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2021-02-28 (Sun) 17:31

今や機械除雪基地!函館本線蘭越駅に残る蘭越保線支区の建物

旧小樽保線区蘭越保線支区a02

後志管内は磯谷郡蘭越町の中心部にある、JR北海道の蘭越(らんこし)駅。
函館本線長万部~小樽間の通称「山線」に属する当駅は、倶知安・ニセコ・蘭越の3町から成る「ニセコ観光圏」の中にあります。
構内北側には駅前と北海道蘭越高校を結ぶ「蘭越踏切」があり、その傍には一目で保線関係の施設と分かる2階建ての事務所棟が建っています。
左手前には工事車両を格納する車庫も。


JR北海道 国鉄 小樽保線区蘭越保線支区 小樽保線所蘭越保線管理室 小樽保線所蘭越保線休憩所
旧小樽保線区蘭越保線支区a03

事務所棟の正面玄関に掲げた表札を見ると・・・


JR北海道 国鉄 倶知安保線区蘭越保線支区 小樽保線所蘭越保線管理室 小樽保線所蘭越保線休憩所
旧小樽保線区蘭越保線支区a04

・・・「小樽保線所蘭越保線休憩所」と書かれています。
つまり近隣で保線作業を行なう際に利用される休憩所だという訳です。
しかしここで注意したいのが、表札に書かれている「小樽保線所」はとうの昔に廃止済みだという事。
小樽保線所の前身は国鉄小樽保線区で、これは手宮保線区を1938年1月に移転・改称した組織です。
小樽築港駅西側に本所を構えた小樽保線所ですが、1998年4月の保線機械業務委託化に伴う現業機関の統廃合によって消滅。
そして本所事務室は北海道軌道施設工業㈱小樽機械センターに転用され(これも表札が残るだけで廃止済み)、南小樽駅近くの小樽保線管理室と倶知安保線管理室は札幌保線所に移管されました。


JR北海道 国鉄 倶知安保線区蘭越保線支区 小樽保線所蘭越保線管理室 小樽保線所蘭越保線休憩所
旧小樽保線区蘭越保線支区a01

更に付け加えると、蘭越保線休憩所も元はれっきとした現業機関でありました。
そのルーツを遡ると1904年10月、北海道鉄道歌棄(現:熱郛)~小沢間の延伸開業により目名駅・蘭越駅・昆布駅の3ヶ所に配置された線路工夫(後の線路工手→軌道掛→施設係)に辿り着きます。
当初は駅の無かった上目名にも線路工夫が置かれており、蘭越町内には合計4ヶ所の線路丁場(後の線路班)が存在したのです。
1913年9月に開設された上目名駅(1984年3月廃止)は、集落から切り離された山林に暮らす線路工夫達の利便性に配慮したものでした。
そしてこれら線路丁場の元締めとして、倶知安保線区目名線路分区、倶知安保線区蘭越線路分区の2ヶ所が設置されました。
元々、蘭越町内の保線業務は小樽保線区の管轄ではなく、これまた今は無き倶知安保線区が受け持っていたんですね。
倶知安保線区は山線に加え胆振線の保線も担当してきました。


JR北海道 国鉄 倶知安保線区蘭越保線支区 小樽保線所蘭越保線管理室 小樽保線所蘭越保線休憩所
旧小樽保線区蘭越保線支区a05

日本の鉄道は開業以来、人力作業に依存しきった「随時修繕方式」での保線を続けてきました。
これは概ね5~30名の線路班が担当区域を毎日歩いて線路の点検を行い、異常を認めたら直ちに補修を施すというものです。
しかし戦後の高度経済成長期には保線が追いつかなくなっていきました。
どういう事かと言うと、鉄道会社は月日を追うごとに増大する輸送量に対処するべく、列車の増発やスピードアップを重ねていきますよね。
すると線路にかかる負担も大きくなって線路破壊が早く進むようになり、それを補修しようにも人力作業が十分に出来る時間帯が減少するというジレンマを抱えてしまった訳です。


