タタールのくにびき -蝦夷前鉄道趣味日誌-

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2021-07-18 (Sun) 14:25

釧網本線全通90周年記念HM・サボを掲出した「くしろ湿原ノロッコ号」

くしろ湿原ノロッコ号・釧網本線全通90周年記念a03

毎年4月下旬~10月に釧網本線釧路~塘路間で運行され、稀に川湯温泉駅まで延長運転される事もある「くしろ湿原ノロッコ号」
1989年6月24日にデビューして以来、観光客を自然豊かな釧路湿原へと誘う「臨時普通列車」として走り続けています。
客車には釧路運輸車両所車掌科(旧:釧路車掌区)の車掌2、3名が乗務するほか、沿線在住のネイチャーガイドも添乗して肉声放送による観光案内を行ないます。
初代ノロッコ号は白を基調としたカラーリングでしたが、1997年7月1日に客車を一新。
国鉄型の50系客車を改造し、緑色に塗装した510系客車に取り替えています。
去る2019年6月24日には30周年を迎えました。


JR北海道 国鉄 臨時列車 釧網本線全通90周年記念ヘッドマーク DE10-1661 DE10形1661号機
くしろ湿原ノロッコ号・釧網本線全通90周年記念a04

そして来る2021年9月20日、釧網本線が全通90周年を迎えます。
90年前の1931年9月20日、札鶴(現:札弦)~川湯(現:川湯温泉)間が延伸開業し、別々に敷設していた釧網線東釧路~川湯間と網走本線網走~札鶴間が繋がりました。
これにより網走~札鶴間が釧網線に組み込まれ、釧網本線166.2kmの全通を見たのです。
今シーズンのノロッコ号は「釧網本線全通九十周年」の記念ヘッドマークを掲出し、2021年4月29日より運行を開始しました。


オクハテ510-1 塘路駅 臨時列車 510系客車 50系客車 釧網本線全通90周年ヘッドマーク
くしろ湿原ノロッコ号・釧網本線全通90周年記念a07

ノロッコ号は2021年5月16日、新型コロナウィルス感染拡大を受けて北海道に緊急事態宣言が発令された事を受け、2ヶ月間に渡る長期運休を挟みました。
2021年7月17日に運行を再開し、再び「釧網本線全通九十周年」のヘッドマークを掲げて湿原の線路を往復しています。


オクハテ510-1 塘路駅 臨時列車 510系客車 50系客車 釧網本線全通90周年ヘッドマーク
くしろ湿原ノロッコ号・釧網本線全通90周年記念a06

記念ヘッドマークは「90」の「0」を動輪に見たて、ノロッコ号のイラストをあしらったもの。
牽引機であるDE10形と、オクハテ510-1の両方に掲出しています。


側面サボ 行先サボ サイドボード ノロッコ号 釧網本線全通90周年記念サボ 510系客車
くしろ湿原ノロッコ号・釧網本線全通90周年記念a08

ヘッドマークだけでなく、車体側面の行先サボも全通90周年記念仕様です。


くしろ湿原ノロッコ号 釧路運輸車両所車掌科 専用制服 JR北海道 釧路車掌所 釧路車掌区
くしろ湿原ノロッコ号・釧網本線全通90周年記念a01

ノロッコ号に乗務する車掌の専用制服は、90周年記念に先駆けて2020年7月18日に導入されました。
前年の2019年には運行30周年を迎え、累計乗車人数も200万人を達成。
更に2020年6月17日には釧路湿原のラムサール条約登録から40周年を迎え、JR北海道釧路支社もこの機会に制服をリニューアルしようと決めた訳です。
専用制服はキャップ帽、パーカー、ポロシャツの3種類からなり、キャップ帽とTシャツの色はノロッコ号のカラーリングに合わせた深緑、パーカーの色は丹頂鶴をイメージした白としています。


くしろ湿原ノロッコ号 釧路運輸車両所車掌科 専用制服 JR北海道 釧路車掌所 釧路車掌区
くしろ湿原ノロッコ号・釧網本線全通90周年記念a12

パーカー、ポロシャツの背面には「Norokko Conductor(ノロッコ号の車掌)」との文言に、釧路の夕陽と丹頂鶴をあしらった大きなロゴが。
このロゴはキャップ帽の左側面や、ポロシャツの左袖にも小さくプリントしていますね。
専用制服をデザインしたのは釧路市在住のボールペン画家で、観光パンフレットのイラストマップ等を手がける原田カーナさん。
何とカーナさんは元ノロッコレディで、現在もノロッコ号の添乗ガイドとしてマイクを握り続けています。
なお、チャコールグレーのスラックスについてはノロッコ号専用の物ではなく、JR北海道の一般接客制服を使用。
靴も通常乗務で履くのと同じビジネスシューズです。

