タタールのくにびき -蝦夷前鉄道趣味日誌-

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2021-07-26 (Mon) 22:23

根室本線庶路駅 八王子千人同心の開拓地で2度も起きた重大事故

庶路駅a03

釧路管内は白糠郡白糠町庶路1丁目にある、JR北海道の庶路(しょろ)駅。
白糠町の中心街から東北東に約6.5km、庶路川とコイトイ川が合流する河口に築かれた人口約700人の集落に駅があります。
庶路の語源はアイヌ語の「ソ・オロ・ル」で、和訳すると「滝に向かっている道」となります。
実際に庶路川の河口から30kmほど上流に遡ると「大滝」と呼ばれる滝があり、その美麗な景観を一目見ようと多くの観光客が訪れます。

白糠には1632年にアイヌと和人の交易の場として「白糠場所」が開設されましたが、庶路に和人が住むようになったのは1800年の事です。
前年の1799年に東蝦夷地がロシアの脅威に晒された事から、江戸幕府の家臣団である八王子千人同心が防衛の任に就くべく蝦夷地入りしました。
千人同心には「千人頭」と呼ばれる10人の組頭がおり、組頭1人につき100人の子弟を抱えていました。
その組頭の1人・原半左衛門胤敦(たねあつ)は自ら蝦夷地警備を志願し、実弟にして副長の新介と共に100人の子弟を率いて蝦夷地に移住。
弟の新介が50人の子弟を連れて勇払に入植した一方、胤敦は残る50人を連れて白糠に入植し、警備と開墾、物資輸送に必要な道路の整備に従事しました。
千人同心は庶路に分駐所を設けて分隊に常駐させ、対露最前線の防衛に当たりました。


JR北海道 国鉄 庶路駅 旧駅舎 木造駅舎 JR貨物
庶路駅a01
庶路駅の初代駅舎は木造下見張りの平屋だった
北海道旅客鉄道株式会社釧路支社(2001)『JR釧路支社 鉄道百年の歩み』p.163より引用

庶路駅は1901年7月20日、北海道官設鉄道釧路線白糠~釧路間の新規開業に伴い一般駅として開設されました。
北海道官設鉄道は1905年4月1日を以って国鉄に編入。
釧路線は1913年11月10日の滝川~下富良野間延伸に伴い「釧路本線」、1921年8月5日の西和田~根室間延伸(全通)に伴い「根室本線」と2度の改称を重ねています。

1970年12月24日、根室本線厚内~東釧路間の単線自動信号化に伴い、庶路駅におけるタブレット閉塞器の取り扱いが終了。
更に1971年5月1日には根室本線上落合~昭栄間、同年8月1日には根室本線昭栄~新富士間でCTC(列車集中制御装置)の使用を開始し、これに関連する合理化によって庶路駅は同年10月2日を以って無人化されました。
旅客フロント(出改札・案内)、小荷物フロント、貨物フロントは何れも全廃となり、一般駅から旅客駅に格下げとなりました。
なお、根室本線では同日付で庶路駅を含む7駅(他は西帯広・十弗・上厚内・直別・尺別・初田牛)を無人化、4駅(御影・厚内・利別・西庶路)を業務委託化しています。


庶路駅構内 貨物列車正面衝突事故 CTC 列車集中制御装置 東庶路信号場
庶路駅貨物列車正面衝突事故
『北海道新聞』1973年11月12日付朝刊第19面より引用

1973年11月10日、庶路駅構内で貨物列車同士の正面衝突事故が発生。
この直前に釧路鉄道管理局中央制御室の掛員が庶路駅CTCの故障を発見し、すぐさま列車指令を通じて白糠駅助役と釧路電気区釧路信号支区の信号検査長らを現地に派遣していました。
CTCの故障により駅構内の転轍機が正常に作動していなかったため、転轍機をCTC制御から現地手動操作に切り替えて正しく進路構成を行なった・・・筈でした。
しかし見回りを終えた信号検査長が駅舎に戻ろうとした途端、転轍機が再び反対方向に切り替わって事故が起きたというのです。
書籍『絆 動労池田支部史』(1988)によると、2本の貨物列車を運転していたのは共に池田機関区の機関士だったとの事。
釧路鉄道管理局は事故対策本部を設置して原因の究明に当たりましたが、結局は不明のまま事故はベールに包まれてしまいました。
以下に道新の報道を引用しましょう。

