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2020-04-09 (Thu) 21:45

札幌市営地下鉄、運転士不足につき現業採用を大卒・院卒に拡大

札幌市交通局教習所02
大谷地の札幌市交通局本庁舎に併設された教習所の風景
一昔前は東西線6000形のシミュレーターが置かれていた
札幌市交通局事業管理部総務課(2004)『さっぽろの市営交通』p.23より引用

コロナウィルスを巡って政府が緊急事態宣言を発出したばかりですが、皆様いかがお過ごしでしょうか?
私は2月下旬より外出を通勤や買物など必要最小限に抑え、休日の鉄活動を控えている最中でございます。
何しろ高校時代に帯状疱疹をこじらせて肺炎を患った事がありましてね、当時の苦労を思い出すと尚更おっかなくて出かける気にならないのです。
一向に収束する気配がなく困ったものですが、出来る限りの予防を続けていきたいですね。

さて、今回の主題は札学鉄研OB会ブログで執筆していた頃から取り上げてきた、札幌市営地下鉄における運転士の高齢化問題です。
札幌市営地下鉄では2000年代に入ってから、長きに渡り乗務員の正職員採用をしてこなかったのです。
駅務については外郭団体の札幌市交通事業振興公社に全面委託しており、交通局から公社への出向こそあれど、公社のプロパー職員を交通局に配転する事はありません。
もちろん駅員から車掌、運転士への転換など以ての外です。
2004年の市営バス事業廃止に伴いバス運転手が乗務係(他社局の乗務区に相当)に転属すると、車掌への転換教育を実施し、更に2年後には運転士へと養成していますが、その年齢層は高く後進の育成と呼べるものではありませんでした。
更に2006年からは非常勤車掌の募集が始まったものの、これは正規雇用化を前提としたものではなく、ましてや3年間の有期雇用契約であったため運転士への養成など有り得ませんでした。
したがって運転士の年齢構成は若返りが為されないままでした。

ようやく正職乗務員の採用が再開されたのは2012年の事。
募集職種は車掌ですが、地下鉄運転士への養成を大前提としたため、「動力車操縦者運転免許に関する省令に規定する身体検査の合格基準を満たす」事が採用条件として明示されました
この頃、札幌市営地下鉄では運転士の高齢化が顕著となり、後継者の育成を急ぐようになったのです。
最終学歴については高卒、専門学校卒(ただし大学編入者を除く)、短大卒に限定。
東西線、南北線とワンマン化が続いたため、配属先は東豊線乗務係(所在地:豊水すすきの駅)に限定されました。
そして採用された若い車掌達は2年間の実務を経て運転士養成に入り、2015年1月には9年ぶりとなる実車教習が開始されました
後進も2016年まで採用が続き、東豊線がワンマン化を迎える2017年までに運転士へと養成され、中には南北線乗務係(所在地:大通駅)や東西線乗務係(所在地:ひばりが丘駅)に異動した人も見られました。


JR北海道 国鉄 札幌市交通局 札幌市営地下鉄 路面電車
札幌市交通局運転士年齢構成
札幌市電・札幌市営地下鉄の運転士の年齢構成を示した表
『北海道新聞』2018年10月24日付朝刊第15面より引用

しかし年齢構成の平準化には未だ至らず、2018年10月時点で3路線合わせて208名の運転士が在職するのに対し、20代・30代の若年層は僅か31名。
50代は過半数の116名に及び、60代の定年再雇用も28名と若手の合計人数に迫ります。
聞けば札幌市営地下鉄では1990年代後半、運転士がシフトにより車掌の職務を併せて担う「兼務運転士化」の拡大を急速に進めており、2003年時点で3路線合わせて400名近くが勤務する地下鉄乗務員のうち、動力車操縦者運転免許を持たない専業車掌は僅か2名しか在籍しなかったそうです。
つまりほとんどの乗務員を兼務運転士に育て上げてしまった訳で(※当時は全線ツーマン運転)、どうやらこの事が正職乗務員の採用を長らく控えてきた原因なのかも知れません。
要するに兼務運転士化の拡大に費用をかけ過ぎた反省かは知りませんけど、この訓練費がネックとなって採用活動を暫く休止したのかなあ・・・と思います。
何はともあれ、交通局が乗務員の育成を計画的に実施しなかったツケが回ってきたんでしょうね。



