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2020-09-09 (Wed) 18:52

出札から駅長代理まで幅広く担当 国鉄の駅員「運輸掛」について

上白滝駅xx01
2016年3月ダイヤ改正で廃止された石北本線上白滝駅(2015年9月19日撮影)

国鉄の古い職制には管理職、掛職、手職といった区分が設けられていました。
戦前の鉄道省では掛職を「雇員」、手職を「傭人」と定めており、これら2つの分類はその他の官公庁にも存在しました。
雇員は現代で言う現業公務員のようなもので、民法上の雇用契約により官公庁に勤務し、吏員の事務補助に当たる職員の事です。
一方、傭人は私法上の雇用契約により官公庁に勤務し、肉体的な単純労働に従事する作業員・用務員の事。
国鉄においても掛職(雇員)と手職(傭人)の職務内容は大きく異なり、給与形態も掛職の月給制に対し手職は日給制、おまけに「小倉服」という質が悪く色褪せ易い木綿の制服を着ての勤務を強いられてきました。
国鉄名古屋機関区・名古屋第二機関区で機関士、電気機関士、技術掛担当機関士、指導機関士などを歴任された川端新二さんも、自著『15歳の機関助士』で戦前の職制について触れています。

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 戦前の国鉄には、歴然とした身分制度があった。大多数を占める下級職員は、傭人と雇員に分けられていて、傭人は手がつく職名の駅手、連結手、線路工手、踏切警手、機関区では炭水手、合図手、庫内手、手はつかないが技工なども「手職」といった。その一方で、改札掛、出札掛、信号掛、操車掛、電信掛、事務掛、掛はつかないが車掌、機関車乗務員はすべて「掛職」といい、雇員だった。
 中等学校卒業者は就職と同時に手職ではなく掛職となり身分は雇員だった。片や日給、一方は月給、制服の生地までもが違っていた。高等小学校を出て就職し勤続1年にもならない15歳の少年が乗務員になれば雇員になり、10年、20年も勤続している炭水手、技工は傭人のままだった。厳しい身分制度だった。たしかに機関車乗務員はめぐまれていたといえる。

《出典》
川端新二(2012)『15歳の機関助士 戦火をくぐり抜けた汽車と少年』(交通新聞社)p.74
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まだ士職や助士職という動力車乗務員特有の括りが存在しない時代でした。
機関士、機関助士も掛職の範疇だったんですね。

戦後に全国各地の現業機関で労働組合が発足し争議が活発化すると、現場から「手職は封建的かつ身分差別的だ」として撤廃を求める声が相次ぐようになりました。
これには国鉄当局も重い腰を上げ、昭和30年代に入ると手職の撤廃に乗り出します。
まずは1957年1月1日に運転区所(機関区・電車区・気動車区・客貨車区)を対象として大規模な職制改正を実施。
この職制改正は「運転関係職員の職制及び服務の基準」の制定を伴うもので、技工を「機関車掛」、合図手を「誘導掛」、炭水手を「燃料掛」、雑務手・庫内手を統合して「整備掛」に改称しました。
炭水手世話掛についても「燃料指導掛」に改称しています。
この事からも分かるように手職の担当職務自体は消滅しておらず、手職を「掛」に改称すると共に、掛職を「中間職」(従前の掛職)と「労務職」(従前の手職および手職世話掛)に振り分けています。
これを皮切りに他系統の現業機関でも順次、職制改正を展開。
そして1966年6月1日に機械区を対象として実施した職制改正を以って、手職の撤廃と新職名への移行は完了しました。


JR北海道 国鉄 JR東日本 JR東海 JR西日本 JR四国 JR九州 JR貨物 指揮命令系統図
国鉄後期の駅員職制(指揮命令系統・旧)
1962年7月~1973年8月時点の駅従事員職制
1972年5月には「構内作業指導掛」が追加された
日本国有鉄道(1965)『われらの国鉄』昭和40年度版p.151より引用

駅(操車場・信号場を含む)については1962年7月1日、「営業関係職員の職制及び服務の基準」の制定に伴い手職を撤廃。
この職制改正に関する鉄道公報は昭和37年8月17日総裁達第363号ですが、附則にて「この達は、昭和37年7月1日から適用する」と記しており、事後報告的に総裁達を発行した事が分かります。
駅に従事する手職のうち、荷扱手は「荷扱掛」、駅手・予備駅手・重機手・諸機手は統合し「駅務掛」、転てつ手・連結手・予備構内手は統合し「構内作業掛」、踏切警手は「踏切保安掛」に改称。
これに合わせて駅手世話掛も「駅務指導掛」に改称しています。
加えて従前の掛職についても統廃合を実施。
管理職2種、上級職3種、中級職11種(うち事務掛職は7種)、労務職5種、そして予備助役の計22職名を定めました。
このうち上級職の「営業掛」は従前の「掛主任」で、これまでは担務指定上の種別に過ぎなかったところ、職制で新たに規定しポジションを明確化した職名です。
職制で規定された各職名の職務内容は下記の通りです。

