札幌市東区北8条東2丁目に本社工場を構え、駅弁の製造販売を手がける㈱札幌駅立売商会。
同社は1890年より札幌駅初の駅弁販売を手がけた高田文蔵に代わり、1899年に新潟県糸魚川出身の料理人・比護与三吉(ひご・よさきち)が設立した「比護屋」をルーツに持ちます。
比護氏は札幌駅のロングセラー駅弁となる「石狩鮭めし」を1923年に発売し、更にご飯とおかずを別々に詰める「二重折り箱」を考案するなど、画期的なアイデアを生み出しました。
しかし戦時下の旅客減少・食糧難による心労が祟り、比護氏は病に冒され1937年に他界しました。
それから6年後の1943年、洲崎家が比護屋を継承するかたちで㈲札幌駅立売商会が設立し、屋号を「弁菜亭」に改称。
1961年には札幌駅ホームに立ち食い蕎麦屋をオープンし、1976年には株式会社に改組。
1984年には現在の本社工場が操業を開始し、約150名の従業員が一致団結して多くの旅客に札幌の駅弁を提供し続けてきました。
駅弁以外ではホテルや学校等への仕出し弁当や、パーティーオードブルの調理販売も手がけるようになっています。
JR北海道 国鉄 札幌駅構内 駅弁 札幌駅立売商会 本社工場 弁菜亭 JR貨物
ところが2020年2月、中国・武漢を根源とする新型コロナウィルスが日本に上陸すると、感染拡大による外出自粛が大きく響き業績が悪化。
会社の生き残りを賭けて大手グループの傘下に入った方が得策と考え、支援先を探すようになりました。
すると生活協同組合コープさっぽろが名乗りを上げ、その関連会社であるコープフーズ㈱が2021年2月に札幌駅立売商会の全株式を取得(※Wikipediaにコープトレーディングとあるが間違い)。
創業家の洲崎昭光社長は続投し、従業員の雇用も継続する事になりました。
JR北海道 国鉄 札幌駅構内 駅弁 札幌駅立売商会 本社工場 弁菜亭 JR貨物
『北海道新聞』2021年8月4日付朝刊第9面より引用
その後は弁菜亭とコープさっぽろの協業による販路拡大、弁当の共同開発といった取り組みを加速。
2021年4月22日に開業した「コープさっぽろしろいし中央店」には弁菜亭の販売コーナーを常設し、札幌駅の駅弁を取り扱っています。
他にも「コープ配食サービス」を利用した駅弁の販売を始め、組合員向けに弁菜亭がおせちを製造する計画もあるといいます。
以下に道新の記事を引用しましょう。
*****************************************************************
コープ、弁菜亭の支援強化
弁当共同開発や販路拡大 コロナ下、業績立て直し
コープさっぽろ(札幌)が、JR札幌駅構内で老舗弁当店「弁菜亭」を運営する札幌駅立売商会(同)との協業を加速している。新型コロナウィルス禍による観光客減少で業績が悪化した同社を2月に買収。地元客を念頭に中食用の弁当を共同開発したほか、コープ店頭や配食サービスを通じて販路拡大を支援する。
札幌駅立売商会は1899年(明治32年)の創業。19年度の売上高は約6億円だったが、コロナ禍で町内会や学校行事向けなどの仕出し事業も注文が減り、コープが関連会社を通じて同社の全株式を取得した。
業績立て直しに向け、1日から両者が共同開発した「三種の神器弁当」(850円)を札幌駅の弁菜亭で1日50個限定で販売。コープの惣菜強化店舗で販売する卵焼きと焼きサケに、道産すり身のかまぼこを加えた三つのおかずが売り物で、同社の洲崎昭光社長は「道民に仕事帰りなどに買ってもらえれば」と話す。