JR貨物 JR北海道 JR貨物 保守用車 保線機械 排雪モーターカーロータリー 車両基地
国鉄の保線区・保線支区体制図p01

そこで国鉄本社施設局は人力保線から機械保線への転換を軸とした「軌道保守の近代化」を計画。
線路分区に代わる新たな業務組織として1963年4月より「保線支区」の設置を進め、限られた時間の中で集中的に検査・補修を行う「定期修繕方式」に移行していきました。
保線支区は複数の線路分区の統合を兼ねており、担当区域は50~60kmに拡大。
支区1ヶ所当たりの在籍人数は概ね40名前後で、箇所によっては70名に上るケースもあったのだとか。

小刻みに配置されていた線路班は大編成の「作業班」に集約し、加えて10~15kmおきに「検査班」を設置し、従前は混同していた検査と作業も明確に分離しています。
そして検査班が支区長に報告した検査結果を元に、計画担当(計画助役および技術掛)が作業計画を策定し、作業助役を通じて作業班に修繕をさせるという業務体制になりました。
「軌道保守の近代化」は1972年3月に完了し、9年間で約600ヶ所もの保線支区が開設を見ました。


北海道軌道施設工業株式会社 室蘭機械センター蘭越基地 軌道会社 業務委託 保線機械
旧小樽保線区蘭越保線支区a07

倶知安保線区も近代化真っ只中の1967年11月、目名線路分区を蘭越線路分区に吸収して「倶知安保線区蘭越保線支区」を開設。
これにより町内各駅に散らばっていた線路班も蘭越保線支区に集結し、検査班と作業班の二極体制で保線業務を行なう事となりました。
蘭越駅北東に建つコンクリート建築の事務所棟も、蘭越保線支区の開設に伴い新築されたものだそうな。

国鉄解体を間近に控えた1986年4月、国鉄本社は全国の職員7万人を対象として向こう5ヶ月間、1回につき3~4日の日程で「企業人教育」を行なう事としました。
これは多くの国鉄職員が抱いてきた「親方日の丸意識」を払拭し、コスト意識やサービス意識を高めて企業人としての意識と行動力を身に付けさせ、鉄道事業の未来を切り開く事を目的とした集合研修です。
そして企業人教育を受講した職員達は同年6月から、自身の職場で国鉄改革を推進する小集団活動(インフォーマルグループ)を展開していきます。
北海道総局管内においても計57班の小集団が発足しており、倶知安保線区においても同年8月に受講者らが「飛翔会」を結成しました。
新会社を盛り上げようと意欲に燃えていた事が窺えますが、残念ながら倶知安保線区は1987年4月の分割民営化に伴い廃止されています。


北海道軌道施設工業株式会社 室蘭機械センター蘭越基地 軌道会社 業務委託 保線機械
旧小樽保線区蘭越保線支区a08

倶知安保線区の分掌機関だった蘭越保線支区は小樽保線区が継承し、小樽保線区蘭越保線管理室に改組されました。
JR北海道は1990年3月の組織改正で現業機関の組織単位「区」を「所」に改称・統一しており、その際に小樽保線区も「小樽保線所」に改称しています。
更に同年10月には工務関係の現業機関を対象として統廃合を実施。
これを皮切りに1990年代は保線管理室や電気所派出所などの統廃合を重ねてきました。

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工務関係現業組織の改正
ー10月1日より実施ー

 中央本部は8月20日提案を受けた工務関係現業組織の改正について9月19日14時集約をしました。これにともない工務職場の組織改正は10月1日から移行されました。
 今次の組織改正は9月13日経営協議会で提起された中期計画の中で示されている工務関係の取り組みの第一段階として捉え返すことが重要です。
 平成6年にむけてどの様に具体的な施策が進められるのか、組織はどの様になっているのか等です。
 今回の組織改正で実施されたおもな点は、
1 営林所を廃止して保線所に統合する。
 職名の統合などはなされていないが、一部の保線所では業務の融合が図られていることから今後の方向性を見ることが出来ます。
2 工務所の拡大が図られています。
 地域を限定する形で保線所と電気所を統合して工務所として3箇所設置されましたが、これからの基本形として位置づけることができ、今後拡大されていきます。
3 建築所と機械所が統合されて設備所として新設されました。
 釧路、旭川、函館については出来上がり型と見ることが出来、今後内部での効率化がはかられていきます。
4 電力所と信号通信所を統合して電気所を設置しています。
 同時に保線管理室、駐在、派出所の統廃合や名称の変更もなされました。組織改正に伴って業務体制についても担当区域の変更などもありました。
 今回の実施では、職名の統合等が成されていないため大きな要員削減になっていませんが、今後この組織を効率的に運営するための施策が実施されていくと考えられます。
 職場ではこの組織改正に伴って多くの人が異動の対象となりました。
 新しい職場のルールを自らのものとしてつくり出す取り組みの始まりです。
(武川業務部長)