札幌市交通局教習所01
札幌市交通局教習所の座学研修では各席にPCを備え、視聴覚教材を使用している
札幌市交通局事業管理部総務課(2004)『さっぽろの市営交通』p.23より引用

それに動力車操縦者運転免許の取得には年齢制限が課されており、法律(昭和三十一年運輸省令第四十三号  第三章  動力車操縦者試験  第七条)で20歳未満の受験が禁止されています。
つまり高校新卒で採用しても、すぐの養成が出来ない訳です。
昨日の道新の朝刊でも報じられていますので、下記に引用しましょう。

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運転手採用 大卒以上も
市営地下鉄 人員確保へ枠拡大

 札幌市交通局は、これまで「高校・短大卒」に限定していた市営地下鉄の運転手採用試験の受験資格を、本年度から「大学・大学院卒」に拡大する。少子化などの影響で今後、運転手不足が予想されることから、大卒者らにも門戸を開いて人材確保を図る。
 交通局によると運転手総数は現在約200人で、9割強が40代以上。この世代が退職後、少子化で新卒者の採用が伸び悩めば運転手不足が懸念されるという。
 2019年度の運転手採用試験には114人が受験し、高卒者ら23人が採用された。ただ運転免許の取得は20歳以上という条件があり、高卒で採用後、すぐに運転業務に就けないことから、運転手を希望する高卒者の受験者が伸びない一因ともされてきた。こうした事情から、市交通局は採用後に運転免許の取得が可能な大卒以上に条件を拡大。今夏に開始予定の運転手の募集から適用する。
 運転手は係長以上の昇進がない現業職だが、内部試験で交通政策などにも関わる一般職への移行も可能。市交通局は幹部候補の育成にも力を入れる考えで「将来の札幌の交通事業を担う、意欲ある若者に受験してほしい」と話す。
(袖山香織)

《出典》
『北海道新聞』2020年4月8日付 朝刊第17面 地域の話題
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「運転」とありますが、これは誤字という訳ではありません。
札幌市交通局では職制上、運転士の事を「運転手」と表記するんですね。
記事後半の「係長」とは一般的な鉄道事業者の「区長」に相当する役職です。
札幌市交通局では係長の配下に主任、助役、乗務長(他社局の主任運転士に相当)、運転手・・・といったように現業係員を設けています。
聞けば主任が助役よりも格上なんですね・・・名古屋市交通局にも「主任助役」という助役の上級職があったなあ。

「内部試験で交通政策などにも関わる一般職への移行も可能」とありますが、この「一般職」とは現業公務員ではなく、市役所採用の地方公務員に該当するポジションでしょうね。
全国何処の交通局も鉄道会社の「総合職」に相当する職員はおらず、本庁舎の管理部門には市役所採用の公務員が多く勤務しています。
この人達はあくまでも交通局独自の採用という訳ではありませんから、区役所、水道局、建設局、環境局など、市役所に属する他部門へと異動したり、逆に異動してくる事も多々あります。
ゴムタイヤ地下鉄生みの親として名を馳せた大刀豊さんも、市役所採用から庶務課長、清掃局長を経て交通局に異動し、局長を務められた訳で。
ともすれば交通局の現業職から一般職に転じた人達も、畑違いの部門に転出する可能性は大いにあるのかなあ・・・というのが気になったところ。

何はともあれ、新世代の運転士が大勢誕生する事に期待したいですね!

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最終更新日 : 2020-04-10

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