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【駅長】
駅の業務全般の管理及び運営

【助役】
駅長の補佐(業務の分担を特に命ぜられた場合には、主としてその業務の補佐)又は代理
指定された業務の処理

【予備助役】
駅長、助役又は運転掛の職務代行

【庶務掛】
金銭及び物品の受払及び保管、出務表の整理、諸給与の仕出しその他の庶務経理事務
特に命ぜられた場合には庶務関係業務の総括

【営業掛】
旅客掛、小荷物掛、貨物掛、配車掛、運輸掛及び警備掛の指導並びにこれらの者の業務(業務の分担を特に命ぜられた場合には、主としてその業務)の計画及び処理

【旅客掛】
乗車券類の発売、受払及び保管、乗車券類の検査及び収集
旅客、荷主及び公衆の案内、駅構内の整理並びに遺失物の取扱い、その他これらに附帯する業務

【小荷物掛】
手荷物、小荷物等の取扱い、及びこれに附帯する業務

【貨物掛】
貨物の取扱い、及びこれに附帯する業務

【配車掛】
列車の組成準備
旅客車及び貨物車の記帳
その他これらに附帯する業務

【運輸掛】
旅客掛、小荷物掛、貨物掛及び配車掛の職務
特に命ぜられた場合には駅長の代理

【重機掛】
起重機その他の諸機械の操縦及び保守に関する業務の計画及び運営並びに技術指導

【諸機掛】
起重機その他の諸機械の操縦及び保守
汽かんの取扱い及び保守
特に命ぜられた場合にはもっぱら諸機械の検査及び修繕

【運転掛】
操車掛、信号掛及び構内掛の指導並びにこれらの者の業務の計画及び処理
列車の発着及び閉そく器の取扱い

【操車掛】
列車の組成並びに列車及び車両の入換

【信号掛】
信号機、連動装置及び閉そく器等の取扱い及び整備

【構内掛】
操車掛及び信号掛の職務

【構内作業掛】
転てつ器の取扱い及び整備
車両の解結及び制動靴の取扱い
操車掛及び信号掛の職務補助
特に命ぜられた場合には構内掛の職務

【警備掛】
手荷物、小荷物及び貨物(以下これらを「荷物」という)防護及び積載車等の異状の監視、構内の警戒及び取締り

【駅務指導掛】
駅務掛及び荷扱掛の指導並びに駅務掛及び荷扱掛の職務

【駅務掛】
荷物の積卸及び運搬、貨車の手押入換並びに電報の配達及び室内外の清掃
旅客列車の指導標及び寝台用品類の取扱い
車両の給水及び清掃
庶務掛、旅客掛、小荷物掛、貨物掛及び諸機掛の職務補助
その他の雑務
特に指定された場合には、構内作業掛の職務

【荷扱掛】
荷物の積卸し運搬及び整理
貨車の手押入換及び清掃
小荷物掛及び貨物掛の職務補助
その他の雑務

【踏切保安掛】
踏切道の看守及びこれに附帯する業務

《出典》
国鉄職制研究会(1978)『国鉄における職制の構造』(鉄道研究社)p.p.41,42
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お分かりいただけたでしょうが、鉄道ファンの間では馴染み深い「出札掛」と「改札掛」は共に消滅しています。
その代わり、これらの職務を担当する職名として「旅客掛」と「運輸掛」を定めています。
旅客掛の職務内容のうち、「乗車券類の発売、受払及び保管」は出札業務、「乗車券類の検査及び収集」は改札業務を意味しています。
旅客掛は「乗客掛」の職務をも引き継ぎ、駅構内での旅客案内や遺失物の保管なども担当しました。
ただし実際には「旅客掛(出札担当)」、「旅客掛(改札担当)」、「旅客掛(乗客担当)」と、駅長が担務指定を行ない業務分担する駅が多く見られました。


JR北海道 JR東日本 JR東海 JR西日本 JR四国 JR九州 JR貨物 国鉄 駅従事員職制
運輸掛配置駅職制xx01

一方、運輸掛の職務内容は「旅客掛、小荷物掛、貨物掛及び配車掛の職務」とあり、出改札や旅客案内のみならずフロント業務全般を一手に担うオールラウンダーとして定めています。
この運輸掛は従前の駅務掛・予備駅務掛を前身とする職名です。
駅務掛といっても1962年7月職制改正後の駅務掛とは無関係の職種で、これも運輸掛と同様にフロント業務を幅広く担当する職名として規定されていました。
国鉄では複数職名の職務内容を集約した職種を「統合職」と呼び、運輸掛も統合職の一種として扱われています。

運輸掛は原則として、旅客・小荷物・貨物を合わせた営業関係職の出面(でづら/1日の出勤人数)が5名以下の小駅に配置されました。
つまりフロントの業務量が少ない駅に運輸掛を配置したのです。
ただし小荷物フロント・貨物フロントの業務量が比較的多い小駅では、専任の小荷物掛・貨物掛を引き続き配置する事としました。
なお、小駅でも箇所によっては運輸掛の出面人員が5名以上となり、その場合は統率者として営業掛(後の営業管理係)を配置しました。