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貨物列車が正面衝突 根室本線
機関車壊れ、4両脱線

 【白糠】10日夜、釧路管内白糠町、根室本線庶路駅構内で貨物列車同士が正面衝突、4両が脱線して同本線は上下線とも不通となった。この事故で貨物列車の運転士ら3人が軽いけが。釧路発の札幌行き急行列車1本が、手前の東庶路信号所から釧路駅に引き返したほか、旅客、貨物合わせて15本が運休、2本が打ち切られた。

乗務員3人が軽傷 制御装置が故障中

 10日午後9時57分ごろ、根室本線庶路駅(無人駅)構内で待ち合わせて停車していた岩見沢発釧路行きの下り貨物列車475列車=平山清吉運転士(36)27両編成=に釧路発五稜郭操車場行き上り貨物4482列車=神戸毅運転士(52)7両編成=が正面衝突した。このため下り列車のディーゼル機関車が前部を大破、はずみで上り列車の貨車3両と下りの1両が脱線、うち2両が上り線に乗り上げて大きく傾いた。また、上り列車の機関車も冷却機の破損やエンジンオイル漏れで運行不能となった。このため同線は上下線とも不通となり、午後9時25分釧路発の札幌行き急行狩勝3号は庶路駅から釧路寄りの東庶路信号所から釧路駅に引き返した。
 この事故で両列車の運転士と上り列車の列車掛山田芳三さん(39)が顔や頭などを打ってそれぞれ1週間程度の軽いけが。
 復旧作業はトラッククレーン1台のほか池田、釧路機関区から救援列車が駆けつけて行なわれ、11日午前2時現在の見通しでは、同3時過ぎには復旧する予定。
 事故発生前の同日午後8時42分に、庶路駅の列車集中制御装置(CTC)が故障していた事実があり、釧鉄局で事故との関係を調べている。

《出典》
『北海道新聞』1973年11月11日付 朝刊第19面
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ボロ出した?CTC
庶路駅事故 確認直後なぜ誤接続

 【釧路】10日夜、釧路管内白糠町の国鉄根室本線庶路駅構内でポイント故障のため、上りと下りの貨物列車が正面衝突、同線は不通となっていたが、11日未明に復旧した。これと並行して釧鉄局の事故対策本部(本部長・遠藤釧鉄局長)では事故の原因究明に当たっているが、上り貨物列車が下り線に突っ込む前の信号は”青“だったといい、なぜポイントが逆方向に切り替わったのかは依然としてナゾに包まれている。

原因わかるまで単線で

 同事故対策本部はこの事故が列車集中制御装置(CTC)に関連しているところから、永井和夫・国鉄本社電気局信号課長補佐を11日現地に派遣、原因究明に乗り出した。
 今までの調べでは事故の発生前、釧鉄局内にある中央制御室のCTCが2度に渡り異常を示していることがわかった。庶路駅構内の信号機、ポイントはCTCに組み込まれ、列車の進行状況に合わせ、自動的に動く仕組みになっている。ところが10日午後8時40分ごろ、中央制御室の掛員が、庶路駅のポイントが正常に動かないのを発見、急きょ列車指令を通じて管理駅である白糠駅から助役1人と釧路信号支区掛員2人を庶路駅に派遣した。同駅にはCTCとは別に独立してポイントを切り替える装置があり、これでポイントを動かすとうまく作動したため、同駅構内の信号とポイント操作を現地手動操作に切り替え、とりあえず下り貨物列車と下り特急おおぞら3号の2本を通過させた。
 このあとCTCはいったん正常に戻ったが、間もなく再び異常を示したため、また現地手動操作に切り替えた。庶路駅では万一のために吉本孝志・信号支区検査長に問題のポイント個所を見回らせたが、信号は青、ポイントも列車の進行方向に正しく切り替わっていたため”大丈夫と判断“、吉本検査長が駅舎に戻ろうとしたところ、上り貨物列車が確認したのとは反対の下り線路に進入、事故が起きたという。
 なぜ2度にわたりCTCが正常に動かなくなったか。また吉本検査長が確認したにもかかわらず列車の進入直前にポイントが反対方向に切り替わったか―。
 このナゾについて遠藤事故対策本部長は「信号を通過した直後にポイントが切り替わったとも見られるが、なぜそうなったのかは今のところ全くわからない。しかし、原因不明のまま庶路駅構内のポイントを使うことは出来ないので、当分の間、庶路駅構内は単線運転とする」と話している。
 根室本線のCTC化は、46年8月に落合ー釧路間197.5㌔が完成、これまで一度も事故がなく釧鉄局は自慢していた。

