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2021-07-17 (Sat) 00:07

釧網本線塘路駅[2] ノロッコ号の車掌が使う臨時集札口と「塘路検査班」

塘路駅a101

引き続き釧路管内は川上郡標茶町塘路(旧:川上郡塘路村字塘路)にある、JR北海道の塘路(とうろ)駅を取り上げましょう。



塘路駅a102

駅舎の東隣には店舗型のプレハブ小屋があります。
これはかつて存在したJR北海道の子会社、ジェイ・アール道東トラベルサービス㈱が運営していた直営売店です。
道東トラベルサービスはJR北海道釧路支社の「地域子会社」として1997年7月1日に発足し、管内7駅の駅業務受託(うち帯広駅は北改札口業務のみ)に加え、釧路駅営業サービスセンターの駅員達が立ち上げた直営店「そば処霧亭」(1986年12月24日開業)や釧路支社守衛室などの業務を引き継いだ会社です。
手がけた事業の中には物販も含まれており、塘路駅の売店もその一つだったという訳ですね。
ノロッコ号の車内販売も道東トラベルサービスが請け負っていました。

道東トラベルサービスは2017年2月1日、JR北海道グループにおける合理化の一環として㈱北海道ジェイ・アール・サービスネットに吸収合併され、法人格が消滅しました。
塘路駅の売店については詳細な時期が不明ですが、2010年代のうちに廃業に至ったようです。
なお、プレハブ小屋の右手に置かれた飲料自販機は撤去を免れ、2021年現在も利用可能です。


JR北海道 国鉄 JR貨物 塘路駅 釧路湿原 くしろ湿原ノロッコ号 臨時列車
塘路駅a103

旧直営売店から更に東には、三角屋根の古ぼけた小屋が1棟。


JR北海道 国鉄 JR貨物 塘路駅 釧路湿原 くしろ湿原ノロッコ号 臨時列車 無人駅
塘路駅a105

ここは「クリームフレンドかど屋」というアイスクリームショップです。
ソフトクリームを筆頭に、北海道名物の「いもだんご」やコーヒーを販売してきました。
しかし2020年以降は新型コロナウィルスの蔓延により、暫く休業状態に陥っているようです。


JR北海道 国鉄 JR貨物 塘路駅 釧路湿原 くしろ湿原ノロッコ号 臨時列車 無人駅
塘路駅a104
2016年8月11日撮影

コロナ前はノロッコ号の運行期間に限り営業しており、毎日10:00~17:30に店を開けていました。
「かど屋のソフトクリーム イモダンゴ」と書いた看板を、小屋の正面に高く掲げていましたね。
コロナ後は看板を取り外し、右脇の飲料自販機も撤去してしまいました。



塘路駅a107

「かど屋」の左隣には「森と湖のとうろ ウォーキングマップ」を設置しています。
釧路湿原の一角である塘路は、思わず息を呑むほど美しい自然風景に囲まれています。
駅前には「ファミリーカヌーとうろ」というカヌー体験の事務所があり、塘路湖からアレキナイ川、釧路川を経て細岡駅前に至るルートをはじめ、4種類のコースを楽しむ事が出来ます。



塘路駅a108

こちらは地元のワカサギ漁師達が、塘路湖の湖畔で営業している「元村ハウスぱるレイクサイドとうろ」の広告看板。
「レイクサイドとうろ」も釧路川カヌーツーリングを催しており、他にも湿原の落とし穴「ヤチマナコ」を体験するイベントや、冬のワカサギ釣り体験など様々なアウトドアツアーを展開しています。


臨時集札口 臨時改札口 臨時出口 くしろ湿原ノロッコ号 専用改札口 専用集札口
塘路駅a109

道東トラベルサービスの旧売店と「レイクサイドとうろ」の看板の間には、1番乗り場と繋がる1本の通路があります。


臨時集札口 臨時改札口 臨時出口 くしろ湿原ノロッコ号 専用改札口 専用集札口 塘路駅構内
塘路駅a111

通路のホーム側には扉を設けており、普段は施錠されています。


臨時集札口 臨時改札口 臨時出口 くしろ湿原ノロッコ号 専用改札口 専用集札口 塘路駅構内
塘路駅a110

しかも通路の脇には「出口専用 ホームへ入る際は駅の中をお通りください」との案内板を出しています。


臨時集札口 臨時改札口 臨時出口 くしろ湿原ノロッコ号 専用改札口 専用集札口 塘路駅構内
塘路駅a112
臨時集札口 臨時改札口 臨時出口 くしろ湿原ノロッコ号 専用改札口 専用集札口
塘路駅a113