『鉄道辞典』にも駅務掛(旧)、運輸掛の解説が掲載されていますので、下記に引用しましょう。

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えきむがかり 駅務掛
 駅におかれる職で駅長の指揮を受けて出札掛・改札掛・小荷物掛・貨物掛および電信掛の職務に従事するものである。
 この職は前記の職がそれぞれ1人量に達しない場合等に配置する総合職名であって、駅長の勤務指定によって、具体的に従事する職務内容が指定される。特殊日勤駅において特に命ぜられた場合は駅長の代理を行う。この特命の駅務掛は1箇月間に8日以上駅長の非番日および公休日の代務に従事する者に指定する。
(加藤誠次郎)
《出典》
日本国有鉄道(1958)『鉄道辞典 上巻』p.154
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うんゆがかり 運輸掛
 駅におかれる職で、昭和37年の職制改正により、駅務掛より改名された。駅長の指揮を受けて、旅客掛、貨物掛、小荷物掛および配車掛等の職務を行なうもので、各掛の業務がそれぞれ1人量程度の中間駅に配置される統合職である。この職になるためには、駅務掛、荷扱掛等の職を一定期間経てから、第一種鉄道学園運輸科を修了するか、または運輸掛採用試験に合格しなければならない。
(森口政雄)
《出典》
日本国有鉄道(1966)『鉄道辞典 補遺版』p.20
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廃線跡 深名線 添牛内駅 木造駅舎 モノコックバス 日野RC 士別軌道 運転取扱業務
添牛内駅zz01
廃止から四半世紀を経てもなお残る深名線添牛内駅の木造駅舎(2017年10月14日撮影)
手前には士別軌道のモノコックバス、旭川22か1269(日野RC/1982年式)が停まっている

さて、職制で規定された運輸掛の職務内容を再掲しましょう。

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【運輸掛】
旅客掛、小荷物掛、貨物掛及び配車掛の職務
特に命ぜられた場合には駅長の代理

《出典》
国鉄職制研究会(1978)『国鉄における職制の構造』(鉄道研究社)p.42
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1行目は既に述べたとおりですが、2行目に「特に命ぜられた場合には駅長の代理」とありますね。
通常の担務指定は現場長(駅長・区長・所長など)の判断により決定するものですが、「特に命ぜられた場合」とあるのは鉄道管理局長から指定を受ける事を意味し、これを略して「特命」と言います。
特命はとりわけ重要性が高い担務指定に適用し、任免取扱上の発令を行ない、局報等にも発令内容を記載して該当職員と他の職員を明確に区別するのです。

分かり易いところで言えば担当助役も特命ですね。
実は国鉄の職制上、助役は首席助役だろうと旅客総括助役だろうと出札助役だろうと、更に言えば旅行センター所長だろうと、全て「助役」に一本化されているのです。
しかし大規模な現業機関になると助役の中でもポジションを分ける必要が生じるため、局長からの特命により「助役(首席)」、「助役(旅客総括)」、「助役(出札)」、「助役(旅行センター所長)」といったように担務指定を行なう訳です。
運転所や車両管理所、操車場など一部現業機関では科制を敷き、各部門の責任者として「科長」を置く場合がありますが、これも実際の身分は「助役(○○科長)」となります。

運輸掛の場合、特命の内容は「駅長の代理」に限定されています。
これは在籍駅員のマネジメントを代行するという意味ではなく、特殊日勤勤務駅において駅長・助役不在時に運転取扱上の「当務駅長」を代行する事を意味します。
当務駅長業務とは列車に対する出発指示合図、乗務員に対し運転上の重要事項を伝える運転通告券の発行、タブレット閉塞器の取扱い、列車運転状況表の記入等を指します。
特命運輸掛に関する取扱いは「営業関係職員の職制及び服務の基準」において、「第6条 鉄道管理局長は別に定めるところにより、適任者に、当務駅長又は運転掛の業務の代行を命ずることができる」と規定されています。
なお、特殊日勤は『鉄道辞典 上巻』で解説されているとおり、1日当たりの所定勤務時間が平均11時間、最大18時間となる日勤(宿直の無い勤務)の事です。

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7 特殊日勤 国鉄現業部門の勤務方法は、特殊日勤によって始められたといわれるほど古い歴史をもつ勤務種別で、通常初列車から終列車までを扱うように勤務するのが特殊日勤の特長であり、拘束勤務時間も初列車および終列車の時刻によっておのずから長短が生ずる。今日でも支線では夜間になると列車が運転されない所が多い。かかる線区ではほとんどこの特殊日勤が適用されている。1日の平均拘束勤務時間は11時間で、その中に休憩時間が1時間与えられることになっているので、1日平均の実働時間が10時間ということになる。しかし1昼夜交代と同様8時間労働制の例外規定によって認められているものであるだけに、適用については労働基準法上の制限があり、かつ労働基準監督署の許可を受けることになっている。なお特殊日勤の1日の拘束勤務時間は18時間までよいことになっているので、このように長い勤務につく者については、4週間を平均して1日の平均拘束勤務時間が11時間になるように、非番日を設けて調整することになっている。