《出典》
『北海道新聞』1973年11月12日付 朝刊第19面
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特急おおぞら3号脱線事故 庶路駅構内 キハ82系 キハ80系

庶路駅特急おおぞら3号脱線事故
『北海道新聞』1976年4月14日付朝刊第18、19面より引用

貨物列車の正面衝突から2年半、1976年4月13日にまたも庶路駅構内で重大事故が発生しました。
この事故は釧路発函館行きの特急おおぞら3号が異常な横揺れに襲われ、気動車運転士が咄嗟に急ブレーキをかけるも間に合わず脱線したというものです。
駅構内の道床が融凍によってレールを外側に大きく歪ませ、軌間狂いを急速に引き起こした事で脱線を招きました。
なお、動労池田支部史編集委員会は『絆 動労池田支部史』(1988)の中で「北海道において春先の融凍は当然あるものであり、保線の合理化がこの事故を生じたともいえる」(p.137)と指摘しています。
以下に道新の報道を引用しましょう。

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特急脱線、2両が横転 根室本線庶路駅構内
上り「おおぞら3号」乗客22人がけが 直前、異様な揺れ

 【白糠】春闘第四波統一行動日を目前に控えた13日午後、釧路管内白糠町、国鉄根室本線の庶路駅構内で、釧路発函館行き上り特急おおぞら3号10両のうち7両が脱線、うち最後部2両が横転した。この事故で乗客22人がけがをし、同町や釧路市内の病院で手当てを受けた。釧鉄局は直ちに同局内に「庶路駅脱線事故復旧対策本部」(本部長・松丸正一局長)を置き、現場検証と並行して同日午後8時半から徹夜で復旧作業に当たっており、14日午後7時過ぎには開通する見通し。同本部と道警釧本、釧路署合同で原因を調べているが、現場付近では事故直前に保線作業をしており、この作業と事故の関連を調べている。(関連記事18、19面に)

復旧、今夜7時過ぎ レールに異常か

 同日午後2時12分ごろ同管内白糠町庶路、国鉄庶路駅構内、釧路駅起点19.5㌔、庶路駅から350㍍釧路寄りで、釧路発函館行き上り特急おおぞら3号=出島権一運転士(46)、10両編成=が異常な横揺れを感じ、出島運転士が急ブレーキをかけたが間に合わず脱線しながら停車した。この事故で前部3両は無事だったが、4両目以降が全軸脱線、7両目までの4両が右に、8両目からは左にそれぞれ傾き、9、10両目の2両が横倒しになった。
 同列車には乗客284人が乗っていたが、脱線、横倒しになった車両の22人(釧鉄局調べ)がけがをし、同町滝医院、釧路市内の労災病院など5つの病院に収容されたが、同管内標茶町ルルラン、学生稲木輝義さん(24)がろっ骨を折って1ヶ月のけがをしたほか、残る21人も顔や足などに軽いけが。
 同列車は、定刻より40秒遅れて釧路駅を出発、時速82、3㌔のスピードで運転していたが、庶路駅手前約300㍍の信号機付近まできたとき、突然異常な横揺れで危険を感じた出島運転士が常用ブレーキをかけたところ、非常ブザーが鳴った。このため同運転士が非常制動に切り替えた瞬間、4両目からゆっくり次々と脱線、横倒しになった。
 現場は太平洋岸沿いの見通しのよい緩やかな右カーブ。事故でレールはあめのように折れ曲がり、まくら木も約100㍍にわたりバラバラに引きちぎられて事故のすさまじさを物語っていた。脱線、横転した車両が多かった割に負傷者が少なかったのは、急ブレーキでスピードが落ちていたのと、乗客が定員の約半数と少なかったためとみられている。
 この事故を重視した釧鉄局は同局内に復旧対策本部を設け、原因究明に当たる一方、現場に徳田真一運転部長、伊忠夫施設部長ら100人を派遣して復旧作業を急いだ。徹夜の復旧作業で、同線は14日午後7時すぎには開通する見通しだが、単線区間のためこの日、おおぞら3号はじめ急行狩勝3号など15本が運休した。また事故に遭った乗客は、国鉄がチャーターしたバス7台に分乗して帯広、釧路両駅に向かったほか、帯広で打ち切りとなった下りおおぞら3号の乗客もバス4台で釧路に向かった。
 同局は14日の午前中の運転計数をとりあえずまとめた。それによると、特急関係では釧路ー白糠間、急行では釧路ー帯広間でそれぞれバス代行輸送し、これを平常ダイヤになるまで行い、近距離の通勤、通学客は白糠ー釧路間でバス輸送する。
 またこの事故で根室本線沿いの国道38号線は、事故現場付近の混雑で一時、交通が渋滞した。

