JR貨物北海道保全技術センターの軌道モーターカー
2018年5月20日、札幌貨物ターミナル駅の一般公開で撮影
線路は鉄道の根幹を成すものです。
車両のコンディションを万全にしたところで、線路が万全の状態でなければ列車を走らせる事は出来ません。
鉄道輸送に密接に関わる施設は線路に限らず、橋梁や高架橋、トンネル、プラットホーム、落石防護工といった土木構造物も多く点在します。
線区によっては防風、防雪、土砂崩壊防止などのために植樹した鉄道林もあります。
そして保線の職場は線路と土木構造物、鉄道林を維持管理し、鉄道の安全を日夜守り続けているのです。
日本の鉄道は黎明期から長らく、その保線を「随時修繕方式」によってきました。
これは筋肉労働力に依存する保線方法で、保線作業員が徒歩で線路の状態を確認して回り、異常を認めたら直ちに補修を施すというものです。
やがて高度経済成長期が到来すると鉄道利用が急激に増加し、それに合わせて列車本数の増加や速度向上が実施されていきました。
すると線路破壊も早く進む事になり、かといって安全に補修作業が出来る間合い時間も減ってしまい、作業能率が低下するというジレンマを抱えてしまいました。
そこで国鉄施設局は予防保全の考え方を基本とし、限られた時間の中で集中的にメンテナンスを施す「定期修繕方式」への移行を計画。
1963年4月~1972年3月の9年間で、全国の保線区に保線機械を導入して人力保線から機械保線への転換を進め、軌道構造もなるべく補修の手間を省いたメンテナンス・フリーに改良しています。
JR貨物 国鉄 JR北海道 JR東日本 JR東海 JR西日本 JR四国 JR九州
1985年4月~1987年3月の国鉄保線区における職制
鉄道現業社(1986)『保存版 保線事典』p.481より引用
1978年7月以降は機械化を更に進めると共に、業務内容の簡素化・効率化、保線支区作業班の廃止による単純作業の外注化なども図りました。
国鉄末期の1985年4月~1987年3月時点で、保線区の係職は大きく分けて事務グループ(事務係・用務係)、技術グループ(技術主任・技術係)、保線管理グループ(保線管理長・保線副管理長・保線管理係・施設係)、保線機械グループ(重機保線長・重機副保線長・重機保線係)、踏切看守(交通保安指導係・交通保安係)の5グループに分かれていました。
このうち技術グループ(技術主任・技術係)は修繕計画の策定、工事設計、積算、在籍員及び請負業者に対する安全教育・技術指導、工事スケジュール調整などの「技術管理業務」を担当。
保線管理グループ(保線管理長・保線副管理長・保線管理係・施設係)は線路の検査とこれに関連する修繕作業、用地監視、土木構造物の維持管理、外注工事の立会い・監督を担当。
保線機械グループ(重機保線長・重機副保線長・重機保線係)はマルチプルタイタンパー、軌道モーターカーといった保守用車の運転・整備を担当。
これに区長、支区長、助役、事務グループ、踏切看守を合わせて、計16職名を保線区に配置していました。
JR北海道 JR東日本 JR東海 JR西日本 JR四国 JR九州 指揮命令系統図
JR旅客6社の発足時における保線区の職制
構造物検査センター、レールセンター、営林区、工事区と共通にしている
国鉄労働組合東日本鉄道本部(1987)『就業規則Q&A 新会社の就業規則の特徴と具体的問題点』p.66より引用
1987年4月に国鉄が分割民営化されると、保線区の職制も刷新されました。
技術グループ、保線管理グループ、保線機械グループの各職名は融合化され、施設技術主任・施設技術係・施設係の3職名に集約されています。
これに区長、支区長、助役、事務主任、事務係を合わせて計8職名が保線区に配置されました。
以下に各職名の職務内容を抜粋しましょう。
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【区(所)長】
区(所)業務全般の管理及び運営
【支区(所)長】
支区(所)業務全般の管理及び運営
【助役】
区(所)長又は支区(所)長の補佐又は代理
【事務主任】
事務係の業務及び指導並びにその計画・調整業務
その他上長の指示する業務
