引き続き2019年9月7日、2年ぶりに開催されたJR北海道苗穂工場の一般公開について書きましょう。
私と新特急なすのさんは9:30の開場に合わせて入構し、同居するJR貨物苗穂車両所の機関車検修場を眺めたり、2019年9月中旬デビューのキハ40系観光仕様改造車「山明号」を見学したのでした。
車内の見学後は「指差確認」の看板と共に濃緑色の車体を撮影します。
インテリアが気になるという方は前回記事をご覧下さい。
C62形3号機 シロクニ キハ40-1790 山紫水明シリーズ 山明号
C62形3号機 シロクニ キハ40-1790 山紫水明シリーズ 山明号
展示会場のすぐ近くには北海道鉄道技術館の展示線が敷かれており、C62-3と山明号のツーショットを撮る事ができました。
もしかしたら二度と見られないかも知れないな・・・。
シロクニは例年通り10:00から牽引運転を開始。
実際にはとうの昔に無動力化されているため、代わりに動力車の役目を担う入換機DE15形、客車役のキハ40系と3連を組成し、技術館前と苗穂駅連絡通路の手前を何度も往復しました。
一般来場者の接遇に当たる鉄道少年団の子供達も隙を見て、(自力走行じゃないとはいえ)線路を走るシロクニを撮影しに来ていました。
DE10形1520号機 DE15-1520 苗穂工場 構内入換機
札幌方に付いて牽引するのはDE15形・・・なのですが、側面のナンバープレートが左右ともに撤去されており車番不明。
白帯を挟むように細い黄帯が引かれている様子を見るに、2016年に除籍された元・旭川運転所所属の1520号機かなと思います。
除籍後は苗穂工場の入換機に転じ、車籍のあるカマとの識別を図るためか最近になって黄色い帯が加わりました。
手書き感あふれる少し歪んだストライプです。
札幌工営 苗穂工場 構内運転士 庫内運転士
2015年9月26日の一般公開にて撮影
黄釜のDE15-2516を運転する札幌工営の構内運転士
実は私にとって今回のシロクニ牽引運転は、山明号のお披露目と同じ位に重要度の高いイベントでありました。
と言いますのも、この牽引運転を担当するのはJR北海道の社員ではなく、グループ会社の札幌工営㈱に属する構内運転係員が受け持ってきたのです。
札幌工営㈱は国鉄時代の1952年3月に設立され、65年以上の長きに渡って苗穂工場の一部業務を受託してきた会社です。
請け負ってきた仕事は車両整備をはじめ、ブレーキシュー等の鋳物製造、荷役作業、構内運転業務などで、このうち構内運転では重要部検査等で苗穂工場に入場する車両の誘導・操縦を担当しました。
同社の社員は左胸に「札幌工営」と赤く刺繍した群青色の作業服を着ており、チャコールグレーの作業服を着るプロパーの検修員と見分けるのは簡単でした。
ヘルメットもJRマークは付かず、代わりにタイヤホイールのような図柄の赤い社紋を掲げていました。
苗穂工場公式HP(2018年3月31日閉鎖)に掲載されていた苗穂工場の組織図
総員670名の内訳はJR社員359名、札幌交通機械140名、札幌工営137名、サイバネット34名
札幌工営とサイバネットは2社とも札幌交通機械に吸収済みとなっている
分割民営化後はJR北海道の子会社である札幌交通機械㈱の100%子会社となり、JR北海道から見ると子会社の子会社、つまり「孫会社」という間柄でした。
親会社の札幌交通機械も苗穂工場の一部検修業務を受託しており、子会社の札幌工営と事業内容が一部重複します。
そのため経営改善に取り組むJR北海道は、鉄道車両整備業務の効率化を進め且つ経営基盤の強化を図るべく2018年4月を以って両社の合併に踏み切る事としました。
これは札幌交通機械による吸収合併として実行され、同時に札幌工営の法人格は消滅と相成りました。
2016年9月24日の一般公開にて撮影
黄釜のDE15-2516を運転する札幌工営の構内運転士
この時に気になったのは、札幌工営が受託していた構内運転業務をSKK(札幌交通機械)がそのまま引き継ぐのだろうかという事。
実は隣接する苗穂運転所には、同じくJR北海道の子会社である北海道ジェイ・アール運輸サポート㈱という会社が苗穂事業所を構えていまして。
「JUS」という略称を用いる事が多いこちらの会社は元々、1962年3月に北海道車輌整備㈱として創立し、国鉄北海道総局の運転関係区所(機関区・運転区・客貨車区)において旅客車清掃業務と屋根周りの検修を主に受託してきました。
