タタールのくにびき -蝦夷前鉄道趣味日誌-

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2020-01-12 (Sun) 10:27

桑園の高架下にあるJR北海道札幌乗車券管理センター

JR北海道桑園総合事務所1

札幌市中央区北14条西18丁目。
函館本線桑園駅から高架線に沿って道路を西へ進むと、徒歩9分ほどで高架下に収まった平屋の事務所棟が見えてきます。
この建物はJR北海道の「桑園総合事務所」です。
路上に看板を置いているため予てより存在を知ってはいましたが、入居する部署までは知らなかったので現地の様子を見に行ってきました。



JR北海道桑園総合事務所9

建物の見た目からして、桑園総合事務所は函館本線琴似~札幌間の高架化が完成した1988年11月から存在するものと思われます。
こちらは事務所北側の様子です。


JR桑園総合事務所 札幌印刷場 札幌乗車券管理センター
JR北海道桑園総合事務所2

高架線をくぐって事務所南側の様子。


JR北海道 国鉄 函館本線 札沼線 学園都市線 桑園駅
北海道鉄道会館1
北海道鉄道会館 中華レストラン那交菜館(なこうさいかん)
JR北海道桑園総合事務所5

すぐ近くには「北海道鉄道会館」があり、総合事務所の手前から鉄道会館へと続く道路が延びています。
橙色の看板には鉄道会館に入居していた「中華レストラン那交菜館(なこうさいかん)」の名も併記されていますが既に閉店しており、旧店舗には社民党北海道連合の事務所が入っています。



JR北海道桑園総合事務所3

鎖で囲まれた構内は立入禁止なので、鉄道会館に続く道路から遠巻きに玄関を眺めてみます。


桑園総合事務所 札幌乗車券管理センター 北海道高速鉄道開発株式会社
JR北海道桑園総合事務所4

玄関左脇の表札に注目すると、そこには「札幌乗車券管理センター」、「北海道高速鉄道開発株式会社」と名前が書かれています。
後者の北海道高速鉄道開発㈱は1994年1月に北海道庁、沿線自治体、JR北海道が出資して設立された第三セクターで、幹線鉄道活性化事業を行うに当たり国からの補助を得るために作られました。
現在は高速化の設備投資をした根室本線帯広~釧路間、宗谷本線旭川~名寄間を保有していますが、施設保全に関しては自社で受け持っておらず、他線区と同様にJR北海道の工務関係現業機関(保線所・電気所・設備所・構造物検査センター)が担当しています。

前者の札幌乗車券管理センターは切符(硬券・軟券)の印刷、製本(切符を複数の面付に分けて印刷した“刷り本”の断裁など)を担当する現業機関です。
私も乗車券管理センター自体は知っていましたが、まさか桑園総合事務所に入居しているとは知る由もありませんでした。
何しろ苗穂駅周辺の再整備に関する札幌市役所の公開資料「札幌圏都市計画道路の変更」では、p.3掲載の地図にて大日本印刷㈱札幌工場の敷地内に「札幌乗車券管理センター」と明記していたものですから、てっきりDNPの工場を間借りしているものと思っていたのです。
しかし実際には桑園総合事務所に入居している訳で、札幌市役所の資料に間違った記載が為されているという事になりますね。


桑園総合事務所 札幌乗車券管理センター 北海道ジェイ・アールサービスネット
JR北海道桑園総合事務所7

札幌乗車券管理センターは1907年4月、「札幌印刷場」として開設されました。
国鉄札幌駅が発行した記念誌『札幌駅百年史』(1980年/札幌駅長 泉義一)、「第4章 所在業務機関と関係諸団体」のp.148によると、当時の札幌印刷場は札幌市北区北6条西2丁目にありました。
印刷場跡は現在、札幌駅東側の商業施設「paseo EAST」になっています。
鉄道ファンの間では「国鉄の印刷場=切符を印刷する場所」という認識を持たれがちですが、実際には切符のみならず鉄道管理局報、各種帳票類、その他業務資料の印刷・製本・発送も担当していました。
以下に『鉄道辞典 上巻』記載の「印刷場」の項を引用しましょう。

