タタールのくにびき -蝦夷前鉄道趣味日誌-

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2020-07-22 (Wed) 20:04

国鉄職員が一日の始めに取り組んだ「国鉄体操」

国鉄体操(釧路工場)
国鉄釧路工場における朝8時10分の体操風景
釧路工場は1973年9月の工場再編成によって課制を廃し、釧路車両管理所に縮小改組された
釧路鉄道管理局釧路車両管理所(1976)『創立六十周年記念』p.25より引用

我が国の体操は1928年8月、NHK大阪放送局のラジオ番組で誕生した「ラジオ体操」(当初は国民健康体操と称した)が最もポピュラーなのは言うに及びません。
小学生時代は夏休みになると毎朝、近所の公園や集会所などに集合してラジオ体操を行い、出席カードにスタンプを押してもらったという人も多いでしょう。
一般企業でも健康増進を目的とし事務所や工場などで、始業前にラジオ体操を行うという所は少なくありません。
中には三菱重工㈱の「三菱安全体操」や㈱タニタの「タニタ体操」のように、会社オリジナルの体操(職業体操)を導入しているケースも見られます。


JR西日本 山陽本線 国鉄 下関運転所 JR北海道 釧路車両所 釧路運輸車両所
国鉄体操(下関運転所1983年7月7日)
下関運転所における朝8時30分の体操風景(撮影者:沖勝則)
女性事務係も屋外に出て体操する中、傍の留置線には当時の新鋭、115系3000番台の姿が見える
松尾定行(1983)「海峡に汽笛が鳴りわたる・・・本州最西端の車両基地―「下関運転所」の24時間」、
『鉄道ジャーナル』1983年10月号(鉄道ジャーナル社)p.31より引用

実は国鉄にもオリジナルの体操がありました。
その名も「国鉄体操」。
これは国鉄当局が戦前の1931年度に研究に着手し、翌1932年度から全国の職場で実施するようになった独自の体操です。
国鉄が体操を制定するに当たり、指導を仰いだのは東京の玉川学園。
そして同学園が体操指導員として国鉄に派遣したのは、体育教師を務める斎藤由理男先生でした。

斎藤先生は1902年、秋田県由利郡象潟町(きさかたまち/現:にかほ市)に生まれました。
1922年に秋田県師範学校(現:秋田大学)を卒業し教師となり、阿仁前田尋常小学校、秋田師範学校での勤務を経て1929年、東京へ移住し玉川学園教諭となりました。
秋田師範学校の教師時代、デンマーク体操の素晴らしさに触れたという斎藤先生は、玉川学園での着任から1年後にデンマークへ留学。
デンマーク体操の第一人者であるニルス・ブック(Niels Bukh)が創立した、オレロップ国民高等体操学校で理想の体操を研究します。
1年1ヶ月の留学を終えて1931年に帰国すると玉川大学教授に就任し、デンマーク体操の理論の完成と普及に心血を注ぎました。
「体育即競技」と見なされる風潮が根強い時代でしたが、斎藤先生は「人間形成のための正しい教育」として体育に取り組むのだと提唱しており、この姿勢は現代体育にも相通じるものがあります。


国鉄 吹田工場 吹田総合車両所 JR西日本 JR九州 斎藤由理男 JR体操
国鉄体操(吹田工場1942年)
戦時中の1942年、吹田工場における朝の体操風景
ほとんどの職員が上半身裸で体操に取り組んでおり、皆一様の坊主頭にも時代を感じられる
日本国有鉄道吹田工場(1976)『写真で見る80年』p.21より引用

そして先述したように1931年、国鉄当局が職業体操の研究をするようになり、玉川学園に指導のオファーがありました。
玉川学園が斎藤先生を国鉄に派遣したのは1932年の事。
斎藤先生は国鉄体操の草案に加えて、体操の指導方法をまとめた指導案まで作り国鉄に売り込んでいます。
同年中には九州の小倉工場(現:JR九州小倉総合車両センター)で国鉄体操が開始されました。
やがて国鉄の体操指導員候補が全国から玉川学園の体育館に集結し、国鉄体操の導入に関する講習会が行われるようになりました。
講習会はデンマーク人の体操指導員2名を招き、1935年までの間に10回以上も開いており、指導を受けた国鉄職員は2,000人を越えると伝えられています。
こうして全国各地の現業機関や非現業部門で毎日、始業時に国鉄体操を行うようになりました。

