タタールのくにびき -蝦夷前鉄道趣味日誌-

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2020-05-03 (Sun) 22:08

函館本線山崎駅 地名は「やまざき」だが駅名は「やまさき」

山崎駅(やまさき)a01

渡島管内は二海郡八雲町山崎にある、JR北海道の山崎駅。
内浦湾(通称:噴火湾)の西側に位置する八雲町の市街地から、海岸に沿って約6km北上した小さな漁村に駅があります。
この漁村では「水口漁業部」という漁師の団体がホタテ、鮭、カレイ、スケトウダラ等の漁を操業しており、駅の南東に山崎漁港を構えています。
逆に集落の北には種馬を飼育する㈲山崎牧場があるほか、西側の平地には牧草地、トウモロコシ畑、ジャガイモ畑が広がる等、農家も多く暮らしています。

蝦夷地警備を担った津軽藩士・山崎半蔵が1809年に発表した『毛夷東環記』によると、当地は元々、アイヌの人々から「フレムカラ」と呼ばれ、アイヌ4戸が住居を構えていたそうです。
和人の入植が始まったのは1895年の事。
尾張藩士族・蟹江史郎(旧名:鈴木重声)の長男に当たる蟹江次郎が、北海道庁から大規模地積の貸付を受けて「蟹江農場」を開設した事によります。
蟹江次郎は1889年10月、郷里の愛知県で海部郡蟹江町が発足した際、初代町長に就任した人です。
地元では蟹江銀行の設立に携わるなど、政治経済に大きく寄与しました。
ここ山崎に限らず八雲町は尾張徳川家との繋がりが深く、第17代当主・徳川慶勝が自ら主導し士族授産の開拓事業に心血を注いだ土地です。


JR北海道 国鉄 尾張徳川家 山崎駅 駅名標 無人駅
山崎駅(やまさき)a02

さて、「山崎駅」を名乗る駅は2020年4月現在、当駅を含め日本全国に3ヶ所あります。
最も有名なのはJR京都線(東海道本線)の山崎駅でしょう。
そちらはシングルモルトウイスキー「山崎」で名高い、サントリー山崎蒸留所のお膝元です。
もう1ヶ所は名鉄尾西線の山崎駅で、JR西日本と名鉄の2ヶ所は共に「やまざき」と読みます。
一方、JR北海道の山崎駅は濁点を抜いて「やまさき」と読むのですが、実はこれ間違っているんです。
八雲町山崎も他2駅の所在地と同様、地名としての正しい読み仮名は「やまき」となります。

国鉄時代は事務方のミスにより、間違った読み仮名が駅名に振られてしまう事が多々あったんですね。
よく知られているのは旭川駅で、1890年の旭川村設立当初から「あさひかわ」を正式な読み仮名に登録していたにも拘らず、駅名は「あさひわ」にされてしまったのです。
旭川機関区、旭川車掌区、旭川保線区、旭川建築区など、旭川市内に開設された現業機関も皆一様に「あさひわ」でした。
遂には他所から来た人達にも「あさひわ」と呼ばれたり、郵便局まで誤った読みを使うようになる始末。
旭川駅の読み仮名を巡って、地元住民は長年に渡り訂正を求める運動を展開。
分割民営化後の1988年3月、ようやく旭川駅の読み仮名が「あさひかわ」に訂正されました。
しかしそれから32年経った現在もなお、読み仮名を訂正していない駅が道内にチラホラ見られます。
根室本線(花咲線)の別当賀駅も、地名の正式な読みは「べっとが」なのに、駅名は「う」を脱字した「べっとが」のままになっていますね。


JR北海道 国鉄 山崎駅 木造駅舎
山崎駅(やまさき)a03

山崎駅は1904年10月、既に開業していた北海道鉄道森~国縫間に一般駅として開設されました。
北海道鉄道は函館~小樽間を結ぶ私鉄で、1907年7月に国有化されました。
1909年には「国有鉄道線路名称」(明治42年鉄道院告示第54号)の制定に伴い、旧北海道鉄道線を含む函館~旭川間の鉄路が函館本線と命名されています。

1926年6月、山崎駅の近くに農業倉庫が設置されました。
更に1933年には竹内与吉が毛蟹缶詰工場を開業し、年間200箱内外の「毛がに缶」を製造したのだとか
山崎駅でも農産物や蟹缶の貨物発送を担ったようですが、毛蟹缶詰工場については経営不振により僅か1年で廃業に追い込まれています

やがて第二次世界大戦に突入し、1945年7月には米軍の戦闘機が八雲町を含む道南各地に襲来。
国鉄線も銃撃に遭い、乗務中の機関士1名が鷲ノ巣信号場で負傷、山崎駅も駅舎が弾丸を受けて被災しました。