≪出典≫
北海道旅客鉄道労働組合(1990)『JR北海道労組新聞』1990年10月22日付、第2面
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蘭越保線管理室も合理化の対象となり、1992年7月に廃止。
同時に担当区域を小樽保線所倶知安保線管理室(現:札幌保線所倶知安保線管理室)が引き継ぎ、建物は「蘭越保線休憩所」として再利用する事となりました。
助役(所長代理)及び施設係員(施設技術主任・施設技術係・施設係)の常駐は原則としてありません。


北海道軌道施設工業株式会社 室蘭機械センター蘭越基地 軌道会社 業務委託 保線機械
旧小樽保線区蘭越保線支区a09

しかし冬となれば話は別。
倶知安・ニセコ近郊は道内有数の豪雪地帯で、この季節は山線の各駅で除雪作業員が汗水流します。
そんな中、蘭越保線休憩所は人力除雪の詰所としてではなく、機械除雪基地として機能。
滅多に人気の無い休憩所も2階事務室の電灯が煌々と光り、正面駐車場にもクルマが並びます。
JR北海道は1998年4月、全道JR線の保線機械業務を子会社の北海道軌道施設工業㈱に委託。
それ以来、蘭越保線休憩所は毎年12月~3月に限り、北海道軌道施設工業㈱室蘭機械センターの「蘭越基地」に変身します。
春~秋は単なる休憩所に過ぎませんが、冬場は室蘭機械センターの機械技術員が常駐。
ここを拠点としてJR北海道所有の排雪モーターカーを運転し、山線の安定輸送に寄与するべく日夜尽力しています。


北海道軌道施設工業株式会社 室蘭機械センター蘭越基地 軌道会社 業務委託 保線機械 除雪車
旧小樽保線区蘭越保線支区a06

ところで排雪モーターカーの車庫は何処にあるかと言うと・・・


北海道軌道施設工業株式会社 室蘭機械センター蘭越基地 軌道会社 業務委託 保線機械 除雪車
旧小樽保線区蘭越保線支区a10
車両基地 蘭越駅構内 除雪車 車庫 保守用車庫 保線機械
旧小樽保線区蘭越保線支区a11

・・・蘭越踏切から見て南方、駅舎の北側に建っています。



旧小樽保線区蘭越保線支区a12

蘭越駅の保守用車庫は比較的新しい鉄筋コンクリート造り。
軌道モーターカー2、3両は納まりそうな大きさです。
雪が解けたらマルタイの格納にも使われている模様。


駅舎 蘭越駅 駅本屋
旧小樽保線区蘭越保線支区a15

保守用車庫の近くに建つ蘭越駅のコンクリート駅舎。


H100形 H100-3 一般気動車 電気式気動車 苗穂運転所 蘭越駅構内 H100系
旧小樽保線区蘭越保線支区a14

蘭越駅2番線で出発時刻を待つ倶知安行き普通列車のH100形。
軌道会社蘭越基地の機械技術員達が除雪をするおかげで、雪深いニセコ周辺の線路を走る事が出来ます。


国鉄 JR北海道 小樽保線区蘭越保線管理室 小樽保線所蘭越保線管理室
旧小樽保線区蘭越保線支区a13

ちなみにこちらは蘭越保線休憩所の外壁に残る、分割民営化初期の広告看板。
長年に渡り日光を浴びたせいで大半の塗料が薄れてしまいましたが、それでも右下には「小樽保線区」の表記がかろうじて残っています。
これも山線の歴史に触れる貴重な資料です。


※写真は全て2021年2月21日撮影
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最終更新日 : 2021-03-03

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