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2019-09-23 (Mon) 18:27

2019/9苗穂工場一般公開[9] SKK委託!制輪子を産む鋳物注湯作業

なえこう700

引き続き2019年9月7日、2年ぶりに開催されたJR北海道苗穂工場の一般公開について書きましょう。
前回は構内北東にある鋳物作業場に入り、奥の展示室で札幌工営㈱が製造した鋳物製品の数々を見物したのでした。
鋳物作業場は品質管理科の管轄ではありますが、実作業は札幌工営を吸収合併した札幌交通機械㈱に業務委託されており、品質管理科は委託作業の管理を担当しています。
既に述べたとおり、ここでは制輪子(ブレーキシュー)などの鋳物を製造しており、14:20からは制輪子の製造工程の一つである「鋳物注湯作業」が実演されます。


JR北海道 苗穂工場 品質管理科鋳物作業場 制輪子作業場 鋳造 札幌工営
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展示室に掲示された「制輪子製造プラント」の図では、制輪子の製造工程に使用される各種機械が紹介されています。
装置は概ね右から鋳造工程の順番に合わせて並んでおり、砂合わせ装置→砂処理装置→枠ばらし装置→造型装置→枠合わせ装置→注湯装置の順に使用されます。

この並びから外れる1.5t電気炉は銑鉄、鋼クズ(レールの破片)、リターン材などの原材料(鉄スクラップ)を溶解する装置です。
溶解中は鉄から不純物を除去したり、化学成分の調整を行います。
そのため、電気炉に入った溶鋼を分析室で検査し、成分に問題が無ければ注湯装置に出湯します。

なお、品質管理科鋳物作業場では溶解と並行して砂型製造を行います。
砂型とは鋳物製品の型取りに必要な物で、これを作るにはまず木型を作製します。
木型が完成したら砂合わせ装置で砂をよく混ぜ合わせて粘度を高め、砂処理装置(造型装置)に通します。
砂処理装置(造型装置)はケースに入れた砂を押し込んで制輪子の砂型を造ります。
造型が済む上枠・下枠の2種類ができ、これらをコンベアに載せて運搬し、手作業で中子(なかご/バックメタルとも)を下枠の砂型にはめ込んでいきます。
中子とは製品の中に中空部を作って補強を行う補助鋳型です。

こうして作り上げた砂型に溶鋼を注ぎ込んでいきます。
14:20からの実演では、出湯に始まり注湯に至るまでの一連の流れを見学する事になります。


JR北海道 国鉄 鋳物職場 札幌工営株式会社 札幌交通機械株式会社 SKK
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展示室のすぐ近くには砂処理装置が設置されています。
この機械にケースをセットし、混ぜ合わせた砂の造型を行う訳ですね。
装置には「連絡合図の徹底」との札をでかでかと掲げています。


JR北海道 国鉄 鋳物職場 札幌工営株式会社 札幌交通機械株式会社 SKK
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砂処理装置を横から眺めた様子。
「造型装置」との表示を付けています。


JR北海道 国鉄 鋳物職場 札幌工営株式会社 札幌交通機械株式会社 SKK
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造型装置の運転には耳をつんざく騒音を伴うため、「耳栓着用」を呼びかける注意書きが見られます。
「騒音 管理区分Ⅲ」との表記もあり、どうやら苗穂工場では機械の騒音にレベルを付けているようです。
少なくともレベル3になると耳栓着用が必要になるんですね。


JR北海道 国鉄 鋳物職場 札幌工営株式会社 札幌交通機械株式会社 SKK
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騒音区分表示の隣には「安全第一 今日も無災害でがんばろう」とのポスターも貼られています。
苗穂工場の安全啓蒙ポスターは作者の所属部門を併記した物ばかりですが、これには何の表記もありませんね。
掲示者は鋳物作業場の元請けである品質管理科なのか、或いは受託業者のSKKなのか・・・。


JR北海道 国鉄 鋳物職場 札幌工営株式会社 札幌交通機械株式会社 SKK
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一方、注湯装置は出入口寄りにありまして・・・


JR北海道 国鉄 鋳物職場 札幌工営株式会社 札幌交通機械株式会社 注湯装置
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レール上を移動するトロッコスタイルとなっています。
注湯装置には赤・青・黄3色のパトランプと扇風機が付いています。