一般体操と室内体操の2種類が作られた国鉄体操。
これらが業務の遂行に役立つと評価され、斎藤先生は全国から体操指導の依頼を受けるようになり、デンマーク体操の更なる普及に臨みました。
1945年には札幌で国鉄体操の講習会を開催するべく、2人の弟子と共に青函連絡船に乗りました。
ところが津軽海峡を航行中に米軍機の空襲を受け、43歳で無念の死を遂げています。


国鉄体操 JR体操 JR北海道 JR東日本 JR東海 JR西日本 JR四国 JR九州 JR貨物
国鉄体操EP(1)
アナログレコード盤 国鉄体操 日本国有鉄道制定
国鉄体操EP(2)

斎藤先生の死から16年後の1961年7月、国鉄体操の伴奏と号令を収録したEP盤(シングルレコード)が作られました。
キングレコードの制作で、A面に室内体操、B面に一般体操を録音しています。
国鉄が編纂した『鉄道辞典 上巻』にも国鉄体操に関する記述がありますので、下記に引用しましょう。

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こくてつたいそう 国鉄体操
 国鉄体操は昭和6年研究に着手したもので、デンマークのニールス・ブックの働く者の基本的体操を、元国鉄嘱託斎藤由利男氏が国鉄職員向けに草案編集したものである。
 体操の目的は人間生活の基調である健康を確保して、強じんな体力を養うことにあるが、国鉄体操が直接業務と結びついた基礎体育として重要視されているゆえんは、柔軟、強壮、巧緻(こうち)の諸性を高めることによって健康を増進し、個癖を矯正(きょうせい)することに役立つだけでなく直接間接に業務能率の向上と、傷害事故の防止に貢献することを期しているためである。
 国鉄が特に指導員の要請と全職員に対する啓蒙に努めているゆえんは、ただ目的達成だけにとらわれることなく、自由な親しみのある体操環境を醸成し、なごやかな職場体育としての体操を普及し、国鉄職員の健康化を図るには、まず優秀練達な指導員を必要とするからであって、これあって初めて国鉄の各分野に浸透する体操が生れるのである。
 さらに全職員がこの体操を体得して、職場から家庭にこれを延長して職場の明朗化をはかり、家庭の生活を健康化しようと努めているのである。
 毎年国鉄職員の中から約3,000人の指導員が生れており、これに既成指導員7,000人をあわせ約10,000人の指導員が中心となって各種現場の副指導員を養成している。また毎年実施される全国体操強調週間によって、全職員が体操の実践に努めており、主要現場の巡回指導、体操コンクール、座談会、研究会等も計画されている。(山辺貞雄)

《出典》
日本国有鉄道(1958)『鉄道辞典 上巻』p.p.577,578
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1972年には国鉄体操40周年を記念した全国大会も開催されました。
何と「工場の部」で北海道の苗穂工場が1位に輝いています。
大井工場(現:JR東日本東京総合車両センター)が編纂した書籍『百年史』に、当時の模様が記されていますので下記に引用しましょう。
なお、本文中に「3チーム423チーム」とありますが、これはおそらく印刷会社が「423チーム」を二重に写植してしまった部分を消し忘れたのかも知れません。

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 国鉄体操40周年記念全国鉄体操大会 昭和47年11月8日(水)9時から国立代々木競技場第2体育館において、全国を7ブロックにわけ、局・工場、その他付属機関の3チーム423チーム(関東は局その他が2チーム)出場し、局、工場は号令による安全体操、その他は、号令による一般体操でコンクールが、行われた。昭和25年にはじまり、昭和32年以来通算3回目の競技大会であり、この大会を契機に国鉄体操はあらたな発展のみちを歩むこととなろう。コンクールの成績は下記のとおり。(工場の部のみ)
 1位 北海道地区(苗穂)
 2位 関東地区(大井、大宮、大船、新小岩)
 3位 中部地区(名古屋、長野、松本、浜松)

