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2019-09-17 (Tue) 23:58

2019/9苗穂工場一般公開[6] 軌陸両用の車両移動機「アント」と馬力試験室

なえこう401

引き続き2019年9月7日、2年ぶりに開催されたJR北海道苗穂工場の一般公開について書きましょう。
前回は組立科第1旅客車検修場の東側にて11:30より車両移動作業実演を見物し、新型一般気動車のH100形「DECMO」がトラバーサーBに乗り込む様子までを眺めたのでした。
車両の誘導から移動まで、実作業を担当するのはJR北海道の子会社、札幌交通機械㈱の作業員です。
H100-1の積載が完了したら、いよいよトラバーサーの運転が披露される事になります。



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・・・とその前に、H100-1をトラバーサーまで押し込んだ小型車両移動機「アント」のお披露目。
カラーコーンとバーで区切った実演会場においてデモ走行が行われます。
フライ旗を持つ誘導係が連結器の切り離しを済ませると、レールを滑りH100-1から離れます。


JR北海道 国鉄 苗穂工場 札幌工営 札幌交通機械 構内運転 車両牽引車
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そして11:40、鉄輪を浮かせてタイヤ走行を開始し、我々の方に向かってきました。
アントとは鉄道用搬送機械などの製造を手がけるアント工業㈱が、1959年4月の創業以来ずっと改良を重ねつつ製造・販売を続けてきた同社の主力製品です。
その名は蟻を意味する英単語に由来し、「小さくても力持ち」という小型車両移動機の姿が蟻を彷彿とさせる事から名付けられたといいます。
小回りが利くため狭い庫内でも使いやすく、全国各地の鉄道会社が購入し車両基地の入換に活用しています。


JR北海道 国鉄 苗穂工場 札幌工営 札幌交通機械 構内運転 車両牽引車
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苗穂工場で使用されているアントのような、しっかりした運転室を設けた比較的大型の車種は「車両けん引車」とも呼ばれます。
これは一般的な入換機関車と同様、線路に対し横を向くように運転台を設けていますが、横置きエンジンとしているためボンネットまでも横向きになります。
アント工業の公式サイトでも数種類のアントが紹介されていますが、同サイトにすら詳細なデータの無い車種が多く、マニアでも全形式を把握している人はいないようです。
苗穂工場のアントも大層なレア物らしく、軌陸両用車なのでANT40RR型(1973年6月販売開始)からの派生だろうとは思うんですが、色々調べても詳細な形式は不明です。


JR北海道 国鉄 苗穂工場 札幌工営 札幌交通機械 構内運転 車両牽引車
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デモ走行は1分も経たないうちに終了。
アントはあっさりとレール上に戻りました。


H100形電気式気動車 H100-1 トラバーサー 苗穂運転所
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間髪入れず11:41、トラバーサーBの運転が始まりました!
SKKの作業員が運転室から窓を出して車両の状態を確認しつつ、トラバーサーをスライドさせます。


H100形電気式気動車 H100-1 トラバーサー 苗穂運転所 札幌交通機械株式会社 SKK
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H100-1が我々のすぐ目の前までやって来ました。
恥ずかしながら試運転にも甲種回送にもお目にかからなかったもので、こうしてじっくりと実車を見るのは初めての事です。


H100形電気式気動車 H100-1 トラバーサー 苗穂運転所 札幌交通機械株式会社 SKK
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この対面さえほんの一瞬で終わり、トラバーサーBはすぐさま元の位置に戻っていきます。
アントは既に車輪を線路上に載せており、いつでも連結に臨める状態です。


JR北海道 国鉄 苗穂工場 札幌工営 札幌交通機械 構内転 車両牽引車 アント
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トラバーサーが定位置に着いたら、すぐさま連結作業を開始。



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11:43、無事に連結が終わると、誘導係は緑色のフライ旗を掲げて発車合図を送ります。


H100形電気式気動車 H100-1 トラバーサー 苗穂運転所 札幌交通機械株式会社 SKK
なえこう407

6分間という短い出番が終了。
DECMOはアントに牽引されて第1旅客車検修場のピットへと帰っていきます。


H100形電気式気動車 H100-1 トラバーサー 苗穂運転所 札幌交通機械株式会社 DECMO デクモ
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H100形電気式気動車 H100-1 トラバーサー 苗穂運転所 札幌交通機械株式会社 SKK
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H100形電気式気動車 H100-1 トラバーサー 苗穂運転所 札幌交通機械株式会社 SKK
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H100形電気式気動車 H100-1 トラバーサー 苗穂運転所 札幌交通機械株式会社 SKK
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H100形電気式気動車 H100-1 トラバーサー 苗穂運転所 札幌交通機械株式会社 SKK
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オーディエンスからの喝采を浴びつつ暫しの眠りに入ります。

なお、JR北海道は一般公開の4日後、2019年9月11日付でDECMOの営業投入に関するプレスリリースを公表しました。
これによるとDECMOは2020年春に予定しているダイヤ改正を以ってデビューとなり、量産先行車2両、量産車13両の計15両体制で営業運転に就きます。
運行区間は函館本線長万部~小樽間(山線)で、上り始発列車1本(札幌始発・然別行き)のみ小樽~札幌間でも客扱いを行います。
此度の投入に伴い山線のワンマン列車はH100形に統一される見込みで、余剰となる苗穂運転所所属のキハ40系からは老朽廃車の発生が予想されるほか、キハ150形についても他線区へ玉突き転配になるものと考えられます。
そして今後は更にキハ40系の置き換えが進み、2021年度までにDECMOは計60両が出揃う予定です。
分割民営化後も30年以上に渡って主力を張ってきた北海道のヨンマルですが、とうとう大幅に数を減らす事になるのか・・・と寂しさも感じたり。
国鉄型の記録・乗車はお早めに。



