引き続き2019年9月7日、2年ぶりに開催されたJR北海道苗穂工場の一般公開について書きましょう。
前回は内燃機科馬力試験室にてディーゼルエンジンの試運転を眺めた後、昼食を摂りに一旦退場したのでした。
水分も充分に補給し、私と新特急なすのさんの2人で13時に正門から再入場します。
午後のお目当ては13:00から実演開始の「車体への台車組込作業」、14:20から実演開始の「鋳物注湯作業」、以上2つとなります。
まずは台車組込作業を見るべく組立科旅客車解艤装場へ。
組立科とは車両の解体・組立をはじめ、動力(エンジン・モーター)や台車など各種部品の取付け・取外し、車体の修繕・改造を担当する部門です。
何れの作業も工程管理科が策定した作業計画に従って実施します。
組立科が取り外した部品のうち、台車・走行機器・ブレーキ等は部品科、ディーゼルエンジン・コンバータは内燃機科に運ばれます。
そして各種部品の検査・修繕が完了したら組立科が再度回収し、車両に取り付けて今度は品質管理科にて試運転を行うという訳です。
午前中に観察した車両移動機(アント)やトラバーサーを使用した車両移動作業も、この組立科が主幹を務め実作業を札幌交通機械㈱に委託していましたね。
JR北海道 JR貨物苗穂車両所 国鉄 玉掛け作業 玉掛作業
旅客車解艤装場は2本の検査線を設けた検修庫で、出入口に大きく「安全第一」との看板を掲げています。
キハ261系0番台 キハ261系基本番台 組立科 旅客車解艤装場
庫内の検査線には点検用の溝(ピット)が設けられています。
屋外と繋がる検査線は2本ですが、その中間や垂直方向にも線路が敷かれており、部品運搬用のトロが車輪を着けていました。
キハ261系0番台 キハ261系基本番台 組立科 旅客車解艤装場
西側から入ってすぐにキハ261-102が留置されていました。
どうやら台車組込作業実演で使用される車両のようです。
組立科 旅客車解艤装場
キハ261-102の他に車両は無く、複数の台車が線路上に置かれていました。
組立科 旅客車解艤装場 検修員 車両係 車両技術係 車両技術主任
実演開始5分前、組立科の助役が検修員(車両係・車両技術係・車両技術主任)を召集し、作業前の打ち合わせを行います。
同じ組立科の作業でも午前中の車両移動作業はSKKに委託しての実施でしたが、今回はJR北海道のプロパー検修員が担当します。
制服もSKKの群青色に対し、こちらはチャコールグレーです。
組立科 旅客車解艤装場 台車 検修員
そして検査線上の台車を少し動かし、準備を整えます。
組立科 旅客車解艤装場 検修員 車両係 車両技術係 車両技術主任
そして予定通り13:30、台車組込作業の実演が開始されました。
組立科の検修員が事前準備を終えて整列。
まずは助役がマイクを持って作業概要を説明します。
組立科 旅客車解艤装場 天井クレーン 国鉄浜松工場 JR東海 浜松工場
旅客車解艤装場には2台の天井クレーンが設置されており、台車組込作業もこれらを駆使して実施する事となります。
午前中に見たトラバーサーBと同様、2台とも製造元は国鉄浜松工場(現:JR東海浜松工場)です。
どちらも1968年10月に製作され、50年以上に渡って使用されてきました。
組立科 旅客車解艤装場 天井クレーン 国鉄浜松工場 天井クレーン運転士 諸機掛
午前中にもJR貨物苗穂車両所の機関車検修場で玉掛け作業を見ましたが、その時とは大きな違いがあります。
それはズバリ、天井クレーンに運転室(マントロリ)が付いていないという事。
ではどうやって操縦するのかというと、クレーン運転士が携行するリモートコントローラーで遠隔操作するのです!
リモコンには2本の黒いレバー(ジョイスティック型ハンドル)が付いており、これを駆使してクレーンガーダを前後に動かしたり、クラブトロリ(フックブロックを吊るした台車)を左右に動かします。
天井クレーン等の産業機械に使用されるリモコンを「テレコン」と言い、旅客車解艤装場で使用されている物は金陵電機㈱が製造した「ハイパーテレコン(UVHタイプ)」のようです。
組立科 旅客車解艤装場 検修員 車両係 車両技術係 車両技術主任
組立科の玉掛け作業もJR貨物苗穂車両所と同様、クレーン運転士1人・玉掛け作業責任者1人・玉掛け作業補助者2人の4人1組ずつのチームを編成して行います。
もちろん今回も2台の天井クレーンを使用するため4人チーム2組、計8人での作業となります。
組立科 旅客車解艤装場 検修員 玉掛け作業責任者 玉掛作業責任者
ただ、これがまたJR貨物とは違うのですが、玉掛け作業責任者は遠くから見ても一目で識別できるようヘルメットの装飾を変えています。
上の写真を見れば一目瞭然だと思いますが、一般の検修員は黒帯1本入りヘルメットを着用するのに対し、玉掛け作業責任者は頭頂部に緑十字を大きく付け、赤帯1本を配したヘルメットです。
緑十字をでかでかと付けるだけでも目立ちますし、赤帯についても通常なら輸送職駅員(輸送係・輸送指導係・輸送主任)を指す識別線として使われています。
対して管理者も含めて黒帯を識別線とする車両関係の職場において、赤帯入りヘルメットを被るのは玉掛け作業責任者だけです!