《出典》
日本国有鉄道大井工場(1973)『百年史』p.247
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Youtubeを漁ってみると国鉄体操(一般)を実演する動画がありました。
伴奏は6分50秒に渡るもので、ラジオ体操第一の2倍以上の長さです。
ただし実際に体操を開始するのは「皆さん、今日も元気に一般体操を始めましょう」との号令を聞いてからになります。
つまり再生時間23秒経過でスタートです。
まずは気をつけの姿勢になり、38秒時点から号令に従い体操の各運動を実施します。


国鉄体操 JR体操 JR北海道 JR東日本 JR東海 JR西日本 JR四国 JR九州 JR貨物
国鉄体操(一般)振り付け

こちらはEP盤のライナーノーツに掲載されている一般体操の図解です。
一般体操は原則として晴天時に屋外で取り組むもので、運転区所(機関区・電車区・客貨車区・運転所など)や保線区、建築区、電気区所(電力区・信号通信区など)、工作関係(工場・車両管理所・車両センター)などの職場で行われています。
ラジオ体操は基本的に8呼間ですが、国鉄体操では5呼間や6呼間、13呼間といった変則的なリズムの運動も混じっています。
呼間の繰り返しも全てが2回ずつという訳ではなく、3回リピートや4回リピートもあります。
これを参考に一般体操の各運動を解説していきましょう。


①(直立) 腕をあげて胸を反らす
動画0:38時点で開始。
「1、2」と数えるうちに両腕を前に伸ばしてから、肘を曲げずに高く挙げます。
「3、4」で左右に円を描いて両腕を降ろし、肘から先を交差させます。
「5、6」で腕を左右に伸ばし、「7、8」でゆっくりと腕を下ろして気をつけの姿勢に戻ります。
この8呼間を2回繰り返して次の運動に移ります。


②膝を浅く深く曲げる
動画0:55時点で開始。
上体を伸ばしたまま行います。
「1」でつま先立ちになり、「2」でかかとを落とさず膝を深く曲げて屈みます(※動画では浅く曲げている)。
「3」で立ち上がり、「4」でかかとを落とします。
「5」で再びつまさき立ちになり、「6」も再びかかとを落とさず屈む訳ですが、今度は膝を浅く曲げます(※動画では深く曲げている)。
「7」で立ち上がり、「8」でかかとを落とします。
この8呼間を2回リピート。


③(開脚) 首の前後曲げ、横曲げ、曲げ回し
動画1:10時点で開始。
動画では足を閉じた状態で首を動かしていますが、ライナーノーツの手順では足を開いて運動するよう指示されています。
しかも左足を横に動かして開脚立ちする手順になっており、かなり指定が細かいです。

まずは後ろ手を組んでから、奇数カウントで頭を垂れて、偶数カウントで頭を上げます。
これを8呼間、交互に繰り返します。

次は「横曲げ」の号令を受けるので、奇数カウントで左に曲げ、偶数カウントで右に曲げます。
これも8呼間、交互に繰り返します。

そして「曲げ回し」。
6呼間までの間に頭を一回転させ、更に上下させる手順です。
まずは頭を垂れておき、「1」から「4」まで時計回りに首を回し、「5、6」で上下運動。
この6呼間を4回繰り返すのですが、2回目と4回目は「1」から「4」まで反時計回り。
つまり時計回りと反時計回りを交互に行うのです。


④振りつけ、からだの後曲げ
動画1:48時点で開始。
引き続き開脚したまま行います。
上体を下ろしたら、両腕を左足めがけて垂らし、「1、2」のカウントに合わせて両腕を2回、弾みをつけて伸ばします。
「3、4」で上体を起こし、両腕を左右に伸ばして腰を後ろに曲げます。
再び上体を下ろし、今後は逆に右足めがけて両腕を垂らし、「5、6」のカウントに合わせて両腕を2回、弾みをつけて伸ばします。
「7、8」で上体を起こし、再び後ろ曲げ。
この8呼間を2回繰り返します。