販路支援では、4月に開業したコープの「しろいし中央店」(札幌市白石区)に弁菜亭の販売コーナーを設け、「とりめし」など6種類を駅売り用より容量を減らして400~850円で販売。コープの高齢者向け配食サービスではイクラなどが入った海鮮ちらしや和菓子を扱う。また組合員向けに来年のおせち料理を製造し、コープ店頭で予約を受け付ける予定だ。
(伊藤正倫)
《出典》
『北海道新聞』2021年8月4日付 朝刊第9面 経済・商況
*****************************************************************
JR北海道 国鉄 駅弁 札幌駅立売商会 本社工場 弁菜亭 JR貨物 白石駅 函館本線 千歳線
道新を読んで「コープさっぽろしろいし中央店」の弁菜亭コーナーが気になり、さっそく現地に行ってみました。
しろいし中央店は札幌市白石区中央3条3丁目の平和通沿いに建っており、近くには国鉄千歳線のルート変更に伴い1973年9月9日に使用を開始した貨物支線白石~東札幌間の廃線跡(1986年11月1日廃止)があります。
ただし最寄り駅である函館本線白石駅とは直線距離にして1.3kmも離れており、まともに歩くと片道24分を要します。
店舗は2階建てで1階に食品売り場、2階に100円ショップのダイソーが入居しています。
コープさっぽろしろいし中央店 弁菜亭コーナー
コープさっぽろは組合員のSNS発信による集客拡大を狙い、店内の撮影を認めています。
玄関にも「店内撮影OK」の表示。
心置きなく弁菜亭コーナーの撮影に臨めますね。
コープさっぽろしろいし中央店 弁菜亭コーナー 駅弁
コープさっぽろしろいし中央店 弁菜亭コーナー 駅弁
弁菜亭コーナーは惣菜売場の中に設けられています。
コープのデリカスタッフが調理した弁当や寿司と一緒に駅弁が並ぶという、なかなか新鮮な光景を目の当たりにしました。
コープさっぽろしろいし中央店 弁菜亭コーナー 駅弁
この日のラインナップは人気第1位の「鶏めし」を筆頭に、第2位の「帆立めし」、第3位の「蟹とサーモンめし」、それから「鮭イクラめし」、「蟹めし」、「笹吉幕の内弁当(海鮮ちらし)」、「笹吉幕の内弁当(山菜おこわ)」の計7種類。
1番人気の「鶏めし」が最安価で430円(税込)、奥に置かれた「笹吉幕の内弁当(海鮮ちらし)」が最高価で972円(税込)です。
デリカスタッフが作った惣菜類は棚と平行になるように陳列していますが、弁菜亭の駅弁は目立たせるためか斜めに陳列しています。
コープさっぽろしろいし中央店 弁菜亭コーナー 駅弁
せっかくなので3種類の駅弁を購入。
自宅に持ち帰りました。
コープさっぽろしろいし中央店 弁菜亭コーナー 駅弁
まず左から。
人気第2位の「帆立めし」です。
税込み538円、ご飯の上に帆立の甘露煮、錦糸卵、枝豆、大根の梅酢漬け、椎茸の煮物を載せています。
コープさっぽろしろいし中央店 弁菜亭コーナー 駅弁
続いて「鮭イクラめし」。
具は鮭のほぐし身、イクラ、錦糸卵、枝豆、大根の梅酢漬け、椎茸の煮物です。
札幌駅の定番駅弁「石狩鮭めし」に近い印象ですね。
税込み538円。
コープさっぽろしろいし中央店 弁菜亭コーナー 駅弁
最後に人気第3位の「蟹とサーモンめし」。
具はサーモン、蟹のほぐし身、錦糸卵、枝豆、ひじきの煮物、ガリです。
税込み538円。
2021年8月現在はインドで発生した変異株の「デルタ株」が猛威を振るい、未だに収束の気配が見えない新型コロナウィルス問題。
観光客を相手にしてきた事業者は今後しばらく苦戦を強いられる事になるでしょう。
それでも弁菜亭のように知恵を絞り、逆境を乗り越えてコロナ後の繁栄に向かう事を切に願うばかりです。
※写真は全て2021年8月7日撮影
スポンサーサイト
最終更新日 : 2021-08-07