1番乗り場から通路を眺めた様子。
こちら側には「臨時出口」の看板を出しています。


臨時集札口 臨時改札口 臨時出口 くしろ湿原ノロッコ号 釧路運輸車両所車掌科 塘路駅構内
塘路駅a114

実はこの通路、「くしろ湿原ノロッコ号」の到着後に使用される臨時集札口なのです。
釧路駅発の上りノロッコ号が終点の塘路駅に到着すると、車掌達は乗客よりも先にホームに降りて臨時集札口の扉を解錠。
それから車掌スイッチを操作して客車のドアを開け、次々に降りてくる乗客を臨時集札口に誘います。


臨時集札口 臨時改札口 臨時出口 くしろ湿原ノロッコ号 釧路運輸車両所車掌科 塘路駅構内
塘路駅a115

ノロッコ号に乗務するのは釧路運輸車両所運転科(旧:釧路機関区)に所属する動力車乗務員(主任運転士・運転士)と、釧路運輸車両所車掌科(旧:釧路車掌区)に所属する列車乗務員(主任車掌・車掌)。
同車掌科の車掌達はノロッコ号に2、3人で乗り組み、うち1名は車内放送とドア操作・出発合図を担当する「本務車掌」となり、他1、2名は列車監視・閉扉操作の補助や車内改札、無人駅での集札を担当する「補助車掌」を引き受けています。


臨時集札口 臨時改札口 臨時出口 くしろ湿原ノロッコ号 釧路運輸車両所車掌科 塘路駅構内
塘路駅a117

2021年9月20日の釧網本線全通90周年を控え、ノロッコ号の車掌達にも一足早く専用制服を導入。
深緑色のキャップ帽にアイボリーのパーカー、チャコールグレーのスラックスというラフな格好で乗務するようになりました。
更に専用の「きっぷ回収箱」を携行し、臨時集札口に進む乗客から乗車券を回収していきます。


臨時集札口 集札箱 きっぷ受け箱 きっぷ回収箱 くしろ湿原ノロッコ号 釧路運輸車両所車掌科
塘路駅a116

「きっぷ回収箱」はダンボールに緑色のマスキングテープを施し、正面にノロッコ号のヘッドマークを貼り付けたもの。
クラフト感あふれる回収箱を眺めていると、車掌さんや当番助役さん等が業務の合間を縫って制作に取り掛かる様子が思い浮かんでほっこりしますね。
新型コロナウィルスの感染予防を徹底するため回収箱を導入した、というのが実情なんだろうと思いますが、乗客を楽しませようと工夫を凝らす遊び心に感服しました。


臨時集札口 臨時改札口 臨時出口 くしろ湿原ノロッコ号 釧路運輸車両所車掌科 塘路駅構内
塘路駅a119
2016年8月11日撮影

ちなみにこちらは専用制服と「きっぷ回収箱」を導入する前の臨時集札口。
車掌は2人ともチャコールグレーの制帽・ズボンに白い盛夏シャツという、一般駅員や運転士などと何ら変わりない格好でした。
専用制服はおろか特急乗務の白服ですらないので、インバウンド客も多く利用する観光列車の割にはイマイチ味気ないよなあ・・・と思いましたね。
当時は乗車券の回収も直接手渡しでした。


510系客車 50系客車 くしろ湿原ノロッコ号 塘路駅構内 構内踏切 オクハテ510-1
塘路駅a120

折り返し出発の時を待つノロッコ号。
停車中の塘路駅は大いに活気付きます。


510系客車 50系客車 くしろ湿原ノロッコ号 塘路駅構内
塘路駅a121

1番乗り場の茅沼方から停車中のノロッコ号を眺めた様子。
このホームは外側カーブなので、本務車掌は閉扉操作を行う時に一層の緊張を感じる事でしょう。


乗車位置案内板 乗車口案内板 くしろ湿原ノロッコ号 指定席車
塘路駅a123
乗車位置案内板 乗車口案内板 くしろ湿原ノロッコ号 自由席車
塘路駅a122

1番乗り場に立つノロッコ号の乗車位置案内板。
日本語、英語、中国語、韓国語の4ヶ国語により案内しています。


510系客車 50系客車 くしろ湿原ノロッコ号 塘路駅構内
塘路駅a124

ノロッコ号は客車4両+DL1両の5両編成を組んでいますが、塘路駅のプラットホームは20m車4両分にも満たない長さなので、1号車(自由席)は半分以上がホームからはみ出てしまいます。