《出典》
日本国有鉄道(1958)『鉄道辞典 上巻』p.395
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国鉄 運転取扱基準規程 停車場従事員 駅員 駅従事員
運転取扱基準規程昭和39年12月版p2p3
日本国有鉄道運転局(1964)『運転取扱基準規程 昭和39年12月』p.p.2,3より引用

ここで『運転取扱基準規程』の昭和39年12月版を見てみましょう。
『運転取扱基準規程』とは国鉄職員が運転取扱業務に従事する上で、輸送の安全を確保するために遵守しなければならない事項を纏めたマニュアルの事です。
これの第2条では「職能別の運転取扱基準規程の編名及びその適用職種」を掲げています。
編名は1964年12月時点で、停車場従事員、踏切保安掛、車掌、動力車乗務員、誘導掛、客貨車検査掛、施設・電気従事員、雪カキ車乗務員の計8編に及びました。


国鉄 運転取扱基準規程 停車場従事員 駅員 駅従事員
運転取扱基準規程昭和39年12月版p3上1段目
日本国有鉄道運転局(1964)『運転取扱基準規程 昭和39年12月』p.3より引用

駅員については「停車場従事員」の対象となり、その適用職種は駅長(運転の業務を担当する者)、助役(運転及び指導の業務を担当する者)、予備助役、運転掛、運輸掛(特命)、信号掛、操車掛、構内掛、構内作業掛の計9職名です。
ご覧の通り、特命運輸掛についても運転取扱業務の従事者に含まれている訳です。


JR西日本 山陽本線 国鉄 運輸掛採用試験問題並びに解答 岡山鉄道管理局
国鉄岡鉄局運輸掛採用試験s39m11d13p1
鉄道受験研究会(1967)『掛職試験問答集』昭和42年版(交通研究会)p.67より引用

下っ端の駅務掛・荷扱掛が運輸掛に昇進するためには、第一種鉄道学園運輸科を修了するか、各鉄道管理局が実施する「運輸掛採用試験」に合格しなければなりませんでした。
私の手元には岡山鉄道管理局が1964年11月13日に施行した試験問題があります。
運輸掛採用試験の筆記問題は「社会常識」、「旅客・手小荷物」、「貨物」、「運転」の4科目により構成されており、何れも解答時間は60分、合計で240分です。
このうち「運転」については、他の営業関係掛職を対象とした「事務掛職試験」には出題されません。
試験は筆記に加えて管理局で面接を行ない、総合的な評価を以って昇進の合否を決めていました。
以下に試験問題を抜粋しますので、皆さんも挑戦してみて下さい。
なお、付録の正誤表により問題文の誤植箇所を修正しています。
該当箇所は「旅客・手荷物」問1の(1)で、「発売駅名」を「発着駅名」に直してあります。

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社会常識(60分)

問1 次の文の空欄に、下記語群のうちから適するものを選び、その記号を記入しなさい。
(1) 国鉄は鉄道事業その他の附帯事業を経営し、( )運営によりこれを発展せしめ、もって( )を増進することを目的とする。
 イ 政府保障による   ロ 能率的な   ハ 公共の福祉
 ニ 独占的   ホ 競争力   ヘ 資本蓄積
(2) われわれは( )を通じて、社会人としてのつとめをはたしあっている。
 イ 国民の義務遂行   ロ 職務の完遂   ハ 収入の獲得
(3) 職員に要求される服務とは、持ち場、持ち場のつとめを十分に果すため( )に従うことである。
 イ 法令   ロ 企業の秩序   ハ 社会の秩序
(4) われわれが仕事をするときの直接のよりどころは( )である。
 イ 労働協約   ロ 国法   ハ 就業規則
(5) 国鉄で争議が禁止されているのは( )をまもるためである。
 イ 国民の福祉   ロ 国鉄の経営権
(6) 安全対策といえば、通常( )についてのことである。
 イ 労働対策とモラル教育
 ロ 企業防衛と経営合理化
 ハ 運転事故防止と作業安全
(7) 給与は働きに対する報酬であるから、原則的には( )をもとにしてきめるべきである。
 イ 職員の生活費   ロ 職員の評価   ハ 経済事情

問2 共同作業をする場合、他人の不注意によって起る傷害を防止するために、特に注意しなければならない事項は、次のうちどれか、該当のものに○印をつけなさい。
(1) 家庭生活を明朗に保つこと。
(2) 作業人員を作業量に応じて適正に配置すること。
(3) 職場環境をよくする。
(4) 連絡打合せを行い、確認を励行すること。
(5) 作業に熟練するようつとめること。

問3 A群の( )内に、B群のうちから最も関係の深いものを選び、その記号を記入しなさい。
A群
(1)I.L.O( )   (2)1968年オリンピック( )   (3)山陽新幹線( )
(4)イギリス総選挙( )   (5)電電公社( )   (6)基本的人権( )
(7)都電( )   (8)国鉄の労働組合( )   (9)日本国憲法( )
(10)物価指数( )
B群
イ 国鉄第3次長期計画   ロ 参政権   ハ 第87条条約
ニ 公共企業体   ホ 平和主義   ヘ メキシコ
ト ジェット機   チ 地方公営企業   リ 線区経営組織
ヌ 労働党   ル 三人組   ヲ 運賃値上
ワ 国際見本市   カ オープン・ショップ   ヨ 通商航海条約