レールに異常か

 本道国鉄の代表的特急おおぞらが脱線転覆、しかも直線の平たん地で―。知らせを受けた国鉄道総局や国鉄本社の運転、施設関係幹部は一瞬信じられない表情を見せ、また大きなショックを受けている。
 現場は庶路駅ポイントの120㍍ほど手前であるため、国鉄側ではポイントや信号機の故障が原因ではないかと見ている。このため ①レール上の障害物 ②レールの欠損 ③車両の不備 ④現場で行なわれていた保線作業上のミスなどが浮かび上がってくるが、このうち昨年2月、千歳線で下りおおぞら1号に起きたような車両不備(逆転機のピン脱落)はみられなかったという。
 このため、レールに何らかの異常があったという見方が強い。特に3日午後に今回の脱線現場で貨物列車乗務員が異常振動を感じ、調べたところレールが10㍉ほど湾曲していた事実があったばかり。これは天候が暖かくなってレールが膨張、継ぎ目のすき間にゆとりがなくなったためだが、こうした状況から釧鉄局は現場近くでレールの遊間整正作業(レールの継ぎ目を正す作業)の準備作業を実施していた。レールに異常があった場合、同特急以外にも異常振動を感じるはずだが、事故発生の15分ー20分前に2本の列車が現場を通過して異常を認めていないことから、当局側は整正作業が事故と結びついた可能性もあるとして、詳しく調査している。

《出典》
『北海道新聞』1976年4月14日付 朝刊第1面
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レールぐんにゃり まくら木散乱
こんな大事な時に・・・ とまどいと緊張の労使

 ヤマを迎えた春闘ストの前日に起きた特急列車の脱線、転覆事故。「こんな時に・・・」。道内国鉄の労使のトップは戸惑いと極度の緊張を隠せないでいる。
 関川道総局長は出張先の旭川から13日夕刻、札幌に急ぎとって返した。すぐ事故の詳しい報告を受けたあと、けがした乗客への迅速な措置と早急な復旧作業を指示。運転や営業の担当者は釧鉄局との間で「機械力を全力投入して・・・」、「これからの列車の運転はどうなる」といった電話のやり取りが続く。
 「14日はストのためただでさえ運休列車が出て、みなさんにご迷惑をかけるのに、これに事故による影響まで重なることになってしまい・・・」と、日吉運転部長。ストでは普通、急行列車に運休が出、特急だけは”無キズ“のはずだったのに、これでその特急までダイヤが乱れるハメとなった。車両が横倒しになったにしては、比較的に負傷者の数が少ないうえけがも軽かったのが、せめてもの救いのよう。
 一方、動労道本の事務所でも当局と同様に現地の釧路地本と電話で幾度も連絡を繰り返す。「時が時だけにびっくりした」と、伊藤書記長。ストの前日に列車が転覆、もしかして列車妨害があったのでは・・・というイヤな思いが脳裏をよぎったらしい。「先頭車は大丈夫だった。横倒しになったのは後方の車両だし・・・」と、列車妨害でないことが判明してひとまず安心したもよう。
 それでも「原因を徹底的に調べないと・・・」と、言葉をつなぐ。

「負傷者出してしまい・・・」 沈痛な松丸局長ら

【釧路】庶路駅からの”特急脱線“の緊急連絡に釧鉄局では「本当か?」と全員青ざめた。同局管内でこの7日に道東地方を襲った春吹雪で根室、釧網両本線をはじめ標津線が2日間にわたって無ダイヤ状態になったあとだけにダブルパンチとなった事故にガックリ。現場から次々と入る状況に聞き入る松丸正一局長ら幹部は「負傷者まで出す事故を起こして誠に申し訳ない。死者が出なかったのがせめてもの救いです」と言い、夜遅くまで復旧作業の進行状況を気遣いながら、復旧後に備えてダイヤ作成に追われていた。