【事務係】
庶務、経理、資材及び契約に関する業務
その他上長の指示する業務
【施設技術主任】
施設技術係、施設係の業務及び指導並びにその計画・調整業務
その他上長の指示する業務
【施設技術係】
施設係の業務及び指導
その他上長の指示する業務
【施設係】
線路・建造物の保守、用地の管理及び工事施行に関する業務並びにこれらに附帯する業務
その他上長の指示する業務
《出典》
国鉄労働組合東日本鉄道本部(1987)『就業規則Q&A 新会社の就業規則の特徴と具体的問題点』p.66
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発足当時のJR各社は現業機関の一般職を原則として、主任、指導係(技術係を含む)、係の3段階とし、最下位職を基本と位置づけて一通りの仕事をこなせるように定めています。
なお、事務職(事務主任・事務係)、動力車乗務員(主任運転士・運転士)、列車乗務員(主任車掌・車掌)、自動車乗務員(運転主任・運転係)、自動車営業所内勤(運輸主任・運輸係)、印刷職(印刷主任・印刷係)については2段階としています。
保線区の場合、保線に係る職務は一通り施設係に定めており、上位職の施設技術係、施設技術主任についても「施設係の業務」を職務内容に含めています。
施設係の職務内容にある「建造物」とは、冒頭で述べた土木構造物を意味します。
JR貨物 国鉄 JR北海道 JR東日本 JR東海 JR西日本 JR四国 JR九州
札幌貨物ターミナル駅のコンテナホーム
2018年5月20日の一般公開で撮影
ただし保線区を有したのはJR北海道、JR東日本、JR東海、JR西日本、JR四国、JR九州の旅客6社であり、JR貨物は発足当初から保線区を抱えていません。
こう書くと「JR貨物は第二種鉄道事業者なんだから当然だろう」と思われるかも知れませんね。
確かにJR貨物は旅客会社に線路使用料を支払い、自社の貨物列車を旅客会社線で運行しています。
しかし自社線を全く持っていない訳ではなく、仙石線貨物支線、新湊線、四日市港線(関西本線貨物支線)、博多臨港線(鹿児島本線貨物支線)など10路線の第一種鉄道事業者でもあります。
更に言うと旅客会社線上の貨物駅であっても、駅構内の線路で「貨物会社の専用線」と認められるもの、例えば貨物側線などはJR貨物が管理しています。
するとJR貨物も保線を担う職場を構える必要が生じる訳です。
JR貨物 国鉄 JR北海道 JR東日本 JR東海 JR西日本 JR四国 JR九州
JR貨物の発足時における施設区の職制
国鉄労働組合東日本鉄道本部(1987)『就業規則Q&A 新会社の就業規則の特徴と具体的問題点』p.143より引用
JR貨物は1987年4月の発足に伴い、鉄道施設の維持管理を担当する「施設区」という現業機関を開設しました。
旅客会社に比べて管理する施設が少ない事もあり、施設区は支区制を敷いていません。
以下に各職名の職務内容を抜粋しましょう。
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【区長】
区業務全般の管理及び運営
【助役】
区長の補佐又は代理
【事務主任】
事務係の業務及び指導並びにその計画・調整業務
その他上長の指示する業務
【事務係】
庶務、経理、資材及び契約に関する業務
その他上長の指示する業務
【施設技術主任】
施設技術係、施設係の業務及び指導並びにその計画・調整業務
その他上長の指示する業務
【施設技術係】
施設係の業務及び指導
その他上長の指示する業務
【施設係】
線路・建造物・建築物・機械設備の保守、用地の管理及び工事施行に関する業務並びにこれらに附帯する業務
その他上長の指示する業務
《出典》
国鉄労働組合東日本鉄道本部(1987)『就業規則Q&A 新会社の就業規則の特徴と具体的問題点』p.143
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ここで施設係の職務内容に注目。
1行目に「線路・建造物・建築物・機械設備の保守」とあり、旅客会社の施設係は担当しない「建築物」と「機械設備」が保守対象に加わっていますね。