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いんさつじょう 印刷場
 国鉄鉄道管理局の現業機関。そのおもな担当業務は鉄道管理局報、乗車船券類の印刷・落成検査および配給である。すなわち業務上の命令・注意などを掲載する鉄道管理局報の印刷および発送業務ならびに国鉄で使用される一切の乗車券、乗船券、急行券、寝台券等の印刷から配給までの業務のほか、各種の帳票類、業務資料の印刷をも行うところである。札幌、仙台、新潟、東京、名古屋、大阪、四国、広島および門司の9鉄道管理局に設置されており、乗車券類の印刷については、印刷場ごとに担当の鉄道管理局および地方自動車事務所が定められている。
 印刷場には場長が置かれ、鉄道管理局長の指揮を受けて助役、事務掛、用品掛、技術掛、自動車運転士、技工長、印刷技工、製本技工、用品手、守衛、気かん手、雑務手および給仕を指揮監督して、印刷場に属する一切の業務を処理している。これらの職員を鉄道管理局印刷場従事員といい、9箇所で約1,200人いる。
 なお、本社の総裁室文書課にも印刷場が置かれ鉄道公報、鉄道乗車証などの印刷を行っているが、これは独立の業務機関ではない。(宮坂正直)

《出典》
日本国有鉄道(1958)『鉄道辞典 上巻』p.p.76~77
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JR北海道桑園総合事務所10
分割民営化に伴いJR各社が共通で定めた乗車券管理センターの職制
他系統の現業機関と同様、所長の下に助役と係職(主任を含む)を置いた
国鉄労働組合東日本鉄道本部(1987)『新会社の就業規則の特徴と具体的問題点』p.70より引用

1980年代に入ると国鉄は「硬券印刷業務について外注化を図り、印刷場の配置のあり方を検討し、乗車券管理センターに移行する」{交通協力会(1983)『交通年鑑 昭和58年度版』p.86}方針を打ち出し、1983年4月の職制改正で各鉄道管理局の印刷場は乗車券管理センターに改組されました。
この時、札幌印刷場も札幌乗車券管理センターに改組。
1987年4月の分割民営化に伴いJR北海道が継承しました。
一方、函館本線琴似~札幌間の高架化工事は1978年11月の起工式を以って開始しており、少なくとも1988年11月の高架化開業までに札幌乗車券管理センターは札幌市北区北6条西2丁目から移転したものと考えられます。
先述した札幌市役所の資料では大日本印刷㈱札幌工場構内に「札幌乗車券管理センター」と書かれていた訳ですが、おそらく移転準備中の仮住まいとしてDNPに一時的に入居していたのでしょう。
そして現所在地の桑園総合事務所に移ってきたと考えられます。



JR北海道桑園総合事務所8

そして現在。
実を言うと札幌乗車券管理センターは既にJR北海道の直轄から外れており、主に駅営業業務(出札・改札)を受託する子会社の北海道ジェイ・アール・サービスネットに業務委託されています。
サービスネット公式サイトの「沿革」によると、同社が乗車券管理センターの業務を受託したのは2001年4月。
この時を境にJR北海道の組織一覧表からも「乗車券管理センター」の文言が削除されています。
多くの駅に自動券売機が導入され、車掌が常備する車内補充券も携帯の車補発行機でプリントアウトする感熱紙になった事から、印刷業務の大幅な見直しが為されたのでしょう。
現在の乗車券印刷がどのような内容かは不明ですが、おそらくは札沼線石狩月形駅などで僅かに販売が残る硬券・軟券や、ジェイ・アール北海道バスの窓口販売の切符を細々と造り続けているものと思われます。
JR他社では1990年代以降に相次いで乗車券管理センターを廃止し、外部の印刷会社に切符の印刷を発注するようになっており、比較的最近まで直営していたJR東海も2008年度に業務委託化する事もなく廃止しています。
道内も北海道交通印刷㈱という私鉄・バス会社の乗車券を主に印刷してきた会社がありますので、そちらに移管するのも時間の問題かも知れないな・・・と考える次第です。
国鉄時代は何でもかんでも自前でやり、「国鉄は女郎屋と葬儀屋以外の職は何でもある」{国鉄職制研究会(1978)『国鉄における職制の構造』(鉄道研究社)p.3}と言われたほどですが、それも最早過去の話になりつつあります。


※写真は全て2020年1月4日撮影
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最終更新日 : 2020-01-13

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