1993年10月に北海道ジェイ・アール整備㈱、2005年4月に現社名の北海道ジェイ・アール運輸サポート㈱と2度に渡る社名変更を経て札幌運転所に手稲構内運転事業所を開設し、JR北海道の各運転所における構内運転業務を受託するようになったのです。
構内運転業務は地上での操車・信号扱いに留まらず、2009年9月には独自採用による庫内運転士の養成も開始しています。
「どうしてここでJUSの話をするの?」と思われた方もいらっしゃるでしょうが、もう暫くお付き合い下さい。
運転関係とは系統が違いますが、JR北海道函館支社管内で売店営業や駅弁の製造販売などを手がけてきたジェイ・アールはこだて開発㈱が、2012年1月に北海道キヨスク㈱に吸収合併され解散しました。
はこだて開発は業務委託駅(桔梗駅・大沼公園駅)の営業も受託していたのですが、これは吸収合併後の北海道キヨスクに継承されず、合併とは無関係の北海道ジェイ・アール・サービスネット㈱が引き継いでいます。
このように合併の対象に含まれないけど、ノウハウのある他のグループ会社に業務を引き継ぐケースがある訳です。
札幌工営の件についても、吸収合併先のSKKは構内運転に携わってこなかったため、もしかしたら構内運転に限りJUSが引き継ぐかも分からないな・・・と考えました。
先述したとおり既にお隣の苗穂運転所ではJUSが構内運転を受託していますし。
しかし去年9月の一般公開は残念ながら胆振東部地震の発生によってお流れになり、合併後の構内運転業務の行方を知る事が出来なかった私は、更に1年も首を長くして機会を待つハメになったのです。
札幌交通機械 SKK 構内運転士 苗穂工場 DE15形 入換機関車
そしてついに待ちわびた時が到来。
DE15形の運転室に乗り込み、ハンドルを握る構内運転士のヘルメットを見ると・・・。
1本の白帯が入っているので札幌工営時代の使い回しだと思いますが、社紋は札幌交通機械のSKKマークに差し替えられています!
左胸の刺繍も赤文字の「札幌工営」から、橙文字の「札幌交通機械」に変わり、社名と共にSKKマークも刺繍されています。
札幌交通機械 SKK 構内運転 苗穂工場 DE15形 入換機関車 操車掛 操車係
フライ旗と無線機を携行して操車を担当する係員も、構内運転士と全く同じ服装です。
という訳で苗穂工場の構内運転業務を引き継いだのは札幌交通機械だと分かりました。
個人的には大きな発見。
同行の新特急なすのさんにも熱く語ってしまいましたw
札幌交通機械 SKK 構内運転 苗穂工場 DE15形 入換機関車 操車掛 操車係
編成中間のヨンマル、最後尾のシロクニに来場者が乗り込み、客扱いを終える頃。
最前方の操車担当が無線機に耳を傾け、技術館前の列車扱い担当からの入換合図を聞いています。
札幌交通機械 SKK 構内運転 苗穂工場 DE15形 入換機関車 操車掛 操車係
そしてDE15のステップに乗り込み、編成後方を視認しつつ緑色のフライ旗を目一杯振ります。
これを合図に構内運転士はハンドルに手をかけます。
札幌交通機械 SKK 構内運転 苗穂工場 DE15形 入換機関車 操車掛 操車係
一連の所作を経て列車は前進。
苗穂駅方向へゆっくりと移動します。
操車担当はステップに乗ったまま前方を注視。
解体線に留置されている黄釜の横を通過。
操車担当は緑のフライ旗を水平に出し続けています。
編成中間のヨンマルは電化前の札沼線において通勤輸送(札幌~北海道医療大学間)を担ったキハ40-336。
2ドアでありながらオールロングシートという変わり種です。
札沼線電化後は苗穂運転所・苗穂工場での構内入換に充当されるほか、ごくまれにマヤ検の動力車として本線上を走る事もあります。
シロクニと黄釜の並びも捉えました。
シロクニ編成は苗穂駅連絡通路の手前で停止。
出発から4分ほどで技術館前に戻ってきました。
札幌交通機械 SKK 構内運転 苗穂工場 DE15形 入換機関車 操車掛 操車係
先頭ステップに立っていた操車担当は連結面に移っており、到着後に構内運転士と共に停止位置を目視確認していました。
牽引運転の一部始終を眺めたら、技術館を離れて構内の作業説明会を観覧しました。
次回に続きます。
【2019年9月7日開催 苗穂工場一般公開の記事一覧】
2019/9苗穂工場一般公開[3] 札幌工営から構内運転を継承した札幌交通機械
※写真は特記を除き2019年9月7日撮影
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最終更新日 : 2019-10-05