JR貨物 国鉄 JR北海道 JR東日本 JR東海 JR西日本 JR四国 JR九州
JR旅客6社の発足時における建築区の職制
国鉄労働組合東日本鉄道本部(1987)『就業規則Q&A 新会社の就業規則の特徴と具体的問題点』p.67より引用
旅客会社の場合は国鉄時代の「建築区」を継承し、建築物の保守管理を専門とする建築職(建築技術主任・建築技術係・建築係)を配置しています。
以下に各職名の職務内容を抜粋しましょう。
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【区長】
区業務全般の管理及び運営
【助役】
区長の補佐又は代理
【事務主任】
事務係の業務及び指導並びにその計画・調整業務
その他上長の指示する業務
【事務係】
庶務、経理、資材及び契約に関する業務
その他上長の指示する業務
【建築技術主任】
建築技術係、建築係の業務及び指導並びにその計画・調整業務
その他上長の指示する業務
【建築技術係】
建築係の業務及び指導
その他上長の指示する業務
【建築係】
建築物の保守、用地の管理及び工事施行に関する業務並びにこれらに附帯する業務
その他上長の指示する業務
《出典》
国鉄労働組合東日本鉄道本部(1987)『就業規則Q&A 新会社の就業規則の特徴と具体的問題点』p.67
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保守の対象となる建築物は自社の敷地に建つため、建築係の職務内容には「用地の管理」が含まれています。
用地管理業務は保線区の社員も担当していますね。
JR貨物 札幌貨物ターミナル 駅舎 千歳線 函館本線
札幌市白石区流通センター3丁目にある札幌貨物ターミナル駅の駅舎(駅本屋)
貨物の受付・配車計画を担当する札幌貨物ターミナル駅貨物事務室に加え、北海道支社道央支店が入居している
2020年10月18日撮影
旅客会社の建築区が維持管理する物件は、駅舎(輸送本部・運転事務室など別棟を含む)、運転区所(事務所棟・車庫等)、保線区(事務所棟・保線機械基地等)、工場・車両所、社宅、鉄道病院、本社・支社ビルなど。
JR貨物の施設区も貨物駅や機関区、車両所、オフレールステーションなどの各種建築物を維持管理しています。
JR貨物 国鉄 JR北海道 JR東日本 JR東海 JR西日本 JR四国 JR九州
JR旅客6社の発足時における機械区の職制
国鉄労働組合東日本鉄道本部(1987)『就業規則Q&A 新会社の就業規則の特徴と具体的問題点』p.67より引用
旅客会社は国鉄時代の「機械区」をも継承しており、機械設備の保守管理を専門とする機械職(機械技術主任・機械技術係・機械係)を配置しています。
以下に各職名の職務内容を抜粋しましょう。
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【区(所)長】
区(所)業務全般の管理及び運営
【支区(所)長】
支区(所)業務全般の管理及び運営
【助役】
区(所)長又は支区(所)長の補佐又は代理
【事務主任】
事務係の業務及び指導並びにその計画・調整業務
その他上長の指示する業務
【事務係】
庶務、経理、資材及び契約に関する業務
その他上長の指示する業務
【機械技術主任】
機械技術係、機械係の業務及び指導並びにその計画・調整業務
その他上長の指示する業務
【機械技術係】
機械係の業務及び指導
その他上長の指示する業務
【機械係】
機械設備の保守及び工事施行に関する業務並びにこれらに附帯する業務
その他上長の指示する業務
《出典》
国鉄労働組合東日本鉄道本部(1987)『就業規則Q&A 新会社の就業規則の特徴と具体的問題点』p.67
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保線区や建築区とは異なり、機械区では用地管理業務を担当していません。
ちなみにJR東日本も1989年に保線区・建築区・機械区を統合して施設区を開設しており、これに伴い建築職・機械職の各職名を施設職に統合しています。