標茶保線区標茶保線支区塘路検査班 釧網線管理所施設科標茶保線支所塘路検査班
塘路駅a125

駅構内東側(茅沼方)の線路脇には木造モルタル造りの平屋があります。
聞けばこの建物は国鉄時代、標茶保線区標茶保線支区塘路検査班の詰所として使われていたそうです。
標茶保線区は釧網線標茶~弟子屈(現:摩周)間の延伸から2ヶ月後、1929年10月25日に開設されました。
当初は他の保線区の例に漏れず、担当区域内に複数箇所の線路分区を設け、更にその配下に10~15名程度の線路班を複数設置したといいます。
塘路検査班の前身も塘路線路班で、塘路駅周辺において人力による保線作業を担ってきたようです。

それが1963年4月1日、釧網本線・標津線・根北線の経営管理を担う釧網線管理所が発足すると、標茶保線区は斜里保線区ともども統合の対象となり釧網線管理所施設科に改組されました。
折りしも当時、国鉄施設局が保線業務の方法を改め、従前の人力依存による「随時修繕方式」から、保線機械の活用と線路のメンテナンスフリー化を軸とした「定期修繕方式」への脱皮を開始しました。
釧網線管理所施設科も新体制の構築に取り組み、線路分区の統廃合に踏み切ります。
1966年12月10日に斜里保線支所を開設したのを皮切りに、1968年12月15日には標茶保線支所・弟子屈保線支所・中標津保線支所を開設して1本科4支所体制に移行。
従来の線路班では検査と作業を混同していましたが、それも明確に分離して分散配置の小編成組織である「検査班」と、集中配置の大編成組織である「作業班」に再編し、各支所の配下に置きました


標茶保線区標茶保線支区塘路検査班 釧網線管理所施設科標茶保線支所塘路検査班
塘路駅a126

しかし釧網線管理所は3路線の抜本的な経営改善を果たせず、1969年2月1日を以って廃止に至りました。
これに伴い同施設科は標茶保線区として再出発する事になり、配下に標茶保線支区・弟子屈保線支区・斜里保線支区・中標津保線支区を設けて1本区4支区体制を構築しました。
塘路検査班も「標茶保線区標茶保線支区塘路検査班」として再スタートを切ったそうです。

国鉄施設局は1982年3月より「線路保守の改善」を敢行。
釧路鉄道管理局でも1983年11月1日に新体制へ移行しており、作業班は保線機械業務に特化した「保線機械グループ」、検査班は軌道検査に加えて工事計画と外注工事の監督を担う「保線管理グループ」に改組しました。
職名についても保線機械グループは重機保線長・重機副保線長・重機保線係の3段階、保線管理グループは保線管理長・保線副管理長・保線管理係・施設係の4段階としています。
保線管理グループは「管理室」とも称しており、塘路検査班についても「標茶保線区標茶保線支区塘路管理室」となったそうです。

しかし国鉄施設局は分割民営化を間近に控えた1986年度、保線支区・保線駐在・分駐所(管理室)の大規模な統廃合に踏み切ります。
釧鉄局管内でも同年8月1日に3保線区18管理室体制に移行し、標茶保線区標茶保線支区は「区長代理」の担務指定を受けた助役1名を筆頭にした「標茶保線区標茶保線管理室」(現:釧路保線所標茶保線管理室)に改組されました。
同時に塘路管理室は役目を終える事となり、その業務は標茶保線管理室に集約されています。
現在、塘路管理室の詰所に常駐する保線係員は1人も居ませんが、北海道軌道施設工業㈱釧路出張所などが近隣で保線作業を行う時に休憩所として活用しています。


信号用ハット 特殊自動閉塞式(電子符号照査式) 運転取扱業務 閉塞装置
塘路駅a130
信号用ハット 特殊自動閉塞式(電子符号照査式) 運転取扱業務 閉塞装置
塘路駅a129

駅舎と臨時集札口の間には、1986年11月の特殊自動閉塞(電子符号照査式)化に伴い新設された信号用ハットが建っています。
この中には運転士が車載器(RPCアンテナ)を操作すると、その電波を受信して信号機や踏切を作動させる特殊自動閉塞装置が格納されています。


キハ54形500番台 キハ54系500番台 流氷物語号 キハ54-507
塘路駅a128

1番線に滑り込む「流氷物語号」のキハ54-507。


塘路駅 駅名標 駅名板 駅名看板
塘路駅a127

ホーム上の駅名標。


※写真は特記を除き2021年5月3日撮影
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最終更新日 : 2021-07-17

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