戦後の1960年12月、函館本線落部~長万部間が自動閉塞化された事に伴い、従来のタブレット閉塞が廃止
山崎駅におけるタブレット交換も終了しました。


JR北海道 国鉄 山崎駅 木造駅舎
山崎駅(やまさき)a04

1961年4月、山崎駅の貨物フロント業務が廃止されました。
八雲町役場公式サイトで公開されている『デジタル八雲町史』の「第5編 運輸・通信」によると、当時の国鉄当局は自動車普及を鑑みて「貨物取扱量が比較的少ない駅については取り扱いを廃止し、これを集約しようという、いわゆる”貨物集約化計画”を進める」方針を固めたといいます。
しかし沿線では農産物・海産物のような「季節的な貨物」や、木材の輸送に不便が生じて住民の生活にも支障をきたす事が懸念されました。
そのため八雲町議会は1959年12月に「国鉄の貨物集約輸送に対する反対決議」を採り、青函船舶鉄道管理局に対し町を挙げての反対運動を展開しましたが、健闘虚しく山越駅、山崎駅の2ヶ所で貨物取扱いの廃止に至っています。

1966年9月、函館本線山崎~黒岩間が複線化されました。
1969年8月には函館本線五稜郭~森間でCTCの試験運用が始まり、同年11月を以って正式に運用を開始しています。
国鉄北海道総局管内としては初のCTC化となりました。


JR北海道 国鉄 山崎駅 木造駅舎 簡易委託化 簡易委託駅
山崎駅(やまさき)a07

1984年2月、ヤード集結型輸送の整理に伴い荷物フロント業務が廃止。
1986年11月、旅客フロント業務(出改札)の廃止に伴い無人化され、出札業務のみ近隣住民に委託する簡易委託駅となりました。
1987年4月の分割民営化に伴いJR北海道が継承。
1992年4月には簡易委託が廃止されました。

現在は長万部駅を拠点駅とする長万部地区駅(担当区域:函館本線落部~熱郛間、室蘭本線長万部~礼文間)に属し、地区駅配下の管理駅である八雲駅が管轄する完全無人駅です。
なお、八雲駅は窓口営業時間が7:45~19:30に限定されており、営業時間外は線路閉鎖対応がある時を除いて運転取扱要員も不在となります。
そのため八雲駅における時間外の問い合わせ先は、JR北海道電話案内センター(※22:00終了)に指定されています。


JR北海道 国鉄 山崎駅 木造駅舎
山崎駅(やまさき)a05

駅舎は平屋の木造建築で、元は板張りでしたが全面的にサイディング加工が施されています。
こじんまりとした姿ですが国鉄時代はもう少し大きく、写真左のホームに向かう通路の辺りに待合室を設けていました。
左端の窓サッシが壁ギリギリじゃないですか、この不自然さが如何にも減築した建物って感じですよね。
正面の松の木に駅員がいた頃の面影を残しています。


JR北海道 国鉄 山崎駅 木造駅舎
山崎駅(やまさき)a06

駅舎の減築によって従前の正面玄関も消滅し、代わりに減築跡の妻面に玄関を設けています。
しかし訪問時点で既に封鎖されており、ホーム側の出入口からしか待合室に入れなくなっていました。
減築前の駅舎の姿は前掲の『デジタル八雲町史』でも見る事が出来ますので、興味のある方は是非ともアクセスを。


山崎駅 待合室 木造駅舎 無人駅 減築
山崎駅(やまさき)a09
山崎駅 待合室 木造駅舎 無人駅 減築
山崎駅(やまさき)a10

待合室の様子。
今でこそ待合室ですが、減築前は駅事務室の一部だったそうです。
昔はここに駅員の机が並んでいたんだなあ・・・と往事を偲ぶのもオツなものです。
そんな室内には奇妙な櫓があります。


山崎駅 待合室 木造駅舎 無人駅 減築
山崎駅(やまさき)a11

櫓の中は掃除用具入れになっており、雪カキと箒が置かれています。
ちょうど撮影していると地元の奥さんがいらして、互いに挨拶を交わした後、奥さんは箒と雑巾を持って駅舎の掃除を始めました。
旅客が少なくなってもなお、駅舎が近隣住民に大切にされていると嬉しくなりますね。


山崎駅 待合室 木造駅舎 無人駅 減築 駅事務室
山崎駅(やまさき)a08

山崎駅の旧駅事務室は二重構造になっており、北側の窓口事務室(現:待合室)と、南側の運転事務室に分かれています。
運転事務室の方は待合室に転用されず、出入口にも施錠されています。