JR北海道 国鉄 鋳物職場 札幌工営株式会社 札幌交通機械株式会社 注湯装置
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さて、鋳物注湯作業実演の開始時間は14:20だったのですが、予定より早い14:15から実演がスタート。
まずは出湯作業から!
電気炉を傾け、灼熱の溶鋼が注湯装置に移されます。


JR北海道 国鉄 鋳物職場 札幌工営株式会社 札幌交通機械株式会社 注湯装置
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赤々と燃え盛り、煙を上げる様はまさに地獄の業火。
注湯装置に乗り込んで出湯を見守るSKKの工事係は、とてつもない暑さを感じている事でしょう。
これは装置に併設した扇風機でも気休めにしかならなそうだなあ・・・。
作業員は飛び散る火の粉から目を防護するべくサングラスを着用しています。


JR北海道 苗穂工場 品質管理科 車両技術主任 鋳物作業場 検修員
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組立科の作業実演では黒帯2本入りヘルメットの助役が解説を務めていましたが、今回は黒帯1本入りヘルメットを被った品質管理科の車両技術主任がマイクを持って解説。
車両技術主任もやはり、「現在、鋳物を製造しているJRの工場は苗穂と長野の2ヶ所しかない」との説明をしていました。


JR北海道 国鉄 鋳物職場 札幌工営株式会社 札幌交通機械株式会社 注湯装置
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キハ40系「山明号」の展示場で来場者に解説をされていた工場長も、鋳物作業場に姿を見せて作業現場を見守っていました。


JR北海道 鋳物職場 札幌工営株式会社 札幌交通機械株式会社 注湯装置 運転士
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1分ほどで出湯が終了。
工事係がハンドルを握り、注湯装置がゆったりとした足取りで前進します。


JR北海道 国鉄 鋳物職場 札幌工営株式会社 札幌交通機械株式会社 注湯装置
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そして所定の位置に停車。


JR北海道 国鉄 鋳物職場 札幌工営株式会社 札幌交通機械株式会社 注湯装置
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すると工事係がダウジングの針金を大きくしたような機械を手にし・・・


JR北海道 国鉄 鋳物職場 札幌工営株式会社 札幌交通機械株式会社 注湯装置
なえこう715

・・・何と溶鉱炉に突っ込みました!
車両技術主任の解説によると、これは溶融金属専用の温度計で、注湯を行う前に溶鋼が適切な温度を保っているか確認しているとの事です。


JR北海道 国鉄 鋳物職場 札幌工営株式会社 札幌交通機械株式会社 注湯装置
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そして14:18、注湯作業がスタート。
既に用意されていた砂型に溶鋼を注いでいきます。


JR北海道 国鉄 鋳物職場 札幌工営株式会社 札幌交通機械株式会社 注湯装置
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工事係は目視確認しつつ、砂型を逸脱しないよう丁寧に注湯を進めていきます。
まさしく針に糸を通すような精密作業。
2018年4月の吸収合併から1年半、札幌工営の技術は着実にSKKへと受け継がれています。
まあ人材も継承されているから当然の話ですけど。


JR北海道 国鉄 鋳物職場 札幌工営株式会社 札幌交通機械株式会社 注湯装置
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火花を散らしながらも砂型に収まっていく溶鋼。
注湯装置は砂型に溶鋼を注ぎ終えるたび、一歩前進して次の砂型に煮えたぎる鉄を注いでいきます。
次第に見学している我々の方へ向かってくる訳で、近づくたびに激しい暑さを感じ汗も滝のように流れ出しました。


JR北海道 国鉄 鋳物職場 札幌工営株式会社 札幌交通機械株式会社 注湯装置
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作業を眺めている我々でも暑いのですから、注湯装置を運転する工事係の大変さたるやいかばかりか。
古びた扇風機では何だか心細く思えてきますね・・・。


JR北海道 国鉄 鋳物職場 札幌工営株式会社 札幌交通機械株式会社 SKK
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一方、砂処理装置(造型装置)の傍では注湯作業と並行して、作業員達が手際よく中子入れを進めていきます。