まるで真昼の悪夢 恐怖に青ざめる乗客

 【白糠】ぐんにゃりと折れ曲がったレール、粉々になって散乱するまくら木―。13日午後、特急おおぞら3号が脱線、横転した釧路管内白糠町庶路の事故現場は10両編成のうち先頭3両を除く7両が右に左に脱線、横転。とりわけ、5、6両目周辺はレールがあめのように折れ曲がったり、まくら木が木片となって飛び散ったほか、後部2両は完全に横倒しになり、事故のすさまじさを見せつけていた。弟の結婚式に、娘の出産手伝いに、と旅行中だった乗客達は突然、訪れた”真昼の悪夢“を思い起こしてか、いちように青ざめた表情を見せていた。

 この日、釧路地方は早朝から青空が広がり、絶好の旅行日和。おおぞら3号は午後2時25分の定刻をやや遅れて釧路駅をスタート。釧路市街地を抜け本来のスピード、時速80㌔を超えてまもなく車体がガツン、ガツンと揺れ出した。284人の乗客が「なにか起きたのでは」と車窓から戸外をながめようとしたとたん、揺れが強まり、列車のスピードがダウン。と同時に、4両目の10号車がゆっくりと進路右側に傾いたのに続き5-7両目までが右側に傾いた。さらに8両目が左側に40度ほど傾いたほか、9、10両目は完全に横転した。
 と同時に車内は窓際に押しつぶされる乗客や幼児をかばおうとする母親らで大混乱。「何が起こったのか」―一瞬、わが目を疑った乗客も横倒しの”現実“とともにわれに返り、次々と出口へ―。しかし、ドアは閉ざされたまま。わずかにすき間の見える列車間の接続部分から若い男性が戸外へ逃げ出したのに続き、お年寄りや母子連れも次々と横転列車から脱出していった。
 命からがら車外に抜け出た乗客が見たおおぞら3号は―。中央部の食堂車と最後尾車両から黒い煙をふきながら、無残に横たわったまま。5、6両目付近の約30㍍間はレールが折れたり曲がったり、まくら木が粉々に砕け散ったほか路床までが崩れ去り、”鉄道“のイメージはどこにもない、まるで、鉄骨のスクラップ置き場と化しており、乗客の中には「こんなに線路がもろいとは・・・」とわが目を疑うかのよう。
 事故現場は釧路から約20㌔、右手に太平洋を、左手に釧路湿原を望む景勝の地。線路と並行して国道38号線が走っているが、マイカーを運転中にこの事故を目撃した釧路市愛国39、会社員佐藤正志さん(29)は「列車が止まるか止まらないうちに客車が左右にゆっくりと傾いていき、さながらテレビのスローモーションを見ているようだった。それにしても特急が転覆するなんて、まるで”真昼の悪夢“を見たような感じだ」と目の前の大事故が信じられないようすだった。
 また、白糠町の滝医院にはけが人が次々と詰めかけ「首が痛い」「腰が回らない」。滝医師も看護婦さんが1人ずつレントゲンを撮ったり手当てをしたり。しかし、けが人は次第に増えていき、待合室や診療室はけがをした乗客であふれていく。中には「先生、早くして」と叫ぶ乗客も現れ、混乱が続いた。

レール異常やCTCの故障
いわくつき庶路駅構内

 【白糠】庶路駅構内では、以前にもレールの異常で列車がストップするという事故や、列車集中制御装置(CTC)の故障から貨物列車が正面衝突するという事故が起きており、乗務員の間では”あの構内はいやだ“との声がもっぱらだった。
 レールの異常が発見されたのは今月3日。上り線のレールが2本とも約15㍉ほどわん曲、この時は異常な横揺れに気付いた運転士がすぐ釧鉄局に連絡、レールの補修に当たったため、約2時間、根室本線の西庶路ー大楽毛駅間が不通になるという事態で済んだ。
 また、3年前の48年11月には、列車集中制御装置の故障から、真っすぐになっているはずのポイントが切り替わっていたため、運行中の貨物列車が、下り線で待機していた貨物列車と正面衝突、貨車4両が脱線、乗務員3人が負傷した。CTCが正常に作動しなかった原因については、当時の事故原因追究でも不明だった。