⑤(直立) 誘導振前振り
動画2:05時点で開始。
直立に戻ってから行います。
「1」で両腕を前に伸ばし、「2」ですかさず左右に伸ばします。
「3」で上体を少し前に曲げて両腕を前斜め下に伸ばし、そのまま上体を一気に前へ曲げて「4、5」と2回弾みを付け、再び上体を起こします。
この5呼間を4回繰り返します。


⑥直角垂直振
動画2:25時点で開始。
「1」で両腕を前に伸ばし、「2」ですかさず左右に伸ばして、「3」で再び前に伸ばします。
「4」で両腕を下ろしたら、「5」で一気に頭上高く上げて、「6」で振り下ろし直立姿勢に戻ります。
この6呼間を4回繰り返します。


⑦(開脚) 片腕前後回し
動画2:41時点で開始。
これも動画では直立で行っていますが、ライナーノーツでは開脚に指定されています。
「1」から「4」まで右腕を前回しに4回転。
「5」から「8」まで右腕を後回しに4回転。
8呼間を2回繰り返すのですが、2回目は逆に左腕で行います。


⑧誘導振前回し からだの横曲げ
動画3:11時点で開始。
「1」で両腕を前に伸ばして交差し、「2」ですかさず左右に伸ばして、「3、4」で両腕を体の外側から内側に向かって大きく回します。
「5」で両腕を左右に伸ばし、「6」で開脚姿勢のまま下ろします。

これだけならまだシンプルだと感じるでしょうが、実はこの体操が先述した13呼間の運動で、かなり変則的なリズムです。
両腕を下ろした後は「1、とお、2、とお、3、とお、4!」と独特の号令に合わせ、横曲げ運動をする事になります。
横曲げは左腕を腰に当てた状態で、右腕を上げて腰を大きく曲げます。
「1、」で右腕に力をこめて緊張状態になり、「とお」で弛緩させる・・・これを4回続けます。

この13呼間の運動を2回繰り返す事になり、2回目の横曲げは逆に左腕を上げて行います。


⑨片腕直角振 からだの捻転
動画3:37時点で開始。
「1」で両腕を前に伸ばし、「2」で左腕を後に伸ばして顔・上体も後に振り向きます。
この時、かかとを地面から浮かせないよう注意が必要です。
手旗を持って車両を誘導するような動作ですね。
「3」で両腕を前に戻して、「4」で下ろします。
「5」から「8」までは逆に右腕を後に伸ばして行います。
この8呼間を3回繰り返します。


⑩からだを倒して 垂直振
動画3:51時点で開始。
「1」で腰を曲げずに上体を前に倒し、両腕を下から前めがけて振ります。
「2」で両腕を後に反らし、「3」で一気に頭上高く上げ、「4」で振り下ろして後に反らします。
「5」から「8」も同じ手順です。
この8呼間を3回繰り返します。


⑪誘導振 後曲げ前振り
動画4:09時点で開始。
上体を起こしたら「1」で両腕を前に伸ばし、「2」ですかさず左右に伸ばします。
続く「3、4、5、6」では腕を大きく上に伸ばしたまま、十分に腰を曲げて上体を後に反らします。
そして腕を後下から斜め前に回し、「7、8」と弾みをつけて上体を前に2回曲げます。
この8呼間を3回繰り返します。


⑫からだのねじり回し
動画4:33時点で開始。
「1」から「4」では両腕を軽く振りながら、体を左右に捻ります。
「5」から「8」では両腕を左斜め上に振りつつ、体を螺旋状に捻ります。
8呼間を4回繰り返す事になり、螺旋捻りでの両腕回しは1回目と3回目が左斜め上、2回目と4回目が右斜め上をめがけて行います。


⑬腕を振ってからだの前後曲げ
動画5:03時点で開始。
「1」で両腕を後に反らし、上体を前に倒しつつ膝を折って屈みます。
「2」で膝を伸ばしたら、「3、4」と両腕を上げつつ腰を曲げ、上体を大きく反らします。
「5」から「8」も同じ手順。
8呼間を2回繰り返します。


