タタールのくにびき -蝦夷前鉄道趣味日誌-

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2021-08-14 (Sat) 06:45

【旧式】都営地下鉄・車掌の確認動作について

都営地下鉄車掌(新線新宿駅)az01
停車寸前に敬礼を交わす東京都交通局の車掌と京王電鉄の車掌
都営の車掌は乗務員室扉を開け放った状態で到着監視をしている
2013年9月30日、京王新線新宿駅にて撮影

1960年12月4日に新規開業した1号線(浅草線)押上~浅草橋間は、去る2020年12月4日に還暦を迎えました。
それまで東京都内で地下鉄を運営するのは帝都高速度交通営団(現:東京メトロ)の1社だけでしたが、東京都交通局もモータリゼーションの煽りを受けるばかりの都電に代わる交通網として地下鉄の整備に乗り出したのです。
押上~浅草橋間を皮切りに浅草線の延伸工事を続け、更に6号線(三田線)、10号線(新宿線)、12号線(大江戸線)と立て続けに工事を敢行。
2000年11月29日には大江戸線の環状部分が完成し、これで4路線109kmの路線網が出来上がりました。
東京メトロの9路線と合算すると、東京の地下鉄は総延長304kmを誇ります。
あと100kmほどで世界最古のロンドン地下鉄に届きますね。
また、都営地下鉄では大江戸線を除く3路線で私鉄との相互直通運転を実施しており、浅草線は京急電鉄・京成電鉄・北総鉄道・芝山鉄道の4社、三田線は東急電鉄、新宿線は京王電鉄にそれぞれ乗り入れ、都心と郊外を結んでいます。


都営地下鉄 職制 職名 現業機関 都営浅草線 都営三田線 都営新宿線 都営大江戸線
東京都交通局(都営地下鉄)・地下高速電車係員職制及び指令系統az01
東京都交通局が定めている「地下高速電車係員職制及び指令系統」
PCの右クリックまたはスマホのタップで拡大画像を表示できます

今回は都営地下鉄における車掌の確認動作を取り上げましょう。
・・・とその前に、こちらは東京都庁が一般公開しているデータベース「東京都例規集」で閲覧できる、都営地下鉄の職制・指揮命令系統を示した図です。
これによると都営地下鉄の車掌は電車部乗務管理所乗務区に属し、「高速電車車掌」を正式な職名と定めています。
見習期間中なら「高速電車車掌見習」という肩書きになります。
車掌の上位には「乗務指導」という助役補佐的な職名を設けています。
乗務指導は車掌だけでなく「高速電車運転士」、「高速電車運転士見習」をも指導する立場にあり、京王電鉄の乗務主任に近いポジションと言えるでしょう。
乗務指導の更に上は乗務助役、乗務区首席助役、乗務区長、乗務管理所長、そして電車部長と管理職が続きます。

『東京都交通局地下高速電車係員規程』の第十八条では、高速電車車掌と高速電車車掌見習の職務内容を規定しています。
以下に条文を引用しましょう。

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(高速電車車掌)
第十八条 高速電車車掌は、乗務区長の指揮を受けて、列車に乗務し、旅客の輸送及び車内秩序の保持に従事する。

(高速電車車掌見習)
第十八条の二 高速電車車掌見習は、乗務区長の指揮を受けて、高速電車車掌に付随して列車に乗務し、高速電車車掌の職務を練習する。

《出典》
東京都交通局(1960=2016)『東京都交通局地下高速電車係員規程』(2021年8月13日閲覧)
*****************************************************************


東京都交通局 都営地下鉄 都電 都営バス 都バス 旧制帽 盛夏制帽 盛夏服 制服
東京都交通局旧盛夏制帽az01
東京都交通局の盛夏用旧制帽(1994~2005)
制帽・スラックスには光沢のあるベージュのサテン生地を使用し、盛夏シャツを半袖・長袖の2種類としていた