《出典》
『北海道新聞』1976年4月14日付 朝刊第18面、第19面 社会
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凍上でレールに狂い 外側に大きくふくらむ
根室本線脱線事故

 【釧路】釧路管内白糠町庶路、国鉄根室本線庶路駅構内で13日午後に起きた上り特急おおぞら4号脱線事故の原因を調査していた釧鉄局・同事故対策本部(本部長・松丸正一釧鉄局長)は19日午前、原因調査の結論をまとめるとともに、釧路署の同事故特捜本部に報告した。それによると、レールの張り出しによる軌間の狂いが原因で、同本線ではこうした異常による列車の異常動揺がしばしば起きているだけに、釧鉄局は保線体制の強化を迫られる。

 同本部によると、脱線事故は同駅から釧路寄りに300-700㍍離れた400㍍の区間で起きた。調査の結果、事故当日、同区間の線路は冬の間に凍上していた道床が沈下現象を起こしたため、レールとレールの継ぎ目の遊間が詰まってレールが外側に著しく張り出し、脱線につながった。 
 同事故の原因については、この3日にも事故現場から約100㍍庶路駅寄り地点で、道床の沈下による軌道の狂いが発生、通過した貨物列車から異常動揺の申告があったことから、レールの異常説が強かった。この結果、松丸局長は「事故の反省点をまとめて、今後このような事故を2度と起こさないように全力を挙げる」と語り、負傷者に陳謝の意を表した。
 一方、国労、動労両釧路地本は、脱線事故の原因がレールの異常によることがはっきりしたことから、この日、同局に対して今後の保線体制を強化するよう申し入れた。このうち動労釧路地本は、列車の乗務員から激しい動揺などレール異常の申告があった際の点検修理対策として、これまで異常申告地点から前後250㍍にわたって点検していた保線作業を今後は前後500㍍にわたって調べるよう申し入れ、同局は実施を約束した。
 道東の国鉄線では、幹線の根室本線はまだしも、釧網本線、標津線、池北線など7線区、約809㌔㍍のレールの”安全度“は道内でも下位にあることが指摘されている。49年末に国労、動労両釧路地本が全線区で安全点検を実施した結果でも各所でまくら木の腐食や犬くぎのゆるみ、レールのひび割れ継ぎ目のボルトのゆるみなど、レールの欠損状態が指摘され、同局も根室本線などで道床の入れ替え、レールの更新など保線作業に力を入れてきた。しかし庶路駅で起きた脱線事故では、こうした努力にもかかわらず、保線の弱体さがさらけ出されたことになり、その上、事故当日の直前までレールの継ぎ目を調整する作業やずれを防ぐ作業が行なわれていたいきさつもあり、臨機応変な保線体制が望まれている。

《出典》
『北海道新聞』1976年4月19日付 夕刊第7面
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JR北海道 国鉄 庶路駅 JR貨物 簡易駅舎 無人駅
庶路駅a04

庶路駅では1986年11月1日ダイヤ改正により、いわくつきだった交換設備の運用を終えました。
1987年4月1日、分割民営化に伴いJR北海道が庶路駅を継承。
現在の庶路駅は釧路駅を拠点駅とする釧路地区駅(担当区域:根室本線直別~根室間、釧網本線鱒浦~東釧路間)に属し、地区駅長勤務の釧路駅が直轄する完全無人駅です。
普通列車のみ停車し、特急・貨物列車は全て通過します。


JR北海道 国鉄 庶路駅 JR貨物 簡易駅舎 無人駅
庶路駅a02

現在の駅舎は国鉄末期の1983年に落成した2代目で、無人駅仕様の簡易駅舎(コンクリート造)です。
改札口や出札窓口の類は落成当時から無く、正面玄関から直接ホームに通り抜けられる構造としています。
なお、駅舎の東半分は保線休憩室となっており、北海道軌道施設工業㈱釧路出張所や㈲平松建設釧路作業所などの作業員が近隣で線路工事を行なう際に使用しています。