⑭(直立) 腕の曲げ伸ばしに膝曲げ、ももあげ
動画5:19時点で開始。
動画では⑦から⑬まで直立で行いましたが、ライナーノーツではここで開脚から直立に移るよう指定しています。
「1」でつま先を上げつつ手先を肩に添えて脇を締め、つま先立ちを保ったまま「2」で膝を曲げつつ両腕を素早く上に伸ばします。
「3」で再び手先を肩に添えて脇を締め、「4」で腕を左右に伸ばします。
「5」で左足を上げながら手先を肩に添えて脇を締め、「6」で腕を前に伸ばします。
「7」で右足を上げながら手先を肩に添えて脇を締め、「8」で気をつけの姿勢になります。
この8呼間を3回繰り返します。


⑮その場とびと横肩横下とび
動画5:34時点で開始。
「1、2、3、4」と直立姿勢で飛び跳ねた後、「5」で腕を左右に伸ばしつつ開脚跳び。
「6」で手先を肩に添えて脇を締めつつ直立跳び。
「7」で肩から左右に向けて腕を伸ばしつつ開脚跳び。
「8」で腕を下ろしての直立跳びに戻ります。
この8呼間を3回繰り返します。


⑯誘導振からだの横曲げ
動画5:50時点で開始。
動画では開脚した状態で取り組んでいますが、ライナーノーツでは直立姿勢で行うよう指定しています。
「1」で両腕を前に伸ばし、「2」ですかさず左右に伸ばします。
「3」で気をつけの姿勢になり、「4」で左腕を腰に当てつつ右腕を上げて腰を左に曲げます。
「5」で両腕を前に伸ばし、「6」ですかさず左右に伸ばします。
「7」で気をつけの姿勢になり、「8」で右腕を腰に当てつつ左腕を上げて腰を右に曲げます。
この8呼間を2回繰り返します。


⑰からだを深く前に曲げ胸を反らす
動画6:05時点で開始。
「1、2、3」で前屈しながら足首を掴み、肘を横に張ります。
「4」で上体を起こしたら、「5、6、7、8」と腕を左右に開いて胸を反らします。
この8呼間を2回繰り返します。


⑱呼吸運動
動画6:19時点で開始。
オーソドックスな呼吸運動です。
背筋を伸ばし「1、2」で腕を上げ、「3、4」で左右に円を描いて下ろしクロスさせます。
「5、6、7、8」も同じ要領です。
この8呼間を2回繰り返します。


そして動画6:37時点、「終わります!」の号令。
これにて国鉄体操(一般)は終了です。
伴奏自体は体操の終了後も13秒だけ続きます。





続いて国鉄体操(室内)を紹介しましょう。
その名の通りの室内体操です。
先述のとおり国鉄体操(一般)が屋外用の体操ですので、こちらは雨天時に屋内で取り組まれた体操となります。
ただし本社・総局・鉄道管理局の非現業部門や、駅の内勤事務室、車掌区の運教事務室、電務区(後の情報区)など、内勤主体の職場や屋外用地の狭い職場では天候に関係なく毎日行われてきました。
室内体操を実演する動画は見つかりませんでしたが、伴奏・号令は上がっています。



国鉄体操 JR体操 JR北海道 JR東日本 JR東海 JR西日本 JR四国 JR九州 JR貨物
国鉄体操(室内)振り付け

室内体操の図解もEP盤のライナーノーツに掲載されています。
こちらはほとんど8呼間ですし、跳躍運動や「誘導振前回し からだの横曲げ」のような複雑な運動もありません。
総再生時間7:07なので一般体操よりも長いですが、激しい運動が無いので室内体操の方が幾分楽に取り組めます。
しかも全体的にゆったりしているので、実際にやってみるとラジオ体操よりも簡単に感じますね。
大半の運動を開脚状態で行うのも特徴で、しょっぱなから足を開きます。
室内体操の各運動についても、ライナーノーツを参考に解説していきましょう。