したがって建築区でも機械区でも、職名は保線区と同じ施設技術主任、施設技術係、施設係となりました。
札幌貨物ターミナル駅 フォークリフト ㈱ジェイアール貨物・北海道物流
コンテナを貨車に積み込む大型フォークリフト
2018年5月20日、札幌貨物ターミナル駅の一般公開で撮影
旅客会社の機械区が維持管理する設備は、駅の自動改札機、自動券売機、エスカレーター、エレベーターや、運転区所で車両検修に使う諸機械、各社屋の空調、エアコン、ボイラーなど。
JR貨物の施設区も駅の機械設備を管理しますが、フォークリフトのメンテナンスを担当する点が大きく異なります。
JR貨物 国鉄 JR北海道 JR東日本 JR東海 JR西日本 JR四国 JR九州
JR貨物の発足時における電気区の職制
国鉄労働組合東日本鉄道本部(1987)『就業規則Q&A 新会社の就業規則の特徴と具体的問題点』p.143より引用
鉄道輸送を支える設備は他にも、電力・信号・通信の各種電気設備があります。
旅客会社は国鉄から継承した電力区・信号通信区に加え、これらを統合した電気区を抱えています。
一方、JR貨物は電気関係の現業機関を電気区に統一しており、これも施設区と同じく支区制を敷いていません。
以下に各職名の職務内容を抜粋しましょう。
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【区長】
区業務全般の管理及び運営
【助役】
区長の補佐又は代理
【事務主任】
事務係の業務及び指導並びにその計画・調整業務
その他上長の指示する業務
【事務係】
庶務、経理、資材及び契約に関する業務
その他上長の指示する業務
【電気技術主任】
電気技術係、電気係の業務及び指導並びにその計画・調整業務
その他上長の指示する業務
【電気技術係】
電気係の業務及び指導
その他上長の指示する業務
【電気係】
電気設備の保守、工事施行に関する業務及び指令業務並びにこれらに附帯する業務
その他上長の指示する業務
《出典》
国鉄労働組合東日本鉄道本部(1987)『就業規則Q&A 新会社の就業規則の特徴と具体的問題点』p.143
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本線が各旅客会社の保有であっても、貨物駅構内の側線はJR貨物が保守管理している
2018年5月20日、札幌貨物ターミナル駅の一般公開で撮影
JR貨物が発行した書籍『JR貨物5年の歩み』(1992年)によると、1987年4月の会社発足に伴い開設した施設区・電気区は以下の通りです。
【北海道支社】
●施設区(本区3ヶ所・派出1ヶ所)
札幌施設区(所在地:函館本線札幌貨物ターミナル駅)
札幌施設区苫小牧派出(所在地:室蘭本線苫小牧貨物駅)
室蘭施設区(所在地:室蘭本線東室蘭駅)
旭川施設区(所在地:宗谷本線北旭川駅)
●電気区(本区1ヶ所・派出4ヶ所)
札幌電気区(所在地:函館本線札幌貨物ターミナル駅)
札幌電気区五稜郭派出(所在地:函館本線五稜郭駅)
札幌電気区室蘭派出(所在地:室蘭本線東室蘭駅)
札幌電気区旭川派出(所在地:宗谷本線北旭川駅)
札幌電気区帯広派出(所在地:根室本線帯広貨物駅)
【東北支社】
●施設区(本区4ヶ所・派出2ヶ所)
盛岡施設区(所在地:東北本線盛岡貨物ターミナル駅)
盛岡施設区八戸派出(所在地:東北本線八戸貨物駅)
盛岡施設区青森派出(所在地:東北本線東青森駅)
秋田施設区(所在地:羽越本線秋田貨物駅)
仙台施設区(所在地:東北本線宮城野駅)
郡山施設区(所在地:東北本線郡山貨物ターミナル駅)
●電気区(本区4ヶ所・派出1ヶ所)
盛岡電気区(所在地:東北本線盛岡貨物ターミナル駅)
盛岡電気区八戸派出(所在地:東北本線八戸貨物駅)
秋田電気区(所在地:羽越本線秋田貨物駅)
仙台電気区(所在地:東北本線宮城野駅)
郡山電気区(所在地:東北本線郡山貨物ターミナル駅)
【関東支社】
●施設区(本区13ヶ所・派出6ヶ所)
新潟施設区(所在地:信越本線新潟貨物ターミナル駅)
長岡施設区(所在地:信越本線南長岡駅)
長岡施設区黒井派出(所在地:信越本線黒井駅)
高崎施設区(所在地:高崎線高崎操車場)