問4 昭和38年度における当管内の線別営業係数を、下記語群のうちから選び、その記号を( )内に記入しなさい。
A 全線( )   B 山陽本線( )   C 姫新線( )
D 赤穂線( )   E 津山線( )   F 吉備線( )
G 宇野線( )   H 伯備線( )   I 芸備線( )
J 福塩線( )
(語群)
 イ 126   ロ 61   ハ 219  ニ 154   ヘ 78
 ト 242   チ 200   リ 183   ヌ 254

問5 次の表の空欄に適する語句を記入しなさい。
国鉄岡鉄局運輸掛採用試験s39m11d13p6

旅客・手小荷物(60分)

問1 乗車券の改札について、次の空欄に適する語句を記入しなさい。
 国鉄の取り扱う多数の旅客の中には、旅行に不案内なものもあるし、また、旅客営業制度の間げきを利用して、不正に乗車船するものもある。そこで、鉄道は( )を( )に目的地まで到達することのできるように( )するとともに、不正旅客を取り締まることを目的として乗車券の改札を行っている。改札の方法としては、次のことがあげられる。
(1) 乗車券の等級、発着駅名、( )、通用期間、途中下車印等を確認する。
(2) 使用者に対して特別の制限のある乗車券類については、その( )であることを確認する。
(3) 団体旅客及び貸切旅客の乗車駅では、( )のうえでその人員を確認する。

問2 方向変更または経路変更の取扱いができない場合を列挙しなさい。

問3 次の急行料金、指定料金及び寝台料金について、下記語群のうちから適するものを選び、その記号を( )内に記入しなさい。
(1) 普通急行料金1等(300キロ以上) (    )
(2) 普通急行料金2等(300キロまで) (    )
(3) 座席指定料金2等 (    )
(4) 準急行料金1等 (    )
(5) 寝台料金2等(中段) (    )
(6) 特別急行料金2等(つばめ、岡山ー新大阪間) (    )
(7) 新幹線超特急料金2等(ひかり、新大阪ー名古屋間) (    )
(8) 特別船席料金1等 (    )
(語群)
 イ 50円   ロ 100円   ハ 200円   ニ 220円
 ホ 300円   ヘ 500円   ト 660円   チ 700円

問4 次に掲げるもののうち、手荷物として受託できるものに○印、できないものに×印をつけなさい。
(1) 所定の容器に収納した重量10キログラムの子犬
(2) 学生用の机及び椅子
(3) 水に入れない魚介類
(4) 自転車
(5) 遺骨

問5 次の事項は、普通扱小荷物の1口扱20個まで取扱いができる条件である。空欄に適する語句を記入しなさい。
(1) (  )小荷物であること。
(2) 品名、荷造、発着区間その他運送条件が同一のもので(  )されるものであること。
(3) (  )を要せず、かつ同時運送が可能であること。
(4) 1口扱にすることについて(  )があったとき。

問6 次の文の空欄に正しい数字を記入しなさい。
(1) 制限外小荷物として取り扱う死体の運賃計算重量は(  )キログラムである。
(2) 代金引換手数料の最高額は(  )である。
(3) 特別扱小荷物の承認をした新聞紙は、発行の日から(  )以内と定めている。
(4) 貸切扱小荷物の付添人は、原則として(  )人まで無賃である。
(5) 遺失物の無賃回送を認める場合の重量は、(  )キログラムまでである。


貨物(60分)

問1 次の貨物の取扱種別(小口扱、車扱)を記入しなさい。
(1) 列車指定貨物(  )
(2) 事業用貨物(  )
(3) 代金引換扱貨物(  )
(4) 1個4トンの貨物(  )
(5) 貨物引換証発行貨物(  )

問2 次の事項に最も適するものを、下記語群のうちから選び、その記号を( )内に記入しなさい。
A (1) 引渡期間( )
  (2) 貨物留置料( )
  (3) 増運賃( )
  (4) 貨車留置料( )
  (5) 貨物引換証発行貨物( )
  イ 品名相違   ロ 荷崩れ   ハ 引取時間   ニ 積卸時間
  ホ 催告書   ヘ 延着   ト 引換証明書   チ 代用承諾扱貨物
  リ 非営業線運送貨物
B (1) 貨物通知書の発行方
  (2) 異例取扱貨物
  (3) 小口扱割増特別票
  (4) 貨物の運送引受義務
  (5) 貨物輸送業務
  イ 日本国有鉄道運賃法   ロ 鉄道営業法   ハ 鉄道運輸規程
  ニ 貨物運送規則   ホ 貨物輸送手続   ヘ 特殊貨物運送手続
  ト 請負業務処理規程   チ 運輸帳表取扱手続
C (1) 小口扱貨物(集荷・配達)の最低料金( )円
  (2) 貨物代金引換額の最高( )万円
  (3) 岡鉄局の本年度収入目標( )億円
  (4) 無掲記品目の貨物等級( )級
  (5) 積合車(中形貨車)の積載量の最低限度( )トン
  イ 2   ロ 4   ハ 6   ニ 8  ホ 0   ヘ 20
  ト 24   チ 33   リ 42   ヌ 44   ル 50   ヲ 80
  ワ 100   カ 150   ヨ 1160