①(開脚) 背伸び
動画0:40時点で開始。
足を開き、手を握った状態を維持したまま行います。
「1、2」で両腕を曲げて手を肩の上に上げます。
「3、4」で腕を上げて背筋を伸ばします。
「5、6」で腕を左右に下ろしていき、「7、8」で腰の位置まで下ろします。
この8呼間を2回繰り返します。


②からだの横伸ばし
動画0:56時点で開始。
握っている手を片方ずつ上に伸ばし、体を十分に伸ばします。
奇数カウントで左腕、偶数カウントで右腕を伸ばし、顔も伸ばした手の方を向きます。
この8呼間を2回繰り返します。


③首の前後曲げ、横曲げ、曲げ回し
動画1:12時点で開始。
ここは一般体操と同じ手順です。

まずは後ろ手を組んでから、奇数カウントで頭を垂れて、偶数カウントで頭を上げます。
これを8呼間、交互に繰り返します。

次は「横曲げ」の号令を受けるので、奇数カウントで左に曲げ、偶数カウントで右に曲げます。
これも8呼間、交互に繰り返します。

そして「曲げ回し」。
6呼間までの間に頭を一回転させ、更に上下させる手順です。
まずは頭を垂れておき、「1」から「4」まで時計回りに首を回し、「5、6」で上下運動。
この6呼間を4回繰り返すのですが、2回目と4回目は「1」から「4」まで反時計回り。
時計回りと反時計回りを交互に行う訳ですね。


④腕をしぼって胸を反らす
動画1:52時点で開始。
後ろ手を組んだ状態から、「1、2」で左右に腕を伸ばして胸を反らします。
「3、4」で上体を起こして後ろ手を組み直し、腹をひっこめて胸を十分に張ります。
この8呼間を2回繰り返します。


⑤手腰からだの後曲げ
動画2:09時点で開始。
両手を後ろから腰に当てて、「1、2」で腰を軽く後に曲げます。
「3,4」で腰に両手を当てたまま、上体を起こします。
この8呼間を2回繰り返します。
ちなみにここのメロディがほど良く哀愁を帯びており、個人的にお気に入りですw


⑥腕を回して胸を張る
動画2:26時点で開始。
体の正面で交差するように両腕を回します。
「1」で腕を高く上げ、胸を張ってその指先に視線を向けます。
「2」で一気に円を描いて下ろします。
「3」で再び回転し、「4」で腕を左右斜め下に伸ばして胸を開きます。
この8呼間を2回繰り返します。


⑦肩のあげさげ
動画2:41時点で開始。
腕を下に伸ばし、肩を上下に動かします。
奇数カウントで肩を上げ、偶数カウントで一気に下げます。
この8呼間を2回繰り返します。


⑧肩の前後回し
動画2:52時点で開始。
手先を肩に添えた状態を維持しつつ、肩を前後に回します。
「1、2、3、4」で前回し、「5、6、7、8」で後回しです。
この8呼間を2回繰り返します。
16呼間目が済んだら、ただちに腕を上向きに曲げて胴体の前に出し、膝を少し前に曲げます。


⑨胸を開く
動画3:06時点で開始。
両腕を曲げた状態を維持して行います。
「1」で両腕を左右に動かし、膝を伸ばして胸を張ります。
「2」で両腕を前に戻して胸を閉じ、膝を少し曲げます。
この8呼間を2回繰り返します。
16呼間目が済んだら、ただちに膝を伸ばして背筋を伸ばし、両手を頭の上に被せます。
その際、両手は掌を開いた状態で、指を組ませておきます。


⑩からだの横曲げ
動画3:21時点で開始。
「1、2」で弾みをつけて両手を組んだまま高く上げ、そのまま「3、4」で上体を左に曲げます。
「5、6」も同様に弾みをつけて両手を組んだまま高く上げ、そのまま「7、8」で上体を右に曲げます。
この8呼間を2回繰り返します。


⑪からだの横回し
動画3:37時点で開始。
両手を掌を開いた状態で組み、肘をよく張った状態で後頭部に当てます。
その体勢を維持したまま「1、2」で上体を左に捻り、「3、4」で右に捻り返します。
この8呼間を2回繰り返します。