高崎施設区熊谷派出(所在地:高崎線熊谷貨物ターミナル駅)
宇都宮施設区(所在地:東北本線宇都宮貨物ターミナル駅)
隅田川施設区(所在地:常磐線隅田川駅)
隅田川施設区飯田町派出(所在地:中央本線飯田町駅)
新小岩施設区(所在地:総武本線新小岩操駅)
東京施設区(所在地:東海道本線東京貨物ターミナル駅)
塩浜施設区(所在地:東海道本線川崎貨物駅)
横浜羽沢施設区(所在地:東海道本線横浜羽沢駅)
横浜羽沢施設区新興派出(所在地:東海道本線新興駅)
相模施設区(所在地:東海道本線相模貨物駅)
八王子施設区(所在地:中央本線八王子駅)
八王子施設区新座派出(所在地:武蔵野線新座貨物ターミナル駅)
八王子施設区梶ヶ谷派出(所在地:武蔵野線梶ヶ谷貨物ターミナル駅)
南松本施設区(所在地:篠ノ井線南松本駅)
篠ノ井施設区(所在地:信越本線篠ノ井駅)
●電気区(本区6ヶ所・派出9ヶ所)
新潟電気区(所在地:信越本線新潟貨物ターミナル駅)
新潟電気区長岡派出(所在地:信越本線南長岡駅)
高崎電気区(所在地:高崎線高崎操車場)
隅田川電気区(所在地:常磐線隅田川駅)
隅田川電気区水戸派出(所在地:常磐線水戸駅)
隅田川電気区宇都宮派出(所在地:東北本線宇都宮貨物ターミナル駅)
隅田川電気区新小岩派出(所在地:総武本線新小岩操駅)
隅田川電気区越谷派出(所在地:武蔵野線越谷貨物ターミナル駅)
塩浜電気区(所在地:東海道本線川崎貨物駅)
横浜羽沢電気区(所在地:東海道本線横浜羽沢駅)
横浜羽沢電気区相模派出(所在地:東海道本線相模貨物駅)
横浜羽沢電気区梶ヶ谷派出(所在地:武蔵野線梶ヶ谷貨物ターミナル駅)
横浜羽沢電気区新座派出(所在地:武蔵野線新座貨物ターミナル駅)
篠ノ井電気区(所在地:信越本線篠ノ井駅)
篠ノ井電気区南松本派出(所在地:篠ノ井線南松本駅)
【東海支社】
●施設区(本区5ヶ所・派出なし)
沼津施設区(所在地:東海道本線沼津駅)
東静岡施設区(所在地:東海道本線東静岡駅)
西浜松施設区(所在地:東海道本線西浜松駅)
名古屋施設区(所在地:東海道本線名古屋貨物ターミナル駅)
稲沢施設区(所在地:東海道本線稲沢駅)
●電気区(本区2ヶ所・派出1ヶ所)
東静岡電気区(所在地:東海道本線東静岡駅)
東静岡電気区西浜松派出(所在地:東海道本線西浜松駅)
名古屋電気区(所在地:東海道本線名古屋貨物ターミナル駅)
【関西支社】
●施設区(本区9ヶ所・派出7ヶ所)
富山施設区(所在地:北陸本線富山貨物駅)
富山施設区能町派出(所在地:氷見線能町駅)
金沢施設区(所在地:北陸本線金沢駅)
金沢施設区敦賀派出(所在地:北陸本線敦賀駅)
梅小路施設区(所在地:山陰本線梅小路駅)
吹田施設区(所在地:東海道本線吹田信号場)
梅田施設区(所在地:東海道本線梅田駅)
梅田施設区神戸港派出(所在地:東海道本線神戸港駅)
梅田施設区姫路派出(所在地:山陽本線姫路駅)
百済施設区(所在地:関西本線百済駅)
岡山施設区(所在地:山陽本線西岡山駅)
岡山施設区東福山派出(所在地:山陽本線東福山駅)
広島施設区(所在地:山陽本線東広島駅)
新南陽施設区(所在地:山陽本線新南陽駅)
新南陽施設区宇部港派出(所在地:宇部線宇部港駅)
新南陽施設区下関派出(所在地:山陽本線下関駅)
●電気区(本区5ヶ所・派出7ヶ所)
金沢電気区(所在地:北陸本線金沢駅)
金沢電気区富山派出(所在地:北陸本線富山貨物駅)
金沢電気区南福井派出(所在地:北陸本線南福井駅)
梅小路電気区(所在地:山陰本線梅小路駅)
梅田電気区(所在地:東海道本線梅田駅)
梅田電気区姫路派出(所在地:山陽本線姫路駅)
梅田電気区百済派出(所在地:関西本線百済駅)
岡山電気区(所在地:山陽本線西岡山駅)
岡山電気区米子派出(所在地:山陰本線米子駅)
広島電気区(所在地:山陽本線東広島駅)
広島電気区新南陽派出(所在地:山陽本線新南陽駅)
広島電気区厚狭派出(所在地:山陽本線厚狭駅)
【九州支社】
●施設区(本区4ヶ所・派出なし)
小倉施設区(所在地:鹿児島本線外浜駅)
博多施設区(所在地:鹿児島本線福岡貨物ターミナル駅)
久留米施設区(所在地:鹿児島本線久留米駅)