問3 次の貨物積車に使用する貨車車票、貨車表示票の種別を該当欄に記入しなさい。
国鉄岡鉄局運輸掛採用試験s39m11d13p2

問4 次の文中、空欄に適する語句を記入しなさい。
(1) 貨車の運用効率向上の要素は、貨車停留時間の短縮、(  )の向上、(  )キロの短縮、(  )時間の短縮、(  )時間の短縮である。
(2) 代金引換貨物に対しては(  )荷票を、危険品に対しては荷票を(  )側で貨物にくくりつける。
(3) 正当付添人かどうかは(  )又は(  )によって確認するが、無断付添人で前途乗込を承認した場合は(  )によって確認する。

問5 受託監査の目的を列挙しなさい。

問6 次の場合の車扱貨物運賃を計算しなさい。
品名:引越荷物   使用車:ワム(15トン)   等級:3等
減トン数:小形2 中形3 大形6   実重量:6300キログラム
運賃計算キロ:600キロメートル   賃率:1トン当り2068円、列車指定扱


運転(60分)

問1 次の事項を通告する場合、車掌に対して通告券を使用しなければならないものに○印をつけなさい。
(1) 閉そく信号機の不良を予告するとき。
(2) 通過列車を臨時に停止させるとき。
(3) 列車の運転時刻を変更するとき。
(4) けん引定数を臨時に変更するとき。
(5) 列車を運転させる線路を変更するとき。

問2 信号機の定位について、次の表中、該当欄に○印をつけなさい。
国鉄岡鉄局運輸掛採用試験s39m11d13p3

問3 常用閉そく方式の種類を単線、複線別にあげ、そのうちで当管内で施行されているものに○印をつけなさい。

問4 次のB・C群の(  )のうちへ、A群のなかから関係のものを選び、その番号を記入しなさい。

国鉄岡鉄局運輸掛採用試験s39m11d13p4

問5 次の文は代用手信号について述べたものである。正しいものには○印、誤りのものに×印をつけなさい。
(1) 代用手信号は進行信号と停止信号の2種類しかない。
(2) 本線の故障その他の事由により、側線から列車を出発させる時は、列車の前方で代用手信号による進行手信号を現示する。
(3) 列車を進入せしめる線路を変更した場合で、その線路の列車停止標識を設くべき位置にこれが設けてない場合、代用手信号による停止手信号を現示する。
(4) 通過信号機を附設しない二位式場内信号機の設けてあるとき。

問6 鉄道気象告知板は塗色によって天候の状態を表示するが、次の表で天候の状態に対する着色はどれか、該当欄に○印を記入し、欄外の記号について説明しなさい。

国鉄岡鉄局運輸掛採用試験s39m11d13p5

《出典》
鉄道受験研究会(1967)『掛職試験問答集』昭和42年版(交通研究会)p.p.67~72
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以上が岡鉄局1964年11月13日施行の運輸掛採用試験の全問題となります。
続いて解答を抜粋しましょう。

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社会常識(60分)
【解 答】
問1 (1)ロ、ハ   (2)ロ   (3)ロ   (4)ハ   (5)イ
    (6)ハ   (7)ロ
問2 ○(4)
問3 (1)ハ   (2)ヘ   (3)イ   (4)ヌ   (5)ニ
    (6)ロ   (7)チ   (8)カ   (9)ホ   (10)ヲ
問4 A ヘ、B ロ、C リ、D ハ、E ニ、F ヌ、G ホ、H イ、I ト、J チ
問5

国鉄岡鉄局運輸掛採用試験s39m11d13解答p6

旅客・手小荷物(60分)
【解 答】
問1 善良な旅客、安全、正確、指導案内、発売日付、使用資格者、引率者と立会
問2 (1)定期乗車券を使用しているとき
    (2)回数乗車券を使用しているとき
    (3)継続乗車船をしているとき
    (4)すでに1回方向変更または経路変更した乗車券であるとき
    (5)非変更区間と変更区間とを通じた経路が環状線を一周となるとき、または、
        一部若しくは全部が複乗となるときの環状線を一周となる駅または折返し
        乗車となる駅の前途区間
    (6)等級、区間、経路等に制限のある種類の割引乗車券で、その制限を越える変更
問3 (1)ト   (2)ハ   (3)ロ   (4)ニ   (5)チ   (6)ホ
    (7)へ   (8)イ
問4 ×(1)   ○(2)   ○(3)   ×(4)   ×(5)
問5 (1)証券を発行しない。   (2)同時に託送
    (3)積換   (4)荷送人の請求
問6 (1)500   (2)600   (3)5   (4)2   (5)5