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さて、車両移動作業を見終わった後は暑くてたまらず、「昼飯は涼しい場所で摂りたい」と感じた我々はアリオ札幌に一時待避する事にしました。
しかしイベントマップを見ると、内燃機科馬力試験室で12:00まで「エンジン馬力試験作業」を行っていたので、待避する前にそちらに寄ってみます。


苗穂工場組立科第1旅客車検修場 花壇 三松ガーデン
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その道中、第1旅客車検修場の脇には「三松ガーデン」という花壇があります。
三松・・・?
花壇を管理されている社員さんの名前でしょうか?



なえこう419

花壇の看板をよく見ると・・・カールおじさんと仲間のカエルが描かれており不覚にも笑ってしまいましたw
子供の頃はカレー味が好きで、よく食べていたんですけどね・・・。
かつては全国各地で親しまれたカールですが、今や西日本での販売に留まり、しかもカレー味も製造終了になってしまい哀しい限り。





ちなみに「カールの歌」を唄ったのは北海道上磯町出身の大歌手、三橋美智也ですぜ。
我が祖父も愛したミッチーは知れば知るほど偉大な歌手なんだよなあ。



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「おらが村」を過ぎれば内燃機科の馬力試験室に至ります。
内燃機科とはディーゼルエンジンやコンバータの検査・修繕を担当する部門です。


内燃機科馬力試験場
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馬力試験室に入ったのは11:48。
試験終了まで残り12分、室内にはエンジンの耳をつんざく爆音が響き渡ります。
動作試験を担当するJR北海道の検修員も防音ヘッドホンで万全な装備ですが、我々一般来場者は裸の耳を晒した状態ですから、頭がグラグラするような強烈な唸りをダイレクトに受けるのでした。


内燃機科馬力試験場
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馬力試験中のエンジンは新潟原動機㈱が製造したDMF13HZL。
新潟原動機は新潟鐵工所の原動機部門を前身とし、2003年2月に発足した会社ですね。
DMF13HZLはキハ201系、キハ261系が装備しているエンジンで、「グオーッ」という太い轟音と共に「チュイーン」という軽快な唸りが合わさり、絶妙なハーモニーを奏でます。


内燃機科馬力試験場
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エンジンの試運転は「性能試験機作業場」という部屋で制御しているようです。
たまに検修員が出てきてエンジンの現物確認をします。


内燃機科馬力試験場
なえこう423

試験中のエンジンと接続し、機関回転数、動力計荷重、潤滑油圧、CV油圧、正逆油圧、変速油圧を表示する測定器。
・・・私はド文系なので何が何やらサッパリです。

小刻みに震動しながら豪快に唸り続けるエンジンを眺めていると、思いがけずTJライナーさんと合流。
TJライナーさん曰く、朝一で入場して見学ツアーに参加し、しかもキハ261系1000番台の運転台見学の整理券も勝ち取ったといいます。
我々は「連帯する」との連絡を受けていたのですが、一般公開から実に2時間以上を経て合流する事が出来ました。
しかし更によく話を伺うと昼食は既に摂っているとの事。
更に「これから運転台を見に行くから」と言い、これからアリオへ昼食休憩に行くつもりの我々2人とは再度別れる事になりました。
連帯とはいったい・・・うごごご!



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そしてアリオで軽くファストフードを食べて、水分補給もして13時に再入場しましたとさ。
次回に続きます。




※写真は全て2019年9月7日撮影
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最終更新日 : 2019-10-05

No Subject * by アントマニア松山
はじめまして。
リンクでご紹介いただきました、アントマニア松山と申します。
今回のこちらのアントですが、形式は30-RRのようです。
ホームページに追記しようと思っていたのですが、更新し忘れていまして・・・

No Subject * by 叡電デナ22
>アントマニア松山さん

どうも、はじめまして。
ホームページを楽しく拝見させて頂いております。

何と、既に形式は判明済みでしたか!
そうとは知らず失礼致しました。
30-RRというのですね。
貴重な情報を頂きましてありがとうございます。

* by アントマニア松山
ホームページをご覧頂きありがとうございます。
実はこのアント、最近まで形式が分からなかったのですが、ちょうど明日(20日)からアント模型の展示予定があり、その中で判明しました。
因みに、かなり珍しい機種です^_^

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はじめまして。
リンクでご紹介いただきました、アントマニア松山と申します。
今回のこちらのアントですが、形式は30-RRのようです。
ホームページに追記しようと思っていたのですが、更新し忘れていまして・・・
2019-09-18-09:23 * アントマニア松山 [ 編集 * 投稿 ]

叡電デナ22 No Subject

>アントマニア松山さん

どうも、はじめまして。
ホームページを楽しく拝見させて頂いております。

何と、既に形式は判明済みでしたか!
そうとは知らず失礼致しました。
30-RRというのですね。
貴重な情報を頂きましてありがとうございます。
2019-09-19-00:24 * 叡電デナ22 [ 編集 * 投稿 ]

ホームページをご覧頂きありがとうございます。
実はこのアント、最近まで形式が分からなかったのですが、ちょうど明日(20日)からアント模型の展示予定があり、その中で判明しました。
因みに、かなり珍しい機種です^_^
2019-09-19-00:45 * アントマニア松山 [ 編集 * 投稿 ]