JR北海道 国鉄 鋳物職場 札幌工営株式会社 札幌交通機械株式会社 SKK
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中子入れを終えた砂型は枠合わせ装置にセット。
上枠と下枠を合わせ、コンベアで注湯作業の現場に運搬します。


JR北海道 国鉄 鋳物職場 札幌工営株式会社 札幌交通機械株式会社 注湯装置
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新しい砂型が到着したら再び溶鋼を検温。


JR北海道 国鉄 鋳物職場 札幌工営株式会社 札幌交通機械株式会社
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検温で異常が無ければ砂型に次々と注湯。
これを繰り返していきます。


JR北海道 国鉄 鋳物職場 札幌工営株式会社 札幌交通機械株式会社
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そして14:32。
全ての砂型に溶鋼を注ぎ終え、実演は幕引きとなりました。


H100形 電気式気動車 DECMO デクモ H100-1 H100系
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実演終了後、辺りを見渡すと何時の間にかTJライナーさんがいなくなっています。
新特急なすのさんに聞くと「14:30再開の車両移動作業を見に行った」との事。
どうやら鋳物注湯作業に見飽きてしまい、早々にH100形を求めて移動したようです。
一方、私は注湯作業の見学に熱中してしまい、TJライナーさんが出て行った事に気付きませんでした。
一重に鉄道ファンと言えど興味の向く方向は十人十色だよなあ・・・と思いつつ、我々も再びH100形を見に行きました。
14:40、組立科の助役2人が見守る中、観衆に見送られてH100-1が旅客車第1検修場に戻っていきます。



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近くの壁に2019年度一般公開のイベントマップが貼られていたので記念に撮影。
これと全く同じ物が一般来場者に配布されました。
中止になった高所作業車体験乗車の案内は黒く塗り潰されています。



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いよいよ一般公開の閉幕が迫ってきました。
最後は正門守衛室前の掲示板に目を通します。
この掲示板は北海道鉄道技術館の開館日(毎月第2・第4土曜日)も閲覧する事ができます。



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組立科と部品科の掲示板に貼られた安全啓蒙ポスター。
どちらも感電事故防止を訴えています。
組立科は画伯が多い事で一部ファンにはお馴染みですが、部品科にもなかなか強烈な絵を描く画伯がいらっしゃるんですね。
・・・「部品科のポスターは3年前の使い回しじゃねえか!」とすぐに気付きましたけどねw
ちなみに人づてに聞いた話では、部品科のポスターに描かれたコミカルなキャラクターは実在の検修員をモデルにしているそうです。
やっぱり本人もこんな猿顔(失礼!)なのかなあ?



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一方、内燃機科のポスターはいたってシンプル。
こちらも感電事故防止を掲げており、「車両加圧中」の5文字を大きく記しています。



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設備保全科が管理する「設備・教育」の掲示板にも、9月安全目標と題して「感電事故を防止しよう」との貼り紙を出しています。
これほど感電事故防止を訴える掲示物が多いという事は、もしかして労災でも発生したばかりなのだろうか・・・と推理してしまいますね。
その隣には腰痛に関するポスター。
苗穂工場の検修員みたいな立ち仕事だと、腰痛は大きな悩みの種でしょう。



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技術開発科が管理する「設計・開発」の掲示板には、9月の重点実施目標として「【設計】図面クレームの撲滅」、「【試験】試験機器の整理整頓」が掲げられていました。



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工程管理科・品質管理科の共同管理による「工程・品質」の掲示板には、9月品質管理目標「工具・器材の点検整備」と、Wチェックを呼びかけるポスターが貼られています。


最後は鉄道少年団の送迎を受け、正門から場外に出ました。
TJライナーさんは鉄道模型店「トイメイツ」に用があると言って別れる事に。
私は「風っこ宗谷」を目当てに旭川のネカフェに宿泊する予定だったので、帰宅する新特急なすのさんと途中の岩見沢まで共に行動しました。
普通列車を乗り継いで18:38、旭川駅に到着。
ペッパーランチでがっつり夕食を取り、翌朝に備えるのでした。


2019/9苗穂工場一般公開[9] SKK委託!制輪子を産む鋳物注湯作業


※写真は全て2019年9月7日撮影
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最終更新日 : 2019-10-05

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