貨物(60分)
【解 答】
問1 (1)車扱   (2)小口扱、車扱   (3)小口扱
    (4)車扱   (5)小口扱、車扱
問2 A (1)ヘ   (2)ホ   (3)イ   (4)ニ   (5)リ
    B (1)チ   (2)ヘ   (3)ニ   (4)ロ   (5)ホ
    C (1)ヨ   (2)ル   (3)ヌ   (4)ロ   (5)ホ
問3
国鉄岡鉄局運輸掛採用試験s39m11d13解答p2
問4 (1)輸送速度、空車回送、貨車中継、貨車修繕
    (2)引渡注意、危険品、国鉄
    (3)貨物通知書甲片、付添人証明書
問5 (1)輸送の安全、正確を図る。
    (2)運送契約の内容及び現品について責任関係を明らかにする。
    (3)公正な運賃を賦課し、鉄道収入を確保する。
問6 2,068円×(15-3)=24,816円
    24,816円×1.2=29,779.2円≒29,780円


運転(60分)
【解 答】
問1 ○(3)   ○(4)   ○(5)
問2 
国鉄岡鉄局運輸掛採用試験s39m11d13解答p3
問3 
 [単線]
 自動閉そく式 ○
 連動閉そく式
 通票閉そく式 ○
 票券閉そく式 
 連査閉そく式 ○
 [複線]
 自動閉そく式 ○
 双信閉そく式
問4
国鉄岡鉄局運輸掛採用試験s39m11d13解答p4
問5 ×(1)   ×(2)   ○(3)   ○(4)
問6
国鉄岡鉄局運輸掛採用試験s39m11d13解答p5
 テケヘ 大雨が降る。
 テケヌ 濃霧が発生するおそれがある。

《出典》
鉄道受験研究会(1967)『掛職試験問答集』昭和42年版(交通研究会)p.p.67~72
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ちなみに札幌鉄道管理局は1964年9月3日の昇進試験を何と、運輸掛、車掌、保線区事務掛・技術掛の4職名共通で実施しています。
この筆記試験は全5科目のうち「鉄道一般及び常識」、「数学」、「珠算」の3科目を全職種共通とし、残り2科目を希望職種別の選択問題としました。
運輸掛希望者の場合は上記3科目に加え、駅の中間職に必要な知識を問う「運輸」と「運転」の2科目を解く事になります。
試験時間は「珠算」のみ30分で、他4科目は各50分、総解答時間は230分と定めていました。
偏に掛職試験と言っても、一定職種への昇進に限定したものもあれば、複数職種・複数系統の昇進試験を一挙に行うものもあったんですね。



国鉄後期の駅員職制(指揮命令系統図)
国鉄末期における駅従事員(操車場・信号場を含む)の職制
職員局職員課(1977)『日本国有鉄道職制集 昭和52年1月』p.43より引用

そして1973年6月1日、駅従事員を対象として更なる職制改正が実施されました。
この職制改正では従前の「掛」を「係」、「管理係」、「主任」に改め、なおかつ職名の統廃合を実施しています。
なお、国鉄職員局の内部組織である国鉄職制研究会が編集した書籍『国鉄における職制の構造』(1978年/鉄道研究社)では、この職制改正が事実上施行された時期を2ヶ月後の1973年8月としています。
これは改正を巡って労使間の協議が難航し、1973年8月30日を以ってようやく「営業関係職員(駅関係)の職制改正に伴う職名移行等に関する協定」を締結したからです。
ただし全駅一斉に新職名へと移行するのではなく、準備が整った駅から順次移行する方法を採り、最終的に1975年4月30日を以って決着を見ました。
1976年9月には「交通保安指導係」が追加され、以降は国鉄解体まで駅の職制改正が為される事はありませんでした。

1973年6月の職制改正で特筆すべきは、フロント業務に従事する事務掛職を融合した事です。
具体的には旅客掛、小荷物掛、貨物掛、配車掛、運輸掛、警備掛の計6職名を統合し「営業係」に纏めています。
更に従前の主任的ポジションだった営業掛についても定員数を増加し、「営業管理係」に改称しました。
1962年7月の職制改正以来、小規模駅の営業関係掛職としてマルチタスクをこなしてきた運輸掛の職名も、営業係に統合されて消滅しています。
一方でややこしい事に駅務掛が「運輸」に改称されており、単純に「掛」を「係」に書き換えただけの話ではない点に注意が必要です。

以下に国鉄末期における駅従事員の各職名・職務内容を列挙しましょう。
このうち営業管理係・営業係の職務内容を赤く表示しています。

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【駅長】
駅の業務全般の管理及び運営

【助役】
駅長の補佐(業務の分担を特に命ぜられた場合には、主としてその業務の補佐)又は代理
指定された業務の処理

【庶務係】
金銭及び物品の受払及び保管
出務表の整理、諸給与の仕出しその他の庶務経理事務
特に命ぜられた場合には、庶務関係業務の総括

【運転主任】
列車の運転取扱に関する業務
運転係の業務に関する指導、調整及び計画並びに運転関係業務の総括

【営業管理係】
営業係の業務に関する指導、調整及び計画並びにその職務
指定された場合には、営業関係業務の総括

【輸送管理係】
列車の輸送に関する計画及びこれに附帯する業務
運転係及び輸送係の業務に関する指導、調整及び計画並びにこれらの職務
指定された場合には、輸送関係業務の総括