熊本施設区(所在地:鹿児島本線熊本駅)
●電気区(本区1ヶ所・派出1ヶ所)
小倉電気区(所在地:鹿児島本線外浜駅)
小倉電気区西大分派出(所在地:日豊本線西大分駅)
以上、施設区38ヶ所(派出18ヶ所)、電気区19ヶ所(派出28ヶ所)を全国各地に開設し、貨物駅構内・貨物支線などの各種施設保全に当たりました。
このうち東海支社の沼津施設区は1991年4月1日、施設関係業務の効率化を図るために東静岡施設区に統合の上、同区沼津派出に改組しました。
また、1991年4月1日には九州支社における電気関係保全業務の能率的運営を図るため、博多電気区と熊本電気区を新設しています。
なお、四国エリアの貨物駅については施設・電気の保全を全てJR四国に委託しています。
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1987年の発足当初は、鉄道施設の保守の効率を上げるため、各本線に渡って点在する貨物設備を保守するためのJR6旅客会社との受委託を実施することとしました。施設関係では、全ての業務を人工に換算して全国の旅客会社の支社に分割し、最寄りの旅客駅の着発線と側線の合計人工で客貨等分として保守がスタートしました。電気は全て直轄とし、四国については施設、電気双方とも貨物鉄道会社の一方委託となっています。
この受委託に関して鉄道事業法施行規則第38条列車の運行の管理等の受委託の許可申請に当たるとして、JR各社では発足と同時に特定建設業資格をとって受委託を建設業の範囲で行うこととしました。
《出典》
日本貨物鉄道株式会社(2003)『JR貨物15年の歩み』p.132
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旅客会社・貨物会社間の受委託については、会社発足5周年の座談会「JR貨物はどのようにして生まれたか」でも語られています。
これを読むと電気関係については専門の資格を要するため、四国を除いて受委託はせずJR貨物の全面直轄とした事が分かります。
以下の抜粋部分における話者は、代表取締役副社長の岡田晶久さん、取締役鉄道事業本部長の伊藤直彦さん、取締役運輸車両部長の畠中寛さん、取締役運輸車両部担当部長の金田典男さん、企画部担当部長の青井重幸さん、企画部次長の田村修二さんです。
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金田 私は本社の車両局で客貨車の担当だったものですから、貨物プロジェクトに参加することになりました。貨物会社の輪郭がだんだんとハッキリしてきて、車両も持っていくことになり、貨物会社は工場を持たなくてはならなくなりました。ここで難しかったのが、ベルトコンベアのようにつながっている職場から、果して貨物部門だけをうまく抜いてくることができるのか、ということでした。新小岩、輪西など貨物の仕事が大部分というところなら問題はなかったんですが、そうでないところは『まだら』といいますか、承継債務を極力少なくする必要から、財産の承継を減らして、土地、建物、機械すべてが旅客会社からの借用という形態の車両所ができることになりました。将来、貨物会社にカネができたら直轄工場を自前でつくるんだという風に、最後は割り切って、貨物充当人員相当の業務と要員を貨物会社に持っていきました。
青井 しばらくはこれでやってみよう、という・・・。
金田 完全に委託に踏み切るところは踏み切る、そして自前でやるところはやる、という決断を何時かはつけないといけないと思います。
伊藤 駅の帰属も難しい作業でした。貨物だけの駅というのは少ないし、充当人員に見合うだけの帰属駅を持つということで、旅客の色が濃いところも持っていかなければなりませんでしたし、客貨分離駅を作ったところもあります。
岡田 しかし、受委託という考え方ができたからこそ、人員が1万2500人で収まったんじゃないかな。
田村 施設局は受委託をする前提で整理してくれたんですが、電気局には「受委託なしで、キャラバン隊を組み、自分たちだけで設備の面倒を見なさい」といわれまして・・・。施設・電気の保守エリアが異なることにより、アンバランスが生じてしまいました。