東京都交通局電車部は都電、上野動物園モノレール、都営地下鉄、日暮里・舎人ライナーの運営(事務・営業企画・安全管理・事故賠償など)に携わる部門です。
その配下に地下鉄乗務員の指揮監督を司る乗務管理所を設けており、これは浅草線を担当する泉岳寺乗務管理所(旧:西馬込乗務管理所)、三田線を担当する高島平乗務管理所、新宿線を担当する大島乗務管理所、大江戸線を担当する清澄乗務管理所の4ヶ所があります。
乗務管理所は下部組織として乗務区を配置しており、泉岳寺乗務管理所は泉岳寺乗務区(旧:西馬込乗務区および吾妻橋乗務区)の1ヶ所、高島平乗務管理所は高島平乗務区の1ヶ所、大島乗務管理所は大島乗務区の1ヶ所、清澄乗務管理所は光が丘乗務区と清澄乗務区の2ヶ所を設けています。
このうち最下層の乗務区に高速電車運転士、高速電車車掌といった乗務員が勤務する訳です。

なお、大江戸線は1991年12月10日の開業当初よりワンマン運転を実施しており、三田線も2000年9月22日を以ってワンマン化しています。
そのため2021年現在、ツーマン運転を実施しているのは浅草線・新宿線の2路線となっており、高速電車車掌も泉岳寺乗務区・大島乗務区の2ヵ所に所属するのみとなっています。


都営10-000形 高速電車車掌 都営地下鉄 都営新宿線 指差称呼確認
都営地下鉄車掌(神保町駅)az01
閉扉後に側面状態と車側灯の滅灯を目視し、「側面よし」の指差確認を行なう車掌
2012年7月28日、都営新宿線神保町駅にて撮影

さて、ここからが本題です。
今回取り上げるのは2019年3月以前の都営地下鉄における車掌の基本的な確認動作です。
実は浅草線・新宿線全駅への可動式ホーム柵設置が決定した事を受け、都営地下鉄では車掌の基本動作を改正したんですね。
そこで私自身の備忘録を兼ねて、今やすっかり失われてしまった旧動作を記録しておこうと思い至った訳です。
その内容を書き起こすと以下の通りになります。

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《駅停車時の確認動作》
①停車前、乗務員室扉を開けて身を乗り出し列車監視
②列車が完全に止まったら、ホーム床の停止位置目標を見て「○両よし!」と指差喚呼。
  (例)乗務列車が8両編成なら8両停止位置目標を確認し「8両よし!」
③停止位置が問題なければ車掌スイッチを押し上げ、乗降口ドアを開ける
④ホームに出て、全ドアの開扉・車側灯の点灯を確認し「側灯よし!」と指差喚呼
⑤出発反応標識(レピーター)の点灯を確認し「出発進行!」と指差喚呼
⑥手笛を吹くか、車内放送装置のスイッチを車外スピーカーに切り替えて戸閉め前の注意喚起アナウンスを行なう(先にホームに設置された発車ブザーのスイッチを押す事もある)
前方を見て乗降客の流れが収まったら「乗降よし!」と指差喚呼
車掌スイッチを押し下げ、乗降口ドアを閉める
ドアが閉まったらITVと前方を交互に見て(ITVが無い場合は前方注視)、車側灯の滅灯と側面状態に異常が無い事を確認したら「側灯よし、側面よし!」と指差喚呼
列車に乗り込み出発合図のブザーを1打
列車がホームを出るまでの間、乗務員室扉を開け放った状態で列車監視
⑫ホームを出たら後ろを振り向き「後方よし!」と指差喚呼、乗務員室扉を閉める
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《駅通過時の確認動作》
①通過駅に差し掛かったら、非常ブレーキ弁(車掌弁)に手を預けて後方を監視
②通過駅を抜けたら構内の状況を確認し、「後方よし!」と指差喚呼
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ざっとこんな感じです。
車掌見習の実車教習が行なわれていた時、観察した内容を基に書き起こしました。
あくまで一個人の観察を元としております。
鉄道事業者への問い合わせはご遠慮下さい。