【営業係】
旅客、荷物及び貨物の取扱い並びにこれらに附帯する業務
販売及び渉外に関する業務
列車の組成情報の処理及び列車の組成準備並びにこれらに附帯する業務

【輸送係】
列車の組成情報の処理及び列車の組成準備並びにこれらに附帯する業務

【運転係】
列車の組成及び入換、信号装置、閉そく装置の取扱い及び整備並びにこれらに附帯する業務
特に命ぜられた場合には、列車集中制御装置の取扱い及びこれに附帯する業務

【動車運転係】
貨車移動機その他諸機械の操縦及び保守
汽かんの取扱い及び保守

【運輸指導係】
運輸係の指導及びその職務

【構内指導係】
構内係の指導及びその職務

【交通保安指導係】
交通保安係の指導及びその職務

【運輸係】
荷物の積卸し、運搬及び整理
電報の取扱い及び室内外の清掃
旅客列車の案内標及び寝台用品類の取扱い
車両の給水及び清掃
その他の雑務

【構内係】
車両の解結及び転てつ器の取扱い並びにこれらに附帯する業務
列車の分割及び併合

【交通保安係】
踏切道の看守及びこれに附帯する業務

《出典》
国鉄職員局職員課(1977)『日本国有鉄道職制集 昭和52年1月』p.p.40~42
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ところで営業係の職務内容をよく読むと、統合前の運輸掛が担ってきた「駅長の代理」に関する記述が見られません。
しかし営業係が当務駅長業務を担当しなくなったという訳ではなく、改正後の「営業関係職員の職名及び服務の基準」に目を通すと「第6条の2 四国総局長・新幹線総局長又は鉄道管理局長は、職務内容の定めにかかわらず、特殊日勤勤務箇所に限り、適任者に駅長代理を命ずることができる」との一文が追加されています。
国鉄職員局の内部組織・国鉄職制研究会によると、この条文は運輸掛の営業係統合に伴う処置として追加されたものです。

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 (1) 規程第6条の2
 従来から特殊日勤勤務箇所における当務駅長の予備員については、運輸掛(特命)を配置して対応してきたが、48年の職制改正により、運輸掛は営業係へ統合され、従来、運輸掛のおもな職務内容にあった「特に命ぜられた場合には、駅長の代理」を職務内容から削除したため、本条をあらたに設けたものである。なお、発令方法については、従来の取扱いと同じである。

《出典》
国鉄職制研究会(1978)『国鉄における職制の構造』p.58
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国鉄後期の運転取扱基準規程(適用職種一覧)
日本国有鉄道運転局(1978)『運転取扱基準規程 昭和53年10月』p.p.2,3より引用

『運転取扱基準規程』も見てみましょう。
こちらは新職名移行後、1978年10月に発行された運転取扱基準規程からの抜粋です。
第2条の「職能別の運転取扱基準規程の編名及びその適用職種」をチェックします。



国鉄後期の運転取扱基準規程(適用職種一覧)2
日本国有鉄道運転局(1978)『運転取扱基準規程 昭和53年10月』p.3より引用

「停車場従事員」の適用職種は、駅長(運転の業務を担当する者)、助役(運転及び指導の業務を担当する者)、運転主任、営業管理係(特命)、営業係(特命)、輸送管理係(運転及び指導の業務を担当する者)、運転係、構内指導係、構内係の計9職名です。
なお、運転関係区所(機関区・電車区・客貨車区・運転所など)に従事する運転管理係、運転係も「停車場従事員」の適用職種に含まれています。
そして営業管理係、営業係は共に末尾に「(特命)」が付されており、運輸掛が担ってきた運転取扱上の駅長代理を継承している事が明確化されています。



JR初期の駅員職制
分割民営化に伴いJR各社が共通で定めた駅・信号場・操車場の職制
国鉄労働組合東日本鉄道本部(1987)『就業規則Q&A 新会社の就業規則の特徴と具体的問題点』p.65より引用

分割民営化後は更に駅業務の融合化が進み、営業職(営業主任・営業指導係・営業係)の職務内容に「指定された者は輸送係の業務」、輸送職(輸送主任・輸送指導係・輸送係)の職務内容に「指定された者は営業係の業務」といった一文が付きました。
JR西日本に至っては2000年4月の職制改正で階梯職制のフラット化を行い、駅については営業と輸送の計6職名を統合し「運輸管理係」としています。
こうして見ると駅業務のあり方は、長い年月をかけて徐々に変化してきた事が分かりますね。
出札から駅長代理まで幅広く業務をこなしてきた運輸掛は、駅業務合理化のパイオニア的存在と言えるでしょう。


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最終更新日 : 2020-10-04

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