旭川支社管内の「富良野・美瑛ノロッコ号」は大分前からピンクのポロシャツを専用制服として着用していますが、あちらは帽子を一切被らず乗務するので車掌らしさがイマイチ薄いですね。
「くしろ湿原ノロッコ号」の新制服もラフな格好ではありますが、帽子があるだけでもユニフォームの雰囲気が強まります。
旅客からの識別のし易さに加え、万が一に事故処置が発生した際の頭部保護も考えると、やはり帽子は導入して頂きたいものです。


JR北海道 国鉄 50系客車 510系客車 車内改札 釧路運輸車両所車掌科 釧路車掌区
くしろ湿原ノロッコ号・釧網本線全通90周年記念a10
2016年8月11日撮影

一方、こちらは専用制服を導入する前の車掌。
チャコールグレーの制帽・スラックスに白の盛夏シャツという、一般駅員や運転士などと変わらない姿でした。
なお、釧路支社管内の普通列車は原則ワンマン運転という事もあり、釧路運輸車両所車掌科の乗務行路は大半が特急列車。
夏場はほとんどの車掌が白服姿で乗務するため、札幌車掌所や旭川車掌所の担当区域内みたいに黒服着用の車掌が見られるのは大変珍しかったのです。

ただしワンマン列車の「補助乗務」という扱いなので本務に当たらず、車掌は運転士が閉扉操作を行う際の安全確認と無人駅での集札に専念しています。
車内放送も一切せず、運転士が通常のワンマン運転と同じく自動放送装置を操作しています。


くしろ湿原ノロッコ号 釧路運輸車両所車掌科 専用制服 JR北海道 釧路車掌所 釧路車掌区
くしろ湿原ノロッコ号・釧網本線全通90周年記念a02

なお、釧路運輸車両所車掌科の所属だからと言って、全員が専用制服を着る訳ではありません。
こちらの写真では右奥に一般接客制服を着込んだベテラン社員の姿が見えますね。
この方は釧路運輸車両所車掌科に所属する「リーダー」です。
リーダー・・・といっても管理職という訳ではありません。
JR北海道は1997年7月14日に複線型人事制度として「エキスパートコース」を導入しており、昇進を目指す現業社員が現場管理者(駅長・所長・科長・助役)と、後進に対する技術継承のための指導育成を専門とする「エキスパート職」のどちらかを選択できるようにしました。
エキスパート職はJR西日本の「専門職」やJR東日本の「技術専任役」の先駆けと言えるもので、営業・輸送・車掌・旅行センターならチーフリーダー・リーダーの2職名、運転・車両・保線・建築・機械・電気なら技師・技師補の2職名を定めました。

車掌所や車掌科のリーダーは自所に属する列車乗務員(主任車掌・車掌)の教育を担当しており、自所独自のマニュアルの作成や訓練の計画・実施に当たるほか、最近では各職場に車掌用シミュレーターを導入してより綿密な訓練を行なうようになりました。
リーダーが本務車掌として乗務する機会はなく、基本的には指導員として列車に添乗し車掌の一挙手一投足を見定めています。
この時も今シーズンの運行を開始したばかりのノロッコ号に添乗し、車掌達に対する業務指導を行なっていました。
塘路駅での折り返し待ちの際は、リーダーもプラットホームに出て乗客の記念撮影に応じていましたね。
このように添乗指導を行なうリーダーや助役は、通常の制服を着てノロッコ号に乗り込みます。


JR北海道 国鉄 50系客車 510系客車 車内 客室内 釧路運輸車両所 オハ510-1 自由席車
くしろ湿原ノロッコ号・釧網本線全通90周年記念a11

実は自由席車もリニューアルが施されました。
足元に目を移すと、床のリノニウム材が交換されている事に気付きます。
以前は50系客車の面影を残したブルーグレーの床でしたが、現在はマホガニー柄に変えて「ネイチャートレイン」らしさを強調しています。


オハテフ500-51 オハテフ510-1 指定席車
くしろ湿原ノロッコ号・釧網本線全通90周年記念a09
オハテフ500-51 オハテフ510-1 指定席車
くしろ湿原ノロッコ号・釧網本線全通90周年記念a13
DE10-1661 DE10形1661号機 釧路駅
くしろ湿原ノロッコ号・釧網本線全通90周年記念a05

2ヶ月間の運休という受難こそありましたが、今年は10月10日まで運行される「くしろ湿原ノロッコ号」。
9月27日~29日の3日間は「夕陽ノロッコ号」として川湯温泉駅まで延長運転する予定です。
感染症対策を念入りにしつつ、湿原の旅を楽しみたいものですね。


※写真は特記を除き2021年5月3日撮影
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最終更新日 : 2021-07-25

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