都営10-300形 車掌
都営地下鉄車掌(新線新宿駅)az02
乗降が済んだ事を確認し、すぐさま閉扉操作を行なう車掌
2013年9月28日、京王新線新宿駅にて撮影

レピーターの点灯を確認して「出発進行」と喚呼するのは、同じ都内の東京メトロや東武鉄道札幌市営地下鉄と同様ですね。
実は車掌が「出発進行」と喚呼するケースは少なく、例えばJR北海道は「出発現示よし」JR東日本は「(閉塞)レピーター点灯」、JR東海は「信号オーライ」、JR西日本は「信号よし」、近鉄・琴電は「出発よし」、東急・京王・京成は「反応進行」など、会社によって喚呼の仕方にバラつきがあります。

停止位置目標の喚呼は乗り入れ先の京急や京王と同様、乗務列車の編成両数に則した停止位置目標を目視して「○両よし」と言います。
「乗降よし」の喚呼は国鉄の「時機よし」と同じ性格のものですね。
ただし都営地下鉄もある程度勤務を続けた車掌は、段々と指差確認の際に声を出さなくなっていきます。
これは全国各地の鉄道会社にありがちな話ですね。
出発合図については一般的な鉄道会社と同様、ブザー合図と運転台知らせ灯を併用しています。


京急新1000形 車掌 都営浅草線
都営地下鉄車掌(東日本橋駅)az01
京急新1000形の乗務員室から大きく身を乗り出し、出発時の列車監視に臨む車掌
2012年8月2日、都営浅草線東日本橋駅にて撮影

そして何と言っても個性的だったのは、車掌が乗務員室扉を開け放った状態で行なう列車監視です。
この列車監視自体は昭和時代まで、全国各地の鉄道路線で見られたといいます。
首都圏でも東急、京王、京成、京急、小田急、江ノ電、箱根登山鉄道など、多くの私鉄でこの方式が採られてきました。
しかし転落事故の危険性が問題視されるようになると、次第に鉄道各社は落とし窓から顔を出す方法へと基本動作を改めるようになっていったそうです。
中には国鉄や営団、東急のように、出発直後は乗務員室扉を開けたまま列車監視を行ない、前方の安全が確認できたら途中からドアを閉めて窓から顔を出すようにした会社もあります。
更に2000年代以降は車掌が閉扉操作を行なった後、乗務員室扉を閉めて窓から顔を出した後に出発合図を行なうパターンも増えてきました。
車掌の欠乗事故防止をより徹底しようという鉄道各社の意図が見てとれますね。


都営10-000形 高速電車車掌 都営地下鉄 都営新宿線 指差称呼確認
都営地下鉄車掌(馬喰横山駅)az01
乗務員室扉を開け放ったまま、列車監視に臨む車掌
2013年9月30日、都営新宿線馬喰横山駅にて撮影

ところで、この乗務員室扉を開けた状態で行なう列車監視ですが、鉄道ファンの間では「箱乗り」と呼ばれる事が多いですね。
ただし箱乗りとは元々、自動車の助手席の窓枠に腰を掛け、開いた窓から上半身を大きく乗り出す行為を指す言葉です。
昔の暴走族がやっていたような動作ですね。
『西武警察』などの刑事ドラマやアクション映画でもしばしば見られる箱乗りですが、それがどういう訳か「開いたドアから身を乗り出す行為」に意味がすり替わっているのです。
個人的には何年経っても違和感を拭い切れないので、今後もドアを開けて行なう列車監視を「箱乗り」と呼ぶつもりは毛頭ありません。


都営10-000形 高速電車車掌 都営地下鉄 都営新宿線 指差称呼確認
都営地下鉄車掌(浜町駅)az01
ITV、自身の前方と立て続けに視線を変えて側面状態を確認する車掌
2013年9月30日、都営地下鉄浜町駅にて撮影