⑫振りつけ からだの後曲げ
動画3:53時点で開始。
上体を下ろしたら、両腕を左足めがけて垂らし、「1、2」のカウントに合わせて両腕を2回、弾みをつけて伸ばします。
「3、4」で上体を起こし、両腕を左右に伸ばして腰を後ろに曲げます。
再び上体を下ろし、今後は逆に右足めがけて両腕を垂らし、「5、6」のカウントに合わせて両腕を2回、弾みをつけて伸ばします。
「7、8」で上体を起こし、再び後ろ曲げ。
この8呼間を2回繰り返します。


⑬すりあげ からだの横曲げ
動画4:11時点で開始。
「1」で右腕の肘を曲げつつ、右手を脇腹に当てながら擦り上げます。
この時、擦り上げる手は軽く握った状態を維持し、擦り上げるのと同時に上体を左に曲げます。
「2」で腕を下ろします。
「3」で左腕の肘を曲げつつ、左手を脇腹に当てながら擦り上げます。
この時も同様に擦り上げる手は軽く握った状態で、擦り上げるのと同時に上体を右に曲げます。
この8呼間を2回繰り返します。


⑭からだの斜め下振り
動画4:25時点で開始。
⑫と似た動作ですが、片腕を後ろ手にしつつ、もう片腕を握り手の状態で伸ばす点に注意が必要です。
上体を下ろしたら右腕を左足めがけて垂らし、「1、2」のカウントに合わせて2回、弾みをつけて伸ばします。
「3、4」で上体を起こし、両腕を下ろして背筋を伸ばします。
再び上体を下ろし、今後は逆に右足めがけて左腕を垂らし、「5、6」のカウントに合わせて2回、弾みをつけて伸ばします。
「7、8」で上体を起こし、両腕を下ろして背筋を伸ばします。
この8呼間を2回繰り返します。


⑮からだのねじり回し
動画4:41時点で開始。
「1」から「4」では両腕を軽く振りながら、体を左右に捻ります。
「5」から「8」では両腕を左斜め上に振りつつ、体を螺旋状に捻ります。
8呼間を4回繰り返す事になり、螺旋捻りでの両腕回しは1回目と3回目が左斜め上、2回目と4回目が右斜め上をめがけて行います。


⑯からだの前振り後曲げ
動画5:14時点で開始。
ラジオ体操第一にも同様の運動がありますね。
「1、2、3」で弾みをつけて上体を前に3回曲げ、「4」で上体を起こします。
「5、6、7、8」で両手を腰の後に当てて、上体を十分に反らします。
この8呼吸を3回繰り返します。


⑰ひじを開いてからだの横回し
動画5:39時点で開始。
「1」で両腕を前に伸ばし、「2」で肘を曲げて上体ごと左に捻ります。
「3」で再び両腕を前に伸ばし、「4」で肘を曲げて上体ごと右に捻ります。
この8呼間を2回繰り返します。


⑱(直立) 膝の曲げ伸ばし
動画5:50時点で開始。
ここで初めて直立姿勢に切り替わり、後は体操終了まで開脚する事はありません。
オーソドックスな前向きの屈伸運動です。
膝に手を当てて「1、2」で弾みをつけて2回曲げ、「3、4」で膝を伸ばします。
この8呼間を2回繰り返します。


⑲足首の運動
動画6:05時点で開始。
これが国鉄体操(室内)で最も独特な運動だと思います。
気をつけの姿勢を取り、「1」でつま先立ちをし、「2」でかかとを落とします。
「3、4」と同じつま先運動を続けるのですが、「5」から流れが変わります。
左足を左斜め前に伸ばし、足首だけ動かすのです。
まずは「5」でつま先を上に向け、続いて「6」でつま先を下に向けます。
「7」、「8」も同様の上下運動を行なったら、左足を引っ込めて元通りの気をつけに戻ります。
この8呼間を2回繰り返し、2回目は「5、6、7、8」で右足を動かす事になります。