この玉掛け作業責任者専用ヘルメットは国鉄時代から続く苗穂工場の伝統で、JR貨物苗穂車両所も国鉄苗穂工場機関車職場だった頃は同様のヘルメットを使用していました。
組立科 旅客車解艤装場 検修員 玉掛け作業責任者 玉掛作業責任者
助役が各係員の役割について解説した後、13:37より作業開始。
玉掛け作業責任者の指示に従い、作業補助者がクランプに手を掛けます。
組立科 旅客車解艤装場 検修員 玉掛け作業責任者 玉掛作業責任者
玉掛け作業責任者の手笛吹鳴合図を受け、作業補助者がクランプを支える中、クレーン運転士がリモコン操作でフックを動かします。
組立科 旅客車解艤装場 検修員 玉掛け作業責任者 玉掛作業責任者
13:38、玉掛け作業責任者が右手を挙げ、手笛を吹きつつ前進。
組立科 旅客車解艤装場 検修員 玉掛け作業補助者 玉掛作業補助者
すかさずクレーンも後に続きます。
組立科 旅客車解艤装場 検修員 玉掛け作業補助者 玉掛作業補助者
そしてキハ261-102をしっかりと挟み込みます。
組立科 旅客車解艤装場 検修員 玉掛け作業責任者 玉掛作業責任者
13:39、後発隊も作業に臨みます。
組立科 旅客車解艤装場 検修員 玉掛け作業責任者 玉掛作業責任者
責任者も補助者も、じっくりと目視確認しつつクランプを車体に近づけます。
組立科 旅客車解艤装場 検修員 玉掛け作業 クレーン運転士
クレーン運転士も作業補助者の背後に立ち、慎重にリモコンを扱います。
組立科 旅客車解艤装場 検修員 玉掛け作業責任者 玉掛作業責任者
車体を挟み込んだら入念にクランプを固定。
同時並行で台車を外します。
組立科 旅客車解艤装場 検修員 玉掛け作業責任者 玉掛作業責任者
13:41、双方の玉掛け作業責任者はクランプの固定を確認し、挙手合図を送り合いました。
組立科 旅客車解艤装場 検修員 玉掛け作業責任者 玉掛作業責任者
作業着手から4分、遂にキハ261系が持ち上げられました!
キハ261系0番台
車体は一旦、オーディエンスの至近距離まで引き付けられました。
組立科 旅客車解艤装場 検修員 玉掛け作業責任者 玉掛作業責任者
13:44、玉掛け作業責任者が合図を送ると・・・
キハ261系0番台 特急スーパー宗谷 特急サロベツ 特急宗谷 キハ261-102
クレーンはキハ261系を庫内東側へと輸送。
キハ261系0番台 特急スーパー宗谷 特急サロベツ 特急宗谷 キハ261-102
そして奥の検査線に置かれた台車の真上に移動し・・・
キハ261系0番台 特急スーパー宗谷 特急サロベツ 特急宗谷 キハ261-102
ゆっくりと車体を下ろします。
13:48、台車の取付けが完了。
クランプを外して元の場所に戻します。
組立科 旅客車解艤装場 検修員 玉掛け作業責任者 玉掛作業責任者
作業終了後の後始末も玉掛け作業責任者の指示に従い、安全第一で行います。
組立科 旅客車解艤装場 検修員 玉掛け作業責任者 玉掛作業責任者
取り残された台車はワイヤーに繋いで・・・
組立科 旅客車解艤装場 検修員 玉掛け作業責任者 玉掛作業責任者
両行き止まりの中線に留置します。
13:55、これにて台車組込作業は終了。
次回は鋳物製造の現場を見に行きます。
【2019年9月7日開催 苗穂工場一般公開の記事一覧】
2019/9苗穂工場一般公開[7] リモコン操縦!組立科の天井クレーン
※写真は全て2019年9月7日撮影
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最終更新日 : 2019-10-05