とまあ、ちょっとした文句を書き連ねましたが、ここからは小ネタです。
実は都営地下鉄も京成電鉄や札幌市営地下鉄などのように、車掌個々人によって確認動作に大きなバラつきが見られました。
以下にパターンを列記していきましょう。

A.札幌市営地下鉄の基本動作と同じ動き
 入線時:落とし窓を開け、顔を出して停車確認
      →乗降口を開扉
      →乗務員室扉を開けてホームに出る
 発車時:乗降口を閉扉
      →発車合図のブザーを1打
      →乗務員室扉を開けた状態で発車後の列車監視

到着監視は窓から顔を出して行ない、出発監視はドアを開けたまま行なうというものです。
この動作はツーマン時代の札幌市営地下鉄における基本動作と同じですね。
都営地下鉄では新宿線で多く見られ、京急・京成でも同様の動作が見られました。


B.到着時のみドア開け
 入線時:乗務員室扉を開け、身を乗り出して停車確認
      →乗降口を開扉
      →そのままホームに出る
 発車時:乗降口を閉扉
      →発車合図のブザーを1打
      →乗務員室扉を閉め、窓から顔を出して確認

Aとは正反対の動作です。
都営新宿線の10両編成に乗務する際、この動作に切り替える車掌が多かったですね。
一昔前はJR北海道でも時折見られました。
JR四国では無人駅停車時にこの動作を取る事があります。


C.到着・出発ともに窓から顔を出して列車監視
 入線時:落とし窓を開け、顔を出して停車確認
      →乗降口を開扉
      →乗務員室扉を開けてホームに出る
 発車時:乗降口を閉扉
      →発車合図のブザーを1打
      →乗務員室扉を閉め、窓から顔を出して確認

この動作はJR西日本や相鉄などと同じスタイルですね。



都営地下鉄車掌(新線新宿駅)az03
乗務員室から大きく身を乗り出す車掌
つま先さえも豪快にはみ出している
2013年9月28日、京王新線新宿駅にて撮影

以上は列車監視におけるパターンですが、他にも停車中の安全確認を全て車内から行なう車掌も見られました。
といっても乗務員室扉を閉め、開いた窓からホームの状況を見続けるという訳ではありません。
乗務員室扉を開けた上で、ホームに降りずに一連の確認動作を行なう車掌も中にはいたんですね。





こちらの動画は都営浅草線5000形がまもなく引退を迎えようという時期に撮影されたものです。
再生時間4:24からの車掌の動作に注目!
列車が動き出すや再びITVを再確認し、指差確認をしているのです。
この動作は私が都内に住んでいた2013年当時も、浅草線と新宿線で時々見かけましたね。





こちらの動画は都営新宿線西大島駅を通過する急行を撮影しています。
都営地下鉄の車掌は通過駅の監視を行う際、京急や京王などのように非常ブレーキ弁に手を預けた状態で後方を向き、線路やホームの状況を確認します。
しかし、この動画に映る車掌は京成や京浜東北線などのように、速度をつけて通過する際も窓から顔を出して前方のホーム上を監視しているのです。
この動作は都内在住の時も見かけましたが、都営地下鉄では新宿線でしか見た事が無いですね。
しかも毎回、同じ車掌さんだった記憶があります。


京急1500形 都営浅草線 車掌
都営地下鉄車掌(西馬込駅)az01
京急1500形に乗務する都営地下鉄の車掌
2012年7月30日、都営浅草線西馬込駅にて撮影

以上、ざっと都営地下鉄の旧動作を取り上げました。
ドアを開けっ放しにしての列車監視が見られなくなるのは、古きよき鉄道の情緒がますます薄れていくように感じられて寂しいものですが、安全を考慮すれば仕方ない事だと思います。

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最終更新日 : 2021-08-14

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