⑳呼吸運動
動画6:28時点で開始。
国鉄体操(一般)と同様、呼吸運動で幕を下ろします。
背筋を伸ばし「1、2」で腕を上げ、「3、4」で左右に円を描いて下ろしクロスさせます。
「5、6、7、8」も同じ要領です。
この8呼間を2回繰り返します。


そして動画6:46時点、「終わります!」の号令。
これにて国鉄体操(一般)は終了です。
伴奏自体は体操の終了後も20秒ほど続きます。


JR北海道 札幌運転所 JR体操
国鉄体操(札幌運転所1990年7月9日)
JR北海道札幌運転所における朝8時20分の体操風景(撮影者:目黒義浩)
国鉄体操は「JR体操」としてJR各社に継承されている
肥沼勇(1990)「JR北海道最大の車両基地を見る 札幌運転所24時間」、
『鉄道ジャーナル』1990年10月号(鉄道ジャーナル社)p.22より引用

実はこの国鉄体操ですが、1987年4月の分割民営化後もJR各社に脈々と受け継がれているのです。
上に引用した写真は1990年当時のJR北海道札幌運転所(旧:国鉄札幌運転区)で撮影された、朝8:20の始業時における体操風景です。
事務所から助役や検修員がぞろぞろと屋外に出て、大勢で「JR体操」と呼ばれるようになった国鉄体操に取り組んでいます。
JRの子会社でもJR体操を実施している会社は多いですね。
JR東日本に至ってはJR東日本スポーツ㈱なる子会社を有しており、同社が親会社の事務所にインストラクターを派遣してJR体操を啓蒙しているのだとか。
国鉄時代の伝統は思わぬところで生きているものです。

以上、「JR体操」となった国鉄体操を紹介しました。
皆さんも健康増進のためにやってみましょう!

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最終更新日 : 2020-08-30

No Subject * by -
https://www.youtube.com/watch?v=ivvrnbUJv1w
この動画に国鉄体操の場面があったので調べてみたらこのページにたどり着きました。
このような経緯があったのですね。興味深いです。

もうひとつの体操。 * by コンコン
この記事内では一般体操と室内体操が紹介されていますが、実はもう一つ安全体操と呼ばれるものが存在します。
https://www.youtube.com/watch?v=6N92xaW2kbc

これは今も工場などで行われてます。
腰痛防止の運動も入っていることもあり、実際やるとかなりキツイです。ですので一般体操と交互にやってました。

Re: もうひとつの体操。 * by 叡電デナ22
コンコンさん

国鉄安全体操も存じておりますが、振付の詳細が不明なのと、そもそも斎藤由理男先生とは無関係なので敢えて取り上げませんでした。
安全体操は確か昭和40年代の導入でしたよね?
苗穂工場の正門掲示板でも「腰痛防止」のポスターがよく貼られていますし、製修の職場では今も安全体操で腰痛リスクに備えるという話は聞いた事がありますね。

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No Subject

https://www.youtube.com/watch?v=ivvrnbUJv1w
この動画に国鉄体操の場面があったので調べてみたらこのページにたどり着きました。
このような経緯があったのですね。興味深いです。
2020-09-11-13:02 * - [ 編集 * 投稿 ]

もうひとつの体操。

この記事内では一般体操と室内体操が紹介されていますが、実はもう一つ安全体操と呼ばれるものが存在します。
https://www.youtube.com/watch?v=6N92xaW2kbc

これは今も工場などで行われてます。
腰痛防止の運動も入っていることもあり、実際やるとかなりキツイです。ですので一般体操と交互にやってました。
2020-09-13-00:33 * コンコン [ 編集 * 投稿 ]

叡電デナ22 Re: もうひとつの体操。

コンコンさん

国鉄安全体操も存じておりますが、振付の詳細が不明なのと、そもそも斎藤由理男先生とは無関係なので敢えて取り上げませんでした。
安全体操は確か昭和40年代の導入でしたよね?
苗穂工場の正門掲示板でも「腰痛防止」のポスターがよく貼られていますし、製修の職場では今も安全体操で腰痛リスクに備えるという話は聞いた事がありますね。
2020-09-13-17:29 * 叡電デナ22 [ 編集 * 投稿 ]