山崎駅(やまさき)a14

山崎駅(やまさき)a15

トイレは駅舎の外にあります。
男女共用の掘っ建て小屋です。


山崎駅 木造駅舎 無人駅 減築 駅事務室 運転事務室
山崎駅(やまさき)a13
山崎駅 木造駅舎 無人駅 減築 駅事務室 運転事務室
山崎駅(やまさき)a12

ホーム側から駅舎を眺めた様子。
国鉄時代の駅舎に相応しく、運転事務室の窓が出っ張っています。
かつてタブレット閉塞器を置いた運転事務室には現在、自動閉塞装置を備えてあります。


JR北海道 国鉄 山崎駅 木造駅舎 運転事務室 信号扱所 信号テコ扱い所
山崎駅(やまさき)a16

運転事務室の手前には、信号テコ扱所のコンクリート土台が残っています。
注意喚起のトラ模様にも往事を感じさせます。
タブレット閉塞が運用されていた頃は、ここに腕木式信号機と転轍機を操作するレバーがあり、当務駅長(助役・運転掛を含む)が進路構成を行っていました。
自動閉塞化から60年が経過した今も、こんな綺麗な状態で残っているのは凄いですね。


山崎駅 プラットホーム 国鉄型配線 島式ホーム 単式ホーム 交換駅
山崎駅(やまさき)a17
山崎駅 プラットホーム 国鉄型配線 島式ホーム 単式ホーム 交換設備
山崎駅(やまさき)a19
山崎駅 プラットホーム 国鉄型配線 島式ホーム 単式ホーム 交換駅
山崎駅(やまさき)a18

単式ホーム1面1線と島式ホーム1面2線を組み合わせた、2面3線のいわゆる「国鉄型配線」。
駅舎側の単式ホームは1番線、島式ホームは内側から2番線、3番線です。
1番線は下り本線(長万部・小樽方面)で特急・貨物列車も通過。
2番線は上下副本線で普通列車の待避に使われます。
3番線は上り本線(八雲・森・函館方面)で、全ての上り列車が入線します。
ホーム延長は何れも20m車4両分ほど。
何れも縁石寄りはアスファルト舗装を施していますが、内側はほとんど砂利を敷き詰めています。
停車する列車は普通列車のみで、2016年3月ダイヤ改正以前は快速アイリスも停車していました。
山崎駅を境に南(上り方面)は単線区間、北(下り方面)は複線区間となります。


JR北海道 国鉄 山崎駅 構内踏切 
山崎駅(やまさき)a22
JR北海道 国鉄 山崎駅 構内踏切 
山崎駅(やまさき)a21

両ホームを繋ぐ構内踏切。
警報機と遮断機を備えており、線路も敷き板が完備されています。


キハ40系1700番台 キハ40形1700番台 キハ40-1806 函館運輸所
山崎駅(やまさき)a20

3番線を出発するキハ40-1806の普通列車。



山崎駅(やまさき)a25

1番線の北側には・・・


山崎駅 八雲保線区八雲保線支区山崎検査班 国鉄官舎
山崎駅(やまさき)a24

国鉄官舎のような建物が1軒。
窓も玄関も板で塞がれ、廃墟と化しています。
しかし正面玄関が線路を向いている様子からして、どうやら山崎駅に併設されていた八雲保線区八雲保線支区山崎検査班の詰所兼官舎のようです。


山崎駅 八雲保線区八雲保線支区山崎検査班 国鉄官舎
山崎駅(やまさき)a23

青函船舶鉄道管理局の『職員名簿 昭和48年4月1日』によると、八雲保線区は八雲駅に隣接する本区と、八雲保線支区、落部保線支区、森保線支区の1本区3支区体制を敷いていました。
そして各支区の計画助役が指揮する検査班は計9班あり、八雲保線支区は八雲検査班・山崎検査班・黒岩検査班、落部保線支区は石倉検査班・落部検査班・野田生検査班、森保線支区は渡島砂原検査班、森検査班、石谷検査班を管轄していました。
八雲保線区の詳細は不明ですが、おそらくは1982年3月~1986年11月の4年半に渡る「線路保守の改善」施策で繰り返された、組織簡略化・統廃合の中で廃止されたものと思われます。
この建物もその頃に御役御免となり、未だ解体されずに残っているのでしょう。
八雲周辺の保線は現在、函館保線所八雲保線管理室に引き継がれています。


山崎駅 喫茶店 キッチンアウル 洋食喫茶
山崎駅(やまさき)a26

ちなみに山崎駅前には・・・


山崎駅 喫茶店 キッチンアウル 洋食喫茶
山崎駅(やまさき)a27

・・・「キッチンアウル」というログハウス調のカフェがあります。
ここはハンバーグとドリアが人気ですね。
営業時間は11:30~23:00、木曜定休です。
駅巡りの際に食事休憩というのも良いでしょう。


※写真は全て2019年4月27日撮影
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最終更新日 : 2020-05-03

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