JR北海道 国鉄 庶路駅 JR貨物 簡易駅舎 無人駅 駅事務室
庶路駅a06

駅舎の東面には保線休憩室の玄関が設けられています。


JR北海道 国鉄 庶路駅 JR貨物 簡易駅舎 無人駅
庶路駅a05

駅前には白糠町営バスの庶路駅停留所があります。
町営バスといっても実態は民間委託のコミュニティバスで、くしろバス㈱が運転管理業務を受託しています。



庶路駅a07

駅前からホームへの連絡通路。
左側に待合室、右側に使用停止状態が続くトイレのドアがあります。


JR北海道 国鉄 庶路駅 JR貨物 簡易駅舎 無人駅 待合室
庶路駅a09
JR北海道 国鉄 庶路駅 JR貨物 簡易駅舎 無人駅 待合室
庶路駅a08

待合室の様子。
4人掛けベンチを向かい合わせに置いています。
駅ノートの類はありません。



庶路駅a10

室内には釧路警察署庶路駐在所が「駅周辺での迷惑行為は止めよう」との注意書きを掲示しています。


阪急電鉄8000系 阪急電鉄8300系 阪神電鉄
庶路駅a11

この注意書きには石勝線夕張支線札沼線末端区間の廃止前、現地の交番・駐在所が鉄道ファン向けに制作した注意書きにも使われていたウソ電のイラストが使われています。
阪急8000系・8300系の初期車に阪神赤胴車の塗装を施した姿がシュール。


JR北海道 国鉄 庶路駅 JR貨物 簡易駅舎 無人駅
庶路駅a13
JR北海道 国鉄 庶路駅 JR貨物 簡易駅舎 無人駅
庶路駅a14

ホーム側から駅舎を眺めた様子。



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保線休憩室の窓際には向日葵の造花が飾られています。
レースのカーテンも付けて小奇麗にしていますね。



庶路駅a21

実は駅舎の西側にも連絡通路があり、駅舎を通らなくても駅前とホームを行き来できます。


単式ホーム 相対式ホーム 庶路駅構内 無人駅 棒線駅 交換駅
庶路駅a16
単式ホーム 相対式ホーム 庶路駅構内 無人駅 棒線駅 交換駅
庶路駅a15

1面1線の単式ホーム。
20m車5、6両分はありそうな長さです。
先述したとおり国鉄時代は交換駅で、相対式ホーム2面2線を有していました。
駅舎側の1番乗り場を現在も使用している訳ですが、駅裏の2番乗り場は交換設備の廃止から30年以上を経てもなお崩されずに残っています。



庶路駅a18

旧1番乗り場の東側には・・・


釧路~白糠間鉄道開通100周年記念植樹
庶路駅a19

・・・2001年7月20日の釧路~白糠間鉄道開通100周年を記念し、植樹された木々が並んでいます。
この記念植樹は白糠町役場、庶路地区町内会、庶路小学校の3者合同で執り行いました。



庶路駅a20

旧1番乗り場と旧2番乗り場を繋ぐ跨線橋。
現在は駅裏の庶路宮下と駅舎を結ぶ手段として利用されています。


単式ホーム 相対式ホーム 庶路駅構内 無人駅 棒線駅 交換駅
庶路駅a23
単式ホーム 相対式ホーム 庶路駅構内 無人駅 棒線駅 交換駅
庶路駅a22

跨線橋から駅構内を俯瞰した様子。
廃止された2番乗り場の方が1番乗り場に比べて長いですね。



庶路駅a24

駅裏から跨線橋と駅舎を眺めた様子。
手前に小さな駐輪場が設けられています。


キハ40系1700番台 キハ40形1700番台 普通列車 ワンマン列車 庶路駅構内
庶路駅a26

庶路駅を出発する帯広行きのキハ40-1752。


キハ40系1700番台 キハ40形1700番台 普通列車 ワンマン列車 庶路駅構内
庶路駅a27

庶路駅に入線する釧路行きのキハ40-1776。
ホームには接近警報装置があり、列車が接近すると自動放送と警報音を流します。


駅名標 駅名板 駅名看板 庶路駅
庶路駅a28

ホーム上の駅名標。


駅名標 駅名板 駅名看板 庶路駅
庶路駅a25

旧2番乗り場には国鉄時代の駅名標が残っています。


※写真は特記を除き2021年5月3日撮影
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最終更新日 : 2021-08-13

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