畠中 電気関係の仕事は資格がいりますから、業務の受委託は難しいんです。
《出典》
日本貨物鉄道株式会社(1992)『JR貨物5年の歩み』p.p.92~94
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資料を元に作成した保全区の職制イメージ図
1990年代に入ってからJR貨物は、現業機関の見直しを重ねていきます。
施設・電気関係では1993年5月1日、メンテナンス業務の集中化を図るべく施設区と電気区を統合して「保全区」を結成。
この組織改正では全ての施設区・電気区が保全区に移行し、施設区36ヶ所(派出19ヶ所)・電気区21ヶ所(派出27ヶ所)から、保全区28ヶ所(派出24ヶ所)へと大幅なスリム化を成し遂げました。
ただし職名の統合はせず、施設職・電気職を引き続き置いて担当業務を分担しています。
「札幌保全区」の表記が残るバラスト散布車
2019年9月7日、線路沿いの公道から撮影
書籍『JR貨物15年の歩み』を読む限り、実際に開設された保全区は以下の26ヶ所です。
なお、残り2ヶ所の保全区が紙面から抜けていますし、派出の内容についても詳細が分かりません。
【北海道支社】2ヶ所
札幌保全区
旭川保全区
【東北支社】3ヶ所
盛岡保全区
秋田保全区
仙台保全区
【関東支社】9ヶ所
新潟保全区
長岡保全区
高崎保全区
宇都宮保全区
隅田川保全区
東京保全区
新鶴見保全区
南松本保全区
篠ノ井保全区
【東海支社】3ヶ所
沼津保全区
静岡保全区
稲沢保全区
【関西支社】7ヶ所
富山保全区
金沢保全区
吹田保全区
百済保全区
岡山保全区
広島保全区
新南陽保全区
【九州支社】2ヶ所
博多保全区
小倉保全区
資料を元に作成した総合鉄道部の職制イメージ図
他にもJR貨物は効率的な業務運営と活力ある職場作りを実践するため、特定地域の各現業機関を統合した「総合鉄道部」の設置を進めました。
まずは1992年7月1日、東海支社の西浜松駅、西浜松機関区、西浜松施設区、東静岡電気区西浜松派出の4ヶ所を統合し「浜松総合鉄道部」を開設。
施設・電気の職場は「保全課」となり、課長の配下に助役と各係職を置く体制になりました。
書籍『JR貨物15年の歩み』によると総合鉄道部は2000年度までの間に計18ヶ所が発足しており、そのうち施設区・電気区および保全区を統合したものは下記の11ヶ所です。
【浜松総合鉄道部】
1992年7月1日開設
西浜松駅、西浜松機関区、西浜松施設区、東静岡電気区西浜松派出を統合
【郡山総合鉄道部】
1993年12月1日開設
郡山営業所、郡山貨物ターミナル駅、郡山貨車区、仙台保全区郡山派出を統合
【静岡総合鉄道部】
1993年12月1日開設
静岡営業センター、静岡貨物駅、東静岡機関区、静岡保全区を統合
※1997年4月1日に沼津保全区を吸収し、同部沼津派出とした
【米子総合鉄道部】
1993年12月1日開設
米子駅、東松江駅、岡山機関区米子派出、岡山保全区米子派出を統合
【熊本総合鉄道部】
1994年3月14日開設
熊本駅、博多保全区熊本派出を統合
【秋田総合鉄道部】
1994年12月3日開設
秋田貨物駅、秋田機関区、秋田保全区を統合
【金沢総合鉄道部】
1994年12月3日開設
金沢駅、金沢機関区、金沢保全区を統合
【福岡総合鉄道部】
1995年3月17日開設
福岡貨物ターミナル駅、博多港駅、福岡機関区、博多保全区を統合
【篠ノ井総合鉄道部】
1995年4月1日開設
篠ノ井機関区、篠ノ井保全区を統合
※1996年4月1日に篠ノ井駅を吸収
【新南陽総合鉄道部】
1997年3月22日開設
新南陽駅、徳山貨車区、新南陽保全区、徳山乗務員センター(JR西日本委託の貨物列車乗務)を統合
【盛岡総合鉄道部】
1999年4月1日開設
盛岡貨物ターミナル駅、盛岡機関区、長町機関区一ノ関派出、盛岡保全区を統合
保全区や総合鉄道部を開設した後も、JR貨物は施設・電気関係の組織改正を重ねました。
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最終更新日 : 2020-11-01