般旅行業者としての整備を図った。
 これにより、当社商品の企画、手配、販売をより一層強化するとともに、海外ブランド名も「ツインクルワールド」とし、新ロゴマークをつくり、国内、海外ともパンフレットデザインを一新、新ロゴマークとあわせてお客さまへの浸透を図った。
 また、道内の旅行センター支店の愛称名を「ツインクル・プラザ」(TP)とし、イメージの刷新を図った。

《出典》
財団法人交通協力会(1992)『交通年鑑 平成4年度版』p.257
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JR北海道プラザ 法人旅行札幌支店 国鉄 ツインクルプラザ 旅行センター支店 トラベルセンター 駅員
札幌地区駅n03(ツインクルプラザ)
札幌駅東コンコース北側にあるツインクルプラザ札幌支店
2020年1月4日撮影

1998年4月1日、学校に対し修学旅行などの提案・販売を行なう事をメインとしつつ、企業・官公庁・宗教団体に対しても渉外を行なう「教育旅行支店」が開設されました。
従来の旅行センターが一般客に開かれた来店型営業なのに対し、この教育旅行支店は一定の客層のみターゲットとしている点が異彩を放っています。
店舗は札幌市中央区北5条西5丁目のJR北海道本社西ビル(※この名称は札幌駅にJR本社があった名残)に置かれました。
ちなみに本社西ビルには札幌車掌所や札幌CTCセンター等も入居しています。

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1)事業展開
 9年11月の北海道拓殖銀行の経営破綻に始まった金融不安の影響を受け、厳しい収入状況となったが、機軸商品である鉄道と宿泊を組み込んだ温泉型商品やビジネス型商品の販売、駅レンタカーと連携した道内周遊型商品の販売体制の強化拡大を実施するとともに、鉄道と飛行機を使用した道外企画商品の充実・強化を図った。
 また、将来に向けての旅行業の収入基盤を確固たるものとするために、現業機関として「教育旅行支店」を新設し、学校へのセールス展開を積極的に行うとともに、法人企業の新規拡大と官公庁、宗教団体への取り組みへの強化を図り収入の確保を図った。

《出典》
財団法人交通協力会(1999)『交通年鑑 平成11年度版』p.215
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ツインクルプラザ北見支店as01
北見駅構内に入居していたツインクルプラザ北見支店
2016年9月8日撮影

更に2000年5月1日、企業に対し出張旅行に係る鉄道利用を提案し、乗車券類の販売に繋げる「法人旅行札幌支店」が開業しました。
前年にはY2K問題(西暦2000年問題とも)が騒がれており、電子システムの停止による旅先での混乱を懸念して旅行を控えるケースが増加。
景気低迷が続いた事もあってJR北海道旅行業本部の収益は落ち込み、テコ入れとしてビジネス利用の促進を狙ったという訳ですね。
法人旅行札幌支店は当初、札幌市中央区北4条西4丁目の伊藤ビルに置かれていました。

当時は修学旅行の販売獲得にも一層の注力をしており、各支店に修学旅行専任のスタッフを配置しています。
また、この頃は営業体制の更なる強化を目的とした「地区駅長制度」がスタートし、地区駅エリアに属する支店は地区駅長の配下に置かれる事となりました。

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1)事業展開
 景気低迷が続く中で、価格競争の激化に伴う収益の減少、Y2K問題の影響による旅行の手控え等と厳しい状況にあったが、11年3月には大型複合施設「マイカル小樽」がオープンしたほか、「SLすずらん号」の運航、豪華寝台列車「カシオペア」の運行などの話題もあり、これらを組み込んだ商品は好評だった。
 また、11年7月から開設した「旅の予約センター」は引取り箇所を駅に拡大したほか、予約だけでクーポンを持たずに旅館・ホテルに宿泊いただける「ノークーポン」制度を導入するなどお客様の利便性を図った。

2)販売体制の充実・強化
 法人・企業の旅行を積極的に取り組むため、「法人旅行札幌支店」を開設。あわせて、修学旅行獲得に向けて札幌圏の教育旅行支店を強化するとともに、各支店に修学旅行専任者を配置し、積極的かつ組織的な活動を展開した。また、12年5月には一部支店を駅と融合したほか、4地区において駅と一体となった販売体制を築いた。

《出典》
財団法人交通協力会(2001)『交通年鑑 平成13年度版』p.220
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 ② 営業活動の充実・強化
 特急列車の指定席や旅行商品をインターネットで予約し、最寄りの駅でチケットを引き取ることができるサービスを開始するとともに、「マイレールクラブ」や「レールメイト」等の会員の拡大により重点顧客の囲い込みを図るほか、魅力ある各種キャンペーンを展開し、営業活動の充実・拡大を図る。
 また、15年3月に「JRタワー」のショッピングモールに開設した旅行センターにおいて、積極的な営業活動を行うほか、法人旅行札幌支店に「JRタワー」に入居する企業に対する営業を行う専任チームを配置するなど営業体制を強化する。さらに本州の営業所について、外販の強化に向けた体制の見直しを実施するなど、積極的な営業活動の展開を図る。

《出典》
財団法人交通協力会(2004)『交通年鑑 平成16年度版』p.198
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法人旅行札幌支店の看板 2019年9月1日撮影

統合後は法人旅行札幌支店の名を引き継いでおり、企業向け・学校向けの販売業務を一緒に行なう事になりました。

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3)販売部門の主な活動
 法人旅行札幌支店が教育旅行支店と統合となり、相乗効果を発揮しつつ、コンベンション、各種団体、教育旅行の鉄道利用促進につながる企画提案を行い、積極的なセールス活動を行った。札幌支店等のカウンター特化店では、パッケージ商品を重点的に販売した。
 また、インターネット予約、電話予約等「無店舗販売」については、旅行商品比較検索サイトを活用するなど強化を行ったほか、委託販売については、「ツインクルWeb」(旅行会社向けオンライン予約システム)の利用促進に向けて、エージェントセンターを中心に当社ツインクルブランドの積極的な営業活動を行った。さらに、ユニット販売についても、本州営業所による道外主要旅客会社への鉄道の利用促進に向けた積極的な営業活動を行った。

《出典》
財団法人交通協力会(2012)『交通年鑑 平成24年度版』p.233
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2000年代は先述のとおり旅行センター支店の閉店ラッシュで、2021年2月28日には近隣のツインクルプラザ札幌支店・札幌南口支店を含む6店舗が閉店した事により、30年続いた「ツインクルプラザ」の名が消滅しました。
そして残り半年ほど、2022年2月末を以って法人旅行札幌支店が閉店を迎え、JR北海道の旅行センターは全て消え去ります。
JR北海道におけるセールス業務の最後の砦だと思っていただけに、法人旅行札幌支店の閉店は残念でなりません。
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最終